賢明学院中学高等学校
前 七奈先生/英語科教諭
インタビュー

強い子に育てたいから、絶対に1人にはしない
前 七奈先生 Profile
賢明学院中学高等学校英語科教諭。英語が一言も話せない小学校高学年のときに4年間インドで暮らす。高校1年で日本に戻り、大学卒業後はツアーコンダクターとして旅行会社に就職。結婚・出産を機に退職し、夫と旅行会社を立ち上げ、その後、公立小学校で英語を教え始めたことをきっかけに教育の道へ。2男1女の母でもある。
01Chapter

教壇に立ってからは楽しいことばかりで、辞めたいと思ったことは一度もありません。

― 前先生は、結婚・出産を機にご夫婦で旅行会社を経営されていたそうですね。そこから中学校の教師になられた経緯を教えてください。
前先生 旅行会社の業務はほとんど主人がやっていたので手伝う程度にしながら、和歌山の公立中学校に常勤講師として勤め始めました。半年くらいのつもりでしたが、他校からも次々呼んでいただいて小学校にも行きました。ALT(※)が日本に入ってきた頃で、ちょうど小学校でも英語を教え始める時期だったんですね。教員免許を取らないまま講師をやって10年ほど経った頃、「そろそろ免許を取ったら?」という話になりました。当時、私は自分の子供がサッカーを始めたことをきっかけに一緒にトレーニングをやって指導の免許も取るほど、小学生へのサッカー指導に夢中でした。でも、教員免許は自分のためになるし、指導の糧にもなると思って、2年をかけて中学校で働きながら教員免許を取ったんです。

前先生
※ALT:外国語指導助手。小・中・高に児童・生徒の英語発音や国際理解教育の向上を目的に配置され、授業を補助する。

― その後、賢明学院に来られたのですか。
前先生 そうです。教員免許を取って、地元の和歌山県で働こうと思っていた頃、たまたまサッカー指導の研修会で賢明に来て、「こんなにサッカーをやっている生徒が多いなら賢明で教えたい」と、6年前に本校で教員になりました。ただ、最初の2年間はサッカー部の顧問でしたが、放課後に英語の補習や授業ができませんから、なかなか大変だったんですね。そんな中、学校から「英語にすべてを注いでくれないか」と言っていただき、英語指導に専念することを選びました。
― 英語はどのようにして学ばれたのですか。
前先生 私は帰国子女なんです。英語が一言も話せない小学校高学年でインドに行き4年間生活をして、高校生になるときに私1人だけ帰国しました。インドではアメリカンスクールに通っていて、日本で通った高校も帰国子女だけの学校だから日常会話もテストも英語というような学校だったんです。ただ、その後は日本の方が長く、意識して英語を勉強したことはありませんでした。
― そんな前先生が、中学校で子供たちに英語を教える道をずっと続けられている理由は? 英語を活かせる仕事はいろいろありますよね。
前先生 ひとつは私自身が日本の中学校に行ったことがなく、中学校が憧れの場所だったんです。その中で、やっぱり生徒との関わりが一番の魅力でした。公立中学校で出会った生徒たちはちょうど思春期で悩んでいて、関わる中で私自身が学ぶことも多く、免許を取ってきちんと教師をやろうかなと思ったきっかけにもなりました。ある公立中学校では、野球部の顧問の若い先生をサポートしていましたが、とてもやんちゃな生徒が多い学校だったので、生徒指導がすごく大変だったんです。でも部員たちと一緒に練習して一緒に過ごして距離がどんどん近くなっていき、子供たちの大人にはない素の優しさを感じて、本当に嬉しかったんです。教壇に立ってからはそんなことの繰り返しです。楽しいことばかりで、辞めたいと思ったことは一度もありません。

02Chapter

「先生と生徒が一緒に作る共同作業が授業だよ」と伝えています

― 英語を教えることにおいては、どのような考えをお持ちですか。
前先生 中学生でも高校生でも、授業は私1人で絶対にできないと思っているので、生徒たちには「一緒に作る共同作業が授業だよ」と伝えています。教師がどれだけ熱くなって教えても、ものすごいテクニックがあったとしても、一方通行では授業はできません。生徒たちが「学びたい」「一緒に英語を使って何かをしたい」という意識や興味をもってくれて、私が求めるものと同じところまで上がってきてくれて一致したら、一番良い授業ができると思うんです。それを理解してほしいという話は、何度もしていますね。

前先生

― 授業が生徒との共同作業という考えは面白いですね。
前先生 生徒との共同作業ですから、私の中では生徒が変われば教え方も変わり、同じ授業はないんです。前日に明日の授業の計画をしていても、当日の生徒たちの様子やテンションを見て、授業の展開を全く変えることも多々あります。その意味では申し訳ないくらいポリシーはありません(笑)。ただ私が目標とするものだけではなく、学校としての目標や数値は意識しなければいけないと思うので、右に曲がったり左に曲がったりしながら目標にたどり着く感覚ですね。
― 生徒のその時々の雰囲気などに合わせて授業の進め方を変えることで、やはり効果は違ってきますか。
前先生 違ってきますね。特に今、私が担任の中3の生徒たちは中1のときから私が3年間英語を教えてきたので、「こういうことをやっておいて」と伝えたら、グループワークや話し合いやプレゼンを自分たちできちんとやっていきますし、私がいなくても「このままディスカッションを続けておいて」と言えば誰かがきちんと私の役目を担って進めてくれます。

03Chapter

学校中の生徒が知っているくらい、一番課題が多い授業です。

― 生徒主体でも進められるような授業の形を目指してこられたのですか。
前先生 ここ何年かアクティブラーニングについて勉強させてもらう中で、「これは私がインドのアメリカンスクールで受けてきた授業だ」と思ったんです。アメリカンスクールでは、例えば数学の授業でも黒板を見ずにディスカッション形式で授業が進んでいきます。60か国以上の国から来た生徒たちが1つの学校で学んでいたので英語力も差がありましたが、いろんな生徒がいるからこそ皆で補い合って勉強していきます。そういう人種や国が違っても皆が生き生きときちんと授業を受けている状態が、私が目指すものかなと思います。文法重視の指導が必要な時もありますが、そこを授業で扱うことはあまりしません。それだけに、私の授業はおそらく学校中の生徒が知っているくらい、一番課題が多い授業です。

前先生

― 課題が一番多い?
前先生 ここ2、3年は完全なる反転学習に変えました。家で課題を多くやってもらうことにして、授業では英語をツールにディスカッションなどいろいろな問題に皆で取り組むというスタイルにしたんです。それから生徒たちの意欲はとても高くなりました。皆の前で手を挙げて英語で話をしても恥ずかしいとあまり思わない空気があり、生徒たちがお互いに競い合い、高め合っているという印象はすごく受けます。ただ、自由に授業を行う反面、課題のチェックは細かくやりますね。
― 今の中3生は68人中19人が英検準2級を取得したそうですが、そうした授業や課題の成果が出ていますか。
前先生 私自身特別なことをしている意識はなくて、英検や模試にしても対策は基本していませんが、成績はすごく伸びています。ただ、いつ模試がやってきても、いつ英検を受けても大丈夫なように、普段の授業の中で取り入れるようにしていますし、賢明の英語科としては、教科として学力をつけるという意味の英語と、自分の世界を広げるためのツールとしての英語の2つをいかにバランスよく教えていけるかということを考えています。

02Chapter

根底に「強い子に育てたい」という絶対的な思いがあります。

― 前先生は現在ESS部の顧問とのことですが、そこにも情熱をもって取り組んでいらっしゃるのですか。
前先生 そうですね。ESS部は、以前は部員が1人で休部状態だったところを、学校から「顧問になって立て直してほしい」と言っていただいたので、生徒に声をかけて引き込んで、今は部員が20名を超えました。授業でこれだけ好き勝手にやらせてもらっていても、まだできていないことが私の中にあって、それを形にするのがESS部です。

前先生

― 例えばどんなことをするのですか。
前先生 100%生徒主体ということですね。授業は見えないところでこちらがコントロールする部分もありますが、クラブに関してはやりたい人間が集まってやるものだから、自分たちで考えて、自分たちで運営するということをESS部のポリシーにしています。私が出す唯一の条件は、英語を使って、または英語を通じて、個々の友達や部員の能力を引き上げることです。4年ぐらいやっていますが、おとなしい部員が多い中で、全校生徒の前で英語も日本語も話せるとか、将来に向けての欲も出てきて、人間力もついてきていると感じます。
― 100%生徒主体は大変ですが、それをクラブでやるということですね。
前先生 私は根底に「強い子に育てたい」という絶対的な思いがあります。少しのことでは泣き言を言わず、常に前向きに進める強さを身につけてほしいと思っています。課題が多いのも強さを身につけてほしいからですし、放課後にクリアするまで帰れないテストがある時期もありますが、それも英語力を上げるというよりも強くなるためです。強くなったら例え英語が嫌いでも頑張れるし、その強さがあったら世界中どこででも生きていけます。昔はそれを、サッカーを通じて教えていたのですが、今は英語を通じて教えています。

05Chapter

生徒に必ず言うのは「絶対に1人にはしない、1人でやれとは言わない」ということです。

― 強い子に育てるうえで、前先生が大事にされていることは?
前先生 私が生徒に必ず言うのは「絶対に1人にはしない、1人でやれとは言わない」ということです。どの生徒とも最後まで一緒にやるので、言われたことは必ずやりなさいと言っています。それで信頼関係ができたら授業も一緒に作れるんです。教師は、そうやって子供たちと関われ、子供たちから反応があるので、何一つ無駄にならない素晴らしい仕事だと思います。

前先生

― 賢明に来られて6年ということですが、先生ご自身も変わられたところはありますか。
前先生 私には子供も家庭もありますが、それでもやっぱり自分の人生だとか、キャリアや能力を高めることを大事に思っていたんです。でも、この学校に来て、自分が身につけた能力を人のために使えないと全く意味がないと思えるようになりました。以前から「強い子に育てたい」とは思っていましたが、今は「強いとは?」と聞かれたら、「自分の才能を人のために使えること」だと言えますね。生徒たちにもいろんなことを知って強くなって、その力を人のために使えるようになってほしいと伝えています。
― 最後に子供たちが英語を好きになるためのアドバイスがあれば教えてください。
前先生 英語は人とのコミュニケーションの手段なので、ゴールはないんです。ただ、「英語が話せるようになったらアメリカで何をしたい?」とか、「英語を話せたらどこでサッカーができる?」とか、世界規模で想像できる子はきっと英語を嫌いになりません。大人がそういう声かけをしていけたら、子供の発想がどんどん変わるので、嫌いという気持ちはなくなっていくのではないかと思います。

 

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