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2013年6月25日、兵庫県宝塚市にある小林聖心女子学院で、聖心(みこころ)の祝日記念行事が執り行われた。「聖心」というのはイエス・キリストの心。様々な苦しみや悲しみを抱える人々に寄り添い共に生きようとされたイエス・キリストにならい、他者のために奉仕する喜びを学ぶ、小林聖心女子学院にとって大切な祝日である。

教具作りの様子。黙々と取り組む生徒達。
英語学習用の教具。
切手集め。学年をまたいでグループ分けされ、
上級生が指導しながら行う。
ベルマークの整理作業。校内で1~2年程かけて収集したものをこの日にまとめる。
雑巾縫い。一針ごとに心を込めて。
普段から校内で集めているベルマークや古切手をこの日に整理し、宝塚市社会福祉協議会の善意銀行などに寄付。雑巾や教具は海外の児童施設などに寄付している。
取材中最も印象深かったのは、私語をする生徒はおらず、全ての生徒が黙々と作業していること。これは単に作業に集中しているということだけではなく、沈黙を通してその作業の先にいる人々や、フィリピンの子供たちに思いを馳せるという精神的な営みでもあるのです。」と話してくれたのは教頭の黄田先生。

教頭 黄田みどり先生
「奉仕とは、余ったものや自分に不要なものを寄付するのではなく、本来痛みをともなうものです。キリストの心を表すcompassionという言葉がありますが、 憐れむという意味の他に、ともに苦しむという意味があります。中学生にとって沈黙するのはとても大変なことですが、話したくなるのをちょっと我慢し、沈黙の中で作業をしながら世の中のことや困っている人達のことについて深く考えるのです。他者へ心を向けるということは、祈りにも通じるものです。」

在学中あらゆる場面で沈黙を実践することが小林聖心の特徴。日々の生活では朝礼と終礼時にそれぞれ「祈り」の時間が設けられ、朝礼では先生の言葉を静かに受け入れ、終礼ではその日にあったことを振り返る。また毎年2日間にわたって行われる「黙想会」や、クリスマス前の9日間に及ぶプラクティス(練習・実行・実践という意味で大きな宗教行事の前には沈黙して心の準備をしていくという聖心の伝統)の期間など、多様な行事を通しても沈黙することの大切さを学ぶ。このように沈黙は小林聖心における教育の中で大きな柱となっているのだ。

車いすは近くの施設から24台を借り、2~3人のグループでひとりひとりが車いすに乗ることと、車いすを押すことのそれぞれを体験する。実際に車いすに乗ってみると、普段より低い目線に戸惑ったり、わずかな段差が怖く感じたりと、見ているだけではわからない事を体験していく生徒達。
宝塚市から来られたスタッフの方々の説明に真剣に聞き入る。
5cm程の段差でも、乗っている人にとっては後ろにのけぞる様な感覚が。
段差や坂道では、
押す側の声掛けに とても
安心することがわかった生徒達。
車いすの広げ方や畳みかたも習う。
これからは身の回りの車いすの方々を
お手伝いしたいという生徒も。
高齢者疑似体験では、視界が狭くなるゴーグル、聴力が低くなるヘッドフォン、関節の動きが制限される特殊なサポーターを身につけて、実際の高齢者の身体感覚を体験する。
サポーター等で高齢者の身体感覚を疑似体験。
視覚と膝の関節の動きが制限される中、
階段の上降が最も怖かったそうだ。
声をかけあいゆっくりと上っていく。
視野の狭まりを体験。
この程度の角度でも視界に入らない。
「あと何歩だよ」「もう少しで階段だよ」
といった何気ない声かけが、いかに安心を
与えるかを実感した生徒達。
2年生の生徒達は校外で実習。宝塚市にある「希望の家」という障害者支援施設で、利用者の方や職員の方の話を聞いたり、入浴や食事介助の見学、交流会も催される。交流会では利用者の方々の笑顔にふれながら、ゲームや楽器演奏などを行い楽しいひとときを過す。
交流はこの日で終わりではなく、クリスマスには「希望の家」の方々を学校に招待。車いすの方々を生徒達がエレベーターで1人ずつ講堂までエスコートし、クリスマス・キャロルを鑑賞していただくなど、継続的な触れ合いの機会が設けられている。
奉仕活動は「体験学習」として高校ではカリキュラムにも組み込まれる。デイサービスセンター・養護施設などのお手伝い、釜ヶ崎での労働者支援、手話や点字製作など、多岐にわたる活動から希望の活動を選択し、高1・高2の2年間それぞれの活動に取り組む。この日行われた高校3年生による「体験学習の分かち合い」は、これまでの活動を各自が振り返り綿密な準備作業を経て挑む、まさに総決算的な振り返りの行事である。

会場は中学生による沈黙とはうってかわって、高3生の発する凛とした緊張感に包まれている。10名のパネリストが順に3年間取り組んできた活動について発表。
活動の内容、感じたこと、失敗したことなどを自分の言葉で発表していくパネリスト達。形式だけの慈善活動ではなく、中学校高校の6年間を通して日常的に奉仕・福祉活動に深く関わってきた生徒達だからこそ語れる、経験に基づいた深みのある内容が続く。
「騙されて福島原発関連の作業に就かされる労働者」、「介護現場の労働力不足」、「フィリピンのスラム街の貧しさと政治家の汚職」といった、時に生々しい発表や、障害者や恵まれない人々と接する前に持っていたマイナスの感情さえも隠さず発表し、個人的な経験、感想の全てを全体で共有している。

黄田教頭「卒業間近の高校3年生は、最も長い生徒で12年間の小林聖心での生活を振り返る大切な時期です。これまで学んだ事をじっくりと思い出し、周囲と分かち合います。自分達の将来を見据え、分かちあいと振り返りのために1日を過ごすことは、生徒達にとってかけがえのない体験です。」

パネリストによる発表が終わると質問タイムに。時に笑い声が起こる和やかなムードではありながら、回答がはじまると一斉に静まり話しに集中する生徒達。いわゆる予定調和の質問はほとんど見られず、時に回答者が答えにつまるような鋭い質問も。しかし生徒達には周囲の目を気にして萎縮するような雰囲気は無く、注目を浴びることを恐れず堂々と発言している。また、答えに詰まる生徒がいれば他の誰かがかわりに答えたり、質問が出ない場合は角度を変えて再度質問するなど、高校生のレベルを遥かに超えたディスカッションの様子に、普段から自分達で考え、行動している様子が伺える。
「本校では学業や行事など、全ての活動において普段から自分達で考えさせるようにすることを心がけています。きっかけはこちらで作りますが、年を追うごとに『やらされている感』がなくなり、自分達で行動するようになります。奉仕は『やってあげる』ではありません。周りに困っている人、苦しんでいる人がいたら何も考えずに体が勝手に動いているというのが本当の奉仕であると考えています。関東・東北での震災の際も、本校の生徒達は普段から奉仕に関するアンテナを張っているせいか、かなり早い段階から現地での支援活動の企画や要望が素早く出て来ました。これは、常日頃から他者への関わりを求め、人の役に立ちたいという思いの積み重ねがあるからこそ出来ることだと考えています。小学生は純粋に人の役にたつことがうれしいと思えるのですが、反抗期、思春期を迎える中学生段階では少し難しい面もあります。そこを乗り越えて高校生になると、これまでの体験や心の成長を基に『正しい行い』が実際の自分の生き方に繋がってくるので、自然と自発的な行動が出来るようになります。全ては普段からの小さな積み重ねの結果であると考えています。」

「奉仕」が独立した単なるカリキュラムや行事の1つではなく、学校生活におけるあらゆる局面において根幹になっているということが、この日の生徒達の様子から伺い知れた。
高3生による振り返りの会の後半、「共生」という議題になると、どうすれば障害を持った人達や、マイノリティの人達の役に立ち、共に生きていけるのかを自分の言葉で熱く語る生徒達。自分よりも他者を優先し、他者のために何ができるかを真剣に考え臆せず議論する姿勢に、小林聖心の初代学院長マザーマイヤーの遺した「Big You, small i」という言葉が自然と思い出された。

フィリピンでの体験学習
国際理解教育の中にも奉仕活動の要素が色濃い小林聖心女子学院。1985年に始まったフィリピン体験学習は、フィリピン在住の聖心会シスター有田らの尽力により、充実したプログラムに基づく深い学びの場となっている。毎年小林聖心生14名と姉妹校より6名の計20名の生徒が、計11日間滞在し、フィリピンの様々な問題について考え、学生や住民たちと触れ合う。ナボタスというスラム街では過酷な環境を目の当たりにしながらも、現地の貧しい人々の温かさに接し、自分自身を見直す生徒達。貧富の差が激しいフィリピンの様々な問題を身をもって知り、卒業後も何らかの支援を続ける生徒が数多いのだとか。単なる海外語学研修ではなく国際的な視野で奉仕の精神を育める貴重な体験は、世界中にネットワークを持つ聖心会ならでは。
小林聖心女子学院中学校・高等学校 ホームページ ホームページ
小林聖心女子学院中学校・高等学校 ホームページ
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<a href=http://cocorocom.com/labo/school/96.php>小林聖心女子学院中学校</a>
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