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「思いのバトンをつないでいきたい」


長崎原爆遺族会会長の
下平作江さんよりお話を聞く
大阪女学院中学校では聖書の時間を始め、学年ごとの解放教育、生活指導の講演会、2学期に行われる伝道週間など、生命や人権についての話を聞き、考える機会を数多く設けている。
今回は被爆地である長崎と水銀公害がおきた水俣を回る修学旅行を終えたばかりの中学3年生6人に、旅での学びとこれまでの平和学習について話をうかがった。
Q1 7月に修学旅行で長崎や水俣を訪問し、人権や平和について学んだとお聞きしました。
気づいたことや心境の変化についてお聞かせください。

Nさん
今回の修学旅行で平和の本当の意味を知ることができたと思います。
長崎で原爆を体験された方や水俣で水俣病に関わられた方からお話を伺ったのですが、「人の痛みが分かる心を持つことが平和につながる」という点は皆さんに共通していました。平和が何に支えられているかを考えることで、意味が少しわかった気がします。
Yさん
本当の意味の平和を知り、どう伝えていくか考えることが、私たちにできる平和貢献だと気がつきました。
伝えると言っても、全員が政治家になるわけではないので、それぞれの身の丈にあった伝え方でいいと思います。先生になれば生徒に命の大切さを伝えられるだろうし、親になれば子どもに伝えていけるので、身近なところで少しでも平和につながることを伝えていきたいです。今の段階では、自分を大切にして、他人を大切にして、命を大切にしていきたい。
Wさん
長崎と水俣に共通するのは人災だということです。
他の人のことを考えなかったからこんなことになったのだと思いました。逆に言うと、他の人のことを考えれば防げたかもしれないとも思いました。
旅行なので楽しもうと思っていたのですが、実際には今まで考えたことがなかった色々な事を感じる旅になりました。

長崎平和記念像の前で
Kさん
私は長崎で原子爆弾の話を聞いて、人間の悲しさを感じました。
人と人で殺し合わなければならないなんて本当に悲しいことだと思います。
私は戦争のない時代に生まれて本当に幸せなのですが、あえて、戦争の時代に生まれた方がよかったのかなという考えも頭をよぎりました。その時代に生まれた人は命や友達、家族の大切さを、今の人以上に強く感じていたはずです。つらい時代ではありましたが、今のように、家族や自分の子どもに酷いことをする事件は起こらなかったのではないかと思います。
Mさん
水俣病の資料館に展示されていたパネルが強く印象に残っています。
成人の日に、泣いている父親の傍で笑っている水俣病患者の方の写真です。そこには最初で最後の笑顔だったという解説が書かれていました。笑顔まで奪い去る水俣病は二度と起こしてはいけないと思いました。
水俣病を経験している人は高齢者で、これから生まれてくる人のほとんどは関係者から直接話を聞くことはできないという現状があります。直接話を聞いた私たちが水俣病について伝えていかなくてはいけないと考えました。
Hさん
原爆資料館でお聞きした下平作江先生(※)のお話に強い感銘を受けました。
下平先生の妹さんは原爆後遺症の辛さに耐えられなくなって、電車に飛び込み亡くなられたそうです。下平先生は生きて伝える道を選んだそうです。私もそのバトンを受け取って、今後、どんな辛いことがおきようとも、生きていこうと思いました。
事前学習では興味を持つことができなくて、修学旅行なのになんで平和学習なんだろうと思っていましたが、話を聞くことができて本当によかったと今は考えています。
知識として知っていたことでも、実際にその人に会って聞いてみると全然違うのだということを知りました。

※下平作江さん
長崎原爆遺族会会長。1982年第2回SSD(国連軍縮特別総会)に出席以来、国内外で被ばくの実相を語り始める。戦災者連盟、被災地復元、援護法制定要求の運動などに参加。原爆体験語り部の中心的存在として活躍。
Q2 中学校3年間の様々な機会に、人権学習や平和学習が実施されているとお聞きしています。印象に残っていることを教えて下さい。

恵の丘長崎原爆ホームでの交流会
Nさん
中学2年生の調べ学習が印象に残っています。
私たちのグループは障がい者について調べ、ポスター発表をしました。
私たちと変わらない人間なのに、障がい者の方が差別を受けたり、学校に受け入れてもらえなかったり、学校に入ってもいじめに会うという実態がわかりました。私たちが大人になる頃には、障がい者が差別されない社会になってほしいと思いました。

Yさん
中学1年生の学校行事で産婦人科の先生の講演会がありました。
生まれてきたことの意味や命についての話が印象的でした。 自分の誕生日はそれまで自分が中心で、自分を祝ってもらう日だと考えていましたが、それは母がお腹を痛めた日でもあると言うことに気づくことができました。

Wさん
私も中学2年生の時の調べ学習が印象に残っています。
私たちのグループは黒人差別について調べました。 同じ人間なのに、色が黒いという見た目だけで差別されたり、奴隷にされたりした歴史にショックを受けました。

Kさん
私も中学2年生の時の調べ学習が印象に残っています。
私たちは在日朝鮮人差別について取り上げました。 黒人差別は知っていたのですが、在日朝鮮人差別を私は知りませんでした。 言葉が違うから、住んでいるところが違うからという理由で差別するのは酷いことだなと思いました。
差別の本質は「自分のことが一番可愛い」という気持ちにあると思います。
本当は他人のいいところを探して受け入れなくてはいけないのですが、自分が可愛いがために違いを見つけて優位に立とうとする人の気持ちが差別を生むのだと私は思います。

Mさん
私は人権博物館「リバティおおさか」に行ったことが印象に残っています。
始めは授業がなくなるのが嬉しかったのですが、写真や体験談のパネルを見て回っているうちに大切なことを教えられました。
印象に残っているのは、日本人が中国人を殺している写真です。日本人にもこんな酷いことをした歴史があるということに驚きました。

Hさん
実は今日観た「ひめゆりの塔 『命は宝』物語」が3年間の平和学習で一番印象的です。
というのも、修学旅行で下平先生の話を聞くまで平和学習に思い入れがなく、戦争に関するビデオの鑑賞や講演会でも集中できないことがよくありました。
下平先生の話をきっかけに気持ちを入れ替えて初めての平和学習が今日だったので、深く考えさせられました。
戦時中の女子学生もお洒落をしたり、友達と遊んだりしたいという気持ちがあったと思います。でも彼女達にはほとんどできなかった。平和な時代に生まれた私は友達に囲まれて、色んなことができています。幸せをかみしめて生きていかないといけないと思いました。
Q3 人権学習や平和学習で学んだことをこれからどう活かしていきたいですか?

水俣病犠牲者の慰霊碑の前で祈りを捧げる
Nさん
原爆資料館には戦争や原爆のことをあつかった絵本や紙芝居が沢山ありました。
私の将来の夢は幼稚園の先生になることなので、先生になったら子ども達に絵本や紙芝居で平和や戦争や原爆のことを伝えて行けたらいいなと思いました。

Yさん
私たちの年齢で平和や人権を考える機会を持てたことは貴重だと思います。
先生から機会を与えられなければ、人権博物館「リバティおおさか」などに足を運ぶことはなかったはずです。
貴重な体験をできたことに感謝して、経験したことを忘れずに、これからの生き方の色々な場面で活かしていきたいです。

Kさん
下平先生が、海外の講演などに行くと、日本人なのに原子爆弾のことを知らない人に出会うことがあるとおっしゃっていました。
知らないのは仕方がないのですが、教えない人も悪いと私は思います。もし、私が原子爆弾のことを知らない日本人に出会ったら、詳しいことまで教えて、伝えたことを知らない人に教えるという心がけも連鎖させたいと思います。

Mさん
大阪女学院の生徒でなければ、充実した平和学習や解放教育を受けていないと思うので、まずは他校の友達に自分が学んだ事を伝えていけたらと思います。

Hさん
私は下平先生のように心を打つ話はできないですけども、親から子、子から孫へと平和への思いのバトンをつないでいけたらと思います。
Q4 被爆地である長崎と水銀公害のおきた町である水俣を訪れた経験をふまえて、 福島の原発事故について思われることがあれば、聞かせてください。
Kさん
修学旅行でも現地に行ったことでわかったことが沢山ありました。
例えば政治家が被災地に行けば必ずわかることがあるので、行くべきだと思います。 被災者の気持ちは東京にいてもわからないので、身を持って感じに行くべきです。

Wさん
私は幼稚園の頃に福島に住んでいました。
福島には友達もいますし、とても身近な問題で頭の中を整理するのが難しいのですが、福島の原発事故も水俣の水銀公害と同じように人災だということは忘れてはいけないことだと思います。

Hさん
私は原発をすぐに無くすことに対して、賛成とも反対とも言えません。
原発を無くしたらどうなるんだろうと考えると、それも不安です。 計画停電で事件や事故がおこるかもしれないですし、原発で支えられている街の人達のことも心配になります。原発の次の資源を探してから、原発をなくすべきじゃないかと考えています。一方的な意見に走るのではなく、現地に行って人の気持ちを知ることが大切なのではないでしょうか。
《取材を終えて》
「現地に行ってみないとわからないことがある」という言葉を、今回の取材の中で生徒の皆さんから何度か聞いた。修学旅行で訪れた長崎や水俣で思いを持った人や力強い言葉に出会って、テレビやインターネットでは得られない情報を感じる体験をし、心動かされたのがよくわかる。
体験がきっかけになって、これまで学んだ人権や平和についての知識が自分の事として繋がっていく様子は、話を聞いているこちらも嬉しくなってくるほどだった。
「戦争」や「差別」といった重いテーマを、女子中学生が他者への思いやりに満ちた言葉で語る姿は大変頼もしく、「愛と奉仕の精神で社会に貢献できる人」を育てるという大阪女学院の思いが確かに浸透していることを感じさせた。
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