ココロコミュ

【海城中学高等学校】
サイエンスセンターをめぐる冒険
<地学編>

Earth science Teacher INTERVIEW 地学担当 山田先生が語る
海城サイエンスセンターと地学の魅力
我々がどういう過程を経て
ここに存在するのかに思いを馳せる地学

理科(地学) 山田 直樹先生

科学に対する興味関心や好奇心を持続するために
生徒の中に響くものがある実験室を

― サイエンスセンター設立にあたって、先生が実現したかったこと、その思いをお聞かせください。

山田先生 一番は、旧理科館以上に観察・実験や実習をしっかりやりたいということでした。一方的に教員が話し続けるのではなくて、生徒それぞれが手を動かす。いろいろなことを試したり、確かめたりして、そこから考察したり、新たな疑問を抱いていく。そういう授業の割合を高めていきたいと考えていました。
しかし、旧理科館には物化生それぞれの実験室が1つずつと、やや手狭な共同実験室が2つあっただけで、なかなか実現が難しい。授業に探究的な要素を取り入れたいと思っても、ハード面の不足がネックになっていました。
完成したサイエンスセンターは、物理・化学・生物の実験室が2教室ずつ、地学も1教室あり、さらに共同実験室や階段教室もあって、今まで我慢していたような授業や実験も行えるようになりました。さらにサイエンスセンターの校舎自体が“学びの教材”になればと考え、生徒の知的好奇心を刺激するような仕掛けをたくさん盛り込みました。

― 地学科としての具体的な要望や実現できたことは?

山田先生 一番は、地学専用の実験室を新たに作ったことです。これまで、生徒の学習に役立てられるような器具や資料があっても、専用実験室がないために十分活用しきれていないような状態でした。例えばクラス生徒の人数分の偏光顕微鏡。本校にあるのは、廃番になっていてなかなか手に入らない貴重なものです。1人1台の偏光顕微鏡の価値を十分に発揮できる地学の授業が可能になりました。
また、学校現場ではめずらしい岩石処理室も設置し、大型の岩石カッターや岩石研磨用の器具も新たに購入しました。生徒が自分で採取してきた岩石を加工して観察するという選択肢が増えるだけでも、学習の幅は広がるでしょう。
細かい部分でもこだわった箇所はたくさんあって、教員用の実験台は据え置きで作らず移動可能にしてスペースを確保しました。前面のホワイトボードもグループワークで議論する中で自由に書きながら考えられるように広く設定して、その周囲も書き込みが可能です。生徒の実験台も、作業しやすいことを重視して全面フラットの大きな作業台を希望しました。
また、実験室を生徒にとってワクワク感がある場所にしたいと思い、ボーリング試料を貼り付けてつくった円柱、ガラス棚の中の鉱物化石、触って体感できる展示スペースなどの展示を考えました。これらを設置できたのも、専用実験室ができたからこそです。

広く平面で使いやすい実験台

触って体感できる展示スペース

ワイドなホワイトボードと移動可能な教卓

― ガラスの中の展示だけではなく、触れられるのがいいですね。体感スペースにこだわられた理由は何でしょうか。

山田先生 入学したての中学1年の頃は、たくさんの生徒がいろいろなことに食いついてきてくれます。地学には対しても「わあ、おもしろそう!なんだそれ!」と好奇心を持ってくれる生徒が多いと思います。それが、学年が進むにつれて、「わあ、すごい!」といった食いつきが徐々に少なくなっていくような気がします。それを見ていると、なんだかもったいなく感じるのです。科学や自然に対する興味関心、好奇心をずっと持続していくための一助になればという思いから、体感スペースを作りました。ささいなものではありますが、こういう取り組みの中で1つでも彼らの中に響いてくれるものがあれば嬉しいです。

― そうした知的好奇心の刺激による生徒の変化や成長を実感されていますか。

山田先生 そういったことの教育効果はなかなかすぐには表れてこないものですが、きっかけづくりを手伝うことは大事なことだと思っています。海城生は能力の高い子が揃っていますから、こちらで全部を与えなければいけないとは思っていません。きっかけ1つで、生徒がどんどん学んでいくということは実際に起こります。きっかけから何かに気づいたり面白がったりする力、自分で疑問を見出していく力、さらにはちょっと試してみようと動ける自主性が大切です。逆に言うと、そういったものが養えていないと、探究学習もただの押し付けになってしまうような気がします。そういう力を養うことに対して、サイエンスセンター全体としてなにがしか寄与していければいいと思っています。

時間・空間のスケールを変化させて考える力

― 山田先生が生徒に伝えたい地学の魅力とは何ですか。

山田先生 日本にいると、特に地学は大事だと思います。よく言われることですが、日本は4つのプレートが集まっていますから、地震・火山だけではなく、地学的な現象がたくさん起こる場所です。その日本に生きるなら、地学の素養を持って社会で活躍してほしい。地学を学習せずに大人になっていくのは残念です。
地学の魅力の一つはスケール感だと思っています。岩石片の観察といったミクロの世界を考えることもあれば、宇宙の大規模構造という巨大な空間や長い時間を考えることもあるわけで、そこに他ジャンルとの違いがあると思っています。自在に時間スケール、空間スケールを変化させて考えるという地学ならではの頭の使い方は、生徒がどんな方向に進んでいくとしても必ず活きてくる力です。

― 山田先生が、地学が面白いと思われる理由は何ですか。

山田先生 自分や、自分が生活しているこの世界が、どのような過程を経て今ここに存在できているのか、あるいは、自然からの恩恵と災害の中にあって、この世界でどのように生きていけるのか、そんなことを知る手掛かりになるということでしょうか。
私自身は、教員になってからの方が地学はやっぱり大事だという思いが強くなっています。そして、飽きのこない奥行きがあると思います。その奥行きは、決して大学に行かなければわからない奥行きばかりではありません。現実に目にすることができる自然があり、我々はその中で生じる様々な現象に影響されながら生きている。自然の中の事物をよく観察すれば、法則性や仕組みを論理的に読みとったり、目に見えないものに想像力を働かせたりすることもできるでしょう。資源やエネルギーや環境問題なんかは今後の人類の課題でもあります。関心を持ちやすい科目ではないかと思います。
私自身、教えながらも気づきがあって、授業もどんどん変えていこうとしています。生徒の反応から面白いと思っているところがわかって、「今度はこういうところを突いてみよう」と考える楽しさもあります。

― 地学の実験室ができて、今後地学科として挑戦したいことはありますか。

山田先生 先ほども言ったように、授業のスタイルを変化させていくことですね。今までも探究的な試みを毎年少しずつ取り入れてきましたが、そういうレパートリーを増やしていきたいです。幸い、もう1人の地学の専任の佐々木先生が積極的なので、2人で相談しながら新しい試みを取り入れていきます。その中で良さそうなものが地学科に蓄積されていけばいいと思っています。

― どのような試みをされたのですか。

山田先生 先学期にやったのは、学校の周辺2.3㎞四方の四角の中に13×13の169地点を作って、そのうちの88地点で、同時刻に一斉に気温や気圧を観測するという実習です。それは微気象という狭い範囲の気象で、何か見えるものがないかどうかを調べるもので、班ごとに考察をパワーポイントにまとめて発表してもらいました。やったことのない実習でしたので我々も結果はわからないのですが、失敗してもいいからやってみようと挑戦しました。
とはいえ、私は授業での講義形式の座学をすべて排除しようとは思っていません。座学の方がうまく伝わる内容もあるでしょうから、それはケースバイケースです。生徒の能力を向上させたり、生徒の世界を広げたりするような学びにつながる授業はどんなものなのか、面白く思ってもらえるポイントはどこにあるのか。授業スタイルの選択肢を広げながら考えていければいいなと思っています。

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