ココロコミュ

【富士見中学校高等学校】
実現が目標!
富士見の探究学習

私たちの探究
高齢者との
文通「シルバーレター」
発表時のスライド
高齢者が生きがいを持てる手紙での交流を企画
Sさん:ねりま探究では、最初に高齢者と介護者の相談場所や交流場所について調べ、それに対して自分たちでどのようにアクションを起こせるかを考えました。練馬区のホームページに「生きがいに対する対策にもっと力を入れてほしい」という内容が多く上がっていたため、私たちは高齢者の生きがいが作れる企画を立てたいと考え、高齢者と富士見で文通する「シルバーレター」を企画しました。実際に、富士見台特別養護老人ホームの方たちと2ヵ月に1回のペースで文通を行っています。
「シルバーレター」を考えた理由は、コロナ禍で高齢者に直接会うのが難しい状況がありますが、せめてやりとりができればと思いました。また以前、NPO法人の方にお話をうかがったときに、高齢者は毎日ポストを確認する方が多いと聞き、手紙が届いたら喜ばれるのではないかと考えたのです。高齢者施設に交渉して意図をご理解いただき、手紙のやり取りをするに至りました。
ねりま探究を通しての気づき・学習
刺激があっておもしろい協同作業
Sさん:探究は自分たちで企画を立ち上げ、正解がないものを1から作る初めての体験でした。わからないことが多く、発表前に来てくださった区役所の方に相談させていただき、先生やクラスの友達にも企画内容を話して、いろいろ助けてもらいました。結果、1人ではできない企画も、手紙をやりとりするまでに至りました。個人の学びも大切ですが、周りの人と助け合い、意見を取り入れながら作ることも楽しいです。探究活動が苦手な人もいると思いますが、一緒の班になった人と1から作るのはやりがいもあります。難しく、大変であっても、一緒に頑張ることで必ず発見があります。
Nさん:校内向けの企画書と高齢者施設に向けての企画書を作りましたが、相手によって表現を変える必要性に進める中で気づかされました。高齢者施設への電話での交渉時の話し方も細かく書きおこして、先生や友達に練習をお願いして、どのようなケースでも焦らないように準備しました。
探究活動では数人のアイデアを集めて実現するという初めての経験ができました。意見交換によってより良いものになったので、協同作業はとても刺激があっておもしろいものだと思います。
高齢者/練馬に対して見えたこと
やれることを少しずつでも見つけて実行したい
Sさん:高齢者施設というと老人ホームなどが思い浮かびますが、健康な高齢者がお話をするための場や介護者がコミュニケーションを取る場所もたくさんあることを知りました。また、世の中にはいろいろな活動をされている方がいることを知りました。交流の場もたくさんありますから、学外でもそうした活動に参加してみたいです。
Nさん:今回、練馬の高齢者の困っていることや要望のデータを見る機会があり、多くのことが知れたので、これからも「シルバーレター」のようにやれることを少しずつでも見つけて実行していきたいです。
探究学習のおもしろさ
興味を持ったことを自由に調べられる探究学習
Sさん:自分の知りたいことや疑問に思ったこと、興味を持ったことを自由に調べられるのが探究学習の良さだと思います。探究といわれると「何をすればいいのだろう?」となりますが、自分に身近なところと結びつけられる楽しさがあります。中3では、自分が好きな理科分野のテーマで調べたいと思っています。
Nさん:探究学習では調べ方が大切だと思いました。インターネットにも情報はたくさんありますが、本で調べ、人に話を聞くことでしかわからないこともあります。そこがおもしろさだったので、今後の探究学習でも活かしたいです。
富士見の“17の力”の
軸となる探究学習
教育研究部 中村誠先生
探究授業と各教科授業で学ぶ「探究」の面白さ
富士見の探究学習は個性あふれるものが多いと感じます。
中村先生:探究プログラムは富士見の教員で常にその内容を吟味しながら、独自のものをつくっています。学年ごとに異なるプログラムを用意していますが、いずれもその年や生徒の状況に合わせて修正、アップグレードしています。
また、探究の授業だけでなく、各教科の授業においても探究的な学びを意識して行う授業が多いように思います。私は理科の生物を担当してますが、中1ではカイワレ大根を育てる条件を自分たちで設定し、栽培・観察します。例えば太陽の光で育てる鉢と蛍光灯の光で育てる鉢に条件を分け、その成長の様子のデータを記録します。その後、情報の授業と協力してグラフやプレゼンテーション用の資料にまとめ、実験や観察からわかったことも自分の言葉で説明します。その際に、探究の授業でならった問いだしの方法でテーマを考えたり、他の生徒と自分の取り組みついて共有、意見交換をしたりする時間もあります。そして、最後はクラス全員の前で発表します。中2になった2021年度は、その経験の一歩先をやってみようと、同じように探究的な手法を取り入れながら環境問題の動画制作にも取り組んでいます。
探究の授業以外でも探究力をつけていくわけですね。
中村先生:富士見が掲げている17の力は、探究の授業の中だけで育むものではなく、富士見の教育全体を通して育てていくものです。複数の教科で連携しながらスキルを磨き、そのスキルを探究に活かしています。反対に探究でできるようになったことが、先ほどお話しした例のように教科でも活きています。
中2生物の環境問題についての動画作成では、生物の外来種の問題や地球温暖化問題といったいくつかのテーマから自分で選択し、一人一人が内容から自分で調べて考え、スライドを作り、音声を吹き込んで動画編集まで行います。ですから、発表や表現のための経験やスキルを広くもっており、中2のねりま探究の発表でも我々が驚くような発表を見せてくれました。
作る楽しさだけでなく、実現のための方法や伝え方までが探究なのだなとよくわかる内容でした。
中村先生:しかし同時に、そこはまだ次の課題でもあると思っています。今、富士見の中学生は、1年生で問いを出しやすいようモノをテーマにした「モノ探究」、2年生で少し視野を広げて社会への課題にグループで取り組む「ねりま探究」、3年生でテーマ設定から発表まで個人で取り組む「my探究」に取り組みます。生徒は1年生からの探究学習で調べるスキルが身についているので、情報収集やまとめはできますが、中には自分の主張から導いた結論に筋が通っていないものや、調べ学習で終わっているものもあります。スライドや動画などの資料を見やすく作ることは大事ですが、中身はそれ以上に重要です。そのため、今年の中3の個人探究では、「お互いに助言をもらいながらも、自分の考えや意見を深めていこう」と声掛けをしていますし、それができるようになれば生徒の探究もより深まると思っています。
先の学年の経験から探究方法を受け継ぐ
ねりま探究が始まったきっかけは?
中村先生:かつては上野・浅草をフィールドに探究していましたが、学校のある練馬区をフィールドにする方が、現地に行きやすいので、もっと探究が深まるのではと考えました。「ねりま探究」はまだ2年目の取り組みで、2021年度から練馬区協働推進課の協力を得て、プログラムを新しくしました。「高齢者」「環境・みどり」「防災」「子育て」の4テーマを切り口に「住み続けるまちづくりとは?」をグループで探究します。
シルバーレターのような企画が実現にまで至るのは素晴らしいです。先生方はどういう形でかかわられるのですか。
中村先生:教員は基本的に見守る姿勢でいます。中2に限らず「こういう企画をやりたいです」という話が、他にもたくさんあがるのが富士見生の良さです。注意事項などは事前に伝えますが、「こういうことをやりなさい」というような教員からのはたらきかけはしません。生徒たちの中から出てきたアイデアを実現するために相談を受けることはありますが、自分たちで企画し、自分たちで行動にうつす、その経験を大切にしています。今回、生徒がシルバーレターのように実際にアクションに移せたことは嬉しく、そのようなアクションを今後もいかに展開していくかが課題であると思います。
今年の経験を次年度の探究学習に活かしていくわけですね。
中村先生:そうです。例えば、中3のmy探究では1年先の先輩の「感情グラフ」(*)を次の代の生徒が見る時間があります。「感情グラフ」は1年間の探究学習を通して自分の気持ちがどう動いたかを正と負のグラフで表現します。どの時期に悩み、またどの時期で達成感を感じたのかが視覚的にわかります。生徒の中には「何のために探究をやるのか」という、意義を見つけるのに時間がかかる生徒もいます。教員が「探究を通してこういう力が身につく」と繰り返し話すよりも、1年先を行く先輩の「調べてみるとおもしろい」「こんなことがわかって自分の成長につながった」という言葉を見つけたときの方が、「自分も頑張ってみよう」という前向きな気持ちになれることも少なくありません。そうした生徒たちの経験を引き継ぐ仕組みも、いままでの取り組みの結果、できてくるものであると感じています。
*感情グラフ
周りの人と協働しながら課題解決に進んでいける人に
富士見の探究学習において大切にされていることとは?
中村先生:生徒が進む方向を決める活動なので、何をすればよいかわからなくなる生徒もいます。同じく教員も、「これをこう教えればいい」といったものがないので日々頭を悩ませながら工夫を重ねています。一筋縄では行かない難しさもありますが、困っている生徒には正解ではなく、「こういう考え方もひとつの手かもしれない」と次のステップに進むためのヒントを投げかけられるように心がけています。今後、あらゆる探究的なプログラムを作成、継続する際にも、生徒が自分たちで試行錯誤しながら、自分なりの答えを導き出せるようなしかけを考えながら、プログラムを更新し続けることが大事だと考えます。
探究教育も富士見の目指す17の力を身につけるための1つの活動とのことですが、富士見ではどういう生徒を育てたいとお考えですか。
中村先生:富士見の教育目標は「社会に貢献できる自立した女性を育てること」で、どのような環境に置かれてもまず自分にできることは何かを考えて自ら動ける人、周りの人と課題を共有しながら解決に向かって進んでいける人になってほしいと思っています。そのためにも、グループワークや課題解決のために考える機会を探究や教科授業の中に多く設定していきたいと思っています。
今後、探究教育において挑戦されたいことは?
中村先生:ここ数年で学校全体に探究的な学びが一気に浸透したことにより、多くの教科や授業で、生徒主体で学ばせている様子が目立ちます。その上で、今後は生徒が自らアクションを起こしていけるような機会を増やしていきたいと考えています。ぜひ、今後も富士見の探究的な学びの進化を見ていただければ嬉しいです。
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