雲雀丘学園中学校高等学校は、年に1回環境問題への成果を発表する「環境フォーラム」の開催や、校庭の芝生化など、独自の取り組みで注目を集めてきた。一方で「最先端科学実験教室」や「サイエンスキャンプ」など、生徒の好奇心を刺激するさまざまキャリア教育プログラムも充実している。今回は、「最先端科学実験教室」に参加し、その後「生物学オリンピック」で敢闘賞を受賞した生徒に取材を行った。
「全力で好きなことをやってもいいんだ」と思えた3日間
- 池田さんが参加した「生物学オリンピック」について詳しく教えてもらえますか?
- 池田さん
- 生物学オリンピックは高校生を対象として、生物学に関する知識を競う全国規模のコンテストです。予選、本選へと進み、本選の上位15名の中から最終的に4名が日本代表として「国際生物学オリンピック」へと出場します。今回私は、筑波で行われた本選へ参加させていただきました。
- 予選参加者が3600人ほどいたとお聞きしました。本選には何名進まれたんですか?
- 池田さん
- 上位80名が本選へと進みました。
- 80名!狭き門ですね!
- 池田さん
- 予選はマークテストのみですが、本選は3泊4日のスケジュールで行われます。実験を交えたテストをし、上位者が決定する、という流れでした。
- 当日の試験内容を詳しく教えていただけますか?
- 池田さん
- 1日2回、2日で計4つの試験が出題されます。記述式ではなく、筑波大学の研究室で実際に使われている器具を用いて実験を行い、検証結果を元に正解を導き出すという試験です。
- どのような問題が出題されたのですか?
- 池田さん
- 1日目の試験では「カイコの摂食と成長との関係」を述べる実験を行いました。カイコを解剖し、ホルモンを分泌する器官である「アラタ体」を取り出して検証する、といった実験内容です。
- …難しそうですね。みなさん一斉に実験をはじめるんですか?
- 池田さん
- はじめに使用器具に関しての説明があり、その後各自で実験を行います。試験時間は120分間で、時間内に実験結果から解答を導き出します。
- なるほど。そのような試験が1日2回行われるんですね。参加者同士で交流もあるんですか?
- 池田さん
- 参加者全員が筑波大学の外国人宿舎に宿泊するので、食事中には各自好きな分野に関して語り合い、とても盛り上がりました。また、昼休みはロビーに集まって、他の学校の生徒と生物学に関するコアな話などをしていました。
- みなさん詳しそうですね!
- 池田さん
- 私は古生物が好きなので、古生物中心の話題を。他には海洋生物に詳しい人もいて、とても刺激的でした。
- とても濃い時間を過ごされたんですね。大会開催中、その中でも一番印象的だった出来事はありますか?
- 池田さん
- 試験とは直接関わりのないことですが…(笑)。
- はい。
- 池田さん
- 試験が終わってから、参加者全員で筑波にある博物館に行ったんです。
- ええ。
- 池田さん
- そこで、突然道端にバッタが飛び出してきて…普通だったら驚く反応をすると思うんですが、「これは〇〇バッタの一種だろうか」など、昆虫好きのメンバーが集まってきてバッタに関する分析をはじめたんです。
- さすがですね(笑)。でも、そのような反応をするメンバーが多いと、気持ちが楽だったのではないですか?
- 池田さん
- 個性は大事にしてもいいのかな、と思いました。好きなことは表に出してやっていかなきゃいけない、全力で好きなことをやってもいいんだ、と。私が好きな古生物の分野に関して、話ができる人がいたのも大きかったと思います。食事中も、本当に「生物学」に関するコアな話題が飛び交っているような環境だったので。
「どこまでいけるか、自分の実力を試してみたい」
- 生物学に興味を持ったのは何がきっかけだったのでしょうか?
- 池田さん
- 最初に買ってもらった図鑑が「恐竜図鑑」だったんです。それをきっかけに恐竜に興味を持って、それから生物の授業も段々と好きになっていきました。
- 「生物学オリンピック」は今回が初参加とのことですが、存在は知っていたのですか?
- 池田さん
- 入学した当時から存在自体は知っていました。いつか参加したいと思っていて、先生からも勧められていました。高校3年生になり、「どこまでできるか、自分の実力を試してみたい」という気持ちが高まり、今回はじめて参加させていただきました。
- 参加するにあたって、準備などはされたのでしょうか?
- 池田さん
- 「生物学オリンピック」に関しては、試験に合わせて準備をするというよりも、もともと持っていた知識で挑んだ、というイメージの方が強いかもしれません。もちろん大会前には集中して知識を再確認しましたが、普段先生と交わしていた雑談も当日は役にたちました。
- 受験勉強との両立は大変ではなかったのでしょうか?
- 池田さん
- 私は受験勉強の時間とそれ以外、というイメージできっちり分けて時間を確保しています。
- なるほど。
- 池田さん
- 大体9時頃に寝て、朝4時に起きて受験勉強をしています。生物学に関する勉強は、勉強しているという意識があまりないので、正確な一日の時間は言えないのですが…。
- 科学部に所属しているとお聞きしましたが、主にどのような活動を?
- 池田さん
- 骨格標本をつくったり、飛行機模型をつくったり…あとはピッチングマシーンも一時期つくっていました。
- ピッチングマシーンもですか!幅広い活動をされているんですね。
- 池田さん
- はい。科学部といっても物理系の実験も多いので、幅広いことを経験させてもらいました。