【京都橘中学校】
中学校開校10年 その歩みと今後の展開

2020年4月、京都橘中学校は難関国公立大学を目指す中高一貫(V)コースの開校から10年の節目を迎えます。今年、中学主任となった大野先生は、その新たな門出の2年目に同校に着任。以来、歴史と伝統の礎を築くべく全校で一丸となって、授業に、多彩な行事に、さまざまな活動に全力投球で臨んできました。10年を経て、送り出してきた生徒たちは進路などで着実な成果を見せ始めています。このひとつの区切りを大野先生に振り返っていただき、今後の展望をお聞きしました。

― 大野先生が着任されたのは中学校開校から2年目だそうですね。

大野先生 はい。1学年と2学年を合わせても教室が2学年しか埋まっていない状態でした。そんな中で、1期生は先輩を知らずに育つわけです。高校は100年以上の歴史がありますから、中・高では“伝統”がかけ離れています。ですので「君たちが歩いた道が伝統になるんだよ」と、行事をはじめ、事あるごとに話すようにしてきました。

― 自分たちの足跡がそのまま伝統につながるというのは、責任重大ですね。

大野先生 本校には2学年合同の学習合宿というのがあるのですが、行く前に「下級生はあなたたちの真似をするから、頼むわね」とお願いするんです。すると、上級生は声を掛けなくても5分前には集合しているし、お風呂の時も、ちょっと空いた時間を使って勉強をしています。「さすがね」と褒めたら、また頑張る(笑)。自分たちも先輩の姿を見てきたから、プライドがあるんですね。自分たちがパイオニアになるんだと、それを作っていくんだという意識を身につけてくれたかなと思っています。

― 他にも特に心がけてこられたことはありますか。

大野先生 私自身が心がけてきたことは、“挨拶”です。この10年、私から生徒たちに挨拶することをずっと続けています。パッと挨拶できる学校というのは気持ちよくて、すごく魅力的だと思うんです。

― みなさん、きちんと立ち止まって挨拶してくれるので驚きました。あの礼儀正しさは、先生自らが率先されているからこその成果なんですね。

大野先生 私、1年間の締めくくりには「本当に楽しく授業させてもらって嬉しかった、みんなありがとう」と生徒に頭を下げるんです。最初はぽかんとしていても、全員がニッコリ笑ってくれます。たとえ教員でも生徒が何かしてくれたらお礼を言う、それに謝ることのできる姿勢も必要です。生徒が失敗した時には、「なぜそうなったのか」と向き合うようにしていますね。

大野先生はいつも笑顔いっぱい

― 叱るわけではなく、話し合うということですか。

大野先生 柔軟性という面では中学生の時の発達が一番大きい、なんでも素直に受け止められます。こういう時期に「ダメ」「あかん」といった単語で会話を終えるのではなく、言葉のシャワーを浴びさせることが大事なんです。社会に出て働いた時、いくら個人のスキルが秀でていてもコミュニケーションやチームワークがとれなかったら、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できませんよね。豊富な語彙によるアウトプット力。それから人と人との付き合い方。先輩や目上の人への態度、言葉使い。そういうものを中学のうちにしっかり身につけてほしいと思っています。

― 力を入れてきた活動や中学校独自の試みなどはありますか。

大野先生 代議員活動ですね。特に印象に残っているのが、学年委員担当になった3年前のドッジボール大会。初めて代議員による生徒主導で開催しようということになって、生徒たちには枠組みを与え、「あとはよろしくね」と(笑)。でも、気づいたら3年生を中心に会議を進めていて、運動の得意な生徒だけがボールを独占することなく全員が楽しめるような「文科系・体育会系別」の試合形式にしたり、教員チームと生徒チームの対戦を企画したり、とても盛り上がりました。

体育館が大歓声に包まれたドッジボール大会

― 生徒目線ならではの企画ですね。代議員はどのように選ばれるのでしょうか。

大野先生 各クラス2人ずつ、合計12人で、任期は前期と後期に分かれます。基本的には推薦も必要なので、希望すればなれるというわけではないのですが、一度経験すると「来年もやりたい」という感想が多く聞かれますね。

― 同学年だけでなく、タテのつながりの中で積む経験は貴重ですね。

大野先生 代議員の先輩たちは文武両道で、下級生たちの憧れの存在なんです。高校に上がってからも交流があって、私たちも「先輩たち、高校でもとても頑張っているわよ」と話しますから、「ああなりたい」「一歩でも近づきたい」という気持ちがあるんでしょう。遠い存在ではなく、すぐそばの憧れ。モデルがあると、自分の中にいろんなことが取り入れられますよね。

― 刺激を受ける先輩の存在は、何よりも大きな成長につながるんですね。

大野先生 本当に。だからこそVコースとしてはじめて高校生になった1期生は大変だったと思います。当初、高校はA・B(現E)・Sコースのみだったので、「Vコースって何?」という感じだったでしょうから。でも、その1期生から生徒会長が出て、3期生も4期生も続いてくれたんです。高1で行われる合唱コンクールでは、Vコースは1クラスの人数が少ない中で、5期生が初めて優秀賞(2位)を取りました。

― あらゆる方向に全力投球だったんですね。後輩たちが憧れるはずです。

大野先生 受賞後「先生、Vコースで初めて賞を取ったよ」と5期生が泣きながら来てくれた時は、私も滂沱の涙です(笑)。中学の教員みんなが拍手ですよ。高校の担任に「中学の先生を感動させよう」とはっぱをかけられて頑張ったんだと聞きました。

合唱コンクールで練習の成果を発揮

― 先生方との信頼関係、自分たちをちゃんと見ていてくれていると実感できる環境も頑張れる理由なんでしょうね。

大野先生 今年、中学主任になって、先生方に「どうして教師になったのですか」と問いかけました。答えは要求していないんですよ。自分の中で振り返ってもらうだけでいいんです。人には必ずいいところがある。これができないからダメというのではなく、一人ひとりのいいところをちゃんと見つけることができるか。褒めたり、伸ばしたりできるか。そういう部分が教師の心の中にあれば生徒はついてきてくれるかな、と。もちろん授業のスキルも大事ですけどね。

― 中学主任になられて、新たな取り組みなどを考えていらっしゃいますか。

大野先生 逆に増やすのは止めようと考えています。これで手一杯ですね。いろいろなことに手を広げると、クラッシュしていかなければならなくなります。消すという作業は、生徒たちへの印象としてマイナスなんですね。ですから、新たな試みを増やすのではなく、それぞれの質を高めていきたい。これまでの方向性は間違っていなかったはずですから。

― 先生方も手探りの部分はあったのではと思うのですが。

大野先生 右を向いたり左を向いたり、少しずつ調整しながらの歩みでした。何事にも先生方全員で協力し合い、対応してきたからこそ、やってこられたんだと思います。進路指導も生徒指導も、3学年全部を見渡しています。ですから、生徒たちも3学年の先生全員をよく知っていますよ。そういう環境も少人数だからできます。

― 京都橘中学校の歴史、伝統が着実に育っていると実感されているのではないですか。

大野先生 まだたった10年ですから、「京都橘中学校とはどんな学校か」を十分にお伝えしきれていないことは痛切に感じています。それでも、高校の卒業式で保護者の方々がわざわざ「中学校ではお世話になりました」とご挨拶に来てくださると、とても励みになりますね。

― 今後10年は何を目指されるのでしょうか。

大野先生 主任として掲げているのは「輝く」ということですね。1年生の大目標は「明るく元気に」で、副題は「基礎を固める」。2年生は「明るく豊かに」で、「経験を積む」。3年生は「明るく輝いて」で、「発揮する」。このローテーションをうまく回していったら、京都橘中学校はこれからもっともっと輝いていけると考えています。

 

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