【帝塚山学院泉ヶ丘中学校】
ココロの学校2019「あきらめない心」

ココロの学校2019「あきらめない心」 私学イベントレポート 帝塚山学院泉ヶ丘中学校
帝塚山学院泉ヶ丘中学校・高等学校で行われている「ココロの学校」。2019年度2回目は、日本初の義手の看護師で、北京・ロンドンパラリンピック競泳の日本代表選手として活躍された伊藤真波さんを迎えて、開催されました。生徒たちの心に栄養を与える大切な場になっている「ココロの学校」で、生徒たちは何を感じたのでしょうか。講演の様子と、講演後の生徒たちの声を紹介します。

伊藤真波さん

Profile

看護学校に通っていた20歳のときバイク事故に遭い右腕を失う。その後、幼少期からの夢をあきらめず日本初の義手の看護師に。さらにリハビリで始めた水泳では、2008年北京・2012年ロンドンパラリンピック競泳の日本代表となり入賞を果たす。現在は2人の子どもを育てながら日本全国で公演活動。義手でのバイオリン演奏を披露するなど、多くの人に“あきらめない心”を届けている。

周りに感謝しながらあきらめずに前を向く
ココロに栄養を与えるココロの学校

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2019年度2回目の「ココロの学校」は、中学1年生から高校2年生までの生徒とPTAの保護者に向けて、伊藤真波さんによる「あきらめない心」の講演が行われました。まずは、江口校長があいさつ。「ココロの学校」には学校教育で大切にしている心技体のうち、実社会で活躍する際に最も必要となる「ココロに栄養を与える」という意図があること。今日の講演会は耳ではなくココロで聴いて、何らかの気づきや発見をしてほしいという思いが伝えられます。

その後、壇上に伊藤さんが笑顔で登場。わかってはいたものの伊藤さんの片腕の姿に、客席が一瞬息を呑むのがわかります。しかし、伊藤さんは「みなさん、おはようございます! 私のこの姿見えますでしょうか?ビックリしませんでしたか?」と、元気に話し始めました。

「今日は難しい話は何一つしません。みんなが明日から、少しでも頑張ろうと思ってくれたらと思いますので、安心してください」と、まずは映像で伊藤さんの生活を見せてくれます。片腕でどうやって運転しているのか、どうやって泳いでいるのか、どうやって子育てをしているのか。映像を見ることで伊藤さんの簡単にはいかない、けれど前向きに頑張られている毎日がよくわかりました。

そして、子どもの頃の思い出や反抗期だった中学時代、恩師と出会い15歳で看護師になろうと決めたこと。20歳のときにバイク事故に遭い片腕切断。現実を受け入れられなかった辛さ。家族との葛藤。義手をつけてからの周囲の反応。それでも看護師という夢をあきらめなかったこと。子どもの頃にやっていた水泳に挑戦して、パラリンピックを目指したことなどを、当時の率直な想いと共に伝えてくれます。

なぜ逃げずに前を向けるのか、なぜそんな強さを持てるのかと思ってしまう辛く哀しい出来事を、「支えてくれる人がいるから頑張れた」「親孝行をしたい」「子どもたちに言い訳をしたくない。お母さんとして頑張りたい」と、明るく話してくれる伊藤さん。最後には義手でバイオリンを演奏。場内に響く柔らかな音色に優しい気持ちになりましたが、この音を出すために伊藤さんがどれだけの努力をされたかを知ったからこそ、“あきらめない心”のこもった特別な音として全員のココロに届きました。

CROSS TALK

講演後、生徒会の高2生2名と江口校長が伊藤さんの控室を訪問。
今日の素直な感想や質問をしながら4人で話をしてもらいました。

当たり前に過ごせる素晴らしさを知った

砂野くん(高校2年・生徒会執行委員)
講演を聞かせていただいて、今の自分の生活が当たり前じゃないと自覚して生きていこうと思いました。最後のバイオリンも素晴らしかったです。

横山さん(高校2年・生徒会会長)
お母さんとして子どもたちを育てられている姿を拝見して、とても大変だけどやりがいをもって生きていらっしゃることがわかり、とてもかっこいいなと思いました。当たり前に過ごせることが、どれだけ素晴らしいものなのかを感じさせていただきました。

伊藤さん
私も舞台から見た生徒さんたちの目がキラキラしていて、吸い込まれるかのようでした。上手に聞いてくれたので、しゃべりすぎてしまいました(笑)。

江口校長
そもそもこの講演のきっかけは、2019年の1月に東京でのセミナーに私が参加し、そこで伊藤さんの講演を聴いたことです。早朝でしたが、涙腺が崩壊しました。壮絶な過去を思えば思うほど、その明るさやエネルギー・原動力に、僕は打ちのめされたんです。
生徒たちも今、当たり前なんてないんだと知り、感謝の気持ちが出てきたと思います。僕も「『ありがとう』の反対語は『当たり前』なんだよ。当たり前と思っているからありがとうという言葉が出ないんだよ」といつも言っているんです。人生においてそういうことに気づくことがとても大事だと思っていて、それを生徒たちに伝えたいんです。心からの「ありがとう」があふれる学校にするためにも、伊藤さんのお話が本当にぴったりだなと思って講演をお願いしました。

苦しい時でも夢を追いかける
心の強さに感動

砂野くん
僕は、片腕をなくされたあとに夢だった看護師の仕事をしようと思われた心の強さに感動しました。自分も、苦しい時にそうなれるよう頑張りたいです。それに伊藤さんは、お話しがとても上手で引き込まれたのですが、うまく伝える方法が何かあるのですか。

伊藤さん
常に相手は何を聞きたいんだろう、どんなことを知りたいんだろうと考えています。そして、淡々と話すよりは「あの時はこういう思いだった」という感情を素直に込めてぶつけないと伝わらないと思うので、感情は込めますね。だから1時間半ぐらい話すと、ぐったりしますよ(笑)。

横山さん
私は、電車に乗っている時に席を譲ってほしいけれど強がってしまうとか、人にすぐに助けを求められないと言われていたことにはっとさせられました。自分も席を譲った方がいいのかなと思いながらなかなか言い出せません。でも、助けを必要としている人にはこちらの一言がすごく大きいと気づかされ、これからは自分から声を掛けられるようになりたいと思いました。気になったのは、ご両親といろいろケンカをしながらも、たくさん支えられたというお話でしたが、今、ご両親はどう思っていらっしゃるのですか。

伊藤さん
今では笑い話になりました。ただ、今でもあの時のことを私も「ごめんなさい」と言えないし、両親も事故の話をしません。「治療の時どうだった?」なんて話も一切しないけれど、私も両親も絶対に忘れられない出来事です。今は離れて暮らしていますが、笑って生活できるように親孝行したいと思っています。

横山さん
パラリンピックに出場したときも「親孝行が1つできた」と言われていましたよね。親孝行とは言え、そのやる気と努力がすごいなと思います。

伊藤さん
事故のあと、病院のベッドの上で私が寝ていると、両親の足音が聞こえてきて、おそらく入る前に笑顔を作っているんですよ。それから「おはよう」と入ってくる。あのときの両親の顔がいまだに忘れられないんです。「また明日ね」という顔も、その後はきっと泣いているんです。両親の気持ちを考えると、二度とあんな思いはさせたくないと思いましたし、両親には心から笑えるようになってほしかった。その思いで頑張れました。家族は絶対的な存在ですね。

支えてくれる人がいれば
弱い自分をさらけ出していい

伊藤さん
私もやんちゃした学生だったので偉そうなことは言えないのですが、中高生のときはとにかく格好をつけて弱い心を固めるしかなかったんです。それが今、弱いところをさらけ出せるようになったのは、仲間がいて、支えてくれる家族がいることに気づけたからです。弱い自分でいいんだなと思うことができました。結局は、今日も校長先生がおっしゃった「心の栄養」というものが大切だったんです。試験も大切ですが、人には「心の栄養」が何より大切。格好をつけなくてもいい自分になるためにはどうすればいいかを、もがいて探してほしいなと思います。

江口校長
ほんとうに、すべてがそこですよね。やっぱりハートの部分です。相手を思いやる気持ちや誰かに支えられていることへの感謝は、苦労や経験をしないと見えてこないのも事実ですが、そこに気づいて生きていってほしいと思います。特にこれから社会でリーダーになっていく生徒もたくさんいると思いますから、やっぱり心を大切にしてほしい。そこは僕が校長をしていて、生徒たちに伝えたい唯一のことです。そうしないと日本はよくならないと思っています。

砂野くん
校長先生が毎回おっしゃるように、テストの点数だけではないと思いますが、家に帰ったら点数のことももちろん言われます(笑)。けれど、テストも重要だけど、周りの友達との人間関係や心の部分は自分次第なので、しっかり考えて生きていこうと思います。

横山さん
私は友達に進められて生徒会役員を今年初めてやっているのですが、いろいろな問題があった時に誰にどう言って相談したらいいのかわからず自分1人で抱え込んでしまったんです。そのとき、いち早く気づいてくださった先生がいて、親身になって話を聞いてくださいました。砂野くんや周りの人からも温かい言葉をかけてもらって本当に助かり、そのことを今日のお話を聞いて思い出しました。私も周りの人に気遣いができるような大人になりたいと思います。

江口校長
学校は「心技体」の「心」をしっかりとクローズアップして、そこを育てていくということをやらなくてはいけないと思っています。だからこそのイベントが「ココロの学校」です。本を読んだり映画を見たりも良いのですが、人との出会いの中で気づくことや学びは必ずあるので、伊藤さんと出会ったことをひとつのきっかけにして、またいろいろ勉強してほしいと思います。
人との関わり、人とのつながりの中で人は育てられています。人と関わろうと思ったら、関わってもらわなければいけない。そのためには自分が関わってもらえるような人間にならなければいけません。いくら勉強ができても人との関わりをシャットアウトしてしまうと、その人の成長はなくなってしまいます。人は絶対に1人では生きていけない。人との関わり、支えられ、それに対して感謝をしていく。生徒たちには、時間がかかったとしてもそれに気づいてほしいですね。

 

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