先生に聞こう 神戸龍谷中学校・高等学校 髙橋佳子先生

髙橋 佳子先生 Profile
大学卒業後、商社勤務を経て英語教師に。神戸と大阪の私立・公立中学校および高等学校に勤務した後、2012年に神戸龍谷中学校高等学校に赴任。英語の面白さを生徒に伝えるため、さまざまなアイデアを考案する毎日。英進グローバルコース3年生担任。教師歴13年。
Chapter1

生徒の生き生きした反応がやりがいにつながる

髙橋先生
ココロコミュ
先生になろうと思ったきっかけを教えてください。
髙橋先生
教師を志望したのは大学4年生とかなり遅めでした。大学卒業後は会社に勤めるつもりで就職活動をしたのですが、女性が一般企業で力を発揮することにリミットがあるのではないかと感じるようになったんです。そこで自分の力を発揮できる場所はないかと模索していたとき、「私が頑張れる場所は教育の世界にあるのでは?」と思い、教師を目指すことにしました。
ココロコミュ
働きながら教員を目指されたのですね。
髙橋先生
はい。幼い頃に見た絵本がきっかけで英語を好きになってから、ずっと英語を使う仕事をしたいと思っていました。そこで英語を活用できる企業にいったん就職したのですが、その後、会社を辞めて教員になりました。
ココロコミュ
企業勤務から先生になって、どう思われましたか。
髙橋先生
企業での仕事は面白かったのですが、私のポジションはルーティンワークが多く、自分で工夫してトライする業務はほぼありませんでした。それに対して教師の仕事は生徒から大きな反応があることが嬉しいし、そこからさらに「これは生徒のためになるのでは」「次はこうしてみよう」とさまざまなチャレンジができるので、非常にやりがいがあります。現在は担任をもっているので、生徒と密に関われる醍醐味と同時に、ときに厳しく指導しなければいけないなど大変な部分もあります。生徒が何を求めているのか、どう伸ばしてあげられるのか、そういったことを常に考えていますね。
ココロコミュ
社会人としての経験は、教師の仕事にどんな影響を与えていますか。
髙橋先生
英語を使う仕事を通して、生徒に「使える英語」を教えたいという思いが強くなりましたね。使える英語とは、コミュニケーションやビジネスに役立ち、重要なツールになる英語です。学校ではどうやったら試験で高得点を取れるかが重視されがちですが、英語ができることは1つの通過点に過ぎないと思います。そこからもっと先に進んで、英語を使える人になるにはどうしたらいいかを生徒に伝えていきたいです。
Chapter2

英語嫌いな子も聞きたくなる面白い授業を

髙橋先生
ココロコミュ
英語の授業で、特に心がけていることはありますか。
髙橋先生
生徒が思わず食いつきたくなるような面白さを盛り込むことです。例えば文法で関係代名詞を教えるときは、「関係代名詞は2つの文章をつなげる接着剤みたいなもの。今から先生がこの2文をくっつけます」と説明します。そうすると生徒が「接着剤って何?」と興味を持ってくれます。その興味をそらさないよう、「この接着剤には種類があって、その種類は先行詞というもので決まってね」と話を続けていくんです。 クラスの特性に合わせて説明を変えることもあります。例えば理系クラスの生徒に文型を教えるときは、「この英文を数学っぽく解いてみましょう。数学が得意な人は特に注目!今からSVOCを公式と考えて、先生がこの文を解いていきます」という言い方をします。生徒にしてみたら「英語なのにどうして数学用語が出てくるの?」と不思議ですよね。そんな風に「なんだか面白そう!」と思ってもらうことが狙いなんです。
ココロコミュ
確かに面白そうですね!
髙橋先生
生徒の「面白がり度」が高いときは、本当に嬉しくなりますね。生徒が興味をもって参加できる授業づくりを意識しているので、それを実現するにはどんなやり方がいいか、いつもいろいろ考えています。いいアイデアを思いついたときは、たまたま近くにいた生徒に「今から英語の○○について説明するから聞いてくれる?」と頼むことも。それで生徒が「わかった!」と言ってくれたときに、すごい手応えを感じます。
ココロコミュ
授業ではどんな取り組みをされているのか、具体例をお願いします。
髙橋先生
先日オバマ大統領が広島を訪問したすぐ後で、ちょうど授業で使っている教科書の中に広島の原爆について学ぶページがあったんです。これはきっと生徒が興味をもつだろうと思い、オバマ大統領の広島でのスピーチを授業で取り上げることにしました。全文を授業の時間内に読むのは難しかったので、そのときに勉強していた現在完了形を含む文章のかたまりをいくつかピックアップしました。それを読んだ後で生徒を数名ずつの班に分け、班ごとにスピーチに対する感想をまとめてもらい、それらを私がパソコンで入力して教室に貼り出しました。
ココロコミュ
各自の意見を伝え合うということですね。
髙橋先生
はい。まず同じ班の生徒同士が意見を伝え合い、それから班ごとの感想を読むことで、「みんな、こんなことを考えているんだな」という意見のやり取りができます。また私が生徒たちにコメントを返すと、そこにもやり取りが生まれます。そうやって能動的に参加できる授業を通して、生徒たちに英語を学ぶ面白さを知ってもらいたいと思います。
ココロコミュ
今後、授業で新たに取り組みたいことはありますか。
髙橋先生
生徒に、自分の意見を英語で表現する面白さを体験してもらうことです。以前、アンケートを取って集計結果を英語で発表する授業をしたことがあります。アンケート項目の作成から集計まで、すべて生徒たちにやってもらいました。そのとき、多くの生徒が円グラフを作って発表したのですが、数学の得意な生徒がとても正確にグラフを作っていたことに驚きました。自分の得意分野を生かして表現したんですね。そんなふうに興味があること、やりたいことを英語を使って表現する楽しさを実感できる授業を、もっとやっていきたいと思っています。
Chapter3

心の触れ合いを通して成長する生徒たち

髙橋先生
ココロコミュ
先生のお誕生日にサプライズがあったそうですね。
髙橋先生
ええ。本校にはクラス替えがなく、担任も生徒と一緒に持ち上がりになることもあり、3年目ともなるとお互いにいろいろ知っているんですね。とはいえ、私の誕生日なんて生徒はまったく覚えていないだろうと油断していました(笑)。 誕生日当日は1時間目がホームルームだったので、教室に入ろうとしたのですが、鍵がかかっていて入れないんです。もうびっくりしまして、「中で何か起こっているのでは」と心配になり、いったん職員室に戻って他の先生方にも報告しました。後で聞いたのですが、他の先生方は全員このサプライズをご存じで、私だけが知らなかったんですよ。
ココロコミュ
生徒たちと先生方で言い合わせて、内緒にしていたのですね。
髙橋先生
はい。再び様子を見に教室に戻ると入り口に生徒が立っていて、「目をつぶってください」と。それでサプライズだとわかったのですが、言われるがままに教室に入ったらクラッカーが鳴り、生徒たちが「先生おめでとう!」とお祝いしてくれました。全員のメッセージが書かれた素敵なボードもプレゼントされ、みんなで準備してくれていたんだなと思うと嬉しくて泣きそうになりました。
ココロコミュ
素敵なエピソードですね。クラスがしっかりまとまっている印象を受けます。
髙橋先生
とはいえ、心配なこともあります。多感な時期の子供たちなので、生徒同士の気持ちの行き違いからいさかいが起こることもあるんですね。そういうとき、単純に「加害者=悪、被害者=善」で白黒をつけていいのかどうか、いつも悩みます。「Aが悪い。Bは良い。謝って問題解決」で済むような簡単な話ではないと思うので。
ココロコミュ
それは、どういうことでしょうか。
髙橋先生
はっきり白黒をつけると、表面的には問題が解決したように見えますし、周囲の人たちもすっきりするかもしれません。でも当事者である生徒は、翌日からまた同じ教室で机を並べなければいけないわけです。だから私はいさかいの翌日、1週間後、1か月後、もっと先まで、当事者のことを考えた解決策が必要なのではないかと思うのです。
ココロコミュ
とても難しい問題ですが、どんな解決策があるのでしょうか。
髙橋先生
解決策といえるかどうかわかりませんが、私が心がけているのは起こった出来事について具体的に指導するのではなく、「心」について生徒と一緒に考えることです。例えば思いやりや優しさがテーマの本を生徒と一緒に読み、感想を書いてもらいます。名前の部分はふせてそれらの感想をコピーし、教室に貼り出します。そうすると、それまではわからなかったクラスメートの心の中をかいま見ることができるんですね。クラスメートの心に触れることでお互いへの理解が深まりますし、互いに勇気づけられたり癒されたりすることもあるだろうと思います。
ココロコミュ
心の触れ合いを通して、生徒たちは成長していくということですか。
髙橋先生
そうだと思います。そうやって人の心に触れる経験を繰り返すことで、優しい子が増えてきたという印象があります。
Chapter4

一貫校ならではの充実した中学生活とは

髙橋先生
ココロコミュ
生徒を指導するときに、大切にされていることは何ですか。
髙橋先生
生徒の人格を否定するような言葉は使わないようにしています。やってしまったミスについては反省を促しますが、「だからあなたはダメなのよ」という言い方は絶対にしません。それを言われてしまったら、生徒はどうしようもなくなると思うんです。 また生徒が間違っているときやよくない方向に進みそうなとき、どうやったらより良い方にいけるのか、自分で気づけるような促しを心がけています。つい私の方から「こうしたらいいよ」と言いたくなるのですが、指示するのではなく「どうしたらいいと思う?」と尋ねるようにしています。
ココロコミュ
自分自身で気づける人になってほしいということでしょうか。
髙橋先生
そうですね。この先、それぞれの生徒の人生にいろいろなことが起こると思います。辛い時期もあるかもしれませんが、そんなときこそ少しでも状況を良くするにはどうしたらいいか、自分で考えて気づける人になってほしいですね。それができたら、苦しい日があっても「この苦しさも終わる日が来る。その日に向かって、明日も頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。私はそう思える人が幸せな人だと思っているので、生徒にもそんな幸せな人になってほしいと願っています。
ココロコミュ
最後に、「ココロコミュ」読者へのメッセージをお願いします。
髙橋先生
ありきたりかもしれませんが、勉強では基礎力をつけて受験に向かってほしいということ、そして受験はゴールではなく1つの通過点だということです。 一貫校は3年間というしばりがない分、いろんな経験をする時間を長くとることができます。夏休みの間に長期のホームステイに行くこともできますし、ゆったりと時間を使って自分がやりたいことや、大きな目標に打ち込むことも可能です。中学生という貴重な時期に、受験勉強だけでなく自分の夢の実現に向かい、時間を自分のために使えるという選択肢をつかめることが一貫校の大きな魅力の1つです。ぜひ充実した中学生活を送ってほしいと思います。