関西大倉中学校
下川清一校長インタビュー

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TeacherInterview 発見!私学力 関西大倉中学校 校長 下川清一先生 校長先生からのメッセージ

110年を越える歴史を持ち、文武両道を実現する中高一貫校として知られる関西大倉中学校・高等学校。この伝統校に2016年4月から新しく就任されたのが下川清一校長です。下川校長は多くの公立高校に長年勤務し、進学実績の向上など様々な点で貢献されています。それらの経験を今後どのように学校運営に活かしていくのか、また同校のこれからについて、話をうかがいました。
Profile
下川 清一先生
関西大倉中学校 校長
研究者として民間企業に勤めた後、教職の道に進む。様々な公立高校に勤務し、豊中高等学校では校長として進学実績向上に貢献。2016年4月より関西大倉中学校・高等学校の校長に就任。豊富な経験を活かした学校運営に注目が集まっている。

教育の原点は「生徒の目線になって考えること」

ココロコミュ
Question
長く教師生活を送っておられますが、そもそも教師になろうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
下川校長
Answer
大学卒業後は民間企業に3年半勤めまして、その後に教師になりました。教師として20年ほど、教頭や校長などの管理職として14~15年ほど、いろいろな公立高校に勤務してきました。
ココロコミュ
Question
最初は企業にお勤めだったのですね。意外です。
下川校長
Answer
シリカゲルやチタンなどの複合酸化物、いわゆる材料を扱う会社でした。理系だったので、化学の研究者になりたいと思って入社したのです。まさか教師になるとは、その頃は全く思っていませんでした。
でも残念ながら会社が倒産しましてね。今後について大学の恩師に相談したら、「君は教師免許を持っているから、それを活かしてみては」ということになったのです。実は、教師として初めて勤務した公立高校が、いわゆる教育困難校だったのですよ。
ココロコミュ
Question
生徒の授業態度や学力などが原因で、教育が困難な学校が、教育困難校と呼ばれているようですね。
下川校長
Answer
下川 清一先生

そうです。理科の教師として勤務していたのですが、授業を進めるのもままならないような状況でした。そんな中、夏休みが終わって学校に行くと、教頭先生からいきなり「2年生のクラスの担任が来なくなったので、今日から下川先生が担任です」と言われましてね。急だったので本当に困りましたが、まずクラスの生徒たちについてもっと知らなければならないと思い、全員の家庭訪問をしました。生徒に「家庭訪問をするぞ!」と声をかけると、「来ないで!」と返されましたけれど(笑)。

ココロコミュ
Question
家庭訪問はいかがでしたか。
下川校長
Answer
家庭では、学校と全く違う顔を見せる子もいました。働いている親に代わって幼い兄弟の世話をする子、周りから「教育困難校に通っている」という偏見の目で見られながら通学している子。そんな姿を知って、自分が上から目線で生徒に接していたことに気づき、「情けない、自分は教師失格だ」と反省しました。
ココロコミュ
Question
「上から目線」と言いますと?
下川校長
Answer
当時の僕は、「なぜこんなこともできないのか」と生徒を上の立場から見るだけで、一人ひとりの事情や気持ちを考えてやれなかったのです。本当に大切なのは、生徒が何を感じているかを知り、生徒たちの立場になって考えることです。それが教師としての僕の原点です。
そこに気づいてから、僕の生徒たちへの接し方が変わり、生徒たちも変わっていったと思います。生徒たちを変えるためには、自分が変わっていかなければならないということを、初めて認識しました。

110年以上の歴史に培われた3つの強み

ココロコミュ
Question
関西大倉の魅力や、もっと伸ばしたい点はどこですか。
下川校長
Answer
本校の魅力は、真面目で素直な生徒が多いところです。生徒だけでなく教師もすごく真面目ですね。教師が自信とプライドをもって子供たちを育て、110年以上の歴史を刻んできた学校だと思います。
もっと力を入れていきたい点は、生徒が今よりさらにのびのびと、いろんなことを思い切ってできる環境を整えることです。そのために管理職がやるべきことがたくさんあるので、校長としてはしんどいかもしれません(笑)。言い換えると、やるべきことにどうぶつかっていくか、どう挑戦していくかという、非常に大きなやりがいがある学校です。
ココロコミュ
Question
管理職という言葉が出ましたが、教師と管理職にはどういった違いが?
下川校長
Answer
校舎

教師は、担当している授業やクラブ活動を進めていくことに、ほぼ全ての力を注ぎます。僕も経験があるのでわかりますが、生徒のためにやりたいことが多くて、授業やクラブの指導に集中したくなるのです。
一方、管理職は学校が置かれた状況を把握し、理想とする方向に進むように舵取りをする立場です。例えば何かの改善案が通らなかった場合、仕方ないと諦めるのではなく、どうすれば通るかを考えなければなりません。また保護者の方々への対応や他の学校とのコミュニケーションなども、管理職になっていっそう深く考えるようになりました。

ココロコミュ
Question
これまで、校長先生としてモットーにしてこられたことは?
下川校長
Answer
子供たちが1人で生きていける力をつけるのが、教師と管理職の役目だと思ってやってきました。学力だけでなく、もっと広い意味で1人の人間として生きる力ですね。また、さらに上のステージに進める子たちには、そのためにどういう力をつけてあげればいいかを考えることです。
ココロコミュ
Question
地域に多くの魅力的な学校があると思いますが、その中で関西大倉中学校・高等学校として打ち出していきたい強みや個性は何でしょうか。
下川校長
Answer
どこに対しても絶対に負けないと思っている強みが3つあります。1つめは、安心して自由にのびのびと学べる環境であること。2つめは、生徒が「自分はどんな人間になりたいのか」を追求できること。そして3つめは「関西大倉中学校・高等学校で学んでよかった」と思ってもらえる学校であるということです。
当たり前のようですが、その当たり前のことをきっちりやっていく姿勢が現在、問われているのではないかと思います。「当たり前」を実現するために必要なのはまず基礎学力、そして社会人としての基礎力をつけていくことなので、これからもそういった点を重視していきたいです。

下川 清一先生

ココロコミュ
Question
公立高校でのご経験を活かし、関西大倉でどんなことに取り組みたいと思われますか。
下川校長
Answer
下川 清一先生

今は世の中の動きが速く、さらに加速を続けているように思います。そんな中で多くの学校が、より進化するために様々な取り組みをされています。本校もいろいろな取り組みを考えていますが、実現には時間もかかるし、校長はもちろん教師一人ひとりがその気にならないとできません。これは、過去の経験からも言えることです。
全ての取り組みの基礎として、まずはじっくり、丁寧に子供たちに力をつけてあげることを重視したいですね。ベースである教科の勉強や、クラブをはじめとしたいろいろな活動にしっかり参加してもらうことが第一だと思います。その上で学校が楽しい、面白いから行きたいと思ってもらいたいです。

ココロコミュ
Question
例えばどんな取り組みを考えておられるのでしょうか。
下川校長
Answer
まだアイデアに過ぎないのですが、探求学習的な取り組みをしたいと思っています。本校は中学3年生の12月頃までに中学校の課程をほぼ終えるので、高校に進むまでに3ヶ月の余裕があります。その時間を活かして、少し長期にわたる、探求学習的なものをやれればいいなと考えています。
ココロコミュ
Question
探求学習とは、どのような内容を?
下川校長
Answer
受け身の勉強ではなく、自ら考え、取り組む体験をすることです。自分で考えた目標に向かって、どこまでできるのかという限界に挑戦することは、子供にとって絶対に必要な体験だと思うのですよ。
ココロコミュ
Question
なぜ、探求型の学習が必要だと思われるのですか。
下川校長
Answer
校舎

一貫教育を受けている高1の生徒たちに、「将来は何になりたいか」というアンケートを取ったことがきっかけです。回答の大半は書けていないか、まだ考えていないというものでした。「○○大学に行きたい」という子もいましたので志望理由を聞いたのですが、はっきりと答えられませんでした。勉強はしっかりやっているのですが、何のために勉強をするのかという意義や、希望する将来像など、その生徒の考えがこちらに伝わってこないのです。

ココロコミュ
Question
自分なりの意義や希望をもたないと先が見えませんし、勉強も頑張れませんね。
下川校長
Answer
その通りです。そこから、生徒に先を見せるためにはどうすればいいかを考え、自分で物事を考える時間があった方がいいのではないかと思いました。「何のために頑張るのか」を考える時間ですね。せっかく余裕のある6年間ですから、少し立ち止まってみてもいいのではないかと考えたのです。思い切り勉強する子がいるかもしれないし、思い切りサッカーや野球をする子もいるかもしれない。とにかく自分で決めた「何か」を、思い切りやらせてあげたいのです。6時間の授業から放り出されたときに、彼らは何をするのだろうかと気になります。
ココロコミュ
Question
どれくらいの期間、放り出すのですか。
下川校長
Answer
3ヶ月間です。「勉強が遅れるのでは」と気にする人もいますが、自分で考える力がついた分、むしろ伸びるのではないかと僕は期待しています。今はまだアイデアの段階ですし、学校にとっては大きな冒険なのですぐに実現できるとは思っていませんが、十分に時間をかけてゆくゆくはやってみたいですね。こういうチャレンジは、最終的に責任を取る校長が提案すべきだと思うので。
ココロコミュ
Question
最後に、貴校のこれからについてお話をお願いします。
下川校長
Answer

僕は、子供たちを育てることほどすごい仕事はないと思っています。子供たちの本心が全てわかるとはおこがましくて言えませんが、これまでの経験を通して、子供と同じ目線に立てるようになれたのではないかと思います。
大人から見れば小さな問題でも、子供にとってはものすごく大きな悩みかもしれません。そんな風に子供の目線で考えられる校長でありたいし、周りにもそういう教師が増えてほしいです。教師がそういう気持ちで生徒に接していけば、子供たちがもっと才能や個性を伸ばし、「自分はどういう人間になりたいか」を追及できる学校になるのではないかと思っています。
本校の生徒には、楽しくて充実した学校生活を送ってもらいたいのです。スポーツで汗を流したり、勉強や部活で喜びや悔しさを噛みしめたり、ときには好きな子に振られて涙したりね。

ココロコミュ
Question
青春という言葉が浮かびますね。
下川校長
Answer
そう、大いに青春してほしいです。多くの大人が過去にやってきた泥臭い経験を、今の子供たちにも経験してもらいたい。与えられたプログラムをこなすだけでなく、「どうやったらうまくコミュニケーションできるか」など、自分たちで試行錯誤して学んでいく学校にしたいと思っています。

関西大倉中学校・高等学校

関西大倉中学校・高等学校
キャリアのスタートで教育困難校の生徒達と触れ合って以来、「生徒の表面的な振る舞い」と「実質の人間性」という両面を見つめてきたことが、下川先生の根底にあるようだ。実施を目指されているプロジェクトの一つである「長期にわたる探求学習」も、生徒がどこまでできるかという限界に挑戦することによって「実質の人間性」と向き合うためプロジェクトとも言える。下川校長の生徒をイキイキとさせるイノベーションに期待が集まる。