金蘭会高等学校・中学校
金蘭会高校演劇部・中学演劇部インタビュー

学内に照明や音響設備の整った大ホールを有し、学内外で年間約15ステージの発表の場を持つ金蘭会高校演劇部・中学演劇部。「全員演劇」をモットーに精力的に活動しています。今回は高校演劇部の部長・副部長と、30年以上にわたり顧問を務める山本先生に、同部の魅力について取材しました。

全員がキャスト、全員がスタッフ

全員演劇が金蘭会高校演劇部の大きな特徴。本番では照明と音響のチーフ2名以外は部員全員がステージに立つキャストです。練習と並行して舞台セットや小道具の制作、演出も協力して手がけます。

伝統とトレンドの融合

ウォーミングアップに取り入れているのは、15年程前に劇団「維新派」の主宰、故・松本雄吉氏のワークショップで教わり代々受け継いでいるエチュードや、ももいろクローバーZの楽曲の中でも最もカロリーを消費するといわれている「Chai Maxx」など、最新のアイドルダンスまで多彩。その1つひとつが全員で声や動きを重ねることの多い全員演劇の基礎となっていくのです。

現代演劇の名作を数々上演

優れた既成作品の上演も金蘭会高校演劇部の特徴 鄭義信の「ジャップ・ドール」「タンゴ・冬の終わりに」といった清水邦夫作品、野田秀樹の「半神」、劇団☆新感線の「阿弖流為」「シレンとラギ」、鴻上尚史の「僕たちの好きだった革命」(写真)などの名作を上演し、いずれも好評を博しました。

府大会本番を控えた通し稽古の様子。演目が同じでも会場が変われば、変更箇所がたくさん生じるため、役者の立ち位置やセットの配置などを一つ一つ丁寧に確認する作業が続く。当日の照明や音響を担当する機材スタッフも、校内の設備だけでは足りない部分は模型を作って、シミュレーションを重ねる。山本先生の熱い指導のもと、直前まで部員全員で作品をブラッシュアップする。

本番

2016年度大阪府大会本番「今、私たちは」の一場面

プロフィール:早稲田大学文学部で演劇学を専攻、日本の演劇界を牽引し続けてきた蜷川幸雄氏の蜷川スタジオ一期生として、あらゆる角度から演劇を学ぶ。金蘭会中学校・高等学校では国語を担当しており、82年の赴任時より演劇部の顧問として指導にあたっている。大阪府高校演劇連盟常任委員・大阪高校演劇祭(HPF)代表・大阪私立中学・高校芸術文化連盟理事。現在は教頭職も務める。

先輩のパフォーマンスに憧れて

――入部のきっかけを教えてください。
有園さん:小学生の頃に演劇に興味を持ち始めた私に金蘭会高校の卒業生でもある母が、演劇部を勧めてくれたのがきっかけで、実際に入試説明会などのイベントで先輩方のパフォーマンスを見て入りたいという気持ちが強まりました。

江川さん:私もオープンキャンパスでパフォーマンスを見たのですが、なんて楽しそうな部活だろうという印象が強かったです。それは入ってからも変わりませんね。

――活動内容について中学と高校の違いはありますか。
江川さん:中学では公演前以外は週3日の活動でしたが、高校では毎日になります。特に高校になると、中学のときには触らなかった照明などにも携わるので、難しいことも増えます。

山本先生:高校から入学してくる生徒は、経験の有無を問わず、より明確に興味を持って入ってくることが多いですね。また、外部の公演は全て高校部が行います。元々は中高合同で活動していたのですが、それだと中学生が育たないので、今は先輩後輩の姉妹関係の交流は持ちながら、基礎練習以外は別々に行っています。

――高校で部活が忙しくなると、勉強との両立は大変ではありませんか。
有園さん:今は大会期間中なので、時間が足りないと思う日もありますが、テストの1週間前になると部活も休みになるので、大変だと思ったことはないです。

江川さん:活動日が少ない中学のうちに部活と勉強の切り替えのコツがつかめると思います。先輩たちの姿を見ているので、高校になるとこれくらい忙しくなるんだなというイメージもしやすかったです。

全員が素敵に輝ける場所でありたい

――金蘭会演劇のモットーでもある「全員演劇」の魅力について教えてください。
有園さん:1人ではできないことも全員で取り組めばできる、みんなで1つのものを作り上げる、その達成感が大きな魅力です。私はキャストだから、とか、私は裏方だからという垣根がほとんどなくて、それぞれがお互いの大変さを自然と分かり合えるんです。

山本先生:全員が舞台に立つというのは、とてもリスクの高い方法でもあります。照明や音響を担当する生徒が倒れてしまったら、公演ができないわけですから。しかし、未熟でも舞台に上がれることはやりがいになりますし、生徒の自信にも繋がります。

江川さん:作品の中には主役があったり、スタッフ仕事でも得意な分野で中心になってやっていますが、全員で取り組むことで1人ひとりが輝ける場所が見つかるのが魅力だと思います。

――作品や配役はどのようにして決めるのですか。
山本先生:年に1度、コンクールで創作演劇(生徒と先生で合作、2016年の府大会地区予選では脚本賞を受賞)をするのですが、それ以外はプロの優れた既成作品を上演しています。

有園さん:作品選びは全員でやります。そのため、候補となる作品の台本を何冊も読まなければいけません。時間はかかりますし、意見も分かれますが、最終的にはみんなで納得して選ぶことができます。

江川さん:配役は先生と最上級生で相談して決めていきます。

――等身大の自分では理解できないような作品では、どのように役と向き合うのですか。
有園さん:まず、わからないことは徹底的に調べます。今やっている役は、お母さんが亡くなってしまった女子高生の役ですが、もし自分だったらという想像だけでは補えない部分は調べたことを基に膨らませて演技をしています。

江川さん:私は男性の役をすることが多いのですが、年配の男性役の場合は父親に話をきいたり、街でもイメージに近い男性を観察する他、男役をやっていた先輩にアドバイスをもらって研究しています。

山本先生:よく、高校生になんでそんなに難しい作品を、と言われたりもしましたが、いわゆる「高校演劇らしいもの」だけをやっていると、身の丈以上のことができなくなってしまうからです。とても高校生にはできなさそうな作品でも、部員たちがその作品を気に入って本気でやりたいと思えば挑戦させたいと思ったのです。プロが数人でやっていることをそのままやるのは大変ですが、その役割を20人に振り分けるなど、試行錯誤を繰り返して取り組んでいます。

演劇を通して現実の世界に向き合う力を

――先輩から受け継いで、自分たちも後輩に伝えていきたいことは何ですか。
江川さん:誰かにやってもらったことに対する感謝をきちんと口にすることを、先輩たちはとても大切にしていたので、挨拶や感謝を忘れないようにすることを伝えていきたいと思います。

有園さん:そのためには、まずは自分が行動で示せる存在であることが大切だと思っています。演劇部は先輩後輩がとても仲がいいのですが、これからも注意するべきことは注意し、良いところはちゃんと褒められる関係でいてほしいです。

山本先生:ちょうど現代演劇の優れた作品に取り組むようになった時期に、当時の最上級生が厳しい上下関係を取っ払いたいと言い出したんです。それでも、挨拶だけは徹底する、陰口は言わない、意見があるなら練習を止めてでも話し合おうと決めたんです。現在250人程になるOGが今でも手伝いや観劇に来てくれますが、誰も偉そうなことは言わないですね。現役の頃にOGの先輩にお世話になったから、自分たちも卒業したら後輩の役に立とうと協力してくれるのは長い間変わりません。

――6年間の演劇部の活動を通して、成長したと思うのはどんなところですか。
有園さん:私は小学生の頃、実はとても冷めた子供だったんです。でも、演劇に出会って、演劇部に入って、いろんなことに感動できるようになったし、人とのコミュニケーションが好きになりました。役を通して他人についてじっくり考え、部活を通して相手の大変さを思いやることを教えてもらったと思います。

江川さん:演劇自体も学べましたが、演劇以外のこともたくさん学ぶことができる場だったと思います。挨拶や周囲への気配りについても教えてもらったし、深いテーマの作品に取り組むことで、調べ物をしたり、ニュースを見たりして、もっと世の中のことを知りたいと思うようになりました。

山本先生:私はよく部員たちに「お芝居は生きることを洗うこと」だと言っていますが、そういう姿勢は私が生徒から学んでいることでもあります。芝居を通して、生きることを考えてほしいと思っていましたので、今、2人が言ってくれたように、演劇の中で得た生きる力を、現実の世界の中にも見出して、現実に向き合う力をつけていってくれればと考えています。

――最後に、金蘭会の演劇部に興味のある人にメッセージをお願いします。
江川さん:みんなで1つの作品を作り上げる楽しさを知ってほしいです。全員が発するパワーが金蘭会演劇の魅力だと思うので、是非一度私達の舞台を生で観に来てください。

有園さん:先輩後輩の仲がとてもいい部です。勉強との両立もきっとできると思うので、心配せずに飛び込んできてください!

 

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