大阪青凌中学校・高等学校
校舎移転特集 Next Rising! Vol.01

大阪青凌中学校・高等学校 校舎移転特集 Next Rising! Vol.01
大阪青凌中学校・高等学校 校舎移転特集 Next Rising! Vol.01
大阪青凌中学校・高等学校は、2020年4月に、今の高槻市から隣の島本町への校舎移転が決定している。学校が、どのような環境を選び、どのような校舎を建てるのかという、校舎移転のタイミングにしか見えない学校の景色を「校舎移転特集Next Rising!」として、数回に渡ってお届けする。

設計者と学校で、言葉にならない思いを
キャッチボールするように設計した

大阪青凌中学校 教頭 向忠彦
大阪青凌中学校 教頭
向忠彦

類設計室 建築士 本田真吾
類設計室 建築士
本田真吾

類設計室 建築士 松井英仁
類設計室 建築士
松井英仁

校舎移転特集の第1回は、設計を担当した類設計室の建築士、本田真吾さん松井英仁さんと、学校側を代表して向忠彦教頭にお越しいただき対談を実施した。その言葉から、校舎移転への想いと大阪青凌のこれからについて読み解いていきたい。
― 校舎移転先はどのようにして決まったのですか。
大阪青凌中学校 教頭 向忠彦
向先生 大阪青凌中学校・高等学校が、今の高槻市前島に開校して、今年で35年目になります。周辺には緑が多いのですが、もっと環境が良く、今のようにバス利用ではなく駅から徒歩圏内の場所を、実は3年ほど前から学園としては探していました。高槻市にはなかなか土地がないということで、隣接の島本町を探していろいろな候補があがりましたが、サントリーさんの研究所が移転することになって、最終的にその跡地が本校の移転場所に決まりました。
本田さん この場所は、緑豊かな天王山の麓にあり、豊かな自然に囲まれています。この環境を最大限生かした設計が重要だと考えています。このことは、先生方も、豊かな自然の中で、現在すでに行われている大阪青凌らしい教育を実現することを求められていました。
大阪青凌中学校 鳥瞰パース
― すでに大阪青凌らしさを大事にされているんですね。
類設計室 建築士 本田真吾
本田さん 私たちは生徒さんや先生方の考え方や、周りの自然環境などが作りだす空気感みたいなものを読み取るところから始めます。そして、最初は図面など一切書かず、「何が求められているのか」「こういう考え方はいい」「ここはおかしい」ということを文章にして確認していきました。そのために、様々な調査と分析を先行して行います。例えば、先生方と今後参考になりそうな学校へ見学に行き、作成した見学レポートを議論したり、移転先の島本町の歴史を分析したレポートや、大阪青凌さんの設立からの歴史と社会の動きの年表を作りました。そして、大阪青凌という学校が目指しているもの、先生方が何をやりたいと考えられているかをしっかりと理解していきます。その過程は3か月ほどかけてやりました。それをやらないと、こちらが良いと思う建築が、先生方が求めているものと同じかどうかがわからないんです。これを私たちは「同化」と呼んでいるのですが、相手に同化して、相手の言葉にならない思いをキャッチボールして鮮明な言葉に変えながら、設計に取り掛かります。

建築模型を見ながら熱い論議が交わされる
― 各私学には、行かないとわからない空気や思いが確かにあります。建築家の方もそういうことを感じ取る過程を大事にされているんですね。
本田さん いい建物を作るために全力で取り組むわけですが、相手の、言葉にならない期待みたいなものをくみ取っていく過程がない限り、ただの自己満足になります。そして、いくら相手の期待に応えようと思っても、社会がどんな風に動いていて、その中で学校がどういう位置にあり、生徒がどう成長しているのかがわかっていなければ、建築のための辻褄合わせのコンセプトしか作れません。徹底的に相手の期待に応える。それは迎合ではなく、時には「それは矛盾しているのでは」などと意見も言います。そういう中ですり合わせていくと、「ああ、そういうことか」と目指すものが見えてきます。

建築模型を見ながら熱い論議が交わされる
― 今回、大阪青凌の新校舎のオーダーを受けてのコンセプトは出来上がりましたか。
本田さん 簡単に言うと、基本的な考えとしては、建物を利用される先生方や生徒さんたちにとって、活力がわいてくる空間が連続していく建物にするということです。そのためには、生徒が、主体的に物事を考えるための活動をどこででも行える空間にすることです。これは、生徒たちが先生から一方的に教えられるという今までの教育から、自分の思考の枠を解き放って、自在に考えることへの転換を促す空間作りということになります。
― 当然かもしれませんが、生徒のためにという言葉がよく出てきますね。
本田さん あまり良くはないのですが、現在は先生に言われたことだけやるという主体性がない子どもが増えています。その理由は、当然のことながら生徒側にあるのではなく、教育の方向性にあると考えています。この方向性は、戦後から今まで大きくは変わっていませんが、社会状況は激変し、今までの方法では生徒の主体性は身につかないということではないかと思っています。私たちの時代は、先生方は、生身の人間として生徒に接して大切なことを伝えるなど、教える教科書の内容や表面的なルールより深い位相での教育をされていたように思います。しかし、現在は、社会の変化により、現実と乖離した教科書内容やルールばかりが増えて強制する教育になっています。それを解き放してやらないと活力も出ない。そのためには、扱うテーマも、生徒の興味関心にあった現実の社会と密着した内容にする必要があります。その上で、生徒がみんなでそれらを追求できる空間と、その成果を発表できる空間が必要だと考えています。これらをセットで空間構成を行うことが今回の設計コンセプトの骨子です。

建築模型
建築模型

― こういった教育に関するお話も、これまでに何度もされているのですか。
向先生 2週間に一度くらい来校いただいて、この1年半ほどはずっと一緒に新校舎への夢を語ってきましたから、私たちが望んでいることもわかっていただけ、それを形にしてくれています。
本田さん 思いを言葉にするのは難しいですね。普通は先にお話しした教育論も、「教育論に関しては、私たちでするから」とおっしゃる学校もあるんです。大阪青凌さんは最初からそういう姿勢ではなく、こちらが提案することも含めて考えてもらえていて、一緒に良い校舎づくりを追求できる関係になれるなと思いました。
松井さん 学校にはいろいろ特色があるかと思いますが、大阪青凌さんに感じているのは先生方と生徒さんの距離が近いなということです。それだけ先生や生徒さんが、それぞれに期待するものがあって、それに応えたいという気持ちが活力として出てきているのかなと思います。それは大阪青凌さんの校風なんでしょうね。
― 設計をご覧になって、向先生はどのように感じましたか。
松井さん
向先生 本校は、800名ほどの規模の小さい学校です。新校舎では、今のようにいくつかの校舎に分かれるのではなく一棟に全員がいる設計です。6学年が自然と交流する、どこでも見える、触れ合いがどうしても起きてくる、そういう校舎になっているので、それは私たちのイメージ通りです。
松井さん 先ほど「同化」という言葉を使っていましたが、私たちは同化することが何より追求することだと思っています。設計するにあたって大阪青凌さんの校風や、先生と生徒さんとのあり方に同化しようとしましたし、さらにもっと広げて今の子どもたち全般がどういう意識でどういうところに活力を感じているのかを、同化して作っていこうと思っています。

― 情熱がぶつかり合うと、必ず期待以上のものができてきますね。
松井さん 他にもいろいろな人が巻き込まれてきて、「いいものを作りたい」という気持ちがいろんな立場の人から出てくると、自然におもしろいアイデアが出てきます。完成まで楽しみにしていてください。

 

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