近畿大学附属中学校
21世紀入試
試験の点数だけでははかることが難しい、
後の成長につながる“秘めた力”を評価したい

未来社会に求められる21世紀型思考力の育成に向けて、学びに対する向上心・好奇心が豊かな子どもたちを見いだす近畿大学附属中学校の「21世紀入試」。同校の「英数コース プログレス」に専願入学を希望する受験生を対象に評価するのは、従来型の入試だけでははかることが難しい一人ひとりの“秘めた力”。特に学ぶ意欲が高い子どもは入学後の成長が大きく期待できるといいます。同校が「21世紀入試」を実施するに至った背景、そして、内なる力を秘めた生徒をどういう教育プログラムで伸ばしていくのか、校長の中川京一先生にお話しいただきました。

Profile 近畿大学附属高等学校・中学校 校長 中川京一先生

近畿大学附属高等学校・中学校の教員、教頭を経て、近畿大学附属小学校校長、近畿大学附属幼稚園園長を歴任。2017年4月に近畿大学附属高等学校・中学校の校長に就任し、子どもたちの可能性に注目する「21世紀入試」など新たな取り組みを実践している。

実施の背景 小学校で頑張ったこと、努力したことにも目を向ける

 「21世紀入試」は本校の一般入試(前期入学試験・後期入学試験)に加わる新たな選抜方法として2018年度から実施しています。私は本校の校長に着任する前の3年間、近畿大学系列の附属小学校・幼稚園で校園長を務めましたが、この時期に経験したことが「21世紀入試」を導入する後押しになりました。

 今、幼小の教育現場では「非認知能力」の育みが注目されています。跳び箱を例に挙げると、何段跳べたかという結果・成果にあたるのが「認知能力」で、跳び箱を跳ぶために頑張る・失敗しても粘り強く挑戦するといった過程で育まれるのが「非認知能力」といわれています。私は校園長時代、幼い子どもたちと一緒に過ごす中で、彼らが将来大きく成長するにはどういった力に目を向けてあげるべきかを常に考えていました。

 そこでまず見直しを図ろうと思ったのが、附属小学校から本校進学の際に行われる中学入試の内部推薦でした。従来型のペーパー試験の点数に頼らない、小学校時代に何を頑張り、どんな努力をしてきたのかを評価する選抜方法に変えたのです。本校では、特に中学校の教育では「自立した学習者」の土台を育む教育に力を入れています。その教育方針のもとで伸びるためには、まず“自ら学びたい”という姿勢が必要です。

 そうした選抜方法で入学した生徒たちの中学入学後を見ていると、一つの事実として一般入試で入った生徒よりも後々伸びていくケースがあることがわかりました。中1の最初こそ定期テストの点数で劣る面もあるものの、学期・学年が進むにつれて成績が逆転する生徒も少なからずいるのです。そこで一般入試でも同様の観点での選抜方法を実施することへの可能性を見いだし、「21世紀入試」がスタートしました。

求める力 入学後の成長につながる“自ら学びたい”という姿勢

 これから迎える21世紀社会は変化のスピードが速く、将来を容易に見通すことは難しくなるでしょう。そうした世の中を生き抜くためには、あふれる情報から何が必要かを取捨選択し、様々な困難や課題を自分の力で解決していくことが求められます。本校が目指す「自立した学習者」の育成とは、主体的に選択・判断しながら創意工夫を重ねられる力により社会に貢献できる人間を育てることです。それが『21世紀型教育』だと考えています。

 私たちが「21世紀入試」で見たいのは、本校を志望する強い気持ちと、“自ら学びたい”という姿勢をどれくらい持っているかです。中学入学後は「自立した学習者」を目指し、何をしたいのかを明確にしながら“どう学ぶのか”を主体的に考える授業が行われます。そこで自らを高められる生徒を本校ではお預かりしたいと思っています。

 「21世紀入試」では受験生に「自己推薦文」と「自己アピール資料」を提出してもらいます。自己推薦文の内容は小学校で頑張ったこと・評価されたことなど何でも構いません。作文コンクールやピアノの発表会での表彰、スポーツ大会に出たこと、英検で次の級を目指していることなど、アピールできることは皆さんそれぞれでしょう。でも、その頑張りが、もし親から言われて仕方なくやっているとすれば、それは本校が求めるものではありません。

 私たちは「自己推薦文」や「自己アピール資料」に書かれた結果や成果を点数化しません。評価するのは、中学入学後の成長につながる自己肯定感の醸成と、そこにある“秘めた力”。それを見いだすために、本校では企業の人事研修や学校でスクールコーチングに携わる外部講師を招いて研修を行い、採用にあたる教員の“見る目”を養いました。受験生の思いや力を確かな観点で評価することは、この入試を実施する私たちの責任でもあります。

入学後の教育 ICT教育、選択性の体験型実習が知的好奇心を刺激

 本校では先にお話しした通り、「自立した学習者」の育成を目指しています。その実践のために、他校に先駆けて導入しているICT教育は大きな効果をもたらしています。全校生徒が所持するiPadは、調べ学習といった“学び方”を養うツールとして非常に有効で、知的好奇心を大いに刺激するもの。さらに生徒・教員・保護者がリアルタイムで情報を共有できるので、学習・生活面での課題解決などもスピーディに行えます。

 また、生徒自らが“選択”できる体験型実習が数多くあることも本校ならではの特徴でしょう。2018年から本格実施が始まった英語プログラム『J-Course International Program』、近畿大学の水産研究所を訪れる『南紀体験学習』、山口県周防大島町で野菜の収穫や釣りを体験する『民泊体験学習』など、他にも多数ありますが、そのほとんどが生徒による希望・選択性です。与えられるのではなく自ら選んで取り組むからこそポジティブに学べるのです。

 こうした選択性のプログラムを導入にするにあたっては、実は教員の意識改革が必要でした。一人ひとり平等に、すべての生徒に同じ教育を受けさせてあげたいという思いが従来教育の考え方として教員にあったので、生徒の意思や希望を反映するとはいえ、同じプログラムでも受ける者・受けない者が出てきてしまうことに抵抗を感じたのです。

 しかし、現実として、社会に出て与えられるのは機会の平等です。与えられた機会を前に手を挙げる・挑戦するかしないかは自己判断です。そこで挑戦しない者に次のチャンスは巡ってこないかもしれない。生徒たちは学校を巣立てば、やがてそういう社会で生きていくことになりますから、本校の教員もこれからの時代に必要な教育を実践するために、大きな意識改革を続けています。

学校の使命 学校とは社会に出るためのトレーニングを積む場所

 これからの世の中はどう変化していくかわかりません。ですから自分たちで創意工夫をして個人で動く、あるいはチームで行動する、その判断を自らできるようになることが求められます。学校とは、いわば社会に出るためのトレーニングを積む場所でもありますから、実学的な要素も取り入れながら、学齢に応じた教育で様々な体験をさせることが大事だと感じています。その積み重ねが自主性の育みにつながります。

 そういう意味では、学校教育で生徒を伸ばすカギとなるのは、生徒自らが行動して、実感することだと思います。もちろん失敗することもあるでしょう。しかし、つまずいても、壁にぶつかっても、粘り強く乗り越えていけば「やればできた!」という達成感が得られ、成長をさらに促す自己肯定感の醸成につながっていくのです。

 振り返れば、効率よく受験準備をしてきた子どもを一律の入試で点数評価し、最終的に偏差値が高いと言われる大学に合格させることがこれまでの学校教育が果たす責任だったのかもしれません。それが今までは上手くいっていたのかもしれませんが、これからの時代ではもう通用しないでしょう。学校教育は大きく変わる転換期を迎えています。

 学校は生徒をお預かりする以上、一人ひとりを伸ばしていく使命があります。その“お預かりする”という意味において、どういう力を持った子どもが後々の成長につながるのか、それを判断して志願者を選抜することも学校側の責任と言えるでしょう。入学後の生徒のことを思い、教育方針とのマッチングを考慮することも重要です。そういう観点で見ると、本校の「21世紀入試」は新たな中学入試のあり方を考える一つの契機になるかもしれません。

 

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