大谷中学高等学校 -京都-
短歌という選択:高校生、歌人になる

大谷中学高等学校には、週に2回、「JEMS」と呼ばれる選択授業の時間があります。その中の興味深い取り組みの一つが「国語演習」の授業。「JEMS」の「国語演習」のなかで、短歌・俳句の創作を取り入れてから2年と、まだ新しい取り組みながらも、NHK Eテレの「短歌de胸キュン」に4ヶ月連続で入選者を輩出し、2018年には初参加にして「全国高校生短歌甲子園」の全国大会出場を決めるなど、早くも成果が表れているようです。自身も歌人として活動する国語科の佐々木先生と、短歌甲子園出場を果たした4人の生徒に、同校で学ぶ短歌の魅力についてインタビューしました。
同校のインテグラルコースで用意される、
基礎学力向上のための自由選択講座の総称。
週に2回行われている授業で、高校2年と3年が対象。
教科の枠を超えた選択にちなみ、
Japanese,English,Mathematics,Scienceの頭文字をとって、JEMSとした。


赤井さん(高校3年/インテグラルコース)
塚本さん(高校3年/インテグラルコース)
辻󠄀さん (高校3年/インテグラルコース)
多田さん(高校3年/インテグラルコース)

佐々木 敦史先生(国語科非常勤講師・歌人)

―  部活ではなく、授業で短歌に取り組む学校はとても珍しいですね。

佐々木先生 JEMSがスタートする以前にも、生徒たちが俳句や川柳に触れる機会はあったのですが、本格的に短歌の授業をしている学校は全国的にも少ないと思います。短歌は作ろうと思えば、1人でも作ることはできますが、授業としての面白さは作ってからが本番だということです。
―  実際にどのような授業が行われているのですか。

塚本さん お題が出されるので、まずは自分で作って、先生に提出します。私はいつも時間がかかってしまって、なかなか納得のいくものが作れないタイプです。
赤井さん 私は直感的に作るタイプかな。質はともかく、早く提出できることが多いので、悩んでいる友達のところに行って、一緒に言葉を探したりしていました。

多田さん 自分がイメージする通りの言葉が見つかると気持ちいいです。でも、会心の出来!と思って先生のところに持って行っても、全否定!?と思うほどのダメ出しをもらったりします(笑)。
辻󠄀さん ダメ出しに凹んだりもしますが、一度作り上げた作品に改めて向き合って、叩き直すことは重要だなと実感しています。最初の状態より、良くなるんです。
佐々木先生 アベレージヒッターというか、常にある程度レベルの高い作品を作り続ける生徒もいれば、いつもはそれほど惹きつける作品ではないのに突然キラリと光る作品を作って、入選する生徒もいます。意外な生徒が注目されて、他の授業では生まれない生徒間の関係性が生まれることがあるのも、授業で取り組む醍醐味かもしれません。
―  短歌で表現する楽しさや難しさについて聞かせてください。
赤井さん さっきのダメ出しの話ではないですが、この表現ではダメだとなった時に、一つのことを違う表現で描かなくてはいけないのが難しさであり、楽しさだと思います。日常の風景においても、人とは違う視点を持つことができるようになったように思います。
多田さん 調べ物をしていたら、紫陽花の花は雨上がりの方が発色が鮮やかになるということを知って、短歌に取り入れてみたいと思ったりもしました。
佐々木先生 面白いことに、お題を一つに絞っても、とある単語を使う縛りを設けても、同じ作品は生まれないんですよね。作る楽しさ、よりよくする楽しさ、これまで学んだことを生かす楽しさを、短歌を通して感じてもらえれば嬉しいですね。

―  テレビ番組や雑誌などのメディアへの投稿も盛んに行っているそうですね。
佐々木先生 NHKの「短歌de胸キュン」や「ダ・ヴィンチ」、「小説 野性時代」などの短歌コーナーですね。授業でブラッシュアップした中から私が選んでエントリーしています。入選や佳作をとることも多く、毎回結果も伝えています。
多田さん 雑誌に載ったり、テレビで放映されたりすると祖父が喜ぶんです。
佐々木先生 学校の授業でやったことの成果と評価が、遠く離れたところに住む親族や友人にもわかる形で届くなんて素敵なことですよね。
―  全国高校生短歌甲子園に出ることになったきっかけは何ですか。

佐々木先生 1年間の取り組みの中で、メディアで何回も選ばれたのが多田さんだったのですが、このまま終わるのも勿体無いと思い、「短歌甲子園に挑戦してみないか?」と私から声をかけました。
多田さん 大会本番は緊張もしたけど、信頼できるチームで戦えてよかったです。
―  今後の目標や、やりたいことを教えてください。

辻󠄀さん 今では生活に短歌が組み込まれているので、これからも続けていきたいと思っています。
佐々木先生 作り手のためにも、これからも発表の場は貪欲に開拓していきたいと思っています。まずは投稿を主軸にメディアに作品を発表していき、ゆくゆくは生徒個人の歌集の編纂をできたらと考えています。
多田さん 投稿に関しては、最近では家族や友人から、こんな媒体で応募できるみたいよと教えてもらうこともあります。応募するだけならタダなので、来年の皇居の歌会始のお題に挑戦してみようと思います。
佐々木先生 若手の歌人に来ていただいて、講義をお願いできたらとも考えています。短歌同様、今あるものから授業内容もブラッシュアップしていくことが目標ですね。

全国高校生短歌甲子園 作品
緑色 揺れる桜の 影の下
人々はもう
顔をあげない  赤井さん
(第13回全国高校生短歌甲子園 エントリー作品)

五月雨の
降る街急ぐクールビズ
しみこむ裾と はじく革靴  塚本さん
(第13回全国高校生短歌甲子園 エントリー作品)

教室の 外をながめて
揺れる木々 細長い枝
大きな葉をつけ  辻󠄀さん
(第13回全国高校生短歌甲子園 エントリー作品)

珈琲に 蜂蜜を少し
混ぜたよう
大きな満月 夜道を照らす  多田さん
(第13回全国高校生短歌甲子園 団体戦題詠)

 

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