関西大学中等部 “考動力”の育みは、
「面白い!」と感じる授業から ― 生徒の「英語考動力」を伸ばす英語教育とは ―

関西大学中等部が掲げる英語教育のキーワードは「英語考動力」。2010年の開校以来、自ら考えてアクションを起こす“考動する人”の育成を目指し、多彩な英語プログラムで生徒の自主性を育んでいます。

その土台となり、核となるのが日々の授業だという田尻悟郎校長。生徒一人ひとりの「考動力」を育む授業のあり方について、ご自身の英語指導の経験なども交えて語っていただきました。
校長 田尻悟郎 先生
神戸市と島根県の公立中学校で英語教諭として26年間教鞭を執り、2007年より関西大学教授に着任。2009年より同大学外国語学部・大学院外国語教育学研究科教授、2017年より中等高等部の校長を兼任。NHK総合テレビ『プロフェッショナル 仕事の流儀』(2006年)、NHK Eテレ語学講座『テレビで基礎英語』(2012年~2014年)などのメディア出演も多く、英語教育・学習の著書も多数。中学英語の教授法を確立したことが評価され、語学教育研究所よりパーマー賞を受賞(2001年)。

英語を勉強する“苦痛”から解放する授業を

「英語考動力」の育成とは、一言でいえば“使える英語”を身につけることです。これまでの日本の英語教育は大学入試の突破が主な目的でした。ですから社会で使える英語の習得を目指すなら、従来の授業のやり方を見直さないといけないし、教員も教え方を変えないといけません。

「考動力」という言葉は個人的にとても好きな言葉です。まさに生きる上で必要な“考えて動く”ことを示すもので可能性を感じます。しかし、生徒がひたすら板書して覚えることに精一杯の授業では「考動力」は育ちません。言われたことはこなすけど、自分から提案・発表する“考動”にはつながらないのです。

将来、20年後にはAI(人工知能)が人間の能力を上回り、今の仕事の4割はなくなるといわれています。そんな時代が来れば、未来を担う子どもたちはAIをどう使いこなし、またAIに使われないためにどうすればいいのか考えないといけない。同時に、新しい仕事もクリエイトしなければなりません。そこで必要なのが「考動力」です。

では学校で、英語の授業で、どうすれば「考動力」を養えるのか。私は、まず生徒を“勉強することの苦痛”から解放することが第一だと考えています。そのためには、「面白い!」と感じる授業、気づかないうちに生徒が興味を持って引き込まれるような授業を日々展開することが大切です。

発問や指示を創意工夫すれば生徒は夢中になる

生徒が興味を持って思わず引き込まれるような授業を行うには、教える側の創意工夫が欠かせません。クリエイティビティのない授業で生徒のクリエイティビティは育たないので、教員は常に発問・指示を熟考する必要があります。私は今も飛び込み授業という形で生徒に英語を教えていますが、そこで実践していることを一つ紹介しましょう。

Emi : Do you often listen to music ?

Mike : Yes, I like music. I have some CDs here.

Emi : How many CDs do you have ?

Mike : Five.

(東京書籍 New Horizon English Course1 より)
※後日イラストページ掲載予定

これは中1の教科書のダイアログです。普通の日常会話ですが、私はまずこう問い掛けます。「二人の会話文とイラストを見て、何かおかしいと思わない? なぜこの単語を使ったのか疑問に感じるところはない?」。すると生徒たちは「ん?」という表情で教科書に目を向けます。

さらに続けます。「最初に読んだとき、先生は often という単語に引っ掛かったけど。普通、会ってすぐに Do you often listen to music ?(ねえ、しょっちゅう音楽聴くの?)と言われたら、『いきなり何を聞いてくるんだ!?』と驚かない?」。

生徒たちはあらためて教科書を見て、なぜエミがマイクにそう聞いたのかを考え始めます。そしてマイクの首にヘッドホンのコードがあることに気づくと、彼は音楽好きだと推測できる。だからエミは『マイクは音楽好き=しょっちゅう音楽を聴いているのかな』と思って often という単語を使ったのだと理解できます。

そして次に、「じゃあエミは、なぜ How many CDs do you have ? と聞いたのかな?」と発問します。マイクが I have some CDs here. と言ったのを受けてエミが some という言い方に引っ掛かり、『なんか曖昧、何枚かはっきりして!』と思ったと推測してみる……。

このように何気ない日常会話であっても、そこには“心の動き”や“つぶやき”が潜んでいます。それらを読み取ってもう一度ダイアログを読み直します。

(あ、マイクがヘッドホンを巻いている。音楽好きなのかな)

Emi : Do you often listen to music ?

(僕のヘッドホンに気づいたんだね)

Mike : Yes, I like music. I have some CDs here.

(someって曖昧…、何枚なの?)

Emi : How many CDs do you have ?

(今から友だちと集まるから5枚は持っていこうと思って)

Mike : Five.

これまでの英語の授業は、生徒に英文を読ませて和訳させ、それを“読解”としていました。そうではなく、英文に潜む心の動きなどの情報を考えながら読み取り、なぜその単語・文法を使ったのかをわかった上で日本語にするのが“本当の読解”です。そこから音読を繰り返せば、確かな理解を伴った暗記につながります。

大切なのは、教える者が常に発問を工夫し、生徒が考えるように導くこと。そうした授業を繰り返していけば、「今日習う英語には何があるのかな?」「次のページも新しい発見があるはず!」と生徒は好奇心をかき立てられ、自ら考えるようになります。これが“考動”につながります。

わかった!から始まるアクティブラーニング

現実的な話をしますと、中2生の一番苦手な教科が数学、嫌いな教科が英語、そして中3になると苦手も嫌いも一番が英語ということが過去の文科省の調査でわかりました。つまり、英語が得意で大好きという生徒は、実はクラスでは少数派。その中から英語の教員が誕生するのです。

その少数派から生まれた教員は、自分が受けてきた英語教育を否定しません。なぜなら、従来教育のおかげで英語の成績が伸び、大学入試も突破できたという成功体験があるから。「一方的に説明する・読ませる・書かせる・覚えさせる」という授業が多くの生徒にとって苦痛だと気づいていないのです。講演や研修でこの話をすると先生方は「その通り…」と頭を抱えます。

先ほど例に挙げたダイアログで Do you often listen to music ? の英文に対し、「何か変じゃない? おかしく感じる単語はない?」と聞くだけで生徒は自主的に教科書を読み返します。そして何かに気づけば、黙っていられないのが子どもたち。「わかった!」「こういうことだよ!」とワクワクしてまわりに話し始めます。これがアクティブラーニングではないでしょうか。

メディアも学校現場もグループで討論することがアクティブラーニングだと捉える向きがありますが、それはあくまでも結果としての形です。教員が授業で良い発問と指示をして興味を持てる方向に導けば、生徒は自ずと考えることに夢中になる。そして、まわりも巻き込んでいく。授業で「面白い!」と感じたことは家に帰っても続きをしたくなるのです。

小学校はfun、中学校はinteresting、高校はcontroversial

私の経験で言えば英語は技能で、スポーツと同じです。監督やコーチの話をノートに取るだけでは上達しません。教える者が実践を促せるように創意工夫して話し、それに刺激を受けた本人が練習を重ねて初めて上達するのです。最近よくある“スピーディにラーニングしようと聞き流す”だけの勉強では真の英語力も考動力も身につかないのです(笑)。

冒頭でお話しした“使える英語”とはビジネスで通用する英語のことでもありますが、その土台は中学・高校で学ぶ英語です。そこにリスニングやスピーキングのスキルが合わさり、運用できる単語を増やせば“使える英語”に行き着きます。もちろん、リスニングにもスピーキングにも学習の法則がありますから、教員が正しく指導しないといけません。

英語の学びは、中学では“面白さ”を、高校では“深さ”を実感することが習得のカギになります。小学校はfunな授業、中学校はそれに加えてinteresting, moving、高校ではさらにcontroversial(物議を醸す)な面白さが増えていきます。そうすれば、高校で学ぶ英語の深さにも自ら考動して対応できるようになるでしょう。

「英語考動力」を育む関西大学中等部の取り組み

「英語考動力」を育む関西大学中等部の取り組み

語学トレーニングDaily Training
スピーチやプレゼンテーション、スキット(寸劇)などを取り入れ、インプットだけでなくアウトプットも重視した授業を展開。
海外の生徒との交流Exchange Programs
台湾の中学生との短期交換留学プログラム(希望性)を実施。さらに日本を訪れた学生を受け入れる国際交流なども盛んに。

海外研修Global Study Tour
中等部での英語教育の集大成としてカナダ研修(中3)を実施。ホームステイや海外交流校での学校生活を体験し、英語のコミュニケーション力をさらに磨きます。
英語資格試験Assessment
英検やGTECといった英語資格試験の取得にも力を入れ、グローバル社会で求められる確かな英語考動力を高めます。

語学トレーニングDaily Training
スピーチやプレゼンテーション、スキット(寸劇)などを取り入れ、インプットだけでなくアウトプットも重視した授業を展開。
海外の生徒との交流Exchange Programs
台湾の中学生との短期交換留学プログラム(希望性)を実施。さらに日本を訪れた学生を受け入れる国際交流なども盛んに。
海外研修Global Study Tour
中等部での英語教育の集大成としてカナダ研修(中3)を実施。ホームステイや海外交流校での学校生活を体験し、英語のコミュニケーション力をさらに磨きます。
英語資格試験Assessment
英検やGTECといった英語資格試験の取得にも力を入れ、グローバル社会で求められる確かな英語考動力を高めます。

 

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