【清風中学校・高等学校】
身体を作る、脳を作る、心を作る清風食堂

身体を作る、脳を作る、心を作る 清風食堂 発見!私学力 清風中学校・高等学校
2016年の新校舎とともに開設された清風食堂。清風中学校・高等学校の生徒たちが、昼休みや放課後に利用して、旺盛な食欲を満たしています。この食堂で使われているお米や数種の野菜は農薬や化学肥料を使わない「自然栽培」。成長期にある生徒たちの集う食堂で、なぜ「自然栽培」の食材を使うのか。食べさせたいと思ったのか。清風食堂のために奔走された副校長の平岡弘章先生に、同校の教育にも通じる想いをうかがいました。

副校長
平岡弘章先生

20年前の生徒と今の生徒の違いの原因は食べ物!?
何とかしないとアカン!

本校に食堂がなかった理由は、約3000人の生徒を食中毒の危険性から守ることが難しく、食堂は厳しいと考えていたからです。加えて校地も狭く、スぺース的にも余裕がなかったからなんですね。ところが最近は共働きのご家庭が増え、生徒たちの昼食にコンビニ弁当やインスタントラーメンが増えてきました。また、20年前と10年前の生徒は違っていて、10年前と今の生徒も全然違うと感じていたんです。一番の違いはアレルギーを持った生徒が極端に増えたこと。そして授業を落ち着いて受けられない生徒が増えたことでした。
最初、そういったことと食べ物は関係ないと思っていましたし、食堂に自然栽培の食材を使うつもりはなかったのですが、ある方から「食堂を作るなら自然栽培にしたらどうだ」と提案されたのです。そのときの僕には全く知識がなかったのですが、その後に紆余曲折があって、「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんがプロデュースした自然栽培の食材を使った「夢のディナー」に誘われたり、いろんな方に自然栽培の食材の良さを教えていただいて、岡山で自然栽培のお米を作られている方の畑を見に行くことになりました。それがスタートです。
食材の勉強を始めたらアレルギーという言葉がたくさん出てきて、そこで20年前と10年前、そして今の生徒の違いを思い出しました。アレルギーの生徒数は、20年前は学年に1~2人くらいだったのが10年前はクラスに1~2人に、そして最近ではクラスの2桁の生徒が何らかのアレルギーを持っています。その原因がどうも食べ物らしいとわかってくると、「何とかしないとアカン!」となっていきました。

巣箱に戻れない蜜蜂、いじめ合う豚
そんな農薬が使われた食材が成長に良いわけがない

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もう一つ、生徒たちの中に授業を落ち着いて聞けなかったり、キレたりする生徒が増えていると気付いていました。最初はその原因を家庭教育とつなげて考えていたのですが、保護者の方と話をしてもどうにも理由がわかりません。そんなときにる農薬の話を聞き、勉強を始めました。その農薬はヨーロッパでは禁止になっていて、その最大の理由は農薬が散布された作物で受粉した蜜蜂が巣箱に帰れないということが起こったからです。それ以前は、この農薬は奇跡の農薬と言われて、害虫には作用するけれど人体には影響がないとされていました。蜜蜂の脳神経に農薬が影響していることが学術的にわかりだし、ヨーロッパに続きアメリカも使用を禁止しましたが、日本だけはここ10年で3倍ほど使用しています。
農薬や化学肥料を使ったコンビニ弁当などが売れ残ると、家畜のえさになります。そのえさで育った豚をゲージに入れて育てると、豚同士でしっぽをかじっていじめ合い、しっぽが全部なくなるということも聞きました。
それで僕はどこかで聞いた話だなと思いました。生徒がキレる、授業を落ち着いて聞けないといった行動は、食べ物が理由ではないか? そんなものが使われた食材が子どもの成長に良いわけがない。食堂を作るのなら考えなければと思ったのです。その想いに様々な方が協力しようと言ってくださり、清風食堂で自然栽培の食材を取り入れることになりました。

正しく栄養を補給した強い稲だけが実り
栄養も免疫力もある稲になる

自然栽培、無肥料・無農薬、有機栽培とありますが、有機栽培と自然栽培の決定的な違いは何かというと、有機栽培は本来そこにないものを「有機」の形で与えているということです。自然栽培はそこにあるものしか与えません。例えば、自然栽培の稲はどの栄養を取り込むべきか、取り込んではいけないかを自分で考えるのです。そして取り込んではいけない栄養を取り込んだ稲は淘汰されます。正しく選択して正しい栄養を補給した強い稲だけが実り、重さも栄養も免疫力もあって、少々のことでは腐らない稲ができあがります。ヤゴが来て、鳥が来て、タニシがいて、カエルがいる自然の環境であり、免疫力が弱くて淘汰された稲は他の稲の肥料になります。その生き抜いた稲穂だけをいただくのが自然栽培です。だからすごく贅沢なんですよ。
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「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんの自然栽培のリンゴは、腐らずに枯れる。自然栽培の食材は同様。

「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんの畑と一般農家の畑を見比べると全然違いました。木村さんの畑は自然栽培だから自然のまま草がぼうぼうに生えています。一般の畑は慣行栽培だから除草剤を撒いています。雑草が生えるとリンゴと雑草が栄養を取り合ってしまうから、ある程度リンゴの木が強くなって除草剤に負けなくなったら、雑草を一気に除草剤で殺してしまうんです。すると地中にある栄養が一気にリンゴにいくというのが慣行栽培です。
でも、それをしていない木村さんの畑にもリンゴがなっていて、木村さんは「雑草を刈ったらリンゴの木が枯れる」と言われました。なぜなら雑草に多いタデとコナギの根の長さと、自然栽培のリンゴの木の根の長さは違うのです。自然栽培のリンゴは根を下に伸ばしてミネラル分を取りにいきますが、もしタデとコナギを抜いてしまうと、夏の炎天下でミネラル分が全部蒸発してしまいます。タデとコナギが葉を広げることで、地表を守ってくれているのです。不必要だと思っている雑草が、自然栽培のリンゴの木にとって大切なんですね。

稲穂の力を信じて自然に育つことを待つように
子どもの力を信じて自力で成長することを待つ

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これは教育にも言えることで、僕たち教師は「これが生徒たちにとって不必要」だとか、「こんな不合理なことではなく、もっと合理的にさせなければいけない」と進めていきますが、実は不要だと思っているものが生徒たちの成長にプラスになることもあるはずなんです。
例えば和英も英和も、国語も漢和も古語もすべて1台に入っている電子辞書。昔はそれぞれ別の辞書を持っていなければいけませんでしたが、使いやすいと思って電子辞書を取り入れるようになりました。ただ、実はリンゴの成長にとって大切な雑草のような仕事をしているものが紙の辞書の中にあるのではないかと思うのです。
それは「めくる」ということで、子どもたちに「youを引いてみて」というと、必ず頭の中でABC順にページを繰っていきます。ところが電子辞書では検索するとパッと「you」が出てきます。僕たち教員の仕事が、生徒に単語を早く見つけさせることならそれで良いのですが、僕たちの仕事は生徒の脳を鍛えることなので、紙の辞書でなければいけないこともあると理解しました。

清風食堂の食材に対するこだわりは
清風の生徒に対する姿勢の表れ

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清風食堂では今、自然栽培のお米、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、味噌を使っています。生徒にはラーメンが人気なので、麺の小麦を自然栽培の小麦にしたいと考えているのですが、なかなか難しいですね。
その意味でこだわりのメニューはカレーとチャーハンです。チャーハンはお米、玉ねぎ、にんじん、オイルにいたるまで自然栽培の清風チャーハンです。カレーはお米、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんが自然栽培。完璧にはできませんが、木村さん曰く1週間に茶碗に1杯自然栽培の米を食べるだけでも体質は変わってくるんだそうです。それくらい自然栽培の米には力があるんです。それを清風の生徒たちは毎日どんぶり一杯食べられます。
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米粒が大きくて驚く、清風チャーハンとカレー

食生活はとても大切です。僕はいつもお母さん方に話すのですが、髪の毛から足の爪先まで人の身体は食べ物でできています。脳みそも間違いなく食べ物です。それが農薬だらけだったら、良い身体ができるわけがないのです。
通常、食堂は業者に丸投げですが、清風ではこだわります。散髪検査があったりして生活指導は厳しいし、何かトラブルがあったら保護者に学校へ出て来てもらいますが、清風の生徒に対する関わり方、生徒を大切に育てているという姿勢は、清風食堂を通じて感じていただきたいですね。清風の生徒に対する姿勢を象徴するものだと思います。
すべての食材が自然栽培になって、すべての食材が子どもたちの身体にとっていいものになることを今後も目指していきます。悪いものでも安くてお腹がいっぱいになればいいというのではなく、彼らの身体を作る、脳を作る、心を作るための食堂になり、「清風の食堂で良かった。あそこで毎日自然栽培のお米を食べたから、鋼のような身体と心になった」と思ってもらえるようになったら、僕はこの食堂の意味があると思います。

 

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