京都府下で2番目に古い歴史を持つ
同志社女子中学校・高等学校のアーチェリー部。京都府内の大会では表彰台を独占、インターハイや国体、全国選抜大会などでは団体・個人ともに何度も入賞を果たしている強豪部です。近年では全国大会の入賞だけでなく、年齢別のナショナルチームに選抜され、国際大会に出場する生徒も出てくるなど、活躍の範囲も広まってきています。中学から入部できる良さや、珍しい競技ならではの魅力について取材しました。
挨拶は「ちわー」と「したー」
「こんにちは」「ありがとうございました」「わかりました」。運動部なのに、そんな砕けた挨拶で大丈夫?と思ってしまいそうだが、実はこれ、長い伝統の中で、受け継がれてきたアーチェリー部特有の挨拶。一説には、同校から京都府下のアーチェリー部に広まったとも言われている。
つり革に掴まる時は三本指
無意識に、弓をひく人差し指・中指・薬指の三本でつり革を掴んでしまう、電車やバス通学の「アーチェリー部員あるある」。急に揺れた時にも、グッと力を入れて三本指のまま体を支えてしまうのだとか。弓をひく力が鍛えられそう。
集中力の切り替えが上手
試合本番では4分間に6本の矢を射る部員たち。集中力の高め方や持続のさせ方は人それぞれだが、つい先ほどまで他愛もない話で笑い転げていた部員たちも、弓をひく表情は真剣そのもの。その切り替えが見事。
全学年の部員数
42名〔中1:13人、中2:6人、中3:8人、高1:4人、高2:3人、高3:8人〕
全関西室内アーチェリー大会 優勝および入賞
京都府小中学生アーチェリー大会 優勝および入賞
京都府高等学校アーチェリー選手権大会 優勝および入賞
京都府高等学校新人戦 1位~3位
第15回京都市体育協会会長杯アーチェリー競技大会 優勝
第57回近畿高等学校アーチェリー選手権大会 団体3位
平成30年度京都府高等学校総合体育大会アーチェリー競技の部 優勝および入賞
新校舎の一角にある地下練習場。
18m先にある的は、あえて公式試合で使われる的の半分のサイズを使用。最も得点の高い中央部分はなんと直径4cm!
普段はスタンドに弓を置くが、手に持ったまま立っている時は地面に着けないのが鉄則。弓のカーブしている部分(リム)の先端が傷まないように、靴の上に弓を置く。左足の先端だけ穴が開きやすいのがアーチェリー部員の証?!
的を狙う時の姿勢が美しい。体の軸を真っ直ぐにして、縦横のラインを意識することが大切。弦で指が切れないように革製のプロテクターを使用。
撃ち終えるのは17:30、18:00には完全下校となるため、後片付けはテキパキと。部員が使用するのはネジや差し込み方式で分解できる「テイクダウンボウ」。ハンドルやリム(弓のカーブ部分)、スタビライザー(安定装置)、サイト(照準装置)などのパーツが次々とスリムな収納ケースに片付けられていく。慣れれば、10分足らずでこの通り。かわいいカラーリングのケースなので、旅行と間違われることも。
顧問 山田 慎吾先生
川崎さん 高校2年・LAコース・部長
田原さん 高校2年・LAコース・試合係
山田さん 高校2年・WRコース・トレーナー
― アーチェリー部への入部理由や部の良さを教えてください。
田原さん 運動部に入りたいとは思っていたのですが、もともと走るのが苦手だったので、最初はコートが小さめのバドミントン部を考えていたのですが、バドミントンはめちゃくちゃ走ることに気がついて(笑)。そこで、競技中は走らないアーチェリーに惹かれました。
山田さん 姉がこの学校の卒業生でフェンシング部に所属していたのですが、運動部を勧められたのがきっかけです。体力もないし、文化部に入ろうと思っていたのですが、他の学校ではなかなか経験できなさそうだと思って、アーチェリーに興味を持ち、体験入部をして決めました。
川崎さん 私はアーチェリー部に入りたくて同志社女子を受験しました。小学校5年生の時に、オープンスクールの体験入部で初めて弓を見てかっこいい!と思ったのがきっかけです。先輩・後輩の雰囲気も和やかで、それは自分が入部してからも変わっていない良いところだと思います。
― 皆さん初心者からのスタートなのですね。
山田先生 そうですね。アーチェリーは道具も一式揃えると高価なので、中1、中2の段階では部の用具を貸し出しています。自分専用の道具を購入するのは大体中3になってからです。
川崎さん 他校では高校からという場合が多いのですが、中学からの3年間のアドバンテージがあるので、初心者スタートの私たちでもレベルの高いところが目指せるのだと思います。
田原さん 確かに、アーチェリーをやっていなかったら自分が全国を目指すような人になっていたかわからないです。
― 独特な挨拶が気になりますが、先輩と後輩の仲はいいのですか。
田原さん 最初は本当にいいのかな?と遠慮して、丁寧な挨拶をしてくる後輩もいたのですが、今では校内ですれ違う時でも「ちわー」と元気に挨拶してくれます。上級生としては、部員から普通の挨拶をされると違和感があります(笑)。
山田さん 普通の挨拶だと自分が挨拶されていると気づかないことがある(笑)。遠くからでも、入部したてでも、「ちわー」って言ってくれると、一気に、ウチの部の子だ!っていう親しみがわきます。
川崎さん 全員と自然に挨拶ができるようになるので、先輩後輩の距離が近くて、みんな仲がいいです。教えてもらう時などは、真剣ですが、いわゆる体育会系の厳しい縦社会という雰囲気ではないですね。
― 後輩を指導する時に気を付けていることはありますか。
山田先生 こちらの説明に対する反応が薄い時は、表現や説明の方法を変えることが大切です。
川崎さん 特に中1生に対しては専門用語を使わずに、どうわかりやすく説明するか、気をつけています。
田原さん フォームの改善点を伝える時も、単にこうしないとダメと押し付けるのではなく、理由を説明して相手が理解・納得できるようにすることを心がけています。
川崎さん 指導にはコーチもいらっしゃいますが、上級生から下級生に伝えることが多いです。人に教えることによって、自分も基本に立ち返ることができると思います。
― 試合や大会はどんな存在ですか。
山田さん インターハイは何年も連続で出場しているので、先輩たちが繋いできたものを自分たちの代で途切らせたくないという意識は強いです。団体戦で好成績を収められるよう、ランニングやマシントレーニングで体力をつけるようにして頑張っています。
川崎さん インターハイが今の一番大きな目標です。高校1年の時、マネージャー係として同行し、次は選手として来ようと決意しました。サポートという立場でも大会で得られるものは大きかったので、選手として出られたらもっと大きいものを得られるのではないかと思っています。
田原さん 嬉しい、悲しい、悔しいなど、いろんな感情を一回の遠征の間に感じられる場だと思います。目標は全国大会で個人・団体ともに優勝することです。昨年は選抜大会で準優勝だったのが、めちゃくちゃ悔しかったので、次こそは優勝したいと思っています。
― 勉強との両立は大変ではなかったですか。
田原さん 中学生のうちは学内の部活だけの活動になるので、家に帰るのもそんなに遅くはならないので、大丈夫だと思います。
川崎さん 高校生になると西京極の練習場に行くこともあって勉強時間が限られてくるので、電車移動中に集中して単語を覚えるなど、時間を有効に使うようにしています。
山田さん これは、アーチェリーにも勉強にも共通することですが、得点化されることで、達成できたこと、達成できなかったことが明確にわかります。目標を持ち、そのために何をしなければならないかを意識できるようになると思います。
山田先生 もちろん勉強が優先ではありますが、部活が好きな生徒ばかりですから、基本的にはやらせてあげたいと思うのは、教師も保護者も同じだと思います。普段から、「お家の方から『こんなに勉強しないんだったら、アーチェリーはやめなさい』と言われるようなことはないように」と指導しています。
― 最後に中学受験に向けて頑張っている人にメッセージをお願いします。
田原さん 先輩後輩も全体的に仲が良く、先生も含めて、人間関係がとてもいい学校です。
山田さん 部活に入るとさらに学校生活が楽しくなるので、ぜひ一緒に青春しましょう。
川崎さん オープンスクールに来たら、ぜひ体験会にも参加してみてください。