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第4回 学生シンポジウム 2019
-これからの時代を考える-

学生シンポジウム
「学生シンポジウム『これからの時代を考える』」は、大阪府下のグローバルリーダーズハイスクールや私立高校、大学から自主参加した学生が、テーマに基づいた講義を受け、議論や発表を行うプログラム。今年度は、テーマ「食」に沿った3回の講義を受け、学生たちが5つの論点から選択して意見発表に臨みます。講義の様子や学生たちの様子など、各日のレポートをお届けします。
第4回
~学生意見発表&ディスカッション~
これからの食を考える

最終回はこれまでと様相ががらりと変わって学生たちが主役。全3回の講義から彼らはどのような問題に着目し、解決策を導き出そうとしたのか。前半は高校生グループ4校、後半は大学生1グループを加えた全4校が、質疑応答時間を含んだ約3時間の意見発表に挑みました。
城星学園高等学校
テーマ『人間の心理と食』
まず食にまつわる最新技術の概説と、それらがもたらす食生活の変化について発表。大豆が主成分の“培養肉”は、肉食をタブー視する宗教などに受け入れられるのかといった問いかけから、食について深く考えることのない自分たちの姿勢を一度振り返ろうと提唱しました。
質疑が集中したのは、紹介された最新技術それぞれの詳細について。研究機関の英語論文を参考にしたことから説明しきれない部分もありましたが、その探求心と手法には感嘆の声が挙がりました。
神戸国際高等学校
テーマ『食とテクノロジー ~発展それから衰退~』
教師と生徒に扮し、授業に見立てた寸劇形式での発表スタイルが大注目に。取り上げたのは食×ICTの融合「フードテック」の功罪。例えば、農作業の無人化は後継者問題に寄与できるが伝統産業の衰退につながるなど、技術の発展と弊害についての考察を展開しました。
高齢化が進む農業の現場にICTをどのように伝え、広めていくのか。もっとも議論が白熱したのはこの課題。とはいえ「楽しそうな発表」は興味を持たせる効果が大きいと共感を呼びました。
大阪府立四條畷高等学校
テーマ『”地産地消”と”食品ロス”』
食料自給率が1%を切るという大阪の現状の解決策として、農業体験授業による食物への意識改革、都市でも可能な水耕栽培の増加などを提案。食品ロスの問題には、バナナに最適な保存条件の計測実験から、保存期間の延長について考えようとする取り組みを示しました。
「私たち自身で身近にできることをもっと考えては」「廃棄食品をエネルギー変換するといった最新技術にも目を向けるべき」など、アプローチに対する提案も多数。この問題の関心の高さを示しました。
大阪府立茨木高等学校 1
テーマ『こ食問題における『こども食堂』の在り方とは』
中食や外食、こ食の増加から“食べ物や生産者への感謝”が薄れつつあることが一番の問題だと捉え、その解決策として選んだ答えが「こども食堂」。例えば、こども食堂を老人ホーム内に設けることで共食を実現し、また高齢者の活用にもつなげられるなど可能性を提示しました。
NPO法人との連携や地元の規格外野菜を使った献立など具体的な実施案が上がる一方で、問題解決を老人と子どもにゆだねているのではという厳しい意見も。この課題を考え続ける必要性を共有しました。
大阪府立豊中高等学校
テーマ『自給自足と地産地消について考える』
給食に取り入れた地元野菜を献立表で紹介する箕面市の地産地消の試みを取り上げ、実際に給食での食べ残しなどが減っている事例を紹介。地元産へのこだわりが低い日本人の農産物への意識を変えることが、環境問題解決の第一歩につながるはずだと提言しました。
地元産の野菜に興味が持たれないのはなぜか、輸送コストを抑えられるのに価格が高いのはなぜか。難しい質問に答えるなかで、小規模農家の実態やブランド化による割高感といった別の問題も顕在化されました。
関西学院大学
テーマ『日本の現状とこれから
~危機感を感じ自分たちの未来に繋げる~』
健康的なイメージの “有機野菜(オーガニック)”ですが、実は31種の農薬の使用が可能で、除草剤が使われているのだとか。しかし、食の安心・安全および安定供給は妥協と努力なしには実現できないことから、何を取捨選択するかを一緒に考えていこうと呼びかけられました。
除草剤の人体への影響、農業における国策の問題点、耕作放棄地の活用法、無肥料の自然栽培の長所短所など幅広い質問が続々。自分たちの疑問に対する大学生のみなさんの考え方に興味津々の様子でした。
大阪府立茨木高等学校 2
テーマ『自味なくらいがちょうどいい』
自味とは“自分で作って味わう”という意味の造語だとか。食の外部化が進み、食べるために必要な調理と食べる行為が切り離される現状に危機感を抱き、簡単で栄養満点な具だくさんのみそ汁作りを提案しました。出汁の種類から具の取り合わせを厳選。楽しい発表となりました。
「ガス代が高いので経済的ではない」といった意見にはレンジの調理法を紹介、塩分濃度の問題には具体的データで反証するなど質問への準備は万端。こども食堂への応用といった建設的なやりとりも行われました。
明星高等学校
テーマ『”納豆”と”EDOMON”』
ストレッチを行う気配りからはじまった最後の発表。飢餓をなくす取り組みとして納豆とスーパーフード・昆虫食に注目し、普及をはばむそれぞれの課題に対して解決策を提唱しました。昆虫食をギリシア語の「EDOMON」と呼びかえる案もその1つ。ユニークな内容で場内が沸き立ちました。
飢餓に関心を持つきっかけがフィリピンでのボランティアだったという発表者の経験談から「実際に自分の目で見ることが重要だ」という討論へ。その上で、直面する問題について考え続けることが必要だとまとまりました。
熱のこもった発表とディスカッションを終え、第2回講義の島崎雅晴講師は「真剣に取り組む姿は私自身の勉強にも刺激にもなりました。日本の未来は安心ですね」と感心され、第1回講義の池永寛明講師は「2025年の大阪万博はみなさんが主役。70年代の勢いを一緒に作っていきましょう」と提言。第3回講義の中川奈央講師には「味噌や納豆の可能性が広がりました。5年後10年後、伝統食材がどう浸透しているか楽しみです」と笑顔があふれました。
最後に、学生シンポジウム2019「これからの時代を考える」実行委員の原健人氏が語ったのは、「情報過多の時代のなか、自分で見て聞いて触って本物の世界を感じ取ることの大切さを知ってほしかった」というこのシンポジウム開催の経緯。「そうした体験から自分の価値観を見つけ、未来の流れを変えていってほしい」という願いとともに有意義な時間が実現できた感謝で4回の学生シンポジウムを締めくくられました。

 

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