ココロコミュ

奈良学園登美ヶ丘中学校
宿泊研修を糧に『自ら生きて・活きる』人に

Teacher Interview 奈良学園登美ヶ丘中学校 広報部長 長野先生

入学式の3日後には実行委員に立候補

ココロコミュ
Question
全ての宿泊研修、社会見学に共通して行っていることはありますか。
長野先生
Answer
レポート冊子
生徒による実行委員があること、事前学習をすること、帰ってきてからレポートを作成しプレゼンテーションを行うこと、この3つは学年や行き先に関係なく行います。レポートは毎年、行事ごとに冊子にしています。
プレゼンテーションはクラス予選、学年予選で代表を選び、最終的には文化祭で全校生徒を前に体育館で大きなスクリーンを使って発表を行います。
ココロコミュ
Question
まずは、中学1年の宿泊オリエンテーションについて教えてください。
長野先生
Answer
入学早々ということで、クラスの仲間づくりがメインになるので、事前学習は行わないのですが、入学式の3日後には実行委員を募集し、翌日から会議が始まります。各クラス10人くらいずつ立候補者が出てきます。幸い本校には内進生が半分近くいるので、そういうところでリーダーシップを発揮してくれます。40人ほどの実行委員は“運営”“しおり作り”“レクリエーション企画”などのグループにわかれ、研修までの2週間、毎日話し合いをします。コミュニケーションの習慣と、自分たちでつくるんだという意識づけが最初は肝心なのです。
ココロコミュ
Question
実行委員会ではどのような話し合いをするのですか。
長野先生
Answer
ものすごく些細なことでもルールは全て生徒たちに決めさせるのが特徴です。委員会で決めたことを各クラスに持ち帰り、クラスの意見をまた委員会に持って来て話を詰めていくわけです。だから、毎年、おやつやお土産代の金額も違うんですよ。自分たちが決めたルールをしおりにして、もし、守らない生徒が出てきたらどうするのか、その解決まで委員会に任せています。コミュニケーション能力や、資料作成能力、自由に伴う責任の大きさなど、多くのことを学び、身につけます。

生徒の主体的な行動が成長の証

ココロコミュ
Question
社会見学では現地のガイドを生徒たちで分担して行うそうですね。
長野先生
Answer
そのために、事前学習をしっかりする必要があるんです。でも、中学1年の段階ではどのくらい調べたらいいのかわからないわけです。ネットで調べるか、本で調べる生徒がほとんどです。ところが数年前に、自分が説明を担当するお寺に先に行って、ご住職から話を聞いてきた生徒が現れました。そこまでやってもいいんだ!ということを学年全体に気付かせて、大変いい影響を与えてくれたと思っています。
ココロコミュ
Question
他にも生徒自身の行動力や成長に驚いたことはありますか。
長野先生
Answer
中学2年の白浜研修では近畿大学水産研究所で解剖実験をさせてもらったり、京都大学水族館に行かせてもらっています。これらも事前学習をし、帰ってからはレポートにまとめ、プレゼンまで行います。文化祭で最終発表が行われるわけですが、昨年、近畿大学の先生から「文化祭に行きます」という連絡が届いてびっくりしました。実は、代表に選ばれた生徒が先方に「白浜研修でお世話になった実験について、今度、文化祭で発表をすることになりましたので是非見に来てください」という内容のメールを送っていたんですね。わざわざ白浜から先生が来て下さり、ぜひ来年も…というお言葉をいただきました。中学2年でそういうことが自主的に出来る生徒たちの成長に驚いています。もちろん、こちらにも一声ないと、私たちは別の意味で驚いてしまいますが(笑)。
ココロコミュ
Question
その辺の配慮も学年が上がれば気付けるのでしょうね(笑)。
学年主任の立場から宿泊研修で大切にされていたことは何ですか。
長野先生
Answer
視野を広く持つこと、あらゆる角度から物事を見るようにできることを大切にしています。例えば中学3年の沖縄研修では、戦跡としての沖縄、基地に反発する沖縄と、基地と共生する沖縄、観光産業で成り立つ沖縄といった歴史や現状を含めたあらゆる面を見てもらいました。お店に入ってご飯を食べ、いろんな話を聞き、町の人とミーティングする機会も設けています。一般的な公立中学が2泊3日なのに対して、本校は3泊4日と時間に余裕があることも大きいでしょう。また、楽しいアクティビティももちろんありますが、やはり旅行ではなく、あくまでも研修、学習の一環として行くことを心がけています。生徒たちの間にも、家族とは出来ないことをしよう、行けないところに行こう、という気概が感じられます。そうした生徒の主体性は大切にして、後押しをしていきたいですね。我々としては仕掛けの部分が、極力偏らないように気をつけ、軸だけはブレないようにするのが役目かなと思います。

自分から求める姿勢を忘れずに

ココロコミュ
Question
高校では2年間の取り組みに、繋がりが感じられますね。
長野先生
Answer
高校1年生が2泊3日で行うイングリッシュキャンプは英語によるプレゼンの練習だけでなく、翌年のオーストラリア研修に行く際の生活シミュレーションです。1クラス10人程度のグループにネイティブの教員が付き、生活に関係する表現を、体験を通して学びます。1家庭に1人のホームステイとなりますので、必ず自分自身でコミュニケーションをとらないといけません。なんでも自分でやらないとどうにも進まないという状況を経験するので、その後の文化祭では、とにかく自分たちが面白いと思う企画を作り上げるために、どんどん自分から動けるようになりますね。
ココロコミュ
Question
5年間の研修で培ったものは、
高校3年生になった生徒にどのような影響を与えますか。
長野先生
Answer
自分の将来のことを決める上で、主体的に物事を考えていくことに繋がっていると感じています。第一志望主義と言ったらいいのでしょうか。気になる大学はとことん調べますし、学校の自習室を利用する生徒が多いのも特徴かもしれません。よくも悪くも実力と志望校がかけ離れている生徒はいます。確かに、目標は安易に下げるな、下げたらもっと下になるからとは言ってきましたが、センターの結果次第では、志望校を変えるかなと思っていた生徒も変えずに最後まで頑張り抜きました。そこが、実際に現役で第一志望に合格している生徒の多さや、浪人を恐れず第一志望に行こう、という意思の強さにも繋がっているのかもしれません。大学に行ってから、社会に出てからもそういう姿勢を忘れずに、本校が目指す「自ら生きて・活きる」人を実現してほしいですね。

奈良学園登美ヶ丘中学校

奈良学園登美ヶ丘中学校
体験型学習では、生徒にどれだけ広い世界を見せ、得難い経験をさせてあげられるかが大切だと思うのですが、そこに生徒の主体性がなければ単に広い範囲を連れまわしているにすぎません。同校はアクティブラーニングが陥りがちな危険性を中1段階からうまく回避し、生徒の主体性を育成していると感じました。

 

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