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【洛南高等学校附属中学校】
御影供 – 洛南生が己の心と静かに向き合う日- 

弘法大師空海により創立された日本最古の私立学校「綜藝種智院」に端を発するとされる洛南高等学校附属中学校。五重塔が見える東寺の境内にある同校では、弘法大師がご入定された日(一般にいう月命日)の21日に、「御影供(みえく・みえいく)」と呼ばれる行事が行われます。この日は通常の授業やクラブ活動が一切なく、生徒たちは講堂に集まり講話を聞き、教室で作文を書いてお昼には下校します。実際の御影供の様子と「御影供は洛南で一番大切な行事だと捉えている」という中学3年担任の中谷先生を取材しました。

  • 登校
  • 毎月21日は東寺の境内で「弘法市」がたつ。野菜や骨董、古着物、古本などの店が立ち並び、大勢の客で賑わう中を学生たちは登校する。
  • 講堂へ移動
  • 10時から始まる御影供のため、教室から講堂へ移動を開始。正面に一礼してクラスごとに着席して、静かに待つ。中学生から高校2年生までが集まるため、全員が揃うまでの所要時間は約15分。その間、私語をする者はいない。ちなみに教室を出たところから私語はしていないそう。
  • 献花・献灯
    献供・献茶
    献香
  • 献花・献灯・献供・献茶・献香
  • 講堂の壇上には地蔵菩薩像。生徒会代表が、献花・献灯・献供・献茶・献香を行い、学園長が焼香。全員で三帰依文を唱える。
  • 学園長講話
  • 約45分間の学園長講話。内容は毎回異なり、身近なことから、「生」と「死」を見つめる話、「無常」や「無我」についてなど、仏教や哲学的な話もあり、中学1年生には少し難しい内容となる時もある。
  • 吹奏楽部演奏
  • 高校生部員を中心とした吹奏楽部による演奏。吹奏楽部員は、御影供での演奏は「奉納」「献奏」という意識で取り組んでいるという。
  • 作文
  • 各教室に戻り、作文。お題が与えられることもあれば、全く自由に書くこともある。ほとんどの生徒は用紙が配られるとすぐに書き始めていたのが印象的。
  • 下校
  • 作文を提出したら速やかに下校。作文を書き終える時間には多少の個人差があるが、ほとんどの生徒が12時半には教室からいなくなった。原則、クラブ活動も行わない。

― 入学してから初めて御影供を知る生徒も多いと思いますが、どのような説明がされているのでしょうか。

中谷先生

御影とは本校の校祖である弘法大師様のお姿を表す言葉です。入定、一般的に考えると亡くなられた日、つまり月命日に弘法大師様を偲び、そして自らを振り返る神聖な機会であると伝えています。

― 勉強にスポーツに忙しい毎日を送るなか、そうした時間が毎月持てるというのは、とても贅沢ですね。

  • 中谷先生
  • 自分と向き合う時間を大切にするのは、我々教員も同様で、御影供という行事で指導している、教えているという意識はなくて、ともに参加、修行しているという感覚です。反省や感謝など様々な気づきがあるので、御影供が毎月のターニングポイントとなっているのは生徒に限ったことではないと思います。洛南の行事の中で御影供が一番大切だという人が多いのは、そこだと思います。

― 教室から講堂へ移動する際に、生徒が無言なのも何か理由があるのでしょうか。

中谷先生

話してしまうとそれは自分以外との対話になってしまいます。一切無言にすることで、自分の内面に意識を向けて、自分と向き合う時間にしてほしいので、徹底しています。

― なかには緊張感が緩んでしまう生徒もいるのではないでしょうか。

  • 中谷先生
  • 少数ですが、います。そういう生徒の存在も見て見ぬ振りをしないのが洛南の良いところだと思います。御影供で大切にしていることは試験に出るようなことではありませんが、勉強だけがしたいなら他の学校でもできます。中学生にしてみたら、講話は長く感じるでしょうし、内容も難しいことがあります。ですが、理解はできなくても背筋を正し、話をしている人をしっかりと見る。受け止めようとする姿勢が大切です。身なりを整え、手を合わせる、その姿や形が心に影響するというのはあるので、心の教育においても形から入ることもあっていいのでは、と思います。

― 作文を毎回書くとのことですが、どういった内容でしょうか。

中谷先生

講話の感想について書くこともあれば、クラスの現状を見て、1か月を振り返って書いてもらうこともあります。自分の内面を文字に起こすというのはとても大切で、全く自由に書いてくださいと言われると、やはりその時自分が一番重きを置いていることが浮かんでくるようですね。講話の感想でも、生徒が内容を覚えている部分は、やはりその時一番気になっていることとリンクしてくるので、その時その場で自分が何を感じ、考えていたかが残る「自分の記録」になるのです。

― その記録はどのように活用されるのですか。

中谷先生

この作文は自分のために書くものなので、原則どこにも発表されません。多くの人の目に触れる可能性があるとSNSのように少しカッコつけて書いてしまうこともあると思うのですが、担任しか読まないものなので、安心して本音をさらけ出せる場となっています。何かに悩んでいる生徒と話すきっかけにもなりますし、最終的に1年間分をまとめて本人に渡すクラスもあります。

― 21日が日曜日の場合は、御影供はどうなるのですか。

中谷先生

その場合は、その月は御影供の行事はお休みとなります。生徒からも「わ!今月、御影供ないやん!」と戸惑いの声が上がることがありますね。もちろん、家で静かに自分と向き合う時間を持つ生徒もいるでしょうけれど。

― 洛南生にとって御影供とはどんな存在だと思われますか。

中谷先生

道徳の授業やロングホームルームなど、他にも定期的に自省の機会はあるのですが、やはり洛南生にとって御影供は学校生活の中で欠かせない、特別な時間なのだと感じています。「生活即学習」という言葉がありますが、生活する上での姿勢や考え方は自然と学習にも繋がっていると思います。本校が単なる進学校ではなく、人間教育を大切にする総合校である根幹となる行事だと思います。

 

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