開明中学校・高等学校

言葉と表現力でチャレンジ 開明中の弁論大会

発見!私学力
開明弁論大会生徒インタビュー先生インタビュー中学受験大阪関西共学校私立中学イベント課外授業

開明中の弁論大会 言葉と表現力でチャレンジ 開明中学校・高等学校

2023年度で、24回目を数えた開明中学校の弁論大会。40名以上の生徒が在籍する7クラスで予選が行われ、各クラスの代表者2名を選出。計14名が本選の弁論大会に進み、中学生900人の前で自分の意見を述べる貴重な機会です。テーマを決めて探究し、パワーポイントによる資料などを使わずに、暗記した自分の言葉と表現力だけで伝える経験は、悪戦苦闘しながらも次につながる学校行事となっています。
ココロコミュでは、好成績をおさめた生徒と、生徒の頑張りを見守った先生の言葉から、開明の弁論大会の魅力を探りました。

弁論大会 生徒コメント

Kさん
(中学2年・弁論大会優勝)
テーマ「家族のカタチ」

姉が開明生で、弁論大会で2回準優勝をしていたので、私も自分にしか話せない家族のことをテーマに頑張ってみようと思いました。テーマにした「ステップファミリー」は、再婚などによって血のつながりのない親子がいる家族のことで、私の家族もステップファミリーです。同学年内でもステップファミリーに偏見が多いと感じていたので、みんなに本当のところを知ってもらいたいと思いました。
弁論大会に向けては、毎日練習して母と姉に見てもらい、相手に伝わりやすくなるように、見ぶり手ぶりをつけたり、練習途中で文章を書き換えたりしながら練習を続けました。練習を録音して、話の抑揚のつけ方も工夫しましたし、発表では暗記点があるので、何もなくても話せるように努力しました。
昨年の弁論大会では先輩の発表を聞くだけでしたが、今年は自分も発表するし他の人の苦労もわかるから「きちんと聞こう」と真面目に聞き、面白い内容がいっぱいあることに気づきました。Fくんの発表は、哲学的なことを話す人が多い中に歴史というテーマだったので、題名からも惹かれました。ハキハキと喋っていてわかりやすかったです。
自分自身の発表については、『家族のカタチ』というテーマを掘り下げて、改めて自分の家族のことを知ることができました。母に自分が知らなかったことを質問したことでもたくさん発見がありました。来年の弁論大会も優勝を目指して頑張りたいです。まだ次のテーマは見つかっていませんが、今回とは異なる新しいテーマを発見できたらと思っています。

Teacher's Message

金光先生 Kさんは家族ぐるみで応援されていて、彼女もその期待に応えました。第一声から相当練習したんだろうなと思わせるものでした。表現力で大きな差をつけたと思います。

柳井先生 Kさんは本人が抱えているものを人前で見せるという内容を選び、臆せず発表しました。全く恥ずかしがらず、家族に誇りを持って堂々と話す力強さに、皆が引き込まれたのだと思います。覚悟や勇気が必要だったと思いますが、よく頑張りました。

Fくん
(中学2年・弁論大会優秀) 
テーマ「歴史を見る目 走る足」

小さい頃から父がよく城に連れて行ってくれて、そこから歴史への興味がどんどん出てきたので、弁論大会も自分が好きな歴史をテーマにすることにしました。社会の授業は必要ないと言っている人や、特に歴史は習っただけで終わりといった考え方の人が周りに多い中で、「歴史が必要な理由」を説明しようと思いました。そこでまずは題名で比喩を使って自分の意見を書くのがいいと思い、「歴史とは、未来のために過去を見て学ぶもの。過去の歴史を見て、次に進んでいくことができる」という思いで『歴史を見る目 走る足』としました。
論文の制作期間には2週間の冬休みを全部使いました。僕の中での一番の壁は、原稿を覚えられなかったことです。弁論大会の前日には暗記して書けるぐらいにして、当日はなるべく大きな声ではっきりと喋ることを心掛けました。
弁論大会では、人に自分の意見を伝えることの難しさと、中学の全校生徒に向けて自分が言葉を発する貴重さを感じました。Kさんの弁論は、完全に原稿を覚えていてほとんど詰まることがなく、内容もわかりやすく説明されていて良かったです。
来年の弁論大会は、今年の大会を踏まえ、原稿をしっかり暗記することと、身ぶり手ぶりを交えることを取り入れます。テーマは歴史とは別のものを考えていますが、今は都市伝説が気になります。

Teacher's Message

柳井先生 Fくんは、タイトルも内容も「比喩表現」がとても良かったです。比喩を使って、「自分が好きな歴史とは、こういうものだと思っているんだ」と言えたことが素晴らしかったです。

金光先生 人を引き込むための言葉選びや表現を、原稿段階で相当練り込んだと思います。そして、自分が本当に興味を持っている好きな歴史に対してしっかり向き合った内容だったことに凄さを感じました。

開明中学弁論大会
弁論大会 先生インタビュー

<写真右より>
金光清太郎先生(中学2年学年主任・理科教諭) 柳井光一先生(中学2年学年副主任・国語科教諭)

生徒の身体一つで勝負する原始的な弁論大会
だからこそ磨かれる豊かな表現力と主体性

今年の中学2年の『弁論大会』の感想からお聞かせください。

金光先生見ていて誇らしかったです。本校は計画的に時期や内容を明確にして、教員が細かく指示しながら生徒にしっかり勉強を頑張ってもらう学習指導スタイルが基本です。しかし行事に関しては、自分で考えたことを自分で表現することを大切にしています。担任や副担任で内容の精査や表現に関するアドバイスは多少行いますが、学習とは違って行事は自由度が高めです。本人の主体性に任せるところが大きいので、私たちが想定していたよりも上を行くような発表がたくさん出てきます。優秀だった生徒の成果は、本人がテーマをじっくり考えたことと、弁論の練習の結果だと思っています。

柳井先生今年は久しぶりに3学年900人が集まった前で生徒たちが話したことに、私は感動しました。初めての経験だったと思いますし、内容を覚えられなくて言葉に詰まった生徒もいましたが、皆の前に立って話せたことに『弁論大会』の大きな意味があると思っています。
実は私は、クラス予選が楽しみでした。正直、本選との内容差は大きいですが、生徒の原稿を見ると「こういうことに興味があるのか」「こういうことを考えているんだ」と改めてわかります。本選に進めなくても良い経験だと思いますし、生徒の成長に関われている実感が湧きます。

弁論のテーマ探しには、いつ頃から取り組んだのですか。

柳井先生真剣に考え出すのは中1の12月頃です。ただ、中1の4月には前年の『弁論大会』を見ているので、『弁論大会』に自分たちが参加する認識はあるはずです。また本校では入学当初からいろいろな体験や行事後に“書く”ということが多く、総合学習では調べ学習も行いますから、それらが生きていると思います。その積み重ねがあった結果、12月に、「今、自分が気になるテーマ」を探すのだと思いします。

金光先生最近は行事を大切にしています。毎年の『歴史探訪』という行事では、まず歴史の建造物についての知識を深めるために調べ学習をして、パワーポイントを使ってプレゼンテーションした上で、実際にその地に赴きます。そういう取り組み方が当たり前になっていることが、多方面に影響しているのかもしれないですね。興味を持ったテーマを調べて、自分なりに表現します。他にも中学3年以降は、文化祭に向けての『研究発表』もあり、テーマは自由です。

年代によって弁論のテーマに変化や特徴はありますか。

柳井先生毎年、「よりよく生きるためには?」「幸せになるためには?」といった哲学的なテーマや普遍的なテーマが多いですね。生徒がちょうどそういう年代なのかなと思います。こちらからは全く何も言いません。

金光先生この2、3年で増えたと思うのはLGBTQ関連の話題ですね。多様性を知って受け入れていくことやSDGsを今の中学生は知っているので、それをテーマにする世代だと感じます。

先生方が思われる弁論大会の目標は何でしょうか。

柳井先生『弁論大会』は『研究発表』よりもずいぶん前からあるのですが、『研究発表』は班でパワーポイントを使ってプレゼンテーションしますから協同的です。それと比べると『弁論大会』は、パワーポイントを使ったプレゼンテーションはダメで、使ってよいのは言葉のみですから、ものすごく原始的です(笑)。生徒は表現力がかなり鍛えられると思います。

弁論大会は、資料を表示しないのですか。

柳井先生ないです。ただただ言葉だけです(笑)。私はそれがいいところだと思っています。資料を提示しながら発表する『研究発表』にもいいところはありますが、まずは中1・中2で自分の言葉だけで表現する経験を積ませるのも大事だと思います。それができてこそのパワーポイントやプレゼンテーションだと考えています。

金光先生私も同じように、今の時代だからこそ「身一つ」で表現する大切さを知るいい機会だと思います。『弁論大会』で、1人で考えて発表することに慣れたメンバーが集まり『研究発表』に取り組むことで、資料を生かしたプレゼンテーションができ、表現力もさらに磨かれます。

この経験を経た生徒の皆さんに変化や成長は?

柳井先生正直なところ、まだ『弁論大会』が終わってから時間が経っていませんので、目に見えて感じる成長は少ないですが、終了後に安心している様子や、入賞できなかったけれど褒められて嬉しそうな様子を見ていると、これで十分かなと思います。そういう生徒に周りの生徒も感化されていってくれればいいですね。

金光先生自信のある表情をよくするようになった印象です。クラス予選を勝ち抜いて本選出場した生徒の中には、はきはきと喋るようになったり、他の学業も一生懸命になる生徒がいたりしますから、しっかり評価をしてもらえて、それが自信になって他の行動にもつながっていくと感じます。

この経験を次にどうつなげてほしいですか。

柳井先生クラスの生徒には話したのですが、書き言葉と話し言葉は少し違います。例えば読んでいたら自然ですが、読み上げたら長すぎることもあります。話し言葉だからこその工夫もあります。ですから、より人前で自分の思いを伝える工夫を学んでくれたらとは思っています。国語科的な視点ですね。

金光先生『弁論大会』後の学年集会で生徒に話したのは、「優勝者が優勝した理由は、おそらく誰よりも時間をかけて過程を大切にしていたから」ということです。最初の原稿作りを大切にしたからいい原稿ができて、この原稿だったら優勝を狙えるかもしれないと思えたから表現も頑張れたのだろうと。結果を出すためには、日頃の過程をどれだけ大切にするかだといろんな行事を含めて伝えられたらと思っていますので、今回の『弁論大会』はよい具体例になっています。