甲南高等学校応援団
応援団は高校生だけで構成され、現在16名で活動中です。団長そして団長を支える副団長、マネージャー的な役割を務める本部長の三役のもと、団の先陣を切る突撃隊と団旗を守護する親衛隊で構成。演舞にて、三役及び突撃隊長、親衛隊長が声を張り上げていく口上は、まさに漢気の塊です。
彼らの主な活動の場は、新入生歓迎会、体育祭、文化祭、そして「灘甲戦」。応援団を中心に甲南生が声を合わせる「ゴーゴーレッツゴー、レッツゴー甲南」の掛け声が、会場を一体感で包みます。
これが伝統!
応援団の作法
応援団を象徴する長ラン・学ランは、最高学年になると自身で作ることも可能ですが、先輩から受け継ぐことも多いそう。副団長の長ランは、4代前の第69代団長が仕立てたもの。本部長の長ランは14代本部長が仕立てました。
先輩から受け継いだ副団長の長ランの背には「覇道」の文字が。また団長の長ランは自身で新たに仕立てたものですが、たとえ一人でも誰にも負けない応援を続ける覚悟を込めて「一騎当千」の文字を刻んだとのこと。
鉢巻も先輩から受け継がれているものが多いそう。身につけた後は、団員が各自自宅で手洗いするのが掟。漂白剤を使ってはいけないのもお約束です。
演舞では長ラン・学ランの着用に加えて、中に黒Tシャツを着るのがお約束。足元も黒革靴で統一し、白手袋を目立たせるのが応援団の流儀です。
演舞の数は現在5種類。また口上は顧問が時代に合わせて刷新してきました。旧制甲南高等学校から受け継がれている応援歌もあるのだとか。口上の種類は団長が最も多く、演舞や場面に合わせて使い分けます。
応援団として甲南を代表する紳士たるべき振る舞いを自覚するために、団員は日頃から制服に応援団の襟章を着けています。団員の襟章は黒ですが、三役だけはシルバー。応援団を率いる誇りが輝きます。
応援団の練習時間は昼休みの20分。週3・4回ほどを目安にグラウンドで演舞や口上の練習をしています。細かな指導は、先輩から後輩へのマンツーマンが基本。練習の最後は「押忍!」の掛け声で気合を入れるのが伝統です。
甲南における応援団とは委員会のひとつのような位置付け。団員の中には、他の委員会やクラブ活動を両立させている者も多いそう。例えば現在の団長は、自治会(生徒会)の文化祭委員長と少し前まではテニス部の副キャプテンも兼任。甲南のためにできる限りを尽したいという想いを抱く生徒が、応援団には集まるようです。
応援団員インタビュー
72代団長 壷内君
高校3年生
伝統ある応援団が甲南の顔になることを目指す
応援団の活動で一番気合が入るのは灘甲戦です。新入生歓迎会などでは講堂の舞台で演舞を披露することが多いのですが、灘甲戦では全ての種目を回って応援。基本となる「三三七拍子」と「七拍子」の演舞に加え、野球応援用の演舞「オンリーファイブ」なども行います。今年の灘甲戦ではオンリーファイブで応援した途端に点が入るという奇跡が起こり、会場がとても盛り上がったのを覚えています。
灘甲戦で僕らが演舞を始めると、一気に「おおー!」という具合に周りの注目が集まります。灘校生はもちろんのこと、甲南生も僕らの演舞を間近で見る機会は少ないので、迫力に驚くようですね。僕が応援団に入ったのも、小学6年生のときに遊びに行った甲南の文化祭で応援団の演舞を見たのがきっかけでした。熱い心を持った漢たちだという印象を受け、憧れを抱きました。
応援団長としての抱負は、やはり伝統あるこの応援団を、甲南の顔となるような存在にしていくことです。応援団の口上に「六甲の麓に聳え立つ 瀬戸の海を庭に持つ 天下統一志す 甲南健児の意気を見よ」という文言があるのですが、この意味を僕は「男子校として他校に負けない漢気・魂があるのが甲南だ」と捉えています。また、そんな甲南を代表する応援団だと言われることをめざしていきたいです。
副団長 丸尾君
高校3年生
誠心誠意で互いに戦えるよう、想いを込めて口上を述べる
中学時代のテニス部の先輩が高校に進学して応援団に入り、その姿に憧れて自分も高校生になったら応援団に入りました。先輩から副団長に指名された時は、声に自信があったので嬉しかったです。ただ僕は早口になる癖があるので、口上が聞き取りやすい壷内が団長に選ばれたのは納得でした。団長を支え、ときに代理を務めるのが副団長の役割です。
応援団では、文化祭で演舞を披露した後に、団旗継承式・任命式を行います。次の三役の名を呼び、長ランを渡した後、新メンバーで演舞を披露します。事前に指名はされていたものの、改めて副団長という立場になったことに感動し、自分も来年はこんなふうに後輩に託せるようならなければという思いに身が引き締まりました。
副団長の口上に「我ら降魔の剣手に取れば 妖魔散じて影むなし」という言葉があります。僕らが全力で応援することで雑念がなくなり、誠心誠意で互いに戦うことができるようになるという意味だと思うので、そうなるよう思いを込めてこの口上を述べています。
普段は応援する側の僕らですが、灘甲戦では選手として試合にも出場するので、応援される側も経験します。僕と団長はテニス部にも所属しているのですが、応援団の演舞に鼓舞され「絶対に勝ってやる!」という気持ちになりますね。応援団と選手の両方で燃えることができるので、灘甲戦はやはり僕らにとって特別な行事かもしれません。
本部長 横山君
高校3年生
14代目から受け継がれている長ランが誇り
僕は高校2年生からの入団です。中学時から憧れはあったのですが、なかなか思い切れなかったんです。ですが高校1年生の文化祭で演舞を見て、やっぱり男らしくてかっこいいなと。当時はコロナ禍でオンラインでの映像配信だったのですが、長ランの刺繍にも憧れて入団を決意しました。そんな僕が本部長に指名されたのは予想外でしたが、14代目から受け継がれている長ランが僕の誇り。団のマネジメント役として頑張りたいです。
本部長の口上に「一騎当千の強者ここに血盟して金蘭の契りを結ぶ」というのがあり、副団長の口上が続いた後に「甲南高等学校応援団 見参」と唱和します。迫力があってとても好きなところです。大きな声で口上や応援を発することで会場を盛り上げ、みんなの意識を高めることができる応援団の活動にやりがいを感じています。
突撃隊 中原君
高校2年生
ブラスバンド部と共演する質の高い応援に挑戦したい
僕は切込隊長的に口上でも先陣を切る役割を務める、突撃隊の一員です。普段は一団員ですが、三役や親衛隊長・突撃隊長が試合に出ている場合などは、チームに関わらず代理を務めることがあります。今年の灘甲戦では選手としての出場はなかったのですが、試合に出ていた親衛隊長の代わりに応援を頑張りました。
灘甲戦のように試合の応援を行うときは、選手はもちろん応援に来た生徒や保護者の皆さんから「応援ありがとう」とか「すごく素敵だった」など直接言葉をもらえるので、すごくやりがいを感じます。特に灘甲戦で引退する先輩方も多いので、可能な限り声を張り上げ最後の試合に悔いが残らないようにという思いで応援しました。
僕は先輩からの勧誘がきっかけで入団したのですが、普段は優しい先輩が演舞となるとスイッチが入って引き締まった姿を見せるのに憧れてきました。今後挑戦してみたいなと思うのは、ブラスバンド部との応援です。応援団には太鼓しかないので、管楽器が加わるとプロ野球のような質の高い応援ができるのではないかと思うんです。僕らの代で実現したいです。
親衛隊 堀井君
高校2年生
応援団の一員として、男らしく振る舞えることを目標に
親衛隊というのは団旗や団員を守るという位置付けのチームです。中原君と僕は今年から応援団に入りました。応援団というと上下関係が厳しいイメージがあると思うのですが、そんなことはありません。僕は最初なかなか演舞の動きを覚えられなかったのですが、先輩方が丁寧に教えてくださったおかげで、成長できたと感じています。
漢らしくてカッコいい先輩方のもとで、僕自身も応援団の一員として、男らしく振る舞おうと感張っています。演舞を見た人から「カッコよかった!」と言われると嬉しいですし、「応援ありがとう」と感謝されるのが何よりのやりがいです。
顧問 藪上 遼介先生
歴史が続く応援団
今後は応援の幅を拡大
昨年度に顧問を引き継いだ際、コロナ禍の影響で、生徒間で次の代に引き継げていなかった演舞や口上があることに気付きました。そこで長年顧問をされていたご退職後の先生に相談させていただいたり、応援団OBの同級生や先輩たちにも演舞の動きを再現した動画を送ってもらったりして、復活できた演舞や口上があります。卒業生など多くの方に支えられ、応援団の歴史が続いていることを実感しています。今年に入ってからは生徒たちと、今後は朝の挨拶活動や清掃活動など、応援の幅を広げていこうと話し合っています。