ガリレオへの第一歩!スーパーJコースの研究活動「科学探究」常翔学園中学校・高等学校
ガリレオへの第一歩!スーパーJコースの研究活動「科学探究」常翔学園中学校・高等学校
学園創立100周年を迎え「常翔気流に乗ろう」をタグラインに進化を続ける常翔学園中学校・高等学校。なかでも注目を集めているのが、2022年度に1期生を迎えた「スーパーJコース」です。最難関大学への現役合格をめざすこのコースでは、中学2年より研究活動「科学探究」がスタートします。11月某日に開催された「科学探究」の様子をレポートするとともに、スーパーJコースの学びの特徴をご紹介します。

スーパーJコース 学びの特徴 その1

ゼミスタイルの研究活動「科学探究」

「科学探究」は、スーパーJコースに在籍する中学2年生を対象に、週1回のペースで放課後に開催される研究活動です。理科教諭が中心となり4ゼミを開講。生徒は1学期の間にゼミを回って、先生から説明や簡単な体験を受けたうえで、2学期より所属を決定して研究活動に取り組みます。

大学のゼミのように大きなテーマこそあれ、具体的な内容やその方法については生徒に委ねられているのが「科学探究」の特徴。生徒自身が自由に考え・行動し、トライアンドエラーを重ねながら自分なりの答えを見つけることが狙いです。

活動紹介1ロボットプログラミングゼミ

正解は一つじゃない。新しいプログラムを創ろう ロボットプログラミングゼミ

理科教諭の岡本先生が開くゼミでは、自立型ロボットのプログラミング操作に挑戦します。ロボットプログラミングキットを使用し、iPadでプログラミングや操作を実践。どのような動きをロボットにさせるかを、自由に試行錯誤できるゼミとなっています。

取材したこの日は「ロボット相撲」をテーマに、ロボット同士が対戦する動きのプログラムに生徒たちが挑戦。ロボットに取り付けられた4種類のセンサーを活用し、iPadのパラメーターに表示される数値をコントロールしながら相撲の動きになるよう挑戦していきます。

先生はセンサーの使い方などは教えてくれますが、プログラム設計については「自分の頭で考えよう!」と見守る姿勢。生徒たちは「あれ、なんでこうなるの?」「こうしたらどうかな」などと仲間と議論しながら試行錯誤。衝突回避動作を応用した突っ張り技や、色を判別するセンサーを利用した土俵際での踏ん張りなど、相撲らしい動きをプログラミングしていきました。

担当の岡本先生は、公立校勤務時代から20年以上ロボット教育に携わってきたベテラン教諭。ロボットコンテストにも積極的に参加している常翔学園の情報技術研究部の顧問でもあります。

ゼミの狙いを先生は「子供たちは答えを一つだと考え、それを知りたがります。ですが私がロボットゼミを通じて生徒に伝えたいのは『プログラムの答えは一つじゃない。いくつでも創り出せるんだ』と言うことです」と説明します。

生徒たちも「ロボットが動く、その中身を自分で考えることが面白い」「やっているうちになんとなくわかってくる感じ」「行き詰まったら初心に戻る。その繰り返しです」と、純粋にプログラミングを楽しんでいる様子です。ゲームを攻略する感覚でプログラミングや操作に熱中する、彼らの未来が楽しみになりました。

理科教諭:岡本先生

スーパーJコース 学びの特徴 その2

常翔STEAM+科学探究による相乗効果

常翔学園中学校・高等学校では、中学3年間の総合的学習の時間に「常翔STEAM」という探究・キャリア教育を行っています。STEAMの名の通りScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathmatics(数学)を横断する学びになっており、その中にはロボットを使ったプログラミング教育も含まれています。

常翔STEAMは全コース生が学べるプログラムですが、スーパーJコースではさらに「科学探究」にも取り組むことで、各教科の授業や常翔STEAMで得た知識やスキルを「課題の解決方法を考える力」へと発展させようとしています。

活動紹介2デザイン探究ゼミ

自分たちが本当に使いたい学校カバンを考える デザイン探究ゼミ

芸術科教諭の藤田先生が担当するゼミは、プロダクトデザインに挑戦する内容です。学校の中で不便に思う場所やモノをリサーチすることからスタートし、現在は学校カバンのリニューアルデザインに取り組んでいます。

生徒たちから最も多く出ていたのが「カバンの厚みを減らしつつ軽量化したい」と言う意見。毎日たくさんの教科書を持ち歩いているからこその当事者意識で、リュック型や縦型への変更や、素材からの見直しなど、さまざまなアプローチを検討していました。また「防水機能を高めたい」「スマートに収納できるようポケットを多くしたい」などのアイデアを出す生徒もいます。

それぞれのアイデアをもとに紙に起こしたデザイン画は、デザインやアートに興味がある者が集まっただけにどれも上手。さらに生徒たちはデザイン画をiPadで撮影してデータ化し、プレゼン資料の作成も進めていました。また中には、フリーソフトを使って3Dデザイン画を起こしている生徒も。入り口はデザインですが、”好き”や”得意”を活かして自由な表現に挑戦できるのも「科学探究」ならではの魅力です。

担当の藤田先生は「私自身が大学でプロダクトデザインを専攻していたこともあり、このゼミを企画しました。スーパーJコースの生徒たちは発想力が豊かで、個性のはっきりしている子が多いので、デザイン面でも予想以上の才能を発揮してくれています」と話します。

各生徒のデザインアイデアは、3学期に発表予定です。「もしかしたらそこで『その軽量化カバンのアイデア、本当に軽量化できるか実験してみよう』と言う意見が他のゼミの子から出て、プロジェクトに発展する…というようなことになれば素敵ですね」と藤田先生は期待を述べます。

「科学探究」は今年からの取り組みのため可能性は未知数ですが、科学とデザインの融合も大いに期待されています。

芸術科教諭:藤田先生

活動紹介3水圏環境探究ゼミ

本当の共生ってなんだろう? 水圏環境探究ゼミ

理科教諭の花本先生が担当するのは、学校のすぐそばにある城北ワンド(淀川の水が陸地に入り込んで池のようになっている場所)での観察をベースに、生き物の共生について考えるゼミです。

外来生物の繁殖などが要因で淀川の生態系の崩れていることを、ワンドの観察を通じて確認した生徒たち。取材日はワンドに生息するブルーギルをはじめとする外来生物が、なぜ日本に来たのか、生態系にどんな影響を与えどんな問題を生じさせているかについて、ショートプレゼンを交えながら意見交換をしていました。

「ハブの駆除を目的に輸入されたマングースだけど、ハブの天敵にはならず、ハブより捕まえやすい小動物を食べるようになった」

「ヒアリは原産地の南米では天敵の蝿が生息するため生態系のバランスが保たれている。でも海外に広がると天敵がいないため増殖して危険。アメリカでは農作物に深刻な被害が出ている」などの発表だけにとどまらず、「琵琶湖の小魚を捕食することで問題となったブラックバスは現在数を減らしている。でも琵琶湖の小魚の数が回復しているかは謎」など、新たな疑問にも気付いた生徒たち。

花本先生は「今日のゼミで生徒たちは、どの外来生物も、人間が良かれと思って食用やペット目的で輸入した共通点があることを認識してくれました。そこから『どうしたら日本の在来生物と本当の意味で共生できるんだろう』という問題意識を持つようになってもらえればなと考えています」とゼミの狙いを説明します。
「大切なのは答えがない問題に対して解決策を考え続けようという意志と思考力です。生徒たちが将来、経済活動を支えていく人材に成長したときに、こうした問題意識を持ったうえでモノや仕組みをつくる人になって欲しい。このゼミがそのきっかけになれば嬉しいですね」。

理科教諭:花本先生

活動紹介4サイエンスチャレンジゼミ

教科書に書いてある法則を試してみよう サイエンスチャレンジゼミ

理科教諭の持田先生が担当する【実験ゼミ】は物理や科学の実験に取り組むゼミです。生徒がやりたいと思う実験に自由に取り組むことができるのですが、既製品の実験ツールを使うのはNG。学校の理科室にある道具や薬品や、身近な道具で工夫していくのがこのゼミの醍醐味です。取材日は3つの実験が進行中でした。

1つ目は「惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描く」というケプラーの第一法則に迫ろうと、まずは水の入ったバケツを回しながら遠心力を体感しようとしている生徒たちの実験です。
2つ目は、酢酸ナトリウムの過冷却液体が固体に変化する際に熱を放出する性質を利用した、繰り返し使えるカイロを作ろうという実験です。酢酸ナトリウムをホットプレートで溶かしている生徒の周りにはほのかに酸っぱい匂いが…。
3つ目は、鉄球を磁石にぶつけることで、球が超高速で飛び出すガウス加速器の応用をめざす実験。磁石ではなく電磁石を使うことで、レールガン(電磁加速砲)のように球を飛ばしたいとの発想で、まずはレールの角度や高さを試行錯誤していました。

面白いのは、3つの実験全てに生徒が入れ替わり立ち替わり参加していたいこと。思いついた意見は、すぐ声にして議論。手作りの実験道具の形も、どんどん変わっていく勢いがありました。

担当の持田先生は「スーパーJコースの生徒たちは、受験勉強の中でいろんな科学の法則を学んできているので知識があります。『では、それを自分たちで証明してみよう』というのが実験ゼミのスタンスです」と説明。

「科学探究は今年からの取り組みですが、来年以降は中学2年生だけでなく3年生も継続して取り組める活動にしたいと考えています。中学生のうちにトライアンドエラーの経験をたくさん積むことがで、高校でガリレオプラン探究を始める頃には、自分たちで実験設計ができるように成長してほしいですね。また3年生が2年生を指導することによる成長も期待できると思っています」

理科教諭:持田先生

スーパーJコース 学びの特徴 その3

大学の研究室と連携した「ガリレオプラン探究」

高校のスーパーJコースでは、常翔STEAMや科学探究の発展系と言える「ガリレオプラン探究」がスタートします。隣接する大阪工業大学をはじめ同一法人大学の研究室と連携しながら、より高度な課題探究に取り組むことができるため、スーパーJコース生に対しては、科学探究で見出した課題や仮説について、実験や調査を通じて具体的なデータを収集するなど、大学の学部生レベルの研究に取り組むことが期待されています。

またガリレオプラン探究で取り組んだ研究テーマは論文へとまとめる予定。研究成果をもとに、国公立大学推薦入試に挑戦することも検討されています。

総括

教育理念に基づいた探究・キャリア教育

常翔学園中学校・高等学校の学びの特色は、教育理念「自主・自立の精神と幅広い『職業観』を養う」に基づく、独自の探究・キャリア教育です。自分で考え行動できる生徒を育てるべく、20年近く前から高校にて探究・キャリア教育に取り組んできた同校は、大阪で一、二を争う特色教育先進校としての実績を重ねてきました。

さらにその発展系として生まれたのが、中学での『常翔STEAM』や今回取材した『科学探究』、高校での『ガリレオプラン探究』です。2022年度に1期生を迎えたスーパーJコースは、この全てを活用し、中学からレベルの高い実践的な学びに触れていくことができます。

自由奔放でどんどん自分たちで意見を出せる、自主性の高い生徒が集まっているスーパーJコース。常翔学園中学校・高等学校には、生徒の個性や多様性を尊重し、伸び伸びと才能を育む環境が整っていると言えるでしょう。