三田学園中学校・高等学校

人間力をトータルで養う 一貫性のある学び GCP

発見!私学力
三田学園先生インタビュー生徒インタビュー中学受験兵庫関西共学校私立中学探究GCP中学生英語

人間力をトータルで養う 一貫性のある学びGCP 三田学園中学校・高等学校
人間力をトータルで養う 一貫性のある学びGCP 三田学園中学校・高等学校
三田学園中学校では、中学1・2年生で週3時間、中学3年生で週2時間の探究活動『探究SGメソッド』が行われています。生徒が将来を切り拓いていく力を身につけるために実施されている「総合学習/総合探究」、「STREAM」、「GCP」の3本柱から、ココロコミュでは「GCP」に注目。生徒がコミュニケーションを大切に英語で会話する授業内容やGCPの目標、受講が2年目となる生徒の変化や成長について、先生と生徒それぞれから話をうかがいました。
探究SGメソッド 探究SGメソッド

REPORT
【探究SGメソッド/GCP】[中学2年]

世界を知り、自分の意見を伝えて、英語でコミュニケーション

中学2年生のGCP授業では、「マイホーム」をテーマに、祖父母の家での好きな場所、安心感を与えてくれるペットなど少し考える必要のある質問が出され、生徒たちは英語、ときに日本語を交えながら気軽に会話を繰り返しました。英語はあくまでツールであり、大切なのは自分の意見を伝え、相手とコミュニケーションを取って理解し合うこと。席を変え、相手を変えながらそれぞれの話を聞き、自分も発言することは、多様な価値観を知り合うこと、しいては世界的な視点、共有・共感する力を養うことにつながります。
生徒が理由や方向性もわからないままに授業を受けるのではなく、世界の状況を知り、恵まれた日本や自身の環境を知ったうえで考えたことを伝え、日本語や英語で話し合い、行動に移していく。理想だけではない三田学園の探究学習には、生徒の目指す道がはっきり見え、学校としての意思、今後の展開に期待が持てました。

Teacher Interview
5年間のGCP
自分で気づき発見して、進路を開拓

社会科・主幹教諭
鈴木 応男先生

中1で「知る」、中2で「考える」
中3で「行動」して高校で「実践」する

― 今回はGCP(Global Competence Program)についてうかがいますが、まずはGCPを含む「探究SGメソッド」という三田学園の探究活動全体について教えてください。

鈴木先生
SGメソッドは、さまざまな経験・体験を通して自分がチャレンジしたいことを見つけて追求していってもらうことが狙いです。従来の「総合学習」、モノづくりの「STREAM」、グローバル社会で必要とされる能力を育てる「GCP」の3分野の中から、より自分らしさを発揮できる分野を中学3年間で見つけ、それをもとに高校生で自分の進路を開拓していくことにつなげていってほしいと考えています。昨年よりスタートさせ、現中2生が最初の学年です。

― では、SGメソッドの一つ「GCP」はどのようなものなのでしょうか。

鈴木先生
GCPには生徒たちに身につけてもらいたい6つの力がありますが、それを前面に押し出して「今日はこういうテーマでやります」「これをこのように学びなさい」と伝えることは一切していません。GCPは最終的に5年間続きますが、その過程で自分が気づき発見をしていく仕掛けになっています。
例えば、6つの力の中の一つ「エモーショナルインテリジェンス」は、GCPで最も大事な部分です。「恥ずかしい」、「自分は人にどう思われているのだろう」と自分でブレーキを踏んでしまうことはよくありますが、GCPの学びではブレーキを踏む必要が全くなくて、自分が感じたことや思ったことをしっかり人に伝えていけるようになっていきます。エモーショナルな心の力を、この5年間の学びの中でしっかりと身につけてもらいたいのです。

もう一つ重視しているのが「マルチリンガルスキル」。今日も授業で生徒たちが英語を使っていましたが、決して正しい英語を求めているわけではなくて、コミュニケーションのツールとして英語を抵抗感なく使う機会をGCPの授業の中に取り入れています。最初は生徒たちも「英語の時間なんだ。英語を使わなければならないんだ」という意識が強かったのですが、そもそもマルチリンガルスキルを養うわけですから、英語だけを使う必要はないのです。最終的にアウトプットする段階で英語を使うルールになっているだけです。2年目の中2になると生徒たちもそれがわかってくるので、考える段階では日本語で考え、アウトプットは英語で話します。少しずつ使う単語を増やしていきながら、自分の考えを伝えるトレーニングをしていくのです。

― 先ほどは2年目の授業だからこそ、自由に楽しそうに英語や日本語で会話できていたわけですね。

鈴木先生
実はGCPは中1と中2で同じ内容を繰り返します。今日、学習した内容を1年前にもやっていて、それを2年繰り返すことで昨年より今年の自分がどれだけ成長したのか、昨年はここまでしか考えが及ばなかったのに中2になって考えが深まっているなど生徒自身が気付けます。

― 生徒が好き勝手に話すだけではなく、テキストがあり、仕組みがきっちりしているのも魅力だと思いました。

鈴木先生
GCPは専門のコンテンツを利用しています。中1のテーマは「知る」。中2は「考える」。中3では世界に対してどういうアクションができるのかを考えるといった「行動」まで進みます。高校生では、その「行動」をグローバルリーダーシップのもと「自分が行動」する。例えば、ボランティア活動やイベント企画などにつなげていきます。人間力をトータルで養っていく一貫性のある学びがGCPです。

従来の教育とは異なる
これから必要な教育を三田学園式で

― GCPではいろいろな力が養われますが、三田学園としてこういうプログラムの必要性を感じられた理由は?

鈴木先生
総合学習全般に言えることですが、従来の教育とこれから必要とされる教育は全く違います。より偏差値の高い大学へ生徒たちを送り出すよりも、大学卒業後のさらに先の人生で生徒がどのように活躍するかに重きを置く教育が求められています。この6年間で人間力、将来生きていく力をしっかりと養い、資質や探究心を中学段階から伸ばしていく。そのためのプログラムとしてGCPやSTREAMを取り入れ、今進めている段階です。

― 大学受験への考え方が変わったわけですね。

鈴木先生
大学受験は生徒自らが自走して実現してもらいたいと考えます。学校が大学受験に目標を置いてしまったら、そこが生徒のゴールになり、それ以上伸びません。大学よりもっと先に生徒たちの目標を置き、そこへ至る道筋を生徒自らが考えて、「この夢を実現するなら中3の段階ではここまで到達しておきたい、高2でこういう問題は解けるようになっておきたい」と自身で判断していく。それが理想の形です。

― GCPを受講して2年目の中2生を見て、やはりこういった授業は必要だと思われますか。

鈴木先生
考えようとする力は間違いなく伸びているので、今後はそれを自分の普段の生活や勉強に反映していけるかだと考えています。3年目、4年目となったときに生徒たちがどう変わっていくのか。教員側が「これをしなさい、あれをしなさい」と言い続けるのではなく、自分たちで考えて行動していく状況になるかを今は待っている段階です。
印象的なこととして、先日、高校生のGCPですごろくを作るアクティビティがありました。すごろくのマス目に止まったら、「あなたはどういう行動を取りますか」という選択肢を自分たちで考えるのですが、その中に「誰々を傷つけるのがいいか、それとも誰々に傷つけられるのがいいか」という選択肢を作った生徒がいました。今までなら「なぜそういう考え方をするのか」と追及したはずですが、今回はクラスの全員に「この選択肢はグローバルスタンダードな質問だろうか?」と問いかけました。「世界の誰が見ても楽しめるすごろくになっているか」を全員に考えさせたうえで、それぞれのワークをもう一度見直してもらったのです。高校生ではそういう授業ができるようになってきています。

― 良い悪いではなくて、グローバルスタンダードの視点で考えてもらうわけですね。

鈴木先生
それが従来はできてこなかったことです。グローバルスタンダードの発想を知るきっかけ、考えるきっかけがGCPの中にありますから、一気に大きな成長はできなくとも、少しずつ成長はしているはずです。抵抗なく英語を使ってコミュニケーションができるという点は間違いなく伸びていますし、英語を使う楽しさもようやくわかってきたように思えます。
実は生徒たちは、GCPの資質(コンピテンス)の部分を数値化していくアセスメントも定期的に受けて、コミュニケーション力や人に伝える力がどれだけ伸びたかを測定しています。半年前との違いが数値で出てくるので、生徒たちもそれを見て自分の成長を楽しみにし始めています。

― GCPにおける他の授業との連携などは考えられていますか。

鈴木先生
GCPが起点となって先生方の授業の手法を劇的に変化させたいと思っています。従来型の授業は先生がすべてを作り上げて、生徒は受け身ですが、GCPの授業は先生が授業のきっかけを作り、生徒たちが自分で授業を作り上げていく理想的なものです。GCPは生徒主体の学びがプログラムの柱にあるので、そうした生徒主体の学びをどの教科でも行っていきたいと思っています。

― お話をうかがっていると、今後の社会を生きる子どもたちには、特に求められる力がありそうですね。

鈴木先生
これは三田学園だけではなくて、全国の私立中学校は同じ悩みを持っているのではないかと思いますが、中学受験をして入学してきた生徒たちは、正解を短絡的に求めがちです。自分の力で課題を設定し、その課題を解決するためにどうすればいいのかを考えるといったサイクルを避けて通りたい生徒が多くいます。
しかし、これからの社会では課題設定、課題解決は避けて通れない道。こういった生徒たちのマインドをどうすればリセットできるのかは、この数年本校の中でも大きな課題になっていました。GCPだけではありませんが、総合学習全般を通して凝り固まった考え方をほぐして、将来に対応できる力を養っていきたいと思います。

Students Interview
世界を知り、周りを知って、未来へ活かす

中学2年 A発展コース
Tさん / Hさん

― GCPの授業の感想からお願いします。

Tさん
GCPは世界の文化や食について知れ、普段の授業とは違って英語でいろいろ学べることに面白さを感じています。先生が出したテーマについて、隣の人と机を合わせて語り合いますが、そのときに英語を間違えても気にせず話せるようになりました。英語の時間とは雰囲気が全く違うので、それもできるのかもしれません。印象的だったテーマは「リラックスできる場所」です。人によって安心できる場所は違うことを知れ、様々な意見があることもわかりました。

Hさん
中1で最初に授業を受けたときは、「間違えてもいいよ」「グローバルに考えよう」といきなり言われたので授業についていけていない気がしましたが、「間違えてもいい」という言葉には安心できて、いつもに比べて気軽に人に意見を言えたり、英語でも話し合ったりできるようになってきました。普段一緒にいるクラスの友達とは、意外と好きなものや家族の話をしていなくて、GCPの授業で相手のことや班の仲間のことが知れることも多く、そこが楽しいです。
印象的だったのは、世界のことを知って理解するために、「世界の貧困と幸福度を見てみよう」といったテーマを扱ったときです。班に分かれてそれぞれの国でどうすれば幸福度が上がるかを考えたのですが、全然知らない国や名前しか聞いたことがない国で深刻なことが起きていたり、戦争が起きていたり、食べ物が足りなかったり、幼い間に結婚しなければいけなかったりという問題があることを知って衝撃を受けました。

― 授業での発見や刺激が多そうですね。

Tさん
世界のことを知ると、日本は恵まれているんだといつも思います。

Hさん
私も世界のことについて知るたびに、日本は平和なんだ、GCPという授業を受けられる環境に自分がいることはすごいことなんだと実感します。授業を受けたことで世界を知り、興味を持てて良かったし、GCPの授業の目的が少しわかったような気がしました。

― GCPは中1と中2で同じ内容を繰り返すそうですが、自分自身の昨年との違いは感じますか。

Hさん
最近、授業を受けていて思ったのは、去年は先生から指示されたことしかできなかったのですが、今年は自分が考えて行動でき、疑問に思ったことを積極的に質問できるようになりました。それはGCPを受けていく中での成長だと思います。相手のことを知りたいという気持ちが自分の中にあるので、GCPの授業に慣れてきたんだと思います。

Tさん
昨年はGCPの授業が嫌いでした(笑)。英語で言われてもわからないし、聞いているだけのことも多かったんです。でも今年はみんなが積極的に話し合うようになって、面白くなってきています。少しずつ英語力もついてきたのか、英語科の授業でも英語に抵抗がなくなってきました。

Hさん
GCPでは「間違ってもいいよ」「大丈夫だよ」と言われているので、思い切って習った英語を話せます。その経験をしたことで、今までは英単語さえわかっていたらどうにか伝わるだろうと思っていましたが、自分の考えたことを単語ではなく文法を考えた英文で伝えたいと思え、話すようになってきました。英語の授業でもGCPでも友達に英語で伝えられることが、英語を学んでいく上でのモチベーションになっています。

― 今後この授業で学んだことをどのように活かしていきたいですか。

Hさん
GCPの授業で世界の貧困を知って、ボランティア活動としてどんな活動がされているかなどに気づき、やってみたいと思うきっかけになっています。他の授業を含めて新しいことを知ることは、これからの自分の考えややりたいことに影響していくのかなと思っています。

Tさん
GCPで驚いたのが、世界にはトマトを投げるお祭りがあったことです。世界にはいろんなものがあると知れたことで、相手を否定するのではなくて、まずは相手を知り、いろんな考え方がある、いろんな習慣があると理解することが大切だとわかりました。そういう考え方を今後も忘れずにいたいと思います。

Teacher’s Comment

家庭科/中学2年担任 大島 麻里先生

GCPで広い心や視野を
広げていってほしい

中1でGCPがスタートした当初は、生徒たちが英単語をあまり知らず「間違ってもいい」と言われても間違いようがなく、なかなか話し合いが難しい状況でした。それがGCPの外国人講師も英語に日本語を混ぜて話してくれ、英語の授業での学びも反映されてきて少しずつ英語の割合が増えていき、臆することなく話せるようになってきています。GCPは2~4人程度で意見交換する話し合いの機会が圧倒的に多く、英語に慣れるのも早いです。教科書には世界の知識の他にも多くの質問事項がありますから、お互いを理解するために興味持って話し合っていることはとても嬉しいです。
GCPを担当する外国人講師も昨年と今年では違う国の方が派遣され、それぞれ各国を旅してきた話や世界の広さや多様な文化の存在を繰り返し伝えてくださっています。またクラス中でいろんな意見交換する中で「こんな意見があるんだ」「自分が当たり前ではないんだ」と生徒は知るようで、今後いろいろな人と関わっていくときに否定から入るのではなく積極的に関われることにつながるのではないかと思います。GCPで広い心や視野をどんどん広げていってもらいたいです。