発見!私学力 常翔啓光学園中学校の3学年縦割り学校行事

学年ごとの宿泊行事、啓光祭や体育祭のほか、幼稚園との交流まで、個性豊かな学校行事で、生徒の人間力を鍛えていく常翔啓光学園中学校。同校が学校行事の中で特に大切にしているのは、中学3学年を縦割りにした学年混合班を作り、上級生は下級生を、下級生は上級生の姿を見ながら、さまざまな経験を積んで知恵や知識を蓄えていくことです。今回は、中学校主任である森先生と、同校生徒会の会長・副会長に、常翔啓光学園らしさや伝統を作っていく学校行事について取材しました。
TEACHER&STUDENTS INTERVIEW
森先生 [中学主任 / 国語科]下内くん[中学3年・特進選抜コース・生徒会長]竹内さん[中学3年・特進選抜コース・生徒会副会長]
森先生
下内くん
竹内さん

感じて人として成長する体験型行事

ココロコミュ
Question
常翔啓光学園では、年間を通して多くの学校行事が行われていますね。
森先生
Answer
本校の行事は体験型が多く、宿泊行事だけでも中1は大山登山、中2は徳島の阿南海洋訓練、中3は四万十川修学旅行で2泊のホームステイをします。大阪との生活の違いや地元の人とのふれあいを体験して、その中では良いことも嫌なこともたくさんあるかと思いますが、そうした心の振れ幅が人間の感動につながります。学校なので勉強も大切ですが、体験型行事でいろいろなことを感じて人として成長してほしいと考えています。 また、「オリエンテーション合宿」や「体育祭」「球技大会」は、すべて3学年を縦割りにした班で取り組み、3年生がリーダーとなって、後輩の2年生、1年生を引っ張っていきます。
ココロコミュ
Question
縦割りで取り組む学校行事が多いことはめずらしいですが、3学年が交流することを重視されてきたのですか。
森先生
Answer
20年ほど続けている体育祭の「啓中ソーラン」に縦割りで取り組んでいて、3年生がリーダーになって下級生を指導します。その土台があったから、できたことかもしれません。
ココロコミュ
Question
3学年の縦割りの班は、4月の「オリエンテーション合宿」で決まるのですか。
森先生
Answer
中学1年、2年、3年の男女合わせて10人前後で1つの班をつくります。「オリエンテーション合宿」だけでなく、その後の「体育祭」も、「啓中ソーラン」も、「球技大会」も、すべて同じ班で競技します。4月の「オリエンテーション合宿」の班が1年間続くのです。
ココロコミュ
Question
学年が入り混じる縦割りの良さをどこに感じられますか。
森先生
Answer
縦のつながりができると、それは3年間では終わりません。例えば、中3生が高1になったら高校に知っている先輩がいて、高2・高1・中3・中2・中1とつながります。中1から高2の先輩を知っていることは、公立中学ではあまりないことなので、中高ある学校ならではだと思いますね。
オリエンテーション合宿
オリエンテーション合宿
オリエンテーション合宿
オリエンテーション合宿
オリエンテーション合宿
毎年4月に行われる「オリエンテーション合宿」。3学年を縦割りで班に分けて、寝食を共にする。入学して1週間ほどの1年生に2、3年生が、定期考査や職員室の入り方、行事や部活動など、学校生活について詳しく紹介する。

楽しさと責任感が生まれる
先輩後輩とのつながり

ココロコミュ
Question
下内くんと竹内さんは、先輩や後輩と交流する学校行事の良さをどのようなときに感じますか。
下内くん
Answer
「オリエンテーション合宿」では、2、3年生の先輩たちが学校のことを優しく教えてくれて、なおかつ自分が2、3年生になった時の後輩との接し方や先輩とのやり取りの仕方もよくわかるので、とても役に立ちました。公立の中学なら行事が少なかったり、先輩や後輩とのつながりも少なかったりするかもしれませんが、この学校は学年が違っても知っている人が増えて、毎日学校に来るのが楽しくなります。
竹内さん
Answer
反対に3年になると、どんどん責任感が出てきます。例えば、「体育祭」で「啓中ソーラン」をやるときも、なかなか夢中になってくれない後輩にどうやって教えるかを悩みました。でも、私も1年の時はまだよくわかっていなくてやりたくなかったし、そんな中で3年の先輩たちが一生懸命教えてくれたんです。だから、同じ目線で踊ってあげたり、直接手足を動かしたりして、自分が1年生だった時に先輩から言われたことを思い出しながら伝えました。
ココロコミュ
Question
縦割りの交流の中で、先輩の姿を見ながら、段階を追って成長できるわけですね。
森先生
Answer
立場が人を育てる部分もあるんだろうなと思います。特に彼らのような生徒会活動をする生徒や、「啓中ソーラン」「オリエンテーション合宿」のリーダーなど、班をまとめなければいけない立場になった生徒は、特に責任感を持って成長します。それ以外でも3年生は、いろいろな場面でリーダーを経験するようにしています。
TEACHER&STUDENTS INTERVIEW
森先生 [中学主任 / 国語科]下内くん[中学3年・特進選抜コース・生徒会長]竹内さん[中学3年・特進選抜コース・生徒会副会長]
森先生
下内くん
竹内さん

先輩が僕らの代までつないできた
「啓中ソーラン」を次の代の後輩へ

ココロコミュ
Question
2年生では、「幼稚園交流」を年に2回体験しますが、これはどのような内容ですか。
森先生
Answer
これは、異年齢交流が目的ですね。「啓中ソーラン」同様、約20年前から続けています。生徒1人が幼稚園児1~2人を担当して、いも堀りをしたり、体育館で遊んだりして、3時間ほど一緒に過ごします。生徒も最初はとてもぎこちないので、いつもディズニーランドのミッキーマウスになるように、と言っているんです。幼稚園児に楽しかったと言って帰ってもらわなければ成功ではないよと。そんな経験は今までにないので、生徒たちは必死になってやりますね。
ココロコミュ
Question
先輩や後輩との交流と、幼稚園児との交流は違うかと思いますが、成長できたことはありましたか。
下内くん
Answer
僕は仲が良くなりすぎて、幼稚園児を混乱させてしまう時があったので、けじめをつけて遊ぶ時は遊ぶ、やる時はやると、メリハリをつけるようにしました。実は僕は、自分が幼稚園の時に、この学校にいも堀りに来たんです。その時、とても優しくしてくれたのを今でも鮮明に覚えていて、自分がやる時も同じようにやらせてもらいました。
竹内さん
Answer
私は幼稚園児に、中学1年生に接するように接してしまい、何を言っているかわかってもらえなかったんです。相手の年齢を考え、相手の目線で話すことが大切だと、体験してよくわかりました。
幼稚園交流
幼稚園交流
幼稚園交流
幼稚園交流
生徒が育てたサツマイモやジャガイモを一緒に掘るなど、普段体験できない時間を過ごす「幼稚園交流」。泣かれたり、逃げられたり、話してもらえなかったりする中で、コミュニケーションの難しさを生徒たちは体感する。
ココロコミュ
Question
伝統になっている体育祭の「啓中ソーラン」は、他の体験学習で学んだことの集大成になるのかと思いますが。
下内くん
Answer
そうですね。先輩方が続けてきて、僕らの代までつないできたものですから、僕らの代で台無しにして終わらせるわけにはいきません。次の後輩へ受け継ぐためにも、1、2年生の時は先輩に協力して、3年生になるとよりいいものになるように全体を導きながら、工夫して作り上げていきました。
ココロコミュ
Question
今年の「啓中ソーラン」はどうでしたか。
下内くん
Answer
最初はうまくいかず、ソーラン委員のリーダーも心が折れかけていましたが、途中で挽回して綺麗に踊れるようになっていったので、みんなもやる気が出て、本番当日はとてもいいものになりました。毎年あれだけいいものが出てくると、自分も伝統を受けついでいるんだという気持ちになりましたね。
ココロコミュ
Question
先生方が見られていても「啓中ソーラン」は感動しますか。
森先生
Answer
そうですね。特に3年間持ち上がった学年がリーダーをしていたら、感動して涙が出そうになってしまいます。一番おもしろいのは高1で、見に来ると大抵は「自分たちの方がよかった」と言って帰っていきます(笑)。 でも、体育祭に高1が来てくれるのも縦のつながりがあるからこそです。先輩にアドバイスを求める中学生もいますし、高校生は外から見た時に「こういうことをしていたのか」と思うようです。
下内くん
Answer
僕も来年は絶対に見に来ますね。後輩たちがどれだけ頑張っているか気になります。今年も先輩が見に来てくれて、「頑張ったな」と言ってもらえてうれしかったんです。
竹内さん
Answer
4月から同じ縦割りの班でやってきたわけですが、その班で取り組む最大のものが体育祭です。「啓中ソーラン」が終わった時に、みんなで達成感を味わいます。
森先生
Answer
毎年、「啓中ソーラン」が始まる前に、入退場門のところでリーダーがみんなに話をするのですが、それですごく空気が変わるといいます。遠くから見ていても、その時に空気が出来上がったなと感じる瞬間があります。
ココロコミュ
Question
それも伝統ですか。
下内くん
Answer
伝統です。3年間やってきましたが、リーダーが話すことで「よしやろう!」と気合いが入ります。「これまで頑張ってきたことを、ここでぶちまけよう」とか、「頑張ってきたから、ここでは必ずうまくいく。練習でうまくいかなかった奴も、ここでは絶対うまくいく」と念を押して僕たちにやる気や勇気をくれます。
竹内さん
Answer
話を聞くだけで、先輩たちのためにも成功させようと思うんです。
体育祭「啓中ソーラン」
体育祭「啓中ソーラン」
体育祭「啓中ソーラン」
体育祭「啓中ソーラン」
体育祭「啓中ソーラン」
体育祭「啓中ソーラン」
中3生だけがダンスパフォーマンス集団にソーランの指導を受け、それを下級生に10日間ほどで教えながら、その年の「啓中ソーラン」を作り上げていく。毎年、体育祭の最後を飾る、全校生徒参加の伝統種目。

先輩と後輩が一つになる機会が多いからこそ
伝統を作っていける

ココロコミュ
Question
常翔啓光学園には伝統が生まれる要素がたくさんありそうですね。
下内くん
Answer
そうですね。縦割りがあり、行事が多くあることで、1・2・3年生みんなの仲が良いことは常翔啓光学園の一番の良さです。先輩と後輩がつながって一つになる機会がとても多いからこそ、「啓中ソーラン」などを成功させることができて、伝統を作っていけます。そこがすごくいいと思います。
竹内さん
Answer
自分が中1の時に2、3年生の先輩方がやって下さったことに直接恩返しはできませんが、自分が2、3年生になった時に1、2年生にしてあげたいと思える。それが伝統を受け継いでいく良さだと思います。
森先生
Answer
電子黒板を活用した授業
先輩後輩との貴重な体験や 自身の成長を語ってくれる2人。
いろんなところから生徒が集まってきますが、学校の空気感のようなものがあって、それを生徒たちが共有しています。行事をすると、僕たち教員があまり言わなくても、この行事はこういうものだと目的を生徒が理解しているんです。「啓中ソーラン」にしても「オリエンテーション合宿」にしても、同じです。もちろん行事の前に話もしますが、学年が上がっていくごとに行事の空気感をつかみ、何を伝えていくべきかを感じているんだろうなと思います。それは生徒にとって、今後もすごく大切なことだと思いますね。
ココロコミュ
Question
先輩の姿を見て、場の空気を理解して、求められることは何かがわかるようになっていくのでしょうか。
森先生
Answer
私たち教員は、楽と言えば楽なんです。生徒たちはやる気も可能性もあるので、私たちがちょっと火をつけると自然と燃えてくれます。最初の火のつけ方、心の揺さぶり方をどうするか。生徒たちが感じたことを考えて行動して、ひとつの行事になっていきます。そこでは悩んだり喧嘩したりもありますが、それも必要なことです。
ココロコミュ
Question
今後も受け継いでいってもらいたいものはありますか。
下内くん
Answer
これからも1、2、3年生の強い絆を大切にしながら、仲良く楽しくけじめもつけて、しっかりと学園生活を送ってほしいなと思います。
竹内さん
Answer
行事を楽しむ時は楽しんで、先輩の言うことを聞く時はよく聞いて、けじめをつける時はつけてということを受け継いでいってほしいです。
森先生
Answer
縦割り行事では、常に3年生に火をつけます。そうするだけで、1、2年生を引っ張っていってくれます。今までもそうですが、今年は自分たちがやらなければいけないという気持ちが起こるんですね。そういう校内の空気感を今後も大切にしていきたいと思います。
学年を縦割りにして体育祭などの行事に取り組む学校はありますが、年間を通して縦割りの同じ班で何度も行事に取り組むことにはめずらしさを感じます。そこに常翔啓光学園中学校の教育の個性が光ると共に、長年取り組んできた成果や生徒の成長、受け継がれている伝統を感じさせられました。社会に出るとさらに求められる縦割りでの交流を、中学生で体験する彼らには自然とたくましさが養われていそうです。