アカハライモリ、アフリカツメガエル、ヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲなどの爬虫類・両生類を飼育し、特性・生態など調査。尾が再生する仕組みを調べ、人工授精の可能性を探る実験に挑んでいる。
海水魚はドロメ、カレイ、サラサゴンベ、淡水魚はドジョウ、ギギなどを飼育。芦屋浜や甲子園浜などの阪神間の海辺や近隣の川・野池にも積極的に足を運び、探究・実験の対象となる生き物を捕まえることもある。
校舎のガラス窓に衝突して息絶えた鳥、裏山で寿命を迎えた野生動物を解剖・清掃・解体し、骨格標本を作製するのが主な活動。“亡骸の獲物”を手軽に入手できるのは、まさに豊かな自然に囲まれた甲南ならでは。
水族館のショップやお土産コーナーで人気があるスケルトンの骨格標本も作ってしまう甲南の生研。魚類だけでなく、爬虫類・両生類、ピンクマウス(ハツカネズミの仔)も透明骨格標本の対象に。
電子顕微鏡を所有する学校は全国でも数校程度。その恩恵をフルに活かしてサイエンティフィックな活動を行う電子顕微鏡班。土壌の微生物や池の水に潜む菌などを調べている。
採取した様々な昆虫の種類や特徴、生態を調べ、未来に受け継ぐ標本を作るのが主な活動。豊かな木々と草花が生い茂る裏山は昆虫のパラダイスであり、昆虫班の部員にとってもパラダイス。
小鳥や両生類・爬虫類の餌となるミルワーム。それを飼育して増やす取り組みを行っているのがミルワーム班。飼育している生き物の餌になるので、生研内のSDGsの一端も担っている。
*他に「ゴキブリ班」「写真班」「封入標本班」も活動中!
Q.中学入学後、なぜ生物研究部に入部しようと思ったのですか。
Gくん幼い頃から虫捕りや釣りによく行っていて、生き物は何でも好きでした。中学受験は生物に関係するクラブがある学校をセレクトし、最終的にとても楽しそうな雰囲気があった甲南を選びました。早くも入学前から入部を決めていたんです(笑)。
Kくん入学後、友達に「一緒に生研に入ろうよ!」と誘われたのが入部のきっかけです。音楽が好きだったのでブラスアンサンブル部も候補でしたが、生研を見学して「自由で面白そう!」と感じたことが決め手になりました。
Yくん生物の知識はそれほどありませんでしたが、何となく興味があったのでまず仮入部しました。その時に先輩が育てていたアカハライモリを見て「なんて可愛い生き物なんだ!!!」と心を動かされ、正式に入部しました。
Q.実際に入部してあらためて感じた生研の雰囲気とは?
Kくん先輩たちの生き物に対する熱量が高く、最初は少し圧倒されました(笑)。でも、班の中でいろいろ教わりながら活動していくと、どんどん楽しくなっていきました。今、高1で下級生の面倒を見る立場になったので、今度は僕たちが中1生たちに生研の魅力を伝える番だと思っています。
Yくん僕が入った時は破天荒で個性的な先輩がいて、そのアグレッシブさに驚かされました。川や池に行くと、いきなりザブザブと水の中に入っていき、時にはダイブして生き物を採取していました(笑)。その先輩のおかげで「生研=いつも実験室で活動」というイメージがなくなりました。
Gくん入部してあらためて先輩との距離の近さを感じました。当時新入部員だった僕たちに「さあ、虫捕りに行くぞ!」と声を掛けてくれ、一緒に裏山に行くことを繰り返すうちにあっという間に仲が深まりました。運動部のように敬語で先輩に話すこともありませんし、あだ名で呼び合うこともあって、風通しのいい人間関係があることを実感しました。
Q.今、皆さんが取り組んでいる活動・研究について教えてください。
Gくんどの班も文化祭で研究成果を発表することが大きな目標です。僕が所属するゴキブリ班は今2つのことを調べています。1つは、酸素が豊富な環境だとどれくらい生育が早まるのかを調べています。もう1つは、アルゼンチンモリゴキブリ(デュビア)は日本の自然環境下では生きられないはずですが、野生にいるのが見つかったという記事があったので検証しようと考えています。
Kくん僕は両生類・爬虫類班で、アカハライモリの尾の再生を調べています。例えば、酸素石を水中に入れた環境と、気体として酸素を入れた環境とでは尾の再生する時間にどれくらい差が出るのかを調べ、文化祭で発表します。
Yくん同じく両生類・爬虫類班ですが、僕はアフリカツメガエルの人工授精に挑んでいます。メスの体内から未受精卵を取り出し、オスから採取した精子を使って受精させますが、それなりに手間が掛かるので時間がある夏休みにじっくり取り組もうと思っています。
Gくん学校の活動以外では、いずれはぜひ夏合宿を実施したいです。コロナ禍ですからどうしても制限はあるのですが、近場で良いので実現したいです。
Kくん夏合宿はみんな行きたがっています。場所が変わればその地域固有の生き物に出会えるし、夜はライトトラップで夜行性の昆虫を捕まえて観察することもできるのでメチャクチャ楽しいですよ!
Yくん夏合宿は先輩と後輩の仲がさらに深まる場にもなり、生研では最も大きなイベントの一つです。いつかはぜひ実施し、まだ合宿を経験したことがない後輩たちにその素晴らしさを味わってほしいです!
Q.最後に皆さんが感じる甲南・生物研究部の魅力を一言!
Kくん甲南という学校自体が、中学・高校の分け隔てがあまりありません。そして、各クラブの中で生研は特に先輩と後輩の仲がいいと思います。班が10もあって、生き物に興味があれば必ず自分の居場所があるのでそこも魅力です。
Yくん生研はかなり自由度が高いので、自分がやりたいと思った探究や実験をどんどんと行うことができます。自主性が高まり、満足感と達成感を得られるので、そこが非常によいところだと感じます。
Gくん甲南は緑に囲まれていて、いわば裏山も生研の活動のフィールドです。そんな自然環境に恵まれた学校はそれほど多くないですし、好きな時に先輩と後輩が一緒になって楽しく活動できるのが何よりの魅力だと思います。
私は甲南中学・高校の卒業生で、生物の教師、生物研究部の顧問ですから「在校生の頃は、もちろん生研に入っていました」と言いたいところ……ですが、実は部員ではなかったんです(笑)。その頃の生研はコアなことをやっていて、何となく近寄りがたいイメージがありました。しかし今はまったく違い、雰囲気はとても明るく、部員たちは元気いっぱいで、上級生と下級生がいつも仲良く活動しています。危険を伴わない限り、私は彼らの好きなように自由に活動させています。
一人ひとりの自主性と主体性を伸ばしたいので、基本的に私から「あれをやりなさい」と指示することはありません。質問されれば助言するスタンスで個々の活動を見守りつつ、研究発表の場となる文化祭が近づけばそれぞれの活動経過に目を向け、より優れた発表につながるようにアドバイスします。文化祭の他には『ひとはく(兵庫県立 人と自然の博物館)』や『サイエンスフェアin兵庫』に参加することもあり、そうした場で発表することも部員たちは心から楽しんでいます。
生物室は理科の授業で使用する実験機器類が充実しており、生研ではそれらを自由に使えます。他校で置いているところが少ない電子顕微鏡もあり、インキュベーター(恒温装置)は5台もあるので非常に恵まれた環境だといえるでしょう。そして、何より誇れるのは部員たちの仲の良さです。特に後輩に対する先輩の面倒見がとてもよく、上級生がしっかりお世話をしてくれるので私は大いに助けられています(笑)。本校に入学したら、生研の魅力を確かめにぜひ足を運んでください。