奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校

日常化したICTがナラトミの学びを強くする

発見!私学力
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導入を進めていたOne to Oneシステム(生徒が1人1台のPCを持って学習活動)が2023年度には全6学年に広がる奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校。新型コロナ対応が求められた2020年からICT機器を活用した教育を本格化させたものの一過性の取り組みに終始することなく、今でも授業をライブ配信するなど生徒のフォローを継続。また、e黒板などのICT機器を有効に活用した授業が日々行われています。学校生活の中で日常化したナラトミのICT。その理由を取材によって探してみました。

PHOTO REPORT ナラトミのICT

必要に応じて使用するICT

グローバル人材に必要な能力を習得するために、通年で週1時間の授業が行われる「グローバルコンピテンスプログラム」。授業では生徒自身のPCと専用アプリを使って、グローバルマインドを育み、課題解決のための思考を身につける。個人で考えたり、グループで討論したりしながらも、必要に応じてICT機器を併用するというスタイルが出来上がっている。

授業のライブ配信で安心感を継続

多くの授業でライブ配信を実施。コロナ感染等で自宅待機中でも体調の良い生徒は、映像授業を受講できることで遅れが少ない安心感が得られる。生中継のため、先生が画面の向こうの生徒に声をかけることも可能。

授業に必要だから使うICT

通常の黒板とe黒板(電子黒板)を併用した高2の数学の授業。授業のポイントと過程を2つの黒板に書き分けたり、e黒板にグラフを取り込んで「なぜそのように解くのか」の理由をイメージとして見せることで生徒の理解を深めたりと、教科に合った方法でICTが活用されている。漠然とICTを使うのではなく、生徒の学習に必要だからこそICTが使われている。

ICTは学習活動の日常ツール

英語のアウトプットの機会や、英検の二次試験対策、高校2年で実施されるオーストラリア研修に向けた事前学習の一環として活用されている「オンライン英会話」。当初は高校2年で試験的に実施されていたものが、今年度より中学2年にも導入(中学1年でも導入検討中)。クラスの40人が一斉に、自身のPCを使って個別にネイティブ講師とレッスンを行う。接続からスタートまでのスムーズさは、ICTが日常ツールであることを感じさせた。生徒たちがネイティブ講師と集中して話せるのも、充実したICT環境が支えている。

特別ではないICT すぐに使える環境で日常の学習ツールとして浸透 情報科教諭 藤井大地先生

整備された環境が
本校のICTの強み

― 奈良学園登美ヶ丘のICTを活用した授業は、ICTが特別な存在ではなく日常ツールになっていることが印象的でした。導入から現状までに、どのような対応をしてこられたのでしょうか。

藤井先生
本校で生徒一人一人が1台のパソコンを持って授業に臨む “One to Oneシステム”を取り入れたのは、文部科学省がギガスクール構想を打ち出したタイミングとほぼ同時期です。当初はタブレットやパソコン型も検討しましたが、中高生になると直感的な操作よりも概念を操作する活動が多くなるため、文章を作る活動が増えるだろうと考え、キーボードがついたノートパソコン型を検討しました。その上で、コストや運用面を考えて、Chromebookを採用しました。

ちょうどコロナで全国的に休校になった2020年のタイミングで、それまではペーパーベースの課題等のやり取りをとおして、コロナ禍での学習活動を行っていた状況でしたが、6月に生徒の手元にパソコンが渡った後はOne to Oneシステムが功を奏しました。先生方にも抵抗感なく必要に応じて使っていただけて、授業動画配信は2700本を超えました。その教員全体のマインドは、休校が空けてからもICTを活用する指導に向いたと思います。

ノウハウができたので、現在も濃厚接触者など様々な理由で登校できない場合、授業を双方向の形で生中継して、できる限りの学びの保障を行っています。最初から狙っていた取り組みではありませんが、良い形で作用していると思っています。

― 休校以降もICTの活用が続いているのは、環境の整備によるものですか。

藤井先生
そうですね。実はICTに強い情報管理担当の事務室員がおり、実務的な部分を僕と一緒に進めてくれています。例えば、一か所のアクセスポイントから多人数がアクセスすると、接続は不安定になり速度もダウンします。それが100人規模になるとかなりの負荷になってしまいます。本校は1クラス40人で1フロアに4クラスの教室があるので、最大160人の人間が1フロアで1本の線を分け合うような状況になります。それに耐えられるインフラの整備は、絶対に必要でした。幸い本校は同学校法人の大学キャンパスに隣接しており、そこからのネットワークの太さが大きな強みになっています。

各教室には生徒の一斉使用を想定した、大きな負荷に耐えられるアクセスポイントを、しっかり検証を行った上で導入しています。2フロアで2学年が同時使用しても、学習活動には支障がありません。ICTの特別目立った活動が表面的には見えてこない本校ですが、ICTを活用して生徒が何かに取り組みたい、教員が指導で使いたい場合、インフラ面で制限を受けることなく、スムーズに対応できます。整備された環境は、本校のICTの強みです。

ICT環境整備にあたって選定基準としたのは、どれだけシームレスに使えるか。使うまでのハードルの低さは大事だとずっと言ってきました。

様々な授業で使用するICT
転用・応用によって生徒のスキルが向上

― 確かに「オンライン英会話」も、生徒40人が一斉につないでも、スムーズにやりとりをして英会話に集中していました。現状のICT環境を活用した学習活動の取り組みは、どのようなものがありますか。

藤井先生
英語科での活用が一番大きいと思います。リスニングやスピーキングに関して、今までは教員が個別に採点していましたが、AIの判断を使いながら、同時に採点や記憶ができるようになりました。リスニング用の教材を導入後、英検の技能別の成績や模試のリスニングの点数が向上するなど、結果も出てきています。今日見ていただいた「オンライン英会話」も40名全員が一斉に海外にいるネイティブ講師と個別につながり、今後は中2だけでなく中1での導入も予定しています。自宅でも受講できますから、英検対策としての活用やアウトプット力の向上が楽しみです。

他にも、新たに導入した探究学習や理科でのレポート作成時にも使用しています。情報の授業では、中学生段階のプレゼンテーションでgoogleスライドを作らせますし、中学2年生と高校生はプログラミングの授業でChromebookを利用します。

各教科で目立ったICTの取り組みを行っているわけではありませんが、様々な授業でICTを使っていますので、1つの授業で培ったスキルが別の授業で転用・応用ができ、生徒のスキルがどんどん上がっていきます。感染症などにより自宅待機を余儀なくされている生徒を自分たちでチャットやミーティングを立ち上げてグループ活動に参加させてあげることも、自発的にやってくれています。

― 数学の授業でも先生がe黒板を積極的に活用されていましたが、先生方の活用頻度や積極性も高いように思います。コロナの休校時期が終わればICTの活用も減るという一過性のものにならなかった理由は何でしょうか。

藤井先生
検証はしていませんが、コロナは大きなきっかけだったと思います。今までは使用しなくても何とかなっていた先生が、やらざるを得なくなる状況になりました。ただ、継続されているのは、設備の導入に加え、環境の整え方も大きかったかもしれません。

私がICT環境整備にあたって選定基準としたのは、どれだけシームレスに使えるか。使うまでのハードルの低さは大事だとずっと言ってきました。教室に行って、難なくすぐにコンピューターへとつながることが必要で、その過程は極力シンプルにしようと思いました。どれだけ性能が良いものでも使いづらかったら結局誰も使ってくれません。その意味で即使える、即つながることが、先生方が使い続けてくれているポイントかもしれません。

― ICTを装備することが目的ではなくて、実際に使いやすいことを目指された結果ですね。

藤井先生
使いやすさ、見やすさは大切です。先生が触れられて、書ける画面のe黒板をなぜ採用したかというと、画面から離れた場所で先生が話をするスライドタイプよりも、画面の前に立って画面を触りながら説明したほうが断然生徒の興味を引くからです。勝手に画面が動いていても、生徒は見ませんから、そこは教員にとって大きなポイントです。授業は結果ではなく、過程を見せるものですから、そのためには画面に直接触れて直接書けることは、大きなアドバンテージでした。

普段の学校生活に溶け込んでいるICT
必要な時にしっかり使える状態でありたい

― ICTを取り入れるうえで、生徒たちに対して気を付けられたことは?

藤井先生
校内のルール作りに時間をかけ、1年目は、休憩時間は基本的に触らずに授業中だけ触るなど厳しい制約がありました、ただ、生徒たちも教員も慣れてくるので、その一番良い落としどころに今は落ち着いている状態です。

― ICT教育に積極的に取り組まれるようになってからの生徒たちの変化や成長はありますか。

川本先生
情報科ではない私から見ていると、プレゼン内容の完成度が高くなったと思います。いろんな授業でICTを扱いますから、生徒たちは使い慣れるとともに、どのような形が読みやすく、見やすく、伝わりやすいかにも気づいていくんですね。以前は文字が多かったり、加工をしたり、入れたいことを全部入れて読みづらいこともあったのですが、ICTを使うことが日常化して、シンプルで読みやすいものが作れるようになってきました。

教員側も、藤井先生をはじめ情報担当の先生方に丁寧に教えてもらっていて、使えるようになるとやはり便利さを実感するんですね。授業内でもどんどん使用しますので、生徒にとってもビジュアル的に意識できる学習ができるようになっています。そういった良い方向に行くことは増えたと思います。また、ICTを活用することで生徒も教員も楽しみながら、効率的に学習できるようになっているのではないでしょうか。

藤井先生
校内でICTを幅広く使っているので、自分のパソコンを使うことが特別なイベントではなく当たり前の状況になっています。それが普段の学校生活に溶け込んでいる証拠だと思います。最初は大変でしたが、動き出してしまえば、生徒たちも自分でやっていきますし、ノウハウがたまっていきます。調べ方について授業をしたわけではありませんが、使うチャンス増えれば増えるほど生徒は調べ方を習得していきます。

― 今後のICTを活用した学びにおいて、挑戦されたいこと、継続したいことはありますか。

藤井先生
今は、中長期的なビジョンで新しい取り組みをすることは考えていません。ICTはあくまで学習の中で必要な時に使えればいいという考え方で、手段が目的化するのは本末転倒だと思うんですね。ICTを使うことが目的になると、授業の目的が果たせなくなってしまいますから、ICTを使っているかではなく、生徒たちにとってどの選択肢が良いのかを常に検討するようにしたいです。ICTは特別な取り組みが見えてこないのに、実際には生徒も先生も必要なときにしっかり使えているという状態でありたいですね。読む、書く、対話するというアナログ学習のメリットも生かしながら、ICTを活用したバランスのいい授業の組み立てができるようにしていきたいと思います。