\自然を再生して、未来へつなぐ!/『2022 SDGsプロジェクト』「雑木林のビオトープづくり」始動
三田学園中学校・高等学校の広大な敷地面積は、甲子園球場のグラウンド12個分の16万㎡。四季の移ろいが身近に感じられる緑豊かな環境は、生徒にとっても、教員にとっても誇れるものですが、実は最近異変が生じています。校内の樹木が少しずつ枯れ始め、キャンパスの中心にある炭焼池の水質も変化が見られるのです。原因を探り、三田学園の自然を自分たちの手で再生させなければ——。
『2022 SDGs プロジェクト』はそんな生徒の声から始まった体験型環境学習。その取り組みの一つである「雑木林のビオトープづくり」をレポートします。
\三田学園の/『2022 SDGsプロジェクト』
集合
15:45

2月某日、一日の授業を終えた生徒たち。「雑木林のビオトープづくり」で取り組むのは「落ち葉プール」と「枯れ枝アパート」を設けることです。軍手をはめ、準備が整うと、生徒たちは早速炭焼池の脇に広がる雑木林へ。

「落ち葉プール」の設置
16:00

昆虫の棲みかとなる「落ち葉プール」の大きさは、たたみ一畳ほど。カブトムシやクワガタなどの甲虫類が集まることを想定して落ち葉を集め、腐葉土の寝床を作り、産卵・孵化に適した環境を整えます。

作業①

まずは支柱となる杭を四方に打つことから。ほとんどの生徒にとって杭打ち作業は人生初。木槌を手にするのも初めてです。最初は渾身の力で打っていましたが、重力に任せて振り下ろせば「ラク!」だと気づくと、その後の作業は至ってスムーズ。

作業②

杭を打ち終えると、竹を積み上げて囲いを設置。似たような太さの竹を何本も集め、長さを揃えるためにノコギリで切断開始。挽き方のコツを先生から教わると、どの生徒も楽しそうにギコギコ、ギコギコ。

作業③

切り口に空洞が見られる竹には、枯れ枝を切って詰め込みます。「何のために?」と尋ねると、ある生徒が「蜂が巣を作らないようにフタをしておくんです!」と、ていねいに教えてくれました。こうした作業がのちに活きてきます。

作業④

最後に落ち葉をたっぷり積層すれば完成。入れては踏み、また入れては踏む作業を繰り返し、時にテンションがマックスに達した生徒がダイブして、フカフカだった落ち葉はどんどん沈み込みます。層の間に米糠を散布すると腐葉が早く進むそう。

「枯れ枝アパート」も完成
16:50

「落ち葉プール」と同様、「枯れ枝アパート」も昆虫の棲みかに。雑木林に落ちている朽ちた枝を集め、タワーの形状に組めば完成……のはずでしたが、陽が暮れ始めてタイムアウト。枯れ枝を一カ所に集めたところで作業を終え、成形は後日あらためて行います。

終了 ~ 鈴木先生の言葉 ~
17:00

この日の取り組みは「雑木林のビオトープづくり」の第1弾。作業を終えた13人の生徒たちの表情は充実感に満ちていました。最後は集合し、担当の鈴木先生が生徒の労をねぎらいながら次のように語り掛けました。

今日作った「落ち葉プール」は夏まで放置します。半年ほどで落ち葉は腐敗し、微生物に分解され、その中で育ったカブトムシがゴロゴロと出てくることを期待しましょう。腐葉土は、学習農園で肥料にする予定です。
落ち葉は、何もしなければ林で朽ち果てるだけですが、利用すれば肥料になり、それをもとに作物を育てて収穫できれば、家庭科の調理実習の食材になります。学校の中で資源を循環させればモノが移動せず、二酸化炭素はほとんど生じず、学校の外にも出ません。最近、「ゼロカーボン」という言葉を耳にしますよね? 今日はそれにチャレンジするスタートの日です。
三田学園の『SDGs プロジェクト』は、キミたちが主役です。今後やってみたいことがあれば、どんどん提案してください。一人でやるのは大変でも、今日のようにみんなで取り組めばスムーズに、意外と簡単にできることはたくさんあるはず。ぜひみんなで協力し合って三田学園の環境を守ってください。

STUDENTS INTERVIEW 参加した生徒に聞いた! 炭焼池プロジェクト
自分たちで行動を起こし、
ゼロカーボンを実現させたい!

  • Мくん(高2)

  • Kくん(中1)
「雑木林ビオトープづくり」に参加しようと思った理由は?
Мくん
小さい頃から自然が大好きで、生き物やビオトープづくりに関心がありました。三田学園は広く、炭焼池があって自然が豊かですから、昆虫が繁殖しやすいと思います。その環境づくりの手助けをしたくて今日の「雑木林のビオトープづくり」に参加しました。
Kくん
入学した時から「炭焼池プロジェクト」に興味がありました。もともと自然が好きなので、「雑木林のビオトープづくり」をきっかけに、これからもっともっと環境のことを考えていければいいと思い、どんどん貢献したい気持ちがあったので参加しました。
今日、一番学びたかったことは何でしょう?
Мくん
学校の雑木林がずっと荒れ放題だったことは以前から知っていて、それを誰かに任せるのではなく、自分たちで整備することは課題の一つだと思っていました。今日の取り組みを機に生徒の手で学校内に新たな生態系をいろいろ確立できれば、今起き始めている木枯れなどの問題解決にもつながるかもしれません。
Kくん
三田学園の自然は、学校ができた100年以上も前からそのままの状態で放置されていると先生に教わりました。今日、雑木林で滑ってそばにあった木に手をついたのですが、その拍子で枝がボロボロ崩れました。学校にある木々の現状が実際にわかったので、これからの取り組みを考えるよいきっかけになりました。
今日の活動を終えて、一番心に残ったことは?
Мくん
SDGsの観点で自分たちが行動すれば、少しずつでも三田学園の環境をよい状態にもっていける可能性があるとわかりました。最後に先生が語ってくれた学校内で資源を循環させることやゼロカーボンの話はすごく共感できました。
Kくん
僕もゼロカーボンの話は印象に残りました。言葉は知っていたけど、今日自分たちがやったことがそこにつながるとわかりましたし、これからもゼロカーボンを意識した取り組みを自分たちでもっと考えていきたと思いました。
TEACHER COMMENT 担当の先生に聞いた! 体験型環境学習 2022 SDGsプロジェクト
  • 教員主導ではなく、
    生徒発信のアイデアを
    大切にしたい。
    三田学園中学校・高等学校
    主幹教諭/社会科教諭 鈴木応男 先生

「雑木林のビオトープづくり」は、本校が昨年から実施している『体験型環境学習 2022 SDGsプロジェクト』の一環です。私の考えとしては「やらせる」のではなく、生徒発信の「こんなことをやりたい」というアイデアを吸い上げ、学びの形にすることが大事だと思っています。今日の作業も、最初に見本で杭の打ち方や竹の積み方を示しましたが、その後は生徒たちに任せました。大人が答えを教えるのは簡単ですが、それでは生徒にとって自分で得られることは少なくなります。失敗することで学ぶこともたくさんあります。

三田学園は、何もない丘に針葉樹を中心に植林が行われ、鳥が運んできた種が芽吹き、豊かな自然が形成されて今に至っています。しかし、人が手を入れなさ過ぎてナラ枯れの現象が進んでいます。5年前は数本規模でしたが、今は一気に広がりつつあり、生徒たちが卒業する数年後には多くの落葉樹が枯れてしまう可能性もあります。そんな状況を生徒も教員も気づいていませんでした。それではいけないので、総合の時間にこの問題を取り上げ、今日のような活動を行うことで自然再生を考えるきっかけになればと思っています。

今日、作業を終えた生徒たちを前に学校内で資源を循環させる話をしました。実際に実行し、自ら体験することで、今度は学校の外にも関心が広がり、三田市、兵庫県、日本全国、さらには地球規模で起きている問題にも自発的に目を向けていってくれることを願っています。今後も『体験型環境学習 2022 SDGsプロジェクト』で様々な取り組みを行う予定ですが(*イラスト参照)、今日参加してくれた生徒たちが中心となり、他の生徒をどんどん巻き込みながら新しいプロジェクトが誕生することを期待しています。

三田学園『体験型環境学習SDGsプロジェクト』MAP