優秀賞・活字文化推進会議賞
高校3年 Sさん
第22回 図書館を使った調べるコンクール
(主催:図書館振興財団)
高校3年 Fさん
塩野直道記念 第6回
「算数・数学の自由研究」作品コンクール
(主催:理数教育研究所)
日常生活や他教科の学習などから興味をもった事象を、数学的な見方・考え方を活用して主体的に探求していく姿勢を培うために、塩野直道氏を記念して実施するコンクール。全国の小中高生から算数・数学の自由研究作品を募集。
フィリピンでバナナが木になっている姿を初めて見て興味をもち、バナナの並び方の規則性を研究。模型をつくって考察するなかで、バナナが一番育ちやすく、かつ一番多くつくのは1房4本の螺旋型の並び方で、バナナと芯のなす角が34度のときであるという結果を得た。
フィリピン体験学習中にバナナが木になっている姿を初めて見て、バナナの並び方に規則性があること、1本の茎から何十本ものバナナがなっていることに驚きました。数学の先生が授業で、「日常のなかに数学はたくさんある」とよく言われていたことを思い出し、夏休みの数学の課題として、バナナの並び方の規則性を研究することにしました。また、この規則性を実生活のなかで活用できないかということも考えたいと思いました。
紙でつくったバナナの模型を用いて、
(1)バナナが一番育ちやすい並び方はどれか、
(2)バナナがたくさんつく角度は何度か、
を求める2つの研究を行いました。
研究(1)では、バナナを芯に5通りの並び方でつけ、「太陽の光が当たりやすいか」「どれだけ多くつくか」という2つの観点から、どの並び方が育ちやすいかを比べました。バナナをつける角度は芯に対して45度、使うバナナは最大36本としました。
研究(2)では、研究(1)でバナナが最も育ちやすかった並べ方にし、個々のバナナの傾きを変化させて、どの角度が一番多くつくかを比べました。芯とバナナとがなす角度を求めるために、三平方の定理を利用しました。
研究(1)において最も日射量が多かったのは、バナナを1房4本にした螺旋型の並び方でした。つぎに、個々のバナナの傾きを変化させ、どの角度が一番多くつくのか比べてみました。そこで得たのは、上向きのバナナに最も太陽の光が当たるのは、平行に近い角度だということです。
また、研究(2)は三平方の定理を用いて計算し、バナナが最もたくさんつくのは、バナナと芯とのなす角が34度のときだとわかりました。
つまり、最もバナナが育ちやすく、たくさんつくのは、1房4本の螺旋型の並び方で、バナナと芯のなす角が34度のときであるという結果が出ました。このほかにも、水や養分の運ばれ方、1房のバナナの本数など条件は限りなくあるので、自分でどこまで設定するかが難しかったです。
私が考えたバナナの並び方と角度を、広い平地が確保できない場合のソーラーパネルの設置に利用できないかと思っています。例えば、農家の木と木の間にバナナの実をイメージしたソーラーパネルを置くことで、電力不足の解決に役立てたらいいなと思います。
私は生き物に興味があって、観察するのが好きです。バナナのように1本ずつ個性が違っていても、自然に存在するものには、私たちが気づいていない規則性があると思っています。今回は身近な事象を、計算式を使って証明した研究ですが、受賞してはじめて、こういうことが求められていたんだと思いました。また、数学は教えてもらうだけでなく、教科書を飛び出し、自分で見つけることでもっと楽しめる学問だとわかりました。数学の先生が授業で「日常のなかに数学はたくさんある」とおっしゃっていたことが、今回の研究を通して実感できました。
高校3年 Sさん
第22回 図書館を使った調べるコンクール
(主催:図書館振興財団)
図書館を使った「調べ学習」は、知的好奇心、情報リテラシー、読解力、思考力、言語力が磨かれる学び。より多くの人が図書館を活用することで生きる力を身につけ、それにより図書館がより活性化することを目的とするコンクール。調べるテーマは自由で、小学1年生以上のすべての人が応募可。
いまや寿司業界の主役ともいえる回転寿司の歴史やメリット・デメリットをきめ細かに調べ、寿司を回転させる意味を見出した。また、ほかの食べ物についても回転させる意味や実現可能性を考察し、回転することで得られる寿司の優位性に気づいた。
今回受賞した研究は、「総合的な学習」という学校の授業のなかで書いた論文を、先生に勧められてコンクールに出したものです。私が選んだテーマは、大好きな回転寿司。食べ物を回転レーンにのせて客に提供する風景が、当たり前に思えなくなったことがきっかけです。「なぜ寿司を回すのか」「回転させることにどんな意味があるのか」という疑問を解決するため、回転寿司の歴史や、回る寿司が店に与える影響について詳しく調べることにしました。
寿司を回転させる一番のメリットは、人件費の節約です。いまも多くの回転寿司店が人件費をさらに節減しようと、作業の機械化やシステムのハイテク化、IT化を進めています。しかし、機械を導入するために多額の費用がかかるはずです。そこで私は、回転レーンの導入コストや、アルバイトの平均時給、1日の平均営業時間を調べて計算。その結果、回転レーンの導入費用は、アルバイトまたはパートを少なくとも一人減らせば捻出できることがわかりました。
また一方で、人件費・設備費が削減できる、ビュッフェスタイルが採用されなかったことに疑問をもちました。そこで、大手チェーン寿司店の執行役員の方に会う機会を得て質問すると、ビュッフェスタイルでは寿司の衛生管理が難しいとのこと。確かに、きれいに並べられた寿司を子どもが自由に取ってしまったら見た目が悪くなり、品質も低下します。その点、回転寿司の場合は機械が衛生管理を行い、子どもも周囲に迷惑をかけることなく好きなだけ寿司を食べることができます。
そのほかにも回転寿司には、客の回転数がよい、アミューズメント性がある、子どもに人気、手軽な価格、食欲をそそるなどの多くのメリットがあることがわかりました。
デメリットは、「廃棄ロス」と「機会ロス」です。「廃棄ロス」は、誰にもとってもらえず傷んでしまった寿司が捨てられて無駄になること。「機会ロス」は、食べたいと思っている寿司ネタが回ってこなかったり、品切れになったり、入店しても満席で帰らざるを得ないことです。
これらの事前防止策として、「スシロー」は世界初の回転寿司総合管理システムを導入しました。皿の裏側についたICチップで、どんな客が、どの時間に、何をよく食べるかというデータを集めて分析できます。また、ICチップは品質管理にも役立ち、一定の距離を回った寿司は自動的に廃棄されるようになっています。
品質低下への対策に高速レーンを導入し、寿司を回転させないで品質向上とスピード提供を高め、食品ロスの実質ゼロ、客の回転率アップに成功したところもあります。最近ではつくりたての寿司を食べるため、注文する客が増えていますが、それでも多くの人が回ってくる寿司を好むというデータがありました。
調査を進めると、寿司の回転レーン導入には、多少のデメリットを補えるほどたくさんのメリットがあることがわかりました。そこで、「寿司以外にも回すことができる食べ物はあるのか」というアンケート調査を実施。回すものは「子どもに人気がある」「たくさんの種類が食べられる」「手軽な価格になる」もので、「冷めやすい」「型くずれしやすい」「傷みやすい」といったデメリットに対応できる食べ物です。アンケート結果をもとに実現できそうな「回転ケーキ屋」「回転パン屋」「回転和食レストラン」などについても、メリットとデメリットを考察。そして、「傷みにくく、型くずれしにくいものが回転に適している」という仮説が間違っていることに気づきました。
つまり、「寿司ほど回すことに適した食べ物はない」のです。寿司を回すことが人件費の削減や客の回転数アップにつながり、高価だった寿司を安く提供できるようになりました。そして、傷みやすくて型くずれしやすい寿司だからこそ、回転レーンの魅力を最大限に引き出すことができるのです。幅広い世代に愛され、時代のニーズにあわせて進化し続ける回転寿司が、今後どのようになってゆくのか、引き続き注目したいと思っています。
同校では、長年にわたりフィリピン体験学習を実施するとともに、奉仕活動や募金活動等を通じてフィリピンの子どもたちを支援しています。そのフィリピンで見たバナナの実がなる姿から数学的発想を得たFさん。「日常の中に数学はたくさんある」という数学の先生の言葉の意味を実感したことでしょう。今回の取材を通して、毎回の授業が教科書の問題を解くだけにとどまらず、実際目にした風景に数学的規則性を見出す柔軟な発想力も養っていることが伝わりました。
小林聖心の「総合的な学習」は中学1年生から体系的に行われています。中1では調べ学習についての基礎基本から学び、中2では理科の実験を通して科学的な思考力を、また中3ではディベートを通して現代社会が抱える社会的諸問題について学んでいます。このように多方面から総合的に学びを深めてきたからこそ、Sさんのようなオリジナリティあふれる論文が仕上がるのでしょう。