こんな時こそ心の教育を 大谷中学校・高等学校
こんな時こそ心の教育を 大谷中学校・高等学校
2020年度のコロナ禍において高い危機対応IT力を示した大谷中学校・高等学校。またその対応力を支えたものこそ大谷の「心の教育」でした。助け合いやつながりの大切さを伝える同校の心の教育が、有事においてどのように真価を発揮したのか。コロナ禍を経て生徒会長に立候補した中学生の体験談から紐解きます。

STUDENT INTERVIEW

Iさん[中学校2年・医進コース]

デジタルツールを使っていても心はアナログにつながっていた

― 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年の3月から5月にかけて臨時休校となりました。3ヶ月近く友達に会えずステイホームを強いられるというのは、なかなか辛いものですよね。Iさんは休校期間中をどのような気持ちで過ごされていたのでしょうか。

Iさん
3月に休校の連絡がきたときは「やった休みだ!』と喜びました。でも、月単位で休校が続くことがわかって、「このままではダメだ!」と危機感を覚えるようになったんです。学校から授業の動画が配信されるようになったので、家に届いたテキストと併せて勉強するようになりました。


― 学校側が早いタイミングで対応してくれたのが良かったのだと思いますが、自分から勉強しようと考えたのはさすがですね。ちなみに臨時休校期間中の大谷の対応は以下のようなものでした。

休校期間中の大谷中学校の対応
  • STEP.1紙ベースで課題を作成し、生徒宅へ郵送
  • STEP.2担任から生徒への課題の取り組みの確認と激励の電話
  • STEP.3学習支援ソフトClassiで授業動画を配信
  • STEP.4Microsoft Teamsによるオンライン授業

Iさん
本来の私は怠け者なんです。だから友達と相談して、SNSやメールで1時間おきに「何をする」「何をしたか」の報告連絡を取り合うことにしました。それと学校で使っている学習支援ソフト「Classi」には自習時間を記録する項目があって、そこに0時間とは恥ずかしくて書けません(笑)。学年・クラス単位で自習時間数がランキングされることもあって「みんなに負けずに勉強しなきゃ!」と刺激を受けながら頑張りました。


― 直接会って言葉を交わすことはできませんが、ICTツールを通して友達と間接的にコミュニケーションが取れていたんですね。毎週担任の先生から電話があったと聞いていますが、先生達ともコミュニケーションは取れていましたか。

Iさん
はい、電話と「Classi」を通じた担任の先生とのやりとりを楽しみにしていました。特に私の担任の先生は、「Classi」への毎日の書き込みに必ず返信してくれていました。オンライン授業が始まってからは、朝礼・終礼で先生の顔や声を聞けるようになって嬉しかったです。


― ちなみにオンライン授業はスムーズに利用できましたか。授業動画配信やオンライン授業を始める前に、家庭のICT環境をヒアリングして問題ないと判断してのスタートだったと聞いています。

Iさん
私は自宅でパソコンを使っていたので大丈夫でした。オンライン授業ですが、疑問があったらチャット機能を使って質問ができるので、学校で実際に授業を受けているのと変わらない感覚でした。あと、自宅のネット環境が不安定な友達から「授業が見れない!」というSOSが来たときは、みんなでその子に授業の様子をレポートしたり、板書を撮影してメールで送ってあげたりしました。


  • 朝礼配信中
  • 進路指導の面談

助け合う大切さが心に刻まれていたからの自然な行動

― ステイホームのなかでも、生徒同士で助け合っていたという先ほどのお話に感動しました。そういう「助け合わなきゃ!」という使命感は、Iさんにもとから備わっていたものなのだったのでしょうか。

Iさん
大谷に入学した頃は、そんな気持ちは持っていなかったと思います。1年生の国語の授業で『助け合い・学び合い』という話があったときも、当時はピンと来ていなかったんです。先生が「クラスで一人でもできない子がいたら、みんなで助け合おう。人を助けるということは、自分の力にもなることだから」と話されているのを聞きながらも、「そんなの自分の負担になるだけ」と内心では思っていました。
でも、新型コロナウイルスの影響で友達と会えない時間が続くうちに、「今、互いを気遣って助け合わないと、あったはずの友達関係や楽しい学校生活が無くなってしまうかもしれない」と気がついたんです。他の子達もそんな不安を感じていたから、離れていても助け合えたんだと思います。


― 大谷は校訓で助け合いの大切さをうたうとともに、学校生活の中で生徒に伝え続けています。きっとそれが、自然と皆さんの魂や心に染み込んでいるのでしょうね。学校再開後は友達と会えて嬉しかったのではないですか。

Iさん
再開初日は、みんなおかしなテンションでした。まるで久しぶりに帰省した親子のような感じです(笑)。ただ、学校行事はほぼ中止や縮小になったのがすごく残念でした。私が大谷を選んだのは、生徒が勉強や行事をいきいきと楽しむ校風がいいなと思ったからなんです。


― その後の9月の「生徒会選挙」で、Iさんは生徒会長に立候補して当選したそうですね。

Iさん
はい、文化祭の企画をやりたかったんです。大谷では行事の多くを生徒会が中心となって運営するのですが、一番の目玉が文化祭です。2020年が行事をあまり楽しめなかった分、2021年は思いっきり楽しめるものを企画したいと思っています。


― 最後に、コロナ禍を通じて気づいたこと、学んだことがあれば教えてください。

Iさん
コミュニケーションを取る機会が少なくなったからこそ、人との関係を意識しました。「大丈夫?」と友達に声をかけるといった人を気遣う一言で、人との関係は途絶えずちゃんとつながっていくんだなと思ったのです。あと学校に行けない期間があったからこそ、学校のありがたさを改めて実感しました。

TEACHER COMMENT

校長 堀川義博先生

有事に発揮された心の教育の真価

本校では豊かな魂とフレームの大きな心を生徒に育むために、日々の校門での挨拶、朝礼や終礼、宗教教育を通じた心の教育を大切にしています。人は非常時に陥ると、自分中心の考え方が芽生え、人間としての品位が失われていく場合が往々にしてあります。しかし強く豊かな心を備えていれば、有事にも節度を失わず、助け合うことで危機を乗り越えることができるのです。
ITC教育はとても大切です。しかしそれを使いこなすのは人の心であることを忘れてはいけません。こんな時代だからこそ、心の教育が大切なのです。コロナ禍という有事において、本校の多くの生徒はそのことを示してくれたと感じています。