【大阪桐蔭中学校高等学校】
興味・関心あるものを主体的に学ぶプロジェクトワーク

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大阪桐蔭中学校高等学校で長年にわたって継続されている「プロジェクトワーク」は、生徒の主体性を引き出しながら、興味・関心あるテーマに1年間をかけて取り組む体験型学習。中学生と高校生が学年を超えて一緒に学ぶことで、助け合い、尊敬し合いながら成長していきます。
今回は、「プロジェクトワーク」の中から人気の3講座を紹介。指導を行う先生方に、各プロジェクトワークの魅力や活動における生徒の成長について、お話をうかがいました。

プロジェクトワーク ロボット講座

数学科香野佑介先生


ロボット講座 年間目標・学び内容

  • 01

    生徒が1人1台ずつキットを購入し、プログラム設計からオリジナルロボット(自走するローバー)を製作。

  • 02

    文化祭でのロボット展示とプレゼンテーション。

  • 03

    完成したロボットの走行と発表。

※2020年度の受講人数:40名

プロジェクトワーク「ロボット講座」とは?中1生に大人気!
走行するロボットを製作

香野先生

ロボット講座は10年以上続くプロジェクトワークです。入学前に体験をして、この講座が受講したくて入学してくる生徒もいますから、人気もあって受講者は抽選です。特に中学1年生に人気が高く、今年は全体の4割でした。

目標は、生徒がロボットを一つ作って走らせることです。私は専門外なので、ロボットやプログラムを専門に扱われている外部企業の方に講師として参加いただき、連携しながら1年間を進めています。

「ロボット講座」1年間の取り組みと流れ基礎から製作
展示・発表、走行まで
チャレンジの連続

香野先生

ロボットを製作するためのキットは、1人に1台あります。市販のキットではなく、外部講師の方が最初から設計されたもので、走行コースの壁に当たれば向きを変えて進んでいくというプログラムを組むところまで、生徒がすべて自分で考えます。

スタート時は、初心者でも楽しんでもらえるように、基礎の基礎から始めます。まずはパソコンの使い方、ドライバーなどの工具の使い方も説明します。次にネットにつないでプログラムが組めるMネットという専用のツールでプログラムを組みますが、初心者も多いのでそこまでの下準備はしっかりやりますね。その後は完成形のサンプルがあるので、それを目指して作っていきます。

1年間の中での一つ目の目標は、展示がメインの文化祭での発表です。毎年、生徒達はロボットを使って野球盤ゲームやサッカーゲーム、クレーンゲームなどを作ります。ロボット同士でボールを回し合ったり、射的を作ったりして、バラエティーに富んだロボットを発表しますから、我々にとっては生徒の新たな一面の発見にもつながっています。

今年の文化祭は外部からのお客様はいらっしゃらなかったのですが、例年であればロボットを触っていただけ、製作者が「このロボットはこのように動きます」、「こういう意図で作りました」と製作説明をさせています。そこでプレゼンテーション能力も試せることは、プロジェクトワークの中でも貴重ではないかと思います。

文化祭終了後は、ロボットをコース走行させるまで自分で設計して、それをどう走らせるかを考えます。そこが1年の到達ポイントです。パーツを自分で改造することも、自分で勝手にプログラムを変えることも可能です。このプロジェクトは複数年受講しても良いため、赤外線センサーをつけて触れることなくロボット掃除機のように方向を変える高度なプログラムを考える生徒もいます。

最後にプロジェクトワーク内でコースを走らせているところを皆で見ます。良い走りをしたロボットは紹介しますし、今年は時間がなくて難しかったのですが、タイムトライアルをしたり、お互いに競い合ったりもします。

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「ロボット講座」で尊重する学び生徒間交流や新たな一面の発見が可能

香野先生

受講生が40人もいると、説明書を見られなかったり、パソコンを使えなかったりする生徒もいるので、スムーズに進まないことは多々あります。そこで、上級生や連続受講している生徒には教室を回らせて、困っている生徒を助けてもらっています。

また、11月の文化祭では、学年混合のグループ分けをして他学年とのコミュニケーションを取らせ、仲間意識や先輩・後輩の上下関係も作れるようにしています。いろいろな交流をする中で、上級生が下級生に教える機会は多く、反対に下級生にも能力を発揮する生徒がいますから上級生が「すごい!」となることもあります。そうした学年を超えた交流もこのプロジェクトワークにおける狙いです。

他にも、今、私は中学2年生の担任ですが、普段の数学の授業では目立たない生徒が、ロボットを触らせたらものすごく頭の回転が速くなり、「そんなことを考えているのか?」と思うことを言って、意外な発見をさせられます。授業ではわかってあげられなかった生徒の一面を見ることができるのも、プロジェクトワークの良いところだと感じます。

生徒自身も「自分にこんな一面があるんだ」と気づけるのかもしれません。これはどのプロジェクトワークも同様だと思いますが、勉強が主軸にある本校の生徒にとっては、良い意味で息抜きの時間に使えているのではないかと思います。

今後のプロジェクトワーク生徒の「やりたいことをやってみる」を大切に

香野先生

「ロボット講座」は、生徒達がイメージしたロボットを作るきっかけになればと思っています。ロボットを触ってみて「ものづくりが楽しいな」と生徒が思えば、「工学部というものがある」とか、「プログラムが組みたかったらこういう勉強しておいたらいい」など進路を深める声掛けをしていきたいです。プロジェクトワークの中で興味が高まった生徒をどんどん引っ張り出してつなげていくという形を目指したいですね。

すでに「ロボット講座」がきっかけで、大学の工学部に進みたいという生徒もいましたし、実際にそういった企業に勤めている卒業生もいます。今、外部講師としてお手伝いいただいている方も実は卒業生です。

プロジェクトワークは、生徒達の「やりたいことをやってみよう」を大切にしています。最近の子どもの傾向を見ていると、何か与えられないとできないところがあると感じますが、生徒達から「あれがやりたい」「これもやってみたい」という声が出て来て、基本は生徒ベースで、どんどんやりたいことにチャレンジしてもらえればいいなと思います。

プロジェクトワーク 医学研究

理科 [物理]中嶋一博先生


医学研究 年間目標・学び内容

  • 01

    医学に関する疑問を研究テーマとして、チームごとに調査しプレゼンテーション資料を作成。毎週、チームが研究・発表。

  • 02

    提携病院での半日現場体験。

  • 03

    提携病院の医師・看護師による講演会。

※2020年度の受講人数:46名

プロジェクトワーク「医学研究」とは?医学に関する研究テーマを
チームで探究・発表

中嶋先生

「医学研究」は、同学年の生徒を基本3人のチームに分け、チームで医学に関する疑問を研究テーマとして調べ、プレゼンテーション資料を作って発表します。チームは、連携を取りやすい同学年でチームを作っています。

今年は中学1年、高校1年が多くなりましたが、毎年男女比に大きな特徴はありません。やはり医学部や薬学部志望、看護師を志望する生徒が選択してくることが多いです。「医学研究」での活動を経て医学に対する興味を高め、より自分の中で医学系の進路への意志を固めたという生徒は多いですね。

プロジェクトワークでの学びは最難関国公立大を目指す本校の日頃の学習とは真逆にあり、良いメリハリがついていると思います。日頃はインプットを固めることに重きを置き、プロジェクトワークでは生徒発信の側面を強くしています。生徒からすると15分程度の発表であっても緊張で手に汗握るようですが、そういった場を日常的に作ることは難しいので、生徒が人前で、自分達が作った資料を使いながら発表し、未熟な部分を感じ取るプロジェクトワークの効果は大きいと思います。

「医学研究」1年間の取り組みと流れ研究・発表、病院での
現地体験、講演会が3本柱

中嶋先生

「医学研究」の活動には3つの軸があります。メインは、医学に関するテーマにおけるチームでの研究と発表です。発表には、質疑応答を含め1チーム15分程度かけ、1学期の中盤あたりから始めます。チームによって発表のタイミングが異なるため、研究は発表日に合わせ、講座外の時間に各チームが取り組みます。研究・発表共にそれぞれ熱心に取り組んでいます。

研究・発表以外には、少人数に分かれて提携病院を訪問し、半日現地体験します。また、提携病院から医師や看護師などいろいろな職種の方を迎えて年に5~6本の講演会を行います。(昨年は新型コロナウイルスの影響で実施不可)

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「医学研究」で尊重する学び研究目的を明確にした
資料制作と発表経験を重視

中嶋先生

プロジェクトワーク「医学研究」は長年続いていますが、私自身は先代から引き継ぎ3年目のうえ、専門科目が物理のため、医学に精通しているわけではありません。そのため、基本的には生徒が調べてくることに、医学の専門的な内容で細かく口出しをしません。それよりも、生徒が医学について少しでも疑問に思っていることを調べる、一歩踏み込んで探究することを大事にしています。生徒も自分でこの講座を選択していますので、テーマに食らいつこうとする能動的な姿勢を見せてくれます。

反対に私が意見するのは、発表の構成や資料作りの工夫です。発表の資料をまずはデータで提出してもらってチェックしますが、その時に多いのが「何を伝えたいのか、何を発表したいのかがわからない」という研究目的の曖昧さです。目的がはっきりしていないと、何となくテーマに関する知識が並んでいるだけで、情報量は多くても散らばった印象の資料になってしまいますから、「目的を明らかにして、それをゴールに見据えて発表を作り上げよう」と指導しています。

また、発表時には必ず生徒達からの質疑応答を入れ、私も事前に発表の資料は確認していますが、当日に生徒の発表を聞く中で一つは質問を入れるようにしています。質問を経て「そこは盲点だった」、「その発想はなかった」、「確かに自分達の発表が矛盾しているように感じる」など、質問されることでの生徒の気づきによる学びは成果が大きいように感じます。

今後のプロジェクトワーク「医学研究」の先を行くプログラムでさらに飛躍

中嶋先生

プロジェクトワーク「医学研究」の枠からもう一歩踏み出したいです。実は昨年、プロジェクトワークとは関係なく、理系志望者のための「基礎医学実験体験実習」という2日間に渡る集中プログラムを企画しました。提携病院の研究室で、病院が所持されている研究資材や器具に触れさせてもらいながら実験・実習するというもので、単にインターネットや書籍で調べるのではない、より踏み込んだ体験ができる場になるはずだったのですが、新型コロナウイルスの影響で実現できませんでした。今後はぜひ実現して、そうした体験実習のプログラムの型を作り、夏休みなどの長期休暇には2日間に留まらずもっと長期的な研究を可能にしていきたいと考えています。

プロジェクトワーク「医学研究」においては、すでに枠組みは完成されていると思いますので、私自身が医学のことについてもっと的確なアドバイスができることと、中身を一歩も二歩も深められるようにしていきたいと思っています。

プロジェクトワーク 和物と礼儀作法

国語科北澤亜紀先生


和物と礼儀作法 年間目標・学び内容

  • 01

    浴衣の着付け、帯結び。

  • 02

    礼儀作法や年中行事を学ぶ。

  • 03

    文化祭での帯結びの展示発表。

※2020年度の受講人数:20名(女子限定)

プロジェクトワーク「和物と礼儀作法」とは?将来に役立つことを学ぶ講座

北澤先生

「和物と礼儀作法」では、挨拶や食事のマナー、着付けなど、生徒の将来に役立つことを学びます。当初は、文化祭で着付けを担当してくださっていた装道の先生が、プロジェクトワーク「浴衣の着付け」として始められました。私も本校出身で、茶華道部で着付けをしていただいていたので教員になってから一緒にさせていただいていましたが、5年ほど前に私が受け継ぎ20名に限定して1人で指導しています。

今年は中学生だけの受講でしたが、毎年高校生も参加しています。(今年は新型コロナウイルスの影響で実施できなかった)「カナダ語学研修」が例年中学3年時にあり、現地校との交流会で日本文化を伝えるために浴衣を持参し、着付けをする生徒がいます。着付けをして写真を撮るという交流は、相手の方達にもとても人気のため、特に中学3年生の受講が多いプロジェクトワークになっています。

「和物と礼儀作法」1年間の取り組みと流れ生徒の頭の片隅に残る
体験や知識を積み重ねる

北澤先生

最初は浴衣の着付けからスタートします。早い時期に着られるようになれば夏祭りにも着られますし、まずは自分で動いて学ぶ方が生徒も興味を持ち、身につくのではないかと考えるからです。週に1回の授業ですから、多くの種類がある帯結びのすべてはやり切れませんが、いろいろな種類を覚えるために着付けは11月頃まで続けます。

文化祭の発表時は帯結びの展示もしますし、浴衣を着て校内を回る生徒もいます。その後、礼儀作法に進み、マナーや年中行事について勉強していきます。礼儀は挨拶の仕方、「真・行・草」と3段階あるおじぎの使い分け、マナーは上座・下座や座布団の座り方や向き、洋食や和食やケーキの食べ方、祝儀袋・風呂敷の使い方も教えます。それらは、今すぐ必要なものではないかもしれませんが、生徒の頭の片隅にあればベースの知識となり、必要になったら調べることができます。まずは知らなければ何もできません。

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「和物と礼儀作法」で尊重する学び知らない間に役立つ礼儀作法
交流や発表も大切に

北澤先生

「和物と礼儀作法」のプロジェクトワークは、生徒の長い人生の中で、「以前にやったことがあるな」と思えれば良いと思っています。一番早い影響は、おそらく大学入試時の面接です。このプロジェクトワークを受けた生徒は、大学入試の面接練習時にも、入室の仕方や挨拶の仕方、イスの横の立ち位置などを知っているのでスムーズにできますし、自分の中に確信があるので話すことに専念できるようです。大学の卒業式でも袴を自分で着て、「ちゃんと着付けられました」と写真を送ってきてくれる生徒もいます。

しぐさはすべてにおいて現れますし、第一印象も良くなりますから、知らない間に役立っていることも多いものです。そのときに「和物と礼儀作法」のプロジェクトワークの意味に気づいてもらえるように、細々したことを1年間かけてやっています。

プロジェクトワーク自体の良さは、参加生徒の学年が幅広く混合していることだと思います。高校生は中学生を見てあげることができますし、中学生は上級生と接する機会が自然とできます。私も基本的には他学年とペアになるようにしていて、特に人に着せてあげる他装では別の学年と組むようにしています。浴衣の帯はいろいろな結び方をして良いので、高校生のアレンジを見ると「そういう考え方ができるんだ」と中学生が新たな発見を得ます。

他にも、文化祭の後には感想などをみんなの前で発表する機会を設けています。人前で発表するのはやはり先輩が上手ですし、微妙な言い回しもできます。その姿を見ると消極的な生徒や下級生も「自分もできるかもしれない」と思って頑張るのです。人前で自分の意見を言うためには、それなりに考えてまとめないと難しいものですが、その機会を得ることによってコミュニケーション能力も言語能力も上がりますし、学力にもつながっていきますから、大切なことではないかと思っています。今の世の中、単語でしゃべってしまう子ども達が増えてきていますので、助詞や助動詞を使ってコミュニケーションがしっかり取れる生徒が増えてくれたらいいですね。

今後のプロジェクトワーク生徒が自分を表現する機会を取り入れたい

北澤先生

年中行事や文化を知ったうえで人と話すと、コミュニケーションが広がりますが、今は自分達で楽しんで、いろいろな知識を体験した上で身につけるという形なので、あまり人前で発表する機会がありません。今後は、例えば着付けをするファッションショーや外部での大会に出ていって、自分を表現する体験をしてもらう機会を作っていきたいと思っています。

 

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