【清教学園中学校・高等学校】行動すれば、周りを動かし、可能にできる!5人が成長したSSSプロジェクト
清教学園の高校生たちが「キリスト教概論 Grobal Studies II」の授業の一環で取り組んだ「SSSプロジェクト」。フィリピンのスラム街の子供たちの教育を支援したいという想いから始まった取り組みは、多くの人に共感され、しっかりと結果に結びつきました。ココロコミュでは、フィリピンの現地で見た現実から目を逸らさず、仲間と共に行動した5人の思いを取材。そこからは清教学園の教育が目指すものが伝わってきます。
SSSプロジェクトメンバー(高校3年生)

SSS(Support Sustainable Study)
プロジェクトとは

フィリピンの「リロケーションサイド」(フィリピン政府がスラム街の住民を強制的に移住させる場所)に住む学生を支援するため、清教学園高等学校3年生の5人の生徒たちが立ち上げたプロジェクト。
「教育で貧困問題を解決しよう」という目的の元、現地のスラム街の中高生がオンライン授業で使用する情報端末を届ける支援を行う。40台の端末を集め、輸送費はクラウドファンディングにより捻出した。

READYFORのクラウドファンディングページ
https://readyfor.jp/projects/SSS-philippines

セブ島のスラム街で感じた自分たちにできることはないか?

― どのような流れでSSSプロジェクトを発足したのですか。

Kくん:この5人は高校1年生の時に、グローバル教育のプログラム「フィリピン・セブ島スタディツアー」に参加しました。僕はボランティア活動を通して、スラム街に住んでいる自分と同年代の子供に対して手助けできることはないかと考え始め、高校2年生になってから賛同してくれそうな同級生に声をかけて、このプロジェクトを発足させました。メンバーが集まったあと、先生に相談したところ、キリスト教概論の授業で、クラスを超えて自由にチームを作れる場所を提供してくださり、SSSプロジェクトの活動を行ってきました。

セブ島スタディツアー(高1・2の希望者対象)

朝から晩まで英語漬けの生活を送り集中的に英語を学ぶ。マンツーマンでの指導をはじめ、理想的な学習環境に身を置くことで、短期間での大きな成長が期待できる。他の英語圏に比べ、リーズナブルに貴重な学習機会が得られるのも魅力。研修内容には現地でのボランティア活動も含まれ、グローバル社会の抱える課題にも目が開かれる。

― SSSプロジェクトで取り組むテーマを「オンライン授業を受けるための機材を送る」に決めた理由は?

Kくん:最初、自分たちだけで考えたテーマはセブ島で交流した高校と協力し、青空教室を開くことでした。テーマを変更した理由は、セブ島で活動しておられるNGO団体の協力で現地の高校生とオンライン会議を行い、「コロナ禍でオンライン授業になったが、情報端末が足りなくて困っている」という現地のニーズを知ったからです。そのため本当に必要とされている情報端末を送るプロジェクトに決めました。

大きな衝撃と気づきを得たスラム街でのボランティア経験

― 活動の起点となったスラム街でのボランティア活動で、最も印象的だった出来事、プロジェクトへの参加理由を教えてください。

Kくん:最もショックを受けたのは、日本とフィリピンの貧困層との間にある大きなギャップです。例えば僕たちにとって学校へ行くことは当たり前ですが、現地の人たちは学校に行きたいのに環境のせいで行けないという現実と向き合っています。このプロジェクトを立ち上げたのは、そんな現地の子供たちに僕たちに何かできることはないかと思ったことが最大の理由でした。

Aさん:スラム街から見える高級マンションがとても豪華で、「これがフィリピンの貧困格差の現実なのだな」と実感しました。スラム街には「成功したいから教師を目指す」という夢を抱く子供が多いと知り、その夢を実現するお手伝いができればいいなと思って参加しました。

Oくん:スラム街の風景は、社会の教科書に掲載されている貧困地域の写真と同じで、現実を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。また滞在中に、セブ島で富裕層の子供が通う学校見学もして、スラム街との格差にショックを受けました。

Fさん:ボランティアに行く前は、スラム街に住む人はきっと不幸だろうという暗いイメージを持っていました。けれど実際に現地を訪れて、子供たちがとても元気に遊んでいる姿を見た時に衝撃を受け、自分の固定観念が崩されました。現地を訪れて得た経験はインターネットで調べるよりもはるかに感じる物が多く、行ったからこそできることがあるのではないかと考えました。

Mさん:私たちがスラム街を訪れた時期に、フィリピンに本を届けるプロジェクトに取り組んでおられた先輩方から「日本で集めた英語の本を、スラム街の子供たちに渡してほしい」と頼まれました。その本を渡したところ、受け取った子供たちがすごく喜んでくれて、私も自分にできることがないかと思い、この活動への参加を決めました。

2020年度全国高校生フォーラムにも出場

5人の意見や考えを一つにクラウドファウンディングに挑戦

― 実際に活動を始めて、苦労や工夫したことはありましたか。

Mさん:苦労したのはメンバー間で意見が食い違った際の対応です。でも簡単に譲歩するのは真の解決に繫がらないと考えたので、各自がその意見をもった理由を互いにしっかり伝え合い、その上で全員が納得できるようにまとめていきました。

Fさん:3月の研究発表会でプロジェクトの詳細を報告するのですが、とにかく時間がなくて焦りました。週3、4回ほどメンバー全員でオンライン会議を続けましたが、やるべきことがあり過ぎた上に皆の思いが違うのです。最終的には全員の案を出して共通点を見つけ、全員の意見を少しずつ取り入れた案になるように意識しました。そうでないと、この5人で取り組む意味がないと思ったからです。

Aさん:私も話し合って決める内容があり過ぎて苦労しました。最初は情報端末の収集に関して、いろいろな案が出ましたが、どれも現実的ではありませんでした。そこで、私がSNSでいらなくなった情報端末を持っている生徒がどれくらい存在するかを調べ、学校で集めることに決めました。それから先生に計画書を出し、集まった端末が使用可能か1台ずつチェックし、それらを送るお金を工面するためにクラウドファンディングをすると決めました。

Oくん:クラウドファンディングのサイト制作では、見た人が寄付しようと思ってくれるサイトにするため工夫しました。完成したサイトの効果を確かめるため、校内でサイトを限定公開し、その評価を反映してさらに改善していきました。

Kくん:悩んだのが輸送費の集め方です。学校食堂の各メニューの利益からの寄付や学校行事での募金を考えましたが、コロナ禍で難しく、最終的にクラウドファンディングに決まりました。サイトを作った段階では充分な金額が集まるのかとても不安でしたが、最終的には目標金額を大きく上回ることができました。多くの方々が僕たちのプロジェクトを支持してくださったことが嬉しかったです。また端末も生徒が寄付してくれて、最終的に40台が集まりました。

視野が広がり一歩踏み込んで物事を考えられるキリスト教概論

―SSSプロジェクトは「キリスト教概論」の授業がベースになっているそうですが、この授業を受けての自身の成長を教えてください。

Mさん:高校1年生の時には「情報探究」という授業があり、国際的な課題について、特に貧困に関する問題やSDGsを元にした研究を行いました。高校2年生では「キリスト教概論」という授業で、同様の研究を継続しました。これらの授業があったからこそ貧困問題を身近に捉え、日常生活でニュースを見て自分も関わる問題として考えられるようになりました。視野が広がって様々な分野に興味を持つようになりましたし、この活動に参加しようと思ったこととも関係しています。

Fさん:私はあまり積極的なタイプではないので、キリスト教概論で国際問題を学びながらも自分のような一高校生に何ができるのか疑問に思っていました。しかし自分から行動しないと何も変わらないし、せっかく清教学園で学んでいるのだからもっと積極的に行動しようと思うようになりました。

Oくん:キリスト教概論の授業では、世界の問題について深く知ることができます。学生である自分たちもそれらの問題に関わっていることがよくわかる授業です。SDGsの目標の中からテーマを1つに絞って調べる課題があるのですが、その時に難民や貧困について調べたことで、今回の活動に関する基礎知識がつきました。僕たちのような自主的に行動を実現できる場がキリスト教概論だったので、学べて良かったと思います。

Aさん:高校1・2年生では毎年3月に研究発表会があり、1年間の研究について発表する場が用意されています。生徒がグループを作って1つのテーマを研究し、皆の前で発表するのですが、単なる報告するだけでなく、最後に自分たちなりの「アクションプラン」を提案するところまで作っていきますから、本当に多様な考えに触れることができます。自分にはない発想をたくさん吸収できることが、研究発表会の大きな魅力の1つです。

Kくん:僕はキリスト教概論の授業を通して、物事を多角的、多面的に考えられるようになったと思います。授業では毎回聖書を読むのですが、その内容をより深く考えれば、重要なメッセージが隠されていることが理解できます。他の分野でも視野が広がり、例えばニュースを見ていても起こった事象をただ受け止めるだけでなく、今までより一歩踏み込んで物事を考えられるようになりました。

SSSプロジェクトでの行動は勇気を得て自信がついた

―最後に、今回の経験を通して学んだことや成長できたこと、それを今後どう活かしていきたいかを教えてください。

Kくん:新しく物事を始める時に一歩を踏み出す勇気がつきました。今回のプロジェクトを通して0から1を作る勇気を得て自信がついたので、社会に出ても活かしていきたいです。

Aさん:このプロジェクトを通してグループで新しく何かを作る楽しさを知ったので、そういうことができる大学に進学したいと思うようになりました。私たちの活動は1回きりですが、より多くの人に伝えることでボランティアに興味をもってもらい、やってみようかなと行動に移す人が1 人でも増えてくれることを望んでいます。

Oくん:行動することの大切さを学べました。自分が考えたことを実現するところまでやることが重要だし、その方がずっと楽しいとわかりました。これから何かに取り組む時は不安や心配を感じても諦めず、とりあえずやってみようという姿勢でいたいと思います。

Fさん:高校1年生で国際問題を勉強している時は、外国について身近に感じることができませんでした。でも自分たちが行動することで、自分でもやれること、やってみないとわからないことがあることを学びました。今後はもっといろいろなことに挑戦していきたいです。

Mさん:私は元々消極的で慎重なタイプなので、一人ではクラウドファンディングなんてリスキーなことはできないし、やろうと考えすらしなかったと思います。でも、実際に1年活動をしてみて、迷うくらいならとりあえずやってみようと考えられるようになったので、これからも自分から積極的に行動できるよう頑張っていきたいです。