2年前に開校した大阪学芸高等学校附属中学校には、一般入試のほかに「特技入試」「英語資格入試」「帰国子女入試」といった入試方式があります。「特技入試」は、スポーツや芸術活動に打ち込んできた小学生が、中学入学後もその活動と学業を両立させていくことを応援するために設けられた入試方式。入学後に特別扱いはありませんが、この入試方式を活用した生徒たちは、必要な学力をしっかりつけると共に、夢をあきらめずに自分のやりたいことに打ち込んでいます。
大阪学芸高等学校附属中学校
部員数:25名[女子12名 男子13名]※高校空手道部は59名在籍
練習は体育館で週6回。いろいろな種類があるアップ運動から、その日のメニューに取り組む。
その後は防具をつけて、本格的に組手や形を練習。女子でもかなりの迫力だ。
部の目標は、全中、選抜大会などでの全国優勝。
【 2017年度の主な実績 】
第25回 全国中学生空手道選手権大会
女子団体組手 第3位/女子団体形 第3位/男子団体形 第5位
第28回 大阪府中学校空手道選手権大会
男子団体形 優勝/男子個人形 優勝/女子団体形 準優勝/男女団体組手 第3位
STUDENT INTERVIEW それぞれが自分のやりたいことを頑張っているから、自分も精一杯頑張りたい!
宮尾さん
中学1年。空手道を続けるために特技入試で同校を受験し、首席で入学。
現在は、学業と両立しながら空手道部の練習に励んでいる。

置いていかれたくない!
その気持ちから「特技入試」を決意

――宮尾さんは大阪学芸高等学校附属中学校に、空手道で「特技入試」で入ったそうですね。宮尾さんのこれまでの空手道歴を教えてください。
宮尾さん 4歳くらいから始めました。最初は、体を強くするために入ったので、基本的な普通の空手をやって体力づくりをメインにしていました。今やっているような、試合での組手の練習を本格的に始めたのは、小学校2年生からです。
――空手道をやっていて、楽しいことや成長したことは何ですか。
宮尾さん 新しい技ができるようになったり、試合で1回でも多く勝てたりすることが嬉しいです。成長できたところは、先生にしっかり挨拶できるようになったところです。最初に道場でやっていた頃はそれほど厳しくなかったのですが、礼儀の大切さがわかってきてからは、自分にも厳しくするようになりました。
空手道部の練習
空手道部の練習
空手道部の練習
――空手道で守らなければいけない礼儀は、挨拶以外にもありますか。
宮尾さん 試合で反則されてもきちんと礼をします。わざと相手をケガさせるようなことも絶対にダメです。
――礼儀の指導は厳しく行われているのですか。
畠山先生[空手道部顧問・中学1年担任] 大人になってからでは誰も教えてくれないと思うので、この時期に体に染みつけて自然とできるようになってほしいと思っています。部員たちには、普段挨拶できない人は試合に行っても挨拶できないし、コートに入る時の礼などを普段からきちんとやっていないと本番の緊張した時にはできないと言っています。そういった当たり前のことをしっかりできるように、指導させていただいています。
空手道部の練習
――宮尾さんが、大阪学芸高等学校附属中学校の「特技入試」を受けようと思ったのはなぜですか。
宮尾さん 4年生で全国大会に出て、中学生になっても空手道を続けていきたいと思ったからです。「特技入試」を決めたのは、6年生になってからです。初めはお姉ちゃんだけが高校への進学を決めていて、私も高校から行くつもりだったのですが、空手で周りのみんなに置いていかれたくないという気持ちがあって、中学から行きたいなと思いました。
宮尾さん
入学式で新入生代表として
「誓いの言葉」を読み上げた。
――「特技入試」で受験した宮尾さんですが、特技加点を加えなくても首席の合格だったそうですね。中学校生活で勉強と部活動を両立するために工夫していることはありますか。
宮尾さん 小学生のときからなるべく授業で覚えるように集中していて、それは今も同じです。クラブは週に1日休みがありますが、試合前になるとほとんど休みがなくなります。テスト前になると中学生は基本休みになるので、勉強に集中できるんです。空手の練習は部活の中で精いっぱいやって、勉強は通学に2時間くらいかかるので、電車の中で授業の復習をしています。眠い時もあるのですが、帰ってからすぐ休めるように、電車の中でなるべく勉強をしています。
宮尾さん
――やるべきことを先にやって、メリハリを付ける感じですね。両立のためのアドバイスはありますか。
宮尾さん ずっと一つのことばかりやるのではなく、今日はこれ、明日はこれというふうに、しっかりと予定を組んでけじめをつけて集中するのがいいと思います。

自分よりレベルが高い人が
たくさんいる中で刺激をもらえる

――先生からはクラブ活動と勉強の両立に関しては指導されるのですか。
畠山先生 いろいろ工夫はしますが、こちらが強制的に指導しても、結局生徒本人が頑張らなければ意味がありません。だから自分自身で考えて、最低限のことはきっちりやるようにとだけ伝えています。勉強もクラブも何か目標を持ってやっている生徒は伸びていきます。そこをどうサポートしていくか、どうアドバイスや声掛けしていくかを考えています。
――「特技入試」で空手道部に入ってくる生徒は多いのですか。
畠山先生 そうですね。空手道で強くなりたいし、今後もその道に進んでいきたいという部員が多いと思います。
――そういった意識の高い部員が多い中での空手道の練習には、小学生のときとの違いを感じますか。
宮尾さん 全国で戦ってきた自分よりレベルが高い人がたくさんいる中でやれるので、すごく刺激をもらえます。アドバイスをもらったり、技を真似してみることで自分もできるようになっていったり、その技を自分のものにできるようになったりしています。いろんな人がいることで、みんなで強くなっていけるところがいいと思います。
防具を使って激しい空手の練習に取り組む
防具を使って激しい空手の練習に取り組む
防具を使って激しい空手の練習に取り組む
――高校生の先輩たちとは交流もあるのですか。
畠山先生 結構ありますね。仲はいいですよ。中学生たちは「先輩」に対して緊張した態度ですが、高校生は弟・妹みたいな感じで接していますね。その中で、中学でも頑張って、さらに高校でインターハイを目指していくという意識をしっかり持ってほしいです。目標となる全国大会は、1年に2回あり、それを踏まえて、中学生で土台を作り、高校生の試合でも活躍していってもらえればいいですね。
宮尾さん 高校の先輩たちは憧れです。質問は、中2の先輩の方がしやすいのですが、空手の技になってくると高3の先輩はやはり違うなと思います。
防具を使って激しい空手の練習に取り組む
――宮尾さんのこれからの目標は何ですか。
宮尾さん まずは全国大会で優勝という目標です。みんなで一丸となって頑張りたいと思っています。1人ずつ戦うのですが、チーム全体で勝った数の多い方が勝ちになるので、チーム力が勝利につながってくるんです。自分の中では、次の試合の目標をしっかり立ててから、その目標にいくまでの課題をクリアして、その目標を確実に達成できるようにしたいと思います。勉強面では今までどおり、しっかり復習や予習をして、両立を続けたいです。周りに運動部に入っている友達が多いですが、それぞれが自分のやりたいことを頑張っているから、自分も精一杯頑張りたいです。
Whats 特技入試?

「特技入試」で入学したら、
自分の可能性を思う存分
伸ばしていってほしい

教頭 高田義之先生
 Q.「特技入試」とは?
高田先生 私立中学というと勉強するか、クラブで頑張るかの二極化傾向があるように感じています。普段の授業では普通に中学校の勉強ができて、放課後は自分の活動や学校で設けている部活動に打ち込める環境を作りたいということで、2年前に本校ができました。「特技入試」は、小学校の時に学校以外にスポーツ活動や芸術活動を継続してきて、一定の実績を持っている人に受験資格を与えるという入試の形です。本校には、小学校で勉強以外のことにも目を向けてしっかり打ちこんできたことを継続していく場を与えたいという基本的な方針があります。「特技入試」なら、小学校6年まで自分の活動に打ち込んで中学入試の勉強をしていなくても、十分合格できるチャンスがあります。
 Q.入試科目は?
高田先生 「一般入試」と同じ国語と算数です。いわゆる中学受験塾でしか習わないような特殊な問題は一切出していません。「特技入試」では、場合によっては実績を加点して受けやすくしています。 ただ、本校では、中学生は将来まだどうなるかわからない年代なので、勉強だけとかクラブだけに特化せず、「両立」を図ることを基本方針としています。「一般入試」「英語資格入試」「特技入試」「帰国子女入試」のどの入試方式で入学してもクラスを分けずに一緒に勉強します。このため、「特技入試」の実績加点も、入学後の勉学に支障のない範囲に限定しています。
 Q.「特技入試」の特技の基準は?
高田先生 まだ小学生なので、明確な基準は設けていません。個々に必ず事前相談に来てもらって資格認定を行っています。どれだけ打ち込んでやってきたかというところは重視しています。
 Q.「特技入試」で入学後の特別な扱いは?
高田先生 特別扱いは一切ありません。本校は高校に「特技コース」がありますので、時々混同されますから、受験前にしっかりと説明して納得いただくようにしています。たとえば、土曜日はまったく学校に来られないとか、舞台に上がるから髪型を考慮してほしいという事前相談があっても特別扱いはできませんから、学校の決まり通りにできないのであれば受験はご遠慮くださいとはっきりと伝えています。
 Q.入学後、学業との両立に関する指導は?
高田先生 本校では、入試時の面接試験を重視しています。小学校のときに勉強以外にどんなことをやってきたか、中学での勉強は何を頑張るのか、勉強以外では何を頑張るのかと、面接段階で「両立」を理解しているかどうかを求めていますので、入学してきた生徒自身がもともと両立するつもりでやってきています。ですから、クラブと習い事を合わせれば、ほぼ全員が放課後に何かに打ち込んで、勉強と両立させています。
 Q.「特技入試」の良さや、生徒たちの成長を実感すること
高田先生 打ち込むものがあると、だらだらと勉強している時間がないので、「今、理解しておかなければいけない」という気持ちを持って授業を受けています。その意味では授業の雰囲気が非常にいいと思います。そういう生徒が一定数いると、クラス全体に与える良い影響も大きいです。本校では高校の内容を先取りするとか、大量の宿題を出すといったことはありません。「落ち着いた公立中学校」というイメージで学校作りをしていますので、良い意味でみんなのびのびしていると思います。「特技入試」で入学して、自分の可能性を思う存分伸ばしていってほしいですね。