column ココロの特集
声かけから始めよう 親子のより良いコミュニケーション
親子のコミュニケーションのきっかけとなる「声かけ」。普段から何気なく行っている親がいる一方で、「どう声をかければいいのか迷う」「声をかけても子どもの反応が今一つで……」と悩む親もいます。 例えば子どもが落ち込んでいたり、あるいは反抗的だったりした時など、どんな声かけがよいのでしょうか。
今回は声かけの大切さとそのタイミング、思春期を迎えた子どもにはどう声かけをするか、また避けたい声かけの例などを紹介します。
今回は声かけの大切さとそのタイミング、思春期を迎えた子どもにはどう声かけをするか、また避けたい声かけの例などを紹介します。
もくじ
子どもへの声かけが大切な理由
声かけは、子どもと親のコミュニケーションにおいて重要なものの1つです。
普段から親が子どもに声かけをするのは、親子で話しやすい環境を作ることにつながります。中~高学年の子どもになると、親が「今日は学校でどんなことがあったの?」と問いかけても「うーん、普通」、「別に」などとそっけなく返してくることもあるでしょう。
「低学年の頃は、学校であったことを自分から話してくれたのに……」と寂しく感じるかもしれません。子どもは大人に近づくにつれ、親には秘密にしておきたいことが増えたり、親と話すより友達と話す時間を重視したりするものです。
しかし、子どもが嬉々として話してくれないからといって、親の声かけが無駄ということはありません。むしろ普段から声かけをすることで、いつもとは違う子どもの様子に早く気づけるというメリットもあります。
また声かけといっても、日常のコミュニケーションの一部としての声かけ、子どもに行動をうながすための声かけ、悩みや疑問を引き出すための声かけなど種類はいろいろです。子ども一人ひとりの「その子らしさ」に合わせた声かけや、ケースに合わせた声かけをしていきましょう。
子どもへの声かけで意識したいポイント
子どもに声かけをする時に意識したいポイントについて紹介しましょう。
家事やスマホなど「~しながら」の声かけは避ける
子どもに声かけをする時は、できるだけ子どもに集中しましょう。
他の物に気を取られながら声かけをすると、子どもは「スマホを見ながら話しかけているし、返事をしてもどうせちゃんと聞いてくれないんだろうな」と思い話す気を失うかもしれません。
もちろん忙しくて手が離せない場合もあると思いますが、そんな時でもせめて視線は子どもに向けて声かけをし、子どもが話している最中もできるだけ目をやるようにしてください。
子どもが好きな話題に関して声かけをする
スポーツやゲーム、アニメ、本など趣味に関する声かけや、好きなアイドル・タレントなど子どもがはまっているものについて声かけをするのもおすすめです。
「あなたの好きな〇〇が今日、テレビに出るみたいよ」「今読んでいるその本は面白い?」などと声かけをすると、子どもも返事をしやすいはずです。
子どもが何かできた時に声かけをする
子どもが宿題を仕上げた時やお手伝いをした時など、何かができたタイミングで声かけをすると、子どもが達成感や自己肯定感を得やすくなります。
この声かけで意識したいのは、「~できてえらいね」という成果をほめる表現ではなく、「~してくれてお母さんは嬉しいな」「しっかり頑張れてすごいね」「自分から進んでできてすごいね」という言い方をすることです。
成果をほめる言い方では、子どもが「いい結果を出さないと、認めてもらえない」と受け取る恐れがあります。成果ではなく努力をほめたり、子どもの行動によって家族が助かったと伝えたりしてあげてください。
声かけに迷う、こんなケースはどうする?
ここでは声かけに迷うケースについて、具体的に説明していきます。
case1子どもが失敗やつらい経験をして落ち込んでいる時
「無理に聞かないけれど、心配だから話したくなったらいつでも言ってね」
「お母さん(お父さん)も、そんな経験があるよ。つらいよね」など、
気持ちに寄り添う声かけを
「お母さん(お父さん)も、そんな経験があるよ。つらいよね」など、
気持ちに寄り添う声かけを
こんな時、親は心配のあまりつい「どうしたの?何があったの?」と聞き出そうとしがちです。子どもが話してくれるならよいのですが、話したくなさそうな素振りを見せたら無理に聞き出すのは逆効果です。心配していることは伝えつつ子どもが落ち着いて話し出すまで待つ、または親が自分の経験を話して子どもの「つらい、悲しい」という気持ちに寄り添うなどの声かけをするのもよいでしょう。
case2子どもが親を無視する時
無視する理由は何かを推測しつつ、
あえて声かけをしない方法もあり
あえて声かけをしない方法もあり
まず、なぜ子どもが親の言葉を無視するのか考えてみましょう。例えば何を言われている(聞かれている)かわかっていないのか、わかっているけれど難しくて対応できないのか、全部わかった上で無視しているのか、それによって声かけも変わってきます。言われた内容が理解できないなら表現を変えてよりわかりやすい声かけをする、難しくて対応できないならやり方を教えるなどです。もしわかった上で無視しているなら、イライラしていたり機嫌が悪かったりするのかもしれません。そんな時はあえて構わず、しばらくそっとしておくのも1つの方法です。
case3後ろ向き・ネガティブな発言をする時
ネガティブにもメリットはある!
否定せずに「別の見方もあるよ」と教えてあげる
否定せずに「別の見方もあるよ」と教えてあげる
「新しいことをやるのは怖い」「どうせうまくいかない」など、何をするにもネガティブ(悲観的、疑い深いなど)な発言をする子どもは親から見ると心配になるでしょう。しかしネガティブが全てマイナスとは限りません。見方を変えれば「物事を慎重に進められる」「最悪の事態に備えることができる」などのメリットもあるのです。そういった点を伝えてあげるとよいでしょう。または「それも1つの見方だけれど、別のこんな考え方もあるよ」と、ポジティブな見方を教えてあげるやり方もあります。どちらにしても避けたいのは「そんな考え方は良くない!」と、子どもの気持ちや考え方を受け止めることなく否定することです。
こんな声かけはNG
ここまではより良い声かけについて紹介してきましたが、ここではNG例を取り上げています。
問いただすような言い方 :「どうして〇〇をしないの?」
例えば「どうして宿題をしないの?」という声かけでは、子どもは責められたように感じてしまいます。「今日は何の勉強をするんだった?」や「終わったらおやつ食べようか」、「わからないところがある?」など、できるだけとがめるような表現を避けた声かけを意識するとよいでしょう。
頭ごなしに命令するような言い方 :「〇〇しなさい!」
「早く宿題しなさい」「早く寝なさい」など、命令するような声かけはおすすめできません。命令されると反発したくなるのは子どもも大人も同じです。そうではなく「先に宿題をしておくと後が楽よ」「そろそろ寝ないと、明日、起きるのがつらいよ」などに言い換えるとよいでしょう。
親の意見を押し付ける言い方 :「こうすればいいのよ」
子どもが不安を感じていたり悩みを抱えていたりする時に、よかれと思っても「あなたはこうしておきなさい!」「お母さん(お父さん)の言う通りにしておけば安心だよ」など、親の意見を押し付けるような声かけは控えましょう。まず子どもの気持ちに寄り添い、話してくれるようなら話を聞いて「わかるよ」「大変だね」と受け止めてあげてください。
思春期の子どもにはどんな声かけをする?
思春期の子どもは日々、心身ともに急激に成長します。とはいっても心はまだ未成熟な部分も残っており、気分が不安定になることも珍しくありません。思春期になると、多くの子どもは親に反抗したり無視したりするようになります。
そんな思春期の子どもへの声かけは、干渉しすぎず離れすぎない適当な距離感を意識し、子どもが親に対して心を開いているタイミングで行うことがおすすめです。「無理に話してもらおうとは思わないけれど、話したくなったらいつでも声をかけていいんだよ」と伝えておくとよいでしょう。
思春期には、これまで行ってきた声かけが通用しなくなって途方に暮れる親も多いかもしれません。しかし思春期に子どもの態度や考え方が大きく変わるのは自然なことです。思春期に伴う子どもの変化は、親をはじめとする周囲に向けた「自分は変わったのだから周囲の大人も変わってほしい。今までと同じ接し方は止めてほしい」というメッセージなのです。子どもの成長過程でごく自然なことなので悲観的にならず、適度な距離感を保ちつつ子どもに声をかけてあげてください。
声かけの失敗を恐れず、親も柔軟に対応しよう
わが子であっても、成長や気持ちの変化などによって最適な声かけは日々変化するといえます。子育てに絶対的な正解がないように、声かけにも「こう言っておけば大丈夫」というものはありません。むしろ親子の数だけ正解があるといってもいいでしょう。
だからこそ失敗を恐れず、試行錯誤しながら親子で一緒に理想の声かけを見つけていきたいものです。
子どものためにより良い声かけをしようと心がけている親は、すでに十分に頑張っています。「子どものために、いつも正しい声かけをしなければ!」と気負わなくてもいいのです。
失敗を恐れず、頑張りすぎず柔軟に対応していきましょう。