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小学生の友達関係 親はどう関わる?
小学生の子どもにとって友達は家族に次いで身近な存在。友達から影響を受けることも多く、また学年が上がるにつれて友達との付き合い方も変化していきます。そういったわが子の友達関係に対して、親はどう関わっていけばよいのでしょうか。今回は、気になる小学生の友達関係について考えます。
もくじ
小学生の友達関係は年齢によって変化する
小学生の友達関係は、年齢が上がるにつれて変化していきます。低・中・高学年での友達関係の特徴と、どう変化するかについてご紹介します。
低学年
低学年は同じクラスで席が近い、あるいは近所に住んでいるなど、側にいたり会う機会が多かったりする子と友達になりやすい傾向があります。また性別を問わず仲良くなることも珍しくありません。まだ友達関係が複雑でなく、たまたま知り合った子とでも楽しく遊べる時期です。
中学年
中学年では自分の好きな子や気が合う子とグループを作って遊ぶようになり、友達の間だけで通じるルールを作って連帯感を高めたりします。友達との結びつきが強くなる一方、親やきょうだいと過ごす時間が減ることも。人間関係が外部に向かって広がる時期といえるでしょう。
高学年
反抗期を迎える高学年は、友達の存在がますます大きくなっていく時期です。「意見が合う」「趣味が同じ」など、より内面を重視した友達付き合いになっていきます。友達と過ごす時間をさらに大切にするようになり、親に対して秘密をもつことも増えるでしょう。親にとっては子どもの友達関係が見えづらくなる時期かもしれません。
学年が上がるにつれて、近くにいたから友達になったという単純な状態から、徐々に自分との共通点が多かったり、気持ちをわかり合えたり、趣味が合ったりすることを重視して友達を選ぶという変化が見られます。
これらは成長に伴う自然な変化なので心配はありませんが、トラブルのきっかけになりかねない、注意が必要な変化もあります。例えば子どもに次のような様子が見られたら、友達関係をはじめ何らかの悩みを抱えているSOSサインかもしれません。
- 食事の量がはなはだしく減った、あるいは増えた
- 夜、よく眠れていない
- イライラすることが増えた
- 子どものお小遣いでは買えないような物を持っている
- 「もっとお小遣いがないと、友達が一緒に遊んでくれない」などと言ってくる
- 口数が減った
- 学校に行きたがらない など
このような様子が見られたら、子どもに「何か困っていない?」「お母さんやお父さんに相談したいことはない?」など、悩みを打ち明けるきっかけを親が作ってあげてください。
小学生の友達関係、ケース別に考える「親の悩み」
続いては小学生の友達関係に関する親の悩みを、ケース別にご説明します。
ケース1.「うちの子、友達が少ないかも?」
自分でも気づかないうちに、親が「友達がたくさんいる=みんなに好かれるいい子、協調性のある子」という先入観をもっていませんか?そうであれば、つい友達の数を気にしてしまうのもわかります。
しかし友達とどんな付き合い方をするかは、子どもによってそれぞれです。積極的にたくさんの友達を作り、いろいろな子と遊ぶのが好きな子どももいれば、しっかり向き合い信頼し合える友達が数人いれば十分と考える子どももいます。後者なら子ども自身は数に関係なく、友達付き合いに満足しているはずです。
あるいは友達と過ごすより、自分1人の時間を充実させたいと望む子どももいるでしょう。そういった子どもは、小学生の間は友達の数が少ないかもしれません。しかし中学・高校と年齢が上がるにしたがって、同じ趣味を持つ友人が増えていくことも十分に考えられます。
友達の数を重視することをいったんやめて、子どもが友達とどのような付き合い方をしているかどうかに意識を向けてみましょう。子どもは友達とどんな風に仲良くしていきたいと考えているのか、何か悩んでいることはないのかなど、機会をみて子どもと話し合うことも1つの方法です。
友達の数を重視することをいったんやめて、子どもが友達とどのような付き合い方をしているかどうかに意識を向けてみましょう。子どもは友達とどんな風に仲良くしていきたいと考えているのか、何か悩んでいることはないのかなど、機会をみて子どもと話し合うことも1つの方法です。
「どうして友達が少ないの?」「もっとたくさんの友達と付き合ってほしい」など、子どもを問い詰めたり友達作りを強制したりするのは避けた方がよいでしょう。
中には「友達が少ないと協調性に欠けているのではと心配になる」「多くの友達とうまくやれないと、社会に出てからやっていけるか不安」という親もいますが、友達の数に関係なく友達ときちんと意思疎通ができ、自分と相手を尊重した付き合い方ができているなら、それでよいのではないでしょうか。わが子の友達との付き合い方を尊重した上で、「もし何かあったら、いつでも話を聞くよ。一緒に考えよう」と伝えてあげるとよいでしょう。
ケース2.「子どもの友達に、付き合ってほしくない子がいる」
親が「この子とは友達付き合いをしてほしくないな」と思うのは、例えばすぐに手が出る子だったり、お金遣いが荒かったり、周りの子を支配したがる子だったりするのではないでしょうか。
親がそういった友達について気になった時に一度、その子のどこが好きなのか、一緒に遊んでいてどう楽しいのか、我慢をして一緒にいるのではないかなど子どもに聞いてみてください。不満や無理がなく、仲の良い友達として付き合っているのであれば、ひとまず親は介入せず見守るとよいでしょう。
子どもが不満を抱いているけれど、その子には言いにくい場合もあるかもしれません。そんな場合、その子が自宅にくるなどの機会があれば親が直接、「うちの子はあなたのことがとても好きなのだけれど、『あれをやれ、これをやれ』って命令されるとすごく悲しいみたいなの。だから、やめてくれると嬉しいな」などと、柔らかい表現で話してみては。
さらに、子ども自身に「お友達であっても、あなたが嫌なことは嫌と言っていいんだよ。逆に、もしあなたが他の友達に何かをして、『やめて』と言われたらすぐにやめてね」と伝えてみてもいいでしょう。
仲良くしてほしくない“わが子の友達”を遠ざけたい気持ちはわかりますが、子どもの意見も聞かずいきなり友達を追い払ってしまうのは望ましくありません。中学・高校、さらにその先の進路において、子どもの周囲に子どもと仲のいい人だけがいるとは限らないからです。
親ではなく子ども自身が問題のある人との距離の取り方、付き合い方を身につけていた方が、将来のプラスになる部分が多いはずです。柔軟に対応しながらも、「ここだけは譲れない」という点をきちんと相手に伝えられる力を身につけることが大切です。
親ではなく子ども自身が問題のある人との距離の取り方、付き合い方を身につけていた方が、将来のプラスになる部分が多いはずです。柔軟に対応しながらも、「ここだけは譲れない」という点をきちんと相手に伝えられる力を身につけることが大切です。
ケース3.「子ども同士のトラブル、親はどうすればいい?」
トラブルと言ってもケンカから友達に怪我をさせてしまった、逆に怪我をさせられたなど様々です。学校で怪我などの大きなトラブルがあった場合は、親が積極的に学校へアプローチすべきですが、ちょっとした意見の食い違いなど、そこまで大きくないトラブルなら、まず子どもからしっかり話を聞き、気持ちや意見を受け止めてあげることが大切です。その時に意識したいのは、親が「それは相手が悪いね」「言い返せばよかったのに!」など、自分の意見を子どもに押し付けるのではなく、トラブルの内容を“交通整理”してあげることです。
トラブルの当事者である子どもは、その内容について客観的に話せず、無意識のうちに相手が一方的に悪いととれる話し方をすることもありえます。しかし親は冷静に「どうしてそうなったの?」「お友達がそう言ったの?」など、話の筋道をつけていきさつを把握し、子どもと一緒に「どうしたらトラブルが起きなくなるか」を考えていきましょう。
相手が何か嫌なことをしてきたらまず「やめて」と伝える、やめてくれない場合は「どうしてやめてくれないの?」と理由を聞いて話し合う、それでも駄目なら先生に相談してみる、最終的に友達付き合いをやめることも考える……など、トラブルを解決するまでのステップを、親が子どもに教えてあげてください。
もしいじめに発展している、暴力的な行為を受けているなどの場合は、親が対応することを考えてください。子どもから詳しい話を聞き、学校や専門窓口(24時間子供SOSダイヤル)などに相談してみましょう。
友達関係の悩みは、子どもにも親にも大切な経験
ここまで子どもの友達関係についてご紹介してきましたが、対応する問題によって「見守るべき」「親も一緒に考え、意見を出すべき」と正反対の内容が書かれており、混乱される親もいらっしゃるかもしれません。
友達関係は、子どもはもちろん大人にとっても複雑でデリケートなものです。「親は常に子どもの友達関係に介入しないことが望ましい」、あるいは「積極的に介入すべき」など、1つの確実な正解が存在するわけではありません。
子どもの友達関係で気になる点があれば、子どもを中心に家族全員で取り組み、どう対応するか決める。または、できる限り親は口出しせず任せられる部分は任せる。どちらも正しい対応です。
「それなら結局、親は子どもの友達関係についてどう関わってあげればいいの?」と、さらに悩む方もいらっしゃるでしょう。しかし親が完璧な解決策を用意してあげられなくても、子どもと一緒に考え、時には間違い試行錯誤しながらより良い道を見つける、そのプロセス自体が教育と言えるのではないでしょうか。
例えば自分が子どもだった頃の経験を交えながら、「お父さん・お母さんも昔、友達との間でこんなことがあったよ」「こんな風に対応したよ」と話してあげることが、子どもにとってはよい勉強になるはずです。大人としてより広い視野で物を見ることを、子どもに教えてあげるのもいいでしょう。
子どもの友達関係のトラブルは、子どもはもちろん親にとっても大きなストレスです。ですが現実的に考えて、友達(対人)関係のトラブルは今後、何度もあることといえます。そう考えれば友達関係のトラブルも、子どもにとっては成長期の大切な経験です。親は子どもの成長を見守りつつ、気持ちに寄り添ってあげましょう。
小学生が友達についてどう考えているか、その一端がわかるデータをご紹介します。
※60%以上が「友達が10人以上いる」と回答
(対象:840人)
(対象:840人)
(対象:743人)
(出典)
●「小学生のおともだちに関する意識調査」/株式会社バンダイ
https://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question226.pdf
●平成25年度小学生・中学生の意識に関する調査報告書/内閣府
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/junior/pdf/b2-1.pdf
●「小学生のおともだちに関する意識調査」/株式会社バンダイ
https://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question226.pdf
●平成25年度小学生・中学生の意識に関する調査報告書/内閣府
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/junior/pdf/b2-1.pdf