column ココロの特集
子どもの同調行動とは?どんな影響がある?
自分より周囲の意見や考えを優先したり、自分の意志に反して人と同じ行動を取ったりしたことはありませんか?「みんなと同じ行動をすると安心できる」「一人だけ浮くのは怖い」―そういった心理から人が起こす行動を「同調行動」と呼びます。
同調行動は個人の判断や意思決定に少なからず影響を与えますが、メリットとデメリットの両面があります。今回は同調行動の具体的な例や同調行動をとる理由、メリット・デメリット、子どもに与える影響、親がやってあげたいことなどについてご紹介します。
同調行動は個人の判断や意思決定に少なからず影響を与えますが、メリットとデメリットの両面があります。今回は同調行動の具体的な例や同調行動をとる理由、メリット・デメリット、子どもに与える影響、親がやってあげたいことなどについてご紹介します。
もくじ
1同調行動とは
同調行動とは、集団において周囲の意見や行動を基準に、自らの動向を決めてふるまうことです。同調行動は意識的、無意識的に行われますが、わかりやすい例として以下のようなものがあります。
- 自分の好みではなくても、トレンドを意識した服装をしたり話題についていこうとしたりする。
- 複数の友人と話している時、みんなと同じ意見ではないのに、本心ではなくてもつい周りに合わせてしまう。
- SNSで共感できる投稿があっても、「いいね」が1つもついていないと、何となく「いいね」を押しにくい。その一方で、「いいね」がたくさんついている投稿には押しやすさを感じる。
- 飲食店でメニューを決める時、自分が気になるものより、つい「人気No.1メニュー」を選びがち。
- 信号無視など、周りにいる人たちがやっていると、「みんながやっているなら、自分も」と合わせてしまう。
- 複数の友達とのSNSでのグループチャットが夜遅くまで続き、「もう抜けたいな」と感じているが、みんなが盛り上がっているので抜けるに抜けられない。
こういった同調行動をとる背景には、周囲の動向を確認した上で、自分の意見や行動を決めたいという心理があります。
たとえば自分の考えに自信が持てない時など、多くの人がやっている行動をまねた経験はありませんか? それも同調行動の1つであり、多くの人は不安になると他者や集団の判断を頼りたくなるという傾向があるのです。
また、「みんなと違う言動をして一人だけ浮きたくない」「みんなに嫌われたくない」という気持ちから同調行動をとることも少なくありません。
具体的な例やその理由を見ていくと、同調行動は決して特別なことではなく、むしろ私たちの近くによくあることがおわかりいただけると思います。
たとえば自分の考えに自信が持てない時など、多くの人がやっている行動をまねた経験はありませんか? それも同調行動の1つであり、多くの人は不安になると他者や集団の判断を頼りたくなるという傾向があるのです。
また、「みんなと違う言動をして一人だけ浮きたくない」「みんなに嫌われたくない」という気持ちから同調行動をとることも少なくありません。
具体的な例やその理由を見ていくと、同調行動は決して特別なことではなく、むしろ私たちの近くによくあることがおわかりいただけると思います。
2同調行動のメリットとデメリット
自分の意見や考えを押さえて周囲に合わせる、集団の動きに意識的・無意識的に従うなど、ネガティブな印象が残りがちな同調行動ですが、もちろん良い面もあります。ここでは同調行動のメリット・デメリットについてご紹介しましょう。
同調行動のメリット
周囲との衝突が起きることが少なく、人間関係がスムーズにいきやすい
同調行動をとれることは、ある意味で協調性があることに通じます。異なる意見や立場の人とも柔軟に協力し合えるため、チームスポーツなど集団で方針を統一して動くことが求められる場ではメリットになることが多いといえます。
周囲に認められ、精神的に安定する
周りと同じ言動をとることは価値観の共有にもなり、その結果、属する集団の一員として認められやすくなります。そこから「自分の居場所はここにある」という安心感が得られるメリットもあります。
選択に時間をかけずに済む
たとえば食事をする店を選ぶ時、数多くある店舗を1つひとつチェックしていると時間がかかってしまいます。しかし「口コミで美味しいと評判の店」を選ぶ基準にすると、効率的に決めることができます。忙しい時などはメリットになりますが、その選択が常に正しいとは限らないと知っておくことも必要です。
同調行動のデメリット
決断を他人任せにしがち
同調行動をとることが当たり前になった場合、自分で考える前に周囲の意思に従う癖がついてしまうかもしれません。その結果、自分で考え決定する力が養われにくくなる恐れがあります。
集団で間違った方向に進む恐れがある
大勢で一人を攻撃する「いじめ」のように、一人なら選択しない行動でも、集団になると周りに合わせて間違った判断をしてしまう、行動がエスカレートするなどの傾向に陥りがちです。
個性を発揮しにくくなる
「周りと違うのはよくない(あるいは怖い)ことだから、自分の意見を曲げても合わせなければ」と考え、個性を表現しにくくなる恐れがあります。
3同調行動が子どもに与える影響
幼児の頃は多くの人が同調行動を意識せず、自分のしたいように、自由にふるまっているはずです。
しかし成長するにつれて“集団の中の自分”を少しずつ意識し始め、たとえ自分の気が向かなくても友達との遊びに付き合ったり、安心感を求めて常にグループで行動したりするようになります。
このように同調行動は言い換えれば本当の自分、あるがままの自分から一時、外れることにもつながるのです。
しかし成長するにつれて“集団の中の自分”を少しずつ意識し始め、たとえ自分の気が向かなくても友達との遊びに付き合ったり、安心感を求めて常にグループで行動したりするようになります。
このように同調行動は言い換えれば本当の自分、あるがままの自分から一時、外れることにもつながるのです。
こう表現すると好ましくないことのように感じられるかもしれませんが、「ここは周りに合わせておこう」と周囲に同調する自分と、「合わせていくのがつらい」という本来の自分の両面を行き来しながら、子どもはやがて“自分らしさ”を見つけていきます。
別の言い方をすれば、同調できることとできない(あるいはしたくない)ことの両方を通して、子どもは「自分という人間は何が好きで、何が嫌いなのか」を知ります。
そういった経験が子どもに自分らしさを教えてくれると言ってよいでしょう。
別の言い方をすれば、同調できることとできない(あるいはしたくない)ことの両方を通して、子どもは「自分という人間は何が好きで、何が嫌いなのか」を知ります。
そういった経験が子どもに自分らしさを教えてくれると言ってよいでしょう。
4もし子どもが同調行動にストレスを感じていたら?
わが子が同調行動にストレスや反発心を持っていたら、親はどうしてあげたらよいでしょうか。
子どものつらそうな様子を見ると、親としては「嫌なら嫌と言ってみたら?」「周りに合わせたくない人もいることを、みんなで話し合ってみるのはどう?」などアドバイスをしたくなるかもしれません。
しかし学校や塾など、子どもには子どもの人間関係や付き合いがあります。同調行動の結果、いじめなどに加担してしまっているなど誤った行動に及んでいる場合は別ですが、子どもが同調行動をやめることを望まないのであれば、どう行動するか子どもに任せ見守る方法もあります。「ああしろ、こうしろ」と指示をするよりも、むしろ子どもが不満や疑問を打ち明けられる、気持ちのより所になってあげるとよいでしょう。
もし「“みんなと一緒”をやめたいのに、やめられない(やめるのが怖い)」という矛盾した状態でもやもやしているようなら、「大人もね、同じことで悩むことがあるのよ。だから気持ちはすごくわかるよ。面倒くさいよね」と一般化し、“そういうことで多くの人が悩んでいて、実はお母さんやお父さんもそうなんだよ。あなただけがおかしいというわけではないんだよ”と伝えてあげてもいいです。
子どもが「つらくて、周りに合わせたくない」とはっきり言葉にするほどストレスを感じている場合は、まず親として子どもの考えを全面的に肯定した上で、「周りに合わせないことは、悪いことじゃないんだよ」と教えてあげることが重要です。
あるいは友達との関係や状況の中で、上手に自分の意見を言えるように一緒に考えてあげてもよいでしょう。たとえば友達にゲームに誘われた時に、「私は今、ゲームをしたくない!」とは言いにくいでしょうから、「私、お母さんのお手伝いをしないといけないから、ゲームはせずに帰るね」という言い方をする――などのアドバイスをしてあげては?
5同調行動が当たり前になっている子どもがいたら?
同調行動に疑問を持たず、周りに合わせすぎてほとんど自己主張しない子どもも、親にとっては気になるかもしれません。
周囲に同調することが当たり前になってしまうと、「いつもみんなと同じでなくてもいいのではないか?」「個人の意見が言いにくい雰囲気になるのはおかしいのでは?」などの疑問を持てなくなる恐れがないとはいえません。
自分で考える力をつけておくのは成長期の子どもにとって大切なことです。いたずらに、いつも周囲と反対の方向に進めとはいいませんが、親は子どもに「みんな一緒でないといけないわけじゃないよ」「いろんな意見や考え方があっていいんだよ」と伝えてあげるのも1つの方法です。
6子どもの同調行動について知り、バランスを取ってあげよう
同調行動には良い面も悪い面もありますが、子どもに関しては多くの保護者が「ある程度は周りと合わせて仲良くやってほしい」という気持ちと、「周囲に流されず、自分の意見をしっかりもってほしい」という、相反する2つの気持ちを持っているのではないでしょうか。
しかし親はそのどちらかに偏らないことを意識し、同調行動のメリット・デメリットの両方を知った上で、子どもが同調行動にストレスを感じていたり、逆に飲み込まれそうになっていたりする時に、バランスを取れるように意識してあげてください。
本文でも触れていますが、「同調」と「協調」は“他人や周囲に合わせた行動をとる”という点においては似ているともいえますが、実際の意味や違いについてはどうでしょうか。
小学館のデジタル大辞泉では以下のように説明されています。
小学館のデジタル大辞泉では以下のように説明されています。
- 同調 :
- 他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること。
「彼の提案に―する」 - 協調 :
- 互いに協力し合うこと。特に、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと。
「労資が―する」「―性」
これらの表現から、同調が「自分の意見より周囲のそれに合わせる」ことであるのに対し、協調は「それぞれの意見は違うが、互いにどちらかに意見を合わせるのではなく、利害を一致させるために協力すること」とわかります。