column ココロの特集
子どものメタ認知とは?~客観的に見る力を身につけよう!~
近年、これからを生きる子どもたちに必要な力として注目されている「メタ認知」。聞きなれない言葉かもしれませんが、文部科学省が学習指導要領に盛り込み、その重要性はますます高まっています。
今回はメタ認知の概要と、その要素の1つである「自分自身や物事を客観的に見る力」の重要性、そして子どもがその力を身につけるために親にできることについてご紹介します。
今回はメタ認知の概要と、その要素の1つである「自分自身や物事を客観的に見る力」の重要性、そして子どもがその力を身につけるために親にできることについてご紹介します。
1メタ認知と自分を客観的に見る力
まずメタ認知とは何なのか、そしてメタ認知の中の1つ「自分自身を客観的に見る力」について考えていきましょう。
メタ認知とは
「メタ認知」とは自分が認知している物事を客観的に認知し、さらに自身の課題や問題点に気づき、考え方や行動をコントロールするための能力のことです。よりわかりやすくいえば、メタ認知とは「自分の思考や行動を客観的にとらえること」となります。また、この記事ではメタ認知的な物事のとらえ方ができる力を「メタ認知力」と表現しています。
メタ認知は2020年度に小学校から始まった新しい学習指導要領でも、次のように紹介されています。
資質・能力の三つの柱のうち、「学びに向かう力、人間性等」は児童生徒が「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」に関わる資質・能力であり、他の二つの柱をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素です。具体的には主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等があり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する、いわゆる「メタ認知」に関わる力を含むものです。
上記にもあるように、今後、子どもたちにとってメタ認知は大きな役割を果たすと考えられています。ここではメタ認知において重要な「客観的に物事をとらえる力」を中心に考えていきます。
メタ認知の1つ「自分自身を客観的に見る力」
苦手な勉強や気が進まない仕事に取り組まなければいけない時、「嫌だ」「やりたくない」と悩み続けたり、取り組むことを避けたりした経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
そんな時に客観的な視点を持つことができれば、「なぜ私はこれに取り組むことが嫌なのだろう?」「どうすれば気持ちよく取り組むことができるのか?」という視点でとらえることができ、解決策を見出すことにつながります。
メタ認知的な物の見方ができる人は、自らを客観的にとらえられることが多いと考えられています。物事がうまく進まない際でも冷静、かつ客観的に自分を見つめ解決策を見出していける人は、メタ認知力を持っているといえるでしょう。
そんな時に客観的な視点を持つことができれば、「なぜ私はこれに取り組むことが嫌なのだろう?」「どうすれば気持ちよく取り組むことができるのか?」という視点でとらえることができ、解決策を見出すことにつながります。
メタ認知的な物の見方ができる人は、自らを客観的にとらえられることが多いと考えられています。物事がうまく進まない際でも冷静、かつ客観的に自分を見つめ解決策を見出していける人は、メタ認知力を持っているといえるでしょう。
メタ認知の力は小学校高学年から伸びる
重要な役割を果たすメタ認知ですが、メタ認知は就学前から芽ばえていますが、そのバリエーションが一気に広がるのは小学校高学年頃からといわれています。
メタ認知力の発達に伴い、子どもには様々な変化が現れます。例えば友達と話す時に相手はつまらなさそうにしていたら、「自分ばかり話しすぎたかな?」「友達は興味がない話かもしれない」と気づき、「次は自分だけが話すのはやめよう」「友達が好きなことについて聞いてみよう」など、行動を変えていけるようになることも変化の1つです。
また勉強においても、問題に対し「わかる」「わからない」という単純な判断から、「どこがわからないのだろう?」「この質問は、回答者に何を答えさせたいのだろう?」などの判断ができるようになっていきます。
メタ認知力の発達に伴い、子どもには様々な変化が現れます。例えば友達と話す時に相手はつまらなさそうにしていたら、「自分ばかり話しすぎたかな?」「友達は興味がない話かもしれない」と気づき、「次は自分だけが話すのはやめよう」「友達が好きなことについて聞いてみよう」など、行動を変えていけるようになることも変化の1つです。
また勉強においても、問題に対し「わかる」「わからない」という単純な判断から、「どこがわからないのだろう?」「この質問は、回答者に何を答えさせたいのだろう?」などの判断ができるようになっていきます。
2物事を客観的に見るメリット
ここからは、メタ認知の中でも重要な「自分自身や物事を客観的に見ること」について、どのようなメリットがあるのかをご紹介していきます。
メリット1感情のコントロールができる
自分自身や物事について客観的に見ることができれば、怒りや不安などの感情が湧いた時に、それらに振り回されず自分をコントロールできるようになります。例えば怒りを感じた時に、「あっ、自分は今、怒っているな」「いったい何に怒りを覚えたのだろう?」「どうすればこの怒りを抑えられる?」などの視点で見ることができるようになるのです。
自分自身の感情と行動をコントロールするのはなかなか難しいですが、最初から完璧にやり遂げようとしなくても大丈夫です。最も大切なのは、「怒っているんだ」「不安なんだ」など、自分が今、どのような状況にあるのかに“気づく”ことです。まずはそこから始めて、感情に飲み込まれて望まない行動をとってしまう危険を避けていきましょう。
自分自身の感情と行動をコントロールするのはなかなか難しいですが、最初から完璧にやり遂げようとしなくても大丈夫です。最も大切なのは、「怒っているんだ」「不安なんだ」など、自分が今、どのような状況にあるのかに“気づく”ことです。まずはそこから始めて、感情に飲み込まれて望まない行動をとってしまう危険を避けていきましょう。
メリット2問題解決能力が高まる
自分自身を客観的に見る力がつくと、失敗や問題にぶつかった際に、よりスムーズに解決策を見つけられるというメリットが期待できます。つまり「どうせうまくいかない」「問題が大きすぎる」などの主観に基づいた思い込みではなく、どこでつまずいたのか、何が間違っているのかを冷静に判断できることです。例えば問題を自分一人で抱え込まず、誰かに協力を頼めるなど、より適した解決策を模索することにつながります。
メリット3状況に応じて柔軟な対応ができる
自身の考えや行動を客観的にとらえることができれば、生活する中で起こるさまざまな物事に柔軟に対応できるようになります。また日常でミスやトラブルが起こった場合でも、その理由や同じ間違いを避ける対策などを客観的に考えられるため、リスク回避能力のアップにつながります。
3自分自身を客観的に見る力を身につけるには?
自分や物事を客観的に見られると、さまざまなメリットが期待できることをご紹介してきました。では、自分自身を客観的に見る力はどうすれば身につくのでしょうか。ここでは具体的な方法についてご説明します。
物事に取り組む目的と取り組み方を考える
子どもなら勉強、大人なら仕事や家事などに取り組む前に、目的と取り組み方について意識すると、客観的な視点が身につきやすくなります。「やらないと叱られるからやる」「とにかく早く終わらせる」という浅い目的・取り組み方ではなく、「この課題をやることにどんな意味があるのか」「これをやることによって、自分にどんな力がつくのか」など、より高い視点から物事に取り組むことが、客観的に見る力を身につけることにつながります。
- 例
- 算数の文章題を解くことにどんな意味があるのか→思考力がつき、より難しい問題を解けるようになるだろう
- 苦手な仕事をやりたくない→この仕事に必要なスキルを身につければ、対応できる業務の幅が広がるだろう
- 家事が面倒くさい→さっさと終わらせれば、空いた時間を趣味に使える
自分の感情に気づく
例えばイライラしている時、怒っている時など、つい感情に任せて行動してしまいがちです。しかし、そういった気持ちを引き起こしている原因は何なのかを考える習慣をつけると、客観的に自分や物事を見る力を得ることができます。
物事を客観的に見るメリット「1.感情のコントロールができる」でもご紹介したように、まず客観的に自分がイライラしている、怒っていると気づくことが最初のステップです。続いて「なぜ、自分はそんな気持ちを抱いているのか」まで踏み込んで分析してみましょう。怒りだけでなく疑問、不安、恐怖などいくつかの感情が絡まっている場合もありますから、頭で整理しづらい時は紙に書き出してみてもよいでしょう。
例えば、「家がいつも散らかっていてイライラする」という気持ちを抱いているとします。しかしその感情を探っていくと、実は「子どもや夫(妻)が家事を手伝ってくれず、自分だけが頑張っている」と感じていることがイライラの原因だったと気づくかもしれません。本当の原因がわかったら、その解決策を探っていきましょう。例えば子どもや夫(妻)にお手伝いを頼む、あるいは自分の物は自分で片付けてもらうなどの解決策がありそうですね。
このように「ああ、イライラする!」で終わらせるのではなく、「なぜイライラするの?」「どうすれば、このイライラを解消できる?」まで視点を高めて考えることが、客観的な視点を持つことにつながるといえます。
物事を客観的に見るメリット「1.感情のコントロールができる」でもご紹介したように、まず客観的に自分がイライラしている、怒っていると気づくことが最初のステップです。続いて「なぜ、自分はそんな気持ちを抱いているのか」まで踏み込んで分析してみましょう。怒りだけでなく疑問、不安、恐怖などいくつかの感情が絡まっている場合もありますから、頭で整理しづらい時は紙に書き出してみてもよいでしょう。
例えば、「家がいつも散らかっていてイライラする」という気持ちを抱いているとします。しかしその感情を探っていくと、実は「子どもや夫(妻)が家事を手伝ってくれず、自分だけが頑張っている」と感じていることがイライラの原因だったと気づくかもしれません。本当の原因がわかったら、その解決策を探っていきましょう。例えば子どもや夫(妻)にお手伝いを頼む、あるいは自分の物は自分で片付けてもらうなどの解決策がありそうですね。
このように「ああ、イライラする!」で終わらせるのではなく、「なぜイライラするの?」「どうすれば、このイライラを解消できる?」まで視点を高めて考えることが、客観的な視点を持つことにつながるといえます。
「選手」と「監督」の目を持つ
野球やサッカーなどのチームスポーツには、必ず選手と監督がいます。これを客観的な見方を身につけるために利用してみましょう。選手の目とは、実際にフィールドでプレイをしているからこそ持てる視点です。言い換えれば目の前のことに集中する視点といえます。
選手の目に対し、監督の目はゲームの状況や戦略、選手の状態などを俯瞰的に見ます。目の前のことをこなすだけでなく、どうすればゲームを有利に進められるか、どこを攻めるべきかなど、選手より一段高い視点から物事を見て、判断することが求められるのです。選手の目・監督の目の両方を持ち、状況に応じてそれらの視点を柔軟に切り替えられるよう、心がけてみましょう。
選手の目に対し、監督の目はゲームの状況や戦略、選手の状態などを俯瞰的に見ます。目の前のことをこなすだけでなく、どうすればゲームを有利に進められるか、どこを攻めるべきかなど、選手より一段高い視点から物事を見て、判断することが求められるのです。選手の目・監督の目の両方を持ち、状況に応じてそれらの視点を柔軟に切り替えられるよう、心がけてみましょう。
4子どもの「自分を客観的に見る力」を伸ばすには?
ここまで、自分や物事を客観的に見る力の重要性についてご紹介してきました。では、子どもがその力を身につけるために、親はどんなことができるでしょうか。
テストや宿題でプロセスを振り返る
子どものテストで、結果の良し悪しに関わらず「なぜそのような結果になったのか」というプロセスを、子どもに振り返らせてみましょう。例えば子どもがテストでよい点数を取ったら、「宿題をきちんとやってきたもんね」「わからない問題をそのままにせずに、先生に質問してちゃんと理解していたからできたんだね」などと声をかけてあげるのもよいでしょう。
逆に点数が悪かった時は、プロセスを振り返りつつ「何がわかっていないのか」「わかるためにはどうすればよいのか」など、課題を解決するために必要なスキルや知識を一緒に考えてあげるとさらによいです。
その際に注意したいのは、親が「こうしたらいいよ」など、解決法を勝手に決定してしまうことです。あくまでも子ども自身が考えられるように、親はサポートに回ることが理想的です。子どもの選択によって、次のテストなどで良い結果が得られた時は、子どもがこれまでのやり方を振り返って考え、勉強のやり方を見直して実践したというプロセスを、しっかりほめてあげてください。その繰り返しによって、子どもはプロセスを考えることの大切さやメリットを学んでいくはずです。
逆に点数が悪かった時は、プロセスを振り返りつつ「何がわかっていないのか」「わかるためにはどうすればよいのか」など、課題を解決するために必要なスキルや知識を一緒に考えてあげるとさらによいです。
その際に注意したいのは、親が「こうしたらいいよ」など、解決法を勝手に決定してしまうことです。あくまでも子ども自身が考えられるように、親はサポートに回ることが理想的です。子どもの選択によって、次のテストなどで良い結果が得られた時は、子どもがこれまでのやり方を振り返って考え、勉強のやり方を見直して実践したというプロセスを、しっかりほめてあげてください。その繰り返しによって、子どもはプロセスを考えることの大切さやメリットを学んでいくはずです。
子ども自身に説明させてみる
子どもが友達とケンカをした時など、親が適切な問いかけをして、子ども自身にいきさつを説明してもらうことも、自分や物事を客観的に見る力を育むことにつながります。この時に意識したいのは、「あなたはどう思った?」「なぜそうしたの?」と子どもの視点からの質問に加えて、「あなたがそう言ったことで、相手はどう思ったかな?」と、友達の視点からの質問をしてあげることです。
そうすることで、子どもは「自分から見た自分」に加え、「相手から見た自分」(自分は相手からどう見えていたか)という視点を手に入れることができ、客観的な視点とはどういうものかを学んでいきます。親の問いかけを通して、子どもが自分自身でよく考えてみることで、自分自身の物事のとらえ方や考え方をより深く理解できるようになるはずです。
そうすることで、子どもは「自分から見た自分」に加え、「相手から見た自分」(自分は相手からどう見えていたか)という視点を手に入れることができ、客観的な視点とはどういうものかを学んでいきます。親の問いかけを通して、子どもが自分自身でよく考えてみることで、自分自身の物事のとらえ方や考え方をより深く理解できるようになるはずです。
5メタ認知の1つ、自分を客観視することの大切さ
今後、さらに重視されるだろうメタ認知から、自分自身や物事を客観的に見る力に焦点を当ててご紹介してきました。メタ認知力を伸ばすには、目の前の物事や状況、感情に左右されるのではなく「今、何が問題なのか?」「どうすればより良い方向に物事が進むのか?」などの視点を持ってみることが重要です。
メタ認知力そのものが大きく伸びるのは、小学校高学年ごろからといわれていますが、子どもは日々、さまざまな成功と失敗をくり返し、知識とスキルを得ていきます。その中でメタ認知力を身につけられれば、物事の結果に一喜一憂するだけでなく、どのような点が特に影響したのかを分析して次に生かすことができるでしょう。
子どもがそんな力を身につけるために、親は客観的な視点を子どもに意識させつつ、適切に褒め、アドバイスしてあげてください。
メタ認知力そのものが大きく伸びるのは、小学校高学年ごろからといわれていますが、子どもは日々、さまざまな成功と失敗をくり返し、知識とスキルを得ていきます。その中でメタ認知力を身につけられれば、物事の結果に一喜一憂するだけでなく、どのような点が特に影響したのかを分析して次に生かすことができるでしょう。
子どもがそんな力を身につけるために、親は客観的な視点を子どもに意識させつつ、適切に褒め、アドバイスしてあげてください。