column ココロの特集
小学生の不登校 親ができること、取り組むべきことは?
小学生の不登校がじわじわと増えています。しかし不登校の背景や理由は子どもによって様々。そのため「子どもが不登校の理由を話してくれない」「どのように接すれば良いかわからない」と悩む親も多いのではないでしょうか。今回は小学生が不登校になる原因や家族ができる対応、相談窓口、サポート機関などについて解説します。
1小学生の不登校に関するデータ
最初に、文部科学省による不登校の定義や、小学生の不登校に関するデータを見ていきましょう。
不登校とは
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者
出典:文部科学省「不登校の現状に関する認識」
続いて、文部科学省が算出した令和3年度の不登校に関する調査から、長期欠席者数や学年別不登校児童数、不登校の要因など主なデータをご紹介します。
小学校における長期欠席者数
※不登校児童のうち、90日以上欠席している者
これらのデータから、小学生の不登校児が令和2年から3年にかけ18,000人以上増加していること、90日以上の長期にわたる不登校児が全体の約44%を占めていることなどがわかります。
学年別不登校児童数のグラフ
出典:「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」/文部科学省
不登校者数を学年別に見ると、4年生から大きく増えていることがわかります。文部科学省が令和3年に発表した他の資料によると、不登校の生徒に調査したところ、実際に「最初に学校に行きづらいと感じ始めたのは4年生」と答えた生徒が最も多かったというデータも出ています
最初に行きづらいと感じ始めた学年
最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ
- 1.先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かったなど) 29.7%
- 2.体の不調(学校に行こうとするとお腹が痛くなったなど) 26.5%
- 3.生活リズムの乱れ(朝、起きられなかったなど) 25.7%
- 4.友達のこと(嫌がらせやいじめがあったなど) 25.2%
- 5.きっかけが何か自分でもよくわからない 25.5%
- 6.勉強がわからない(授業が面白くなかった、成績がよくなかったなど) 22.0%
「学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」で注意したいのは、「きっかけが何か自分でもよくわからない」と答えた子どもが25%もいたことです。子どもが不登校の理由を聞かれても「答えない」ときは、もしかしたら「わからない」のかもしれません。
学校を休んでいることの安心や不安について
学校を休んでいることの安心や不安について、「あてはまる」と「少しあてはまる」を合わせた割合をみると、「ほっとした・楽な気持ち(70%)」、「自由な時間が増えて嬉しかった(66%)」、「勉強の遅れに対する不安があった(64%)」の割合が高くなっています。
出典:「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」/文部科学省
ここまで、小学生の不登校に関する概要に続いて見てきました。続いては、不登校になった子どもへの接し方について考えていきましょう。主に高学年の子どもを想定しました。
2不登校の小学生に親が意識したい対応
ここでは、不登校の子どもとの接し方を確認していきましょう。意識したい4つのポイントについてご紹介していきます。
子どもの気持ちを尊重する
子どもが不登校になったら、親としては心配や不安、焦りを感じると思いますが、まず「学校に行きたくない」という、子どもが今感じている気持ちを尊重してあげましょう。不登校がどれくらいの期間になりそうか見極めるのは非常に難しいですが、親が落ち着いていると、それだけで子どもは安心できるものです。
不登校に関する話題はもちろん、たわいのない内容でも子どもの話をよく聞いてあげましょう。とはいえ特別なことをする必要はなく、子どもが「話したいときは、いつでも自由に話して大丈夫。お母さんやお父さんが聞いてくれる」と安心できる環境を作ってあげてください。
不登校の子どもに対して、心配や不安から「こうしたらどう?」「なぜ~しないの?」など、注意や批判めいたことを言いたくなるかもしれません。しかし、まずは子どもが話しやすい状態と聴く態勢を持つことが必要です。
不登校に関する話題はもちろん、たわいのない内容でも子どもの話をよく聞いてあげましょう。とはいえ特別なことをする必要はなく、子どもが「話したいときは、いつでも自由に話して大丈夫。お母さんやお父さんが聞いてくれる」と安心できる環境を作ってあげてください。
不登校の子どもに対して、心配や不安から「こうしたらどう?」「なぜ~しないの?」など、注意や批判めいたことを言いたくなるかもしれません。しかし、まずは子どもが話しやすい状態と聴く態勢を持つことが必要です。
無理に不登校の理由を聞き出さない
例えば友達とのトラブルなど、親であっても打ち明けにくいデリケートな理由の場合、無理に聞き出そうとすると子どもが頑なになってしまう恐れがあります。
また小学生の不登校に関するデータでもご紹介したように、子ども自身が不登校の理由を理解できていない場合もあります。そんな時は、まず子ども自身が「なぜ学校に行けなくなったのか」という問題に向き合う時間が必要なのかもしれません。理由を尋ねてもはっきりした答えが返ってこない場合は、感情的にならずにそっとしておくことが望ましいです。
また小学生の不登校に関するデータでもご紹介したように、子ども自身が不登校の理由を理解できていない場合もあります。そんな時は、まず子ども自身が「なぜ学校に行けなくなったのか」という問題に向き合う時間が必要なのかもしれません。理由を尋ねてもはっきりした答えが返ってこない場合は、感情的にならずにそっとしておくことが望ましいです。
相談先や子どもの居場所、支援機関についての情報を知っておく
子どもは学校という「社会」の中で他者とつながり互いに認め合う中で、自分の居場所を認識し、自信を育んでいくのですが、不登校はその「社会」とのつながりを失うことになります。
再登校に向けて、学校とのつながりは保っておきたいところですが、学校に行けない場合には、「4.小学生の不登校はサポート機関も利用しよう」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
子どもが学校への相談を嫌がる場合は、学校以外の相談窓口に行ってみることもお勧めです。相談窓口については「4.小学生の不登校はサポート機関も利用しよう」で詳しくご紹介しますので、参考にしてみてください。
またつながりを持つのは、塾や習い事の集まり、地域の集まり(少年野球やサッカーチームなど)でももちろん構いません。大切なのはつながりをなるべく断ち切らないこと、そして「つながる先(相談先や支援機関など)に関する知識」と「相談できる先の選択肢」をたくさん持っておくことです。
再登校に向けて、学校とのつながりは保っておきたいところですが、学校に行けない場合には、「4.小学生の不登校はサポート機関も利用しよう」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
子どもが学校への相談を嫌がる場合は、学校以外の相談窓口に行ってみることもお勧めです。相談窓口については「4.小学生の不登校はサポート機関も利用しよう」で詳しくご紹介しますので、参考にしてみてください。
またつながりを持つのは、塾や習い事の集まり、地域の集まり(少年野球やサッカーチームなど)でももちろん構いません。大切なのはつながりをなるべく断ち切らないこと、そして「つながる先(相談先や支援機関など)に関する知識」と「相談できる先の選択肢」をたくさん持っておくことです。
無理をしない範囲で生活リズムを整える
ずっと自宅で過ごしていると、いつのまにか生活リズムが崩れやすくなるものですが、不登校になり始めた当初や子どもの精神的・体力的な疲れが著しい場合は、あまり口うるさく注意しない方がよいでしょう。
いったんは休息をとり、子どもの疲れがひと段落したら、子どもと話し合いながら生活の目標やルールを整えていきましょう。
いったんは休息をとり、子どもの疲れがひと段落したら、子どもと話し合いながら生活の目標やルールを整えていきましょう。
3不登校の小学生へのNG対応
ここでは、不登校の子どもに対して避けたい4つのNG対応についてご紹介します。
子どもの不登校を親が特別視しない
不登校はかつて特別な子どもがなるものというイメージがあったのではないでしょうか。しかしデータをご覧いただいたように、現在は不登校児童の数が増え、ある意味では「特別なこと」ではなくなりつつあります。親の不安・焦りはよくわかりますが、不登校を特別視し過ぎていないか、知らないうちに子どもにプレッシャーをかけていないか、一度振り返ってみてください。
登校を無理強いする
不登校になって数日のうちは見守れていても、不登校の期間が長引くともどかしくなり、つい「いつになったら学校に行くの!?」と子どもを問い詰めたくなるかもしれません。しかし、できる限り子どものペースや気持ちに寄り添うことが第一です。
「教育機会確保法」でも、「”不登校はダメなこと”ではない」「学校を休んでもいい」「学校復帰を前提としなくてもいい」ということが示されています。心身に不調を抱え、まず休息が必要なお子さんもいます。親は現在の子どもの状態を受け入れる姿勢をもってあげてください。
「教育機会確保法」でも、「”不登校はダメなこと”ではない」「学校を休んでもいい」「学校復帰を前提としなくてもいい」ということが示されています。心身に不調を抱え、まず休息が必要なお子さんもいます。親は現在の子どもの状態を受け入れる姿勢をもってあげてください。
「ご褒美」を使って登校させようとする
「来週、学校に行ったら旅行に連れていってあげる」「今週は1日学校に行けたからゲームを買ってあげる」など、「登校できたら○○してあげる」というやり方は好ましくありません。ご褒美を使って親が子どもをコントロールすることに繋がり、子供が自主的に登校する機会を奪うことになりかねないからです。
さらにご褒美形式は「もっと○○してくれないと、学校に行かない」など、求められるものがどんどんエスカレートしていく恐れも。
さらにご褒美形式は「もっと○○してくれないと、学校に行かない」など、求められるものがどんどんエスカレートしていく恐れも。
過去の常識や親の意見を子どもに押しつける
子どもは毎日、元気に小学校へ登校し、学校で学ぶのが当たり前と考えられていた時期もありました。しかしいろいろな価値観が許容される多様化した現代では、勉強する場所も方法も様々です。
また真面目な親ほど「私が小学生の頃は皆勤賞だったのに」など、自分の思いや意見を子どもにあてはめがちです。親が子どもの現状より過去の常識を優先させたり、自分の意見を子どもに押し付けたりすると、子どもに大きなプレッシャーを与えてしまう恐れがあります。子どものペースを尊重しながら接するようにしましょう。
また真面目な親ほど「私が小学生の頃は皆勤賞だったのに」など、自分の思いや意見を子どもにあてはめがちです。親が子どもの現状より過去の常識を優先させたり、自分の意見を子どもに押し付けたりすると、子どもに大きなプレッシャーを与えてしまう恐れがあります。子どものペースを尊重しながら接するようにしましょう。
子どもへの対応に続いて、不登校になった場合にどこに相談すればいいのか、どんな取り組みがあるのかについて、詳しくご紹介していきます。
4小学生の不登校はサポート機関も利用しよう
年々増加しつつある不登校児童に対し、国や自治体、民間など様々な機関・団体が支援を行っています。学校に変わる居場所になったり、勉強の遅れを解消するための学習の場であったり、目的は多様です。ここでは公的機関と民間団体による支援をご紹介します。
国や自治体、学校による支援
まずは担任の先生やスクールカウンセラーに相談してみましょう。
学校
担任をはじめとする先生
学校で最も身近な存在である担任の先生は、子どもの学校での様子や交友関係などを詳しく知っている可能性が高いです。子どもの不登校について、いじめや人間関係などのトラブルがないかどうか、まず確認するという点でも担任に相談することは大切です。さらに進級・進学など将来についても相談できるでしょう。
スクールカウンセラー
学校でのいじめ問題や不登校児童生徒の増加などに対し、生徒(または教師)の心のケアやストレスへの対処を行う専門家です。子どもだけでなく親からの相談やカウンセリングにも対応します。ただし全ての学校で常駐しているわけではないので注意してください。
スクールカウンセラーへの相談の申し込み方は学校により異なります。子どもの学校にスクールカウンセラーがいる場合は、申し込み方法を確認してみてください。担任を経由してスクールカウンセラーへの相談を申し込む手順になっている場合が多いようです。
相談の内容によっては、より適切な相談先(機関)を紹介してくれるケースもあります。
スクールカウンセラーへの相談の申し込み方は学校により異なります。子どもの学校にスクールカウンセラーがいる場合は、申し込み方法を確認してみてください。担任を経由してスクールカウンセラーへの相談を申し込む手順になっている場合が多いようです。
相談の内容によっては、より適切な相談先(機関)を紹介してくれるケースもあります。
国・自治体
教育支援センター(適応指導教室)
主に小・中学校を長期で休んでいる子どもに向け、市町村や都道府県の教育委員会が用意した機関です。不登校児童の学習支援および教育相談の充実を行い、学習の場を提供しています。
指導にあたるのは教員免許を保持する職員や臨床心理士、社会福祉士などの資格を持つ職員などです。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの心理・福祉の専門家が所属する場合もあります。
基本的に費用はかからず、教育支援センターへの通所が在籍する学校への出席扱いになるケースも多いです。注意したいのは、教育支援センターは元の学校への登校再開を前提としたサポートを行っている点です。子どもの登校再開を希望しない場合は、サポートの内容がミスマッチになるかもしれません。
指導にあたるのは教員免許を保持する職員や臨床心理士、社会福祉士などの資格を持つ職員などです。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの心理・福祉の専門家が所属する場合もあります。
基本的に費用はかからず、教育支援センターへの通所が在籍する学校への出席扱いになるケースも多いです。注意したいのは、教育支援センターは元の学校への登校再開を前提としたサポートを行っている点です。子どもの登校再開を希望しない場合は、サポートの内容がミスマッチになるかもしれません。
<問い合わせ先>お住いの市区町村の市役所・区役所など
児童相談所
「児童福祉法」に基づき、各都道府県に設置されている行政機関です。児童虐待問題とのかかわりが深いと思われがちな児童相談所ですが、実際は不登校問題をはじめ広く子どもに関する相談に応じています。18歳未満の子どもに関する相談業務を行い、子ども自身はもちろん各家庭や学校の先生、地域住民からの相談にも対応します。
児童福祉司や児童心理司などの専門スタッフが対応し、相談業務の他に治療プログラムやカウンセリングも行っています。利用は基本的に無料ですが、利用には予約が必要なため、まず電話などで問い合わせてみましょう。
児童福祉司や児童心理司などの専門スタッフが対応し、相談業務の他に治療プログラムやカウンセリングも行っています。利用は基本的に無料ですが、利用には予約が必要なため、まず電話などで問い合わせてみましょう。
<問い合わせ先>お住いの市区町村の市役所・区役所など
民間団体による支援
フリースクール/NPO法人
不登校の子どもが学校の代わりに通い、過ごす場所です。民間団体のため「学校教育法」の対象校ではありませんが、不登校の子どもと家庭をサポートします。生徒数はスクールによって異なり、10人程度から多いところでは100人を超える場合もあります。
理念や活動内容もそれぞれなので、子どもに合ったスクールかどうか、問い合わせや見学などで事前にしっかり確認することをお勧めします。
また学費もスクールによって大きく異なりますが、多くは毎月数万円程度かかるため、費用面も考慮して決めましょう。
また、子どもの不登校を支援するNPO団体も全国に多く存在します。例えば学校や行政が設置する適応指導教室などで学習や体験活動機会の提供や、保護者の支援や学校との連携・教員研修などの実施をしたり、フリースクールを展開したりするNPO団体もあります。
理念や活動内容もそれぞれなので、子どもに合ったスクールかどうか、問い合わせや見学などで事前にしっかり確認することをお勧めします。
また学費もスクールによって大きく異なりますが、多くは毎月数万円程度かかるため、費用面も考慮して決めましょう。
また、子どもの不登校を支援するNPO団体も全国に多く存在します。例えば学校や行政が設置する適応指導教室などで学習や体験活動機会の提供や、保護者の支援や学校との連携・教員研修などの実施をしたり、フリースクールを展開したりするNPO団体もあります。
学習塾
一般的な学習塾はもちろん、不登校の小学生に対応した学習塾もあります。通塾型であれば、勉強に加えて友人や講師とのコミュニケーションも期待できます。
家庭教師
「勉強はしたいけれど、外出するのはつらい」という場合、家庭教師なら利用のハードルが低くなるメリットも。
親の会
不登校や発達障害の子どもを持つ親同士が意見交換や相談、講師を招いた勉強会などを行う会です。そのため、どちらかといえば子どもの問題を解決するより、親の不安・疑問解消の場としての利用がお勧めです。一般的には、地域ごとに団体や部会が分かれています。同じ悩みや不安、問題を当事者として共有でき、気持ちが軽くなるはずです。
(参考)
親の会について/全国LD親の会の連絡先
不登校の子どもに対する相談窓口や支援機関についてご紹介しましたが、大切にしたいのはそれぞれの子どもに合った機関を選ぶことです。利用を検討している支援機関がある場合、できれば子ども自身が見学に行ってみることをお勧めします。
また支援機関はそれぞれ特徴があり、できることとできないことがあります。子どもや親が抱えている問題を解決するために適切な機関かどうかを確認しましょう。
また支援機関はそれぞれ特徴があり、できることとできないことがあります。子どもや親が抱えている問題を解決するために適切な機関かどうかを確認しましょう。
5まとめ
小学生の不登校に対して、親がしてあげられることはたくさんあります。何よりも子どもを急かさないように意識しながら、学校をはじめとする社会とのつながりを見つけていけるように心がけていくことが重要です。
親も「子どもの不登校は自分のせい」と自らを責めず、つらい時や行き詰まった時は家族で抱え込まずに支援してくれる団体の利用も検討しましょう。
親も「子どもの不登校は自分のせい」と自らを責めず、つらい時や行き詰まった時は家族で抱え込まずに支援してくれる団体の利用も検討しましょう。