column ココロの特集
ストレスにくじけやすい子どもに教えたい、「レジリエンス」と「ハーディネス」
学校・塾で嫌なことがあった、親や先生に叱られた、友達とケンカをした……そんなストレスを受けた時に、過度に落ち込んでしまう子どもがいます。
ストレスによって一時的にダメージを受けることは誰でもありますが、そのダメージをなかなか回復させられないのはつらいものです。では、なるべくストレスに動じないようにする、あるいはストレスを受けてもすぐ立ち直ることができるようになるには、どうしたらよいでしょうか。
今回は、ストレスによるダメージからなかなか立ち直れない子どもに伝えたい、「レジリエンス」と「ハーディネス」について紹介します。
ストレスによって一時的にダメージを受けることは誰でもありますが、そのダメージをなかなか回復させられないのはつらいものです。では、なるべくストレスに動じないようにする、あるいはストレスを受けてもすぐ立ち直ることができるようになるには、どうしたらよいでしょうか。
今回は、ストレスによるダメージからなかなか立ち直れない子どもに伝えたい、「レジリエンス」と「ハーディネス」について紹介します。
1ストレスから回復しにくい子どもの特徴
ストレスを受けた後、気持ちが落ち込んで回復に時間がかかる子どもがいます。ここでは、そんな子どもの特徴について解説します。
思い込みが強く、思考に柔軟性がない
1つの考えに捉われやすく、いったん「こうだ」と思うとなかなか変えられないタイプです。また周囲の変化に対応できなかったり、他人の意見を聞こうとしなかったりすることも。
気持ちの切り替えが苦手
ストレスが原因で受けたショックや、憂うつな気持ちをずっと引きずってしまうタイプです。思い悩むうちに、過去に起こった嫌な出来事を反すうしたり、自分を責めたりして、さらに落ち込んでしまうことも少なくありません。
自尊感情が低い
自尊感情とは、自分に対して肯定的な評価を抱いている状態を表す「Self-esteem」の日本語訳です。
自尊感情は自己肯定感(ありのままの自分を肯定し受け入れている)、自己有用感(誰かの役に立っているという感覚)、自己尊重感(私にはどんな時も存在価値があるという感覚)という3つの要素で成り立っています。
自尊感情が低い子どもは、ストレスとなる出来事をきっかけに、自分を否定してしまうことが少なくありません。逆に、ミスや失敗など自分の非を受け入れられず、他人からの指摘に対して自分を守るために言い訳がましくなったり、相手の非を強く批判したりすることもあります。
自尊感情は自己肯定感(ありのままの自分を肯定し受け入れている)、自己有用感(誰かの役に立っているという感覚)、自己尊重感(私にはどんな時も存在価値があるという感覚)という3つの要素で成り立っています。
自尊感情が低い子どもは、ストレスとなる出来事をきっかけに、自分を否定してしまうことが少なくありません。逆に、ミスや失敗など自分の非を受け入れられず、他人からの指摘に対して自分を守るために言い訳がましくなったり、相手の非を強く批判したりすることもあります。
受けたストレスからなかなか立ち直れない子どもの特徴について説明しました。続いては、ストレスを受けやすい子どもの特徴について紹介します。
2ストレスを感じやすい子どもの特徴
ストレスを感じやすい子どもには、どんな特徴があるのでしょうか。
真面目で完璧主義
真面目で完璧主義ゆえに、自分や他人のミスが許せず、それがストレスになってしまうケースです。また「間違ってはいけない」「完璧にやり遂げなければ」というプレッシャーがストレスになってしまうこともあります。
自分の気持ちや意見を抑え、周囲に合わせてしまう
内向的だったり気が弱かったりして、嫌なことややりたくないこと、同意したくないことを伝えられず、周囲に合わせてストレスがたまってしまいます。
ネガティブ思考
物事をネガティブに考える子どもは、ストレスを受けやすい傾向があります。例えば、クラス替えで仲良しの友達と離れた場合、ポジティブな考え方をする子どもは「寂しいけど、新しい友達と知り合うチャンスだ」と考えるでしょう。
しかし、ネガティブな子どもは「新しい友達が1人もできなかったらどうしよう。クラスで浮いてしまうかも」など、どんどん悪い方向に考えていく恐れがあります。両者を比較すれば、ポジティブな子どもの方がストレスを受けにくいと想像できます。
しかし、ネガティブな子どもは「新しい友達が1人もできなかったらどうしよう。クラスで浮いてしまうかも」など、どんどん悪い方向に考えていく恐れがあります。両者を比較すれば、ポジティブな子どもの方がストレスを受けにくいと想像できます。
次に、ストレスによって受けたダメージを回復する「レジリエンス」、ストレスがあってもダメージを受けにくくなる「ハーディネス」について説明します。
3ストレスに対抗するための2つの力
ここでは落ち込んでも立ち直る力「レジリエンス」と、そもそも落ち込みにくくなる力「ハーディネス」について解説します。
レジリエンス
レジリエンスとは「外からのストレスをはね返す力」を表す言葉で、心理学の分野では「精神的な回復力」と表現されることがあります。
かみ砕いて説明すると、例えばショックな出来事や逆境などネガティブな状況に直面した時に、一時的に落ち込んだり傷ついたりしても立ち直れる力を指します。
ポイントは「一度は傷つくけれども、時間をかければ立ち直れる」という点です。
かみ砕いて説明すると、例えばショックな出来事や逆境などネガティブな状況に直面した時に、一時的に落ち込んだり傷ついたりしても立ち直れる力を指します。
ポイントは「一度は傷つくけれども、時間をかければ立ち直れる」という点です。
レジリエンスを高める方法
子どもの気持ちに寄り添う
例えば子どもが落ち込んでいたら、「どうしたの?」「何か嫌なことでもあった?」などと声をかけてあげましょう。子どもが話してくれる場合は内容をしっかり聞き、「そんなことがあったのね。それはつらかったね(悲しかったね)」と、まず子どもの気持ちを受け止めて、寄り添ってください。子どもの気持ちに対して「悲しかったね」と感情をラベリングしてあげることで、子どもは客観的に自分の感情を認識できるようになっていきます。
子どもが落ち込んでみえる時は、子どもはまだショックやつらさから回復できていないはずです。そんな状態の子どもに対して、たとえ良かれと思う気持ちから出た言葉だとしても、「こうしたらいいよ」「どうしてそんなことをしたの?」など、指図したり追求したりするのは逆効果です。いったん子どものつらさや苦しさを受け止めてあげてください。
子どもが落ち込んでみえる時は、子どもはまだショックやつらさから回復できていないはずです。そんな状態の子どもに対して、たとえ良かれと思う気持ちから出た言葉だとしても、「こうしたらいいよ」「どうしてそんなことをしたの?」など、指図したり追求したりするのは逆効果です。いったん子どものつらさや苦しさを受け止めてあげてください。
気持ちの切り替え方を教える
落ち込んでいる子どもに対し、「いつまでもうじうじしていないで、しっかりしなさい」「また今度、頑張ったらいいじゃないの」など、言葉で立ち直らせるのはなかなか難しいものです。
そんな時は“応急処置”として、何らかの行動を起こすことを子どもに促してみましょう。特別な行動でなくてもいいのです。例えば「おやつを買いに、コンビニまで一緒に行こうか」「お母さん(お父さん)とゲームで対戦しようよ」などと子どもを誘ってあげてもいいでしょう。
スポーツやゲームなど夢中になれること、美味しい食べ物をとるなど感覚的に楽しめることがおすすめです。
そんな時は“応急処置”として、何らかの行動を起こすことを子どもに促してみましょう。特別な行動でなくてもいいのです。例えば「おやつを買いに、コンビニまで一緒に行こうか」「お母さん(お父さん)とゲームで対戦しようよ」などと子どもを誘ってあげてもいいでしょう。
スポーツやゲームなど夢中になれること、美味しい食べ物をとるなど感覚的に楽しめることがおすすめです。
自己効力感を高めるよう導く
自己効力感とは、困難な出来事にぶつかった時でも、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思えることです。自己効力感はレジリエンスを高めるために有用です。
自己効力感を高めるには、小さな成功体験を積み重ねることが効果的です。というのも、大きな成功体験を求めると成果を挙げるのが難しく、子どもが「自分はやっぱりだめなんだ」と悲観し、自己効力感を下げる恐れがあるからです。
小さな成功体験を重ねて自己効力感が高まれば、自信がついて大きな目標にも挑戦できるようになるでしょう。
また、子どもが困難を乗り越えた時、その体験を振り返ってあげることも大切です。「あの時は落ち込んだけれど、気持ちを切り替えることができたね」など、過去の体験を言葉にして子どもに伝えることで、子どもは困ったことが起きても「なんとかなる」と思えるようになっていくはずです。
自己効力感を高めるには、小さな成功体験を積み重ねることが効果的です。というのも、大きな成功体験を求めると成果を挙げるのが難しく、子どもが「自分はやっぱりだめなんだ」と悲観し、自己効力感を下げる恐れがあるからです。
小さな成功体験を重ねて自己効力感が高まれば、自信がついて大きな目標にも挑戦できるようになるでしょう。
また、子どもが困難を乗り越えた時、その体験を振り返ってあげることも大切です。「あの時は落ち込んだけれど、気持ちを切り替えることができたね」など、過去の体験を言葉にして子どもに伝えることで、子どもは困ったことが起きても「なんとかなる」と思えるようになっていくはずです。
思考パターンを変える方法を教える
悲観的な物の考え方をする子どもに対して、思考パターンを変えるようアドバイスしてもよいでしょう。アメリカのアルバート・エリス博士が提唱した、認知療法の中心概念である「ABCDE理論」も、そういった方法の1つです。
固定化しがちな思考パターンを柔軟なものに変えることができると、一時の感情に飲みこまれ過ぎず、レジリエンスにつながります。
固定化しがちな思考パターンを柔軟なものに変えることができると、一時の感情に飲みこまれ過ぎず、レジリエンスにつながります。
ABCDE理論
A(Activating Event)=出来事、事実
(例)「テストの点が下がった。真面目にやりなさい」と、塾で先生に叱られた
B(Belief)=信念(考え方、価値観、思い込み)
(例)自分は何をやってもうまくいかない、もうダメだ
C(Consequence)=結果(解釈により生じる感情や行動、身体反応)
(例)落ち込んだ気持ちになって、勉強のやる気をなくした
D(Dispute)=反論(自分の捉え方への疑問・反論)
(例)いや、叱られたということは、先生は自分に期待してくれているのでは?
E(Effect)=効果(効果的な新しい信念体系や人生哲学)
(例)先生に叱られたことをバネに、次のテストではもっといい点を取ろう
上記の例でいえば、「D」「E」が子ども自身で気づくのが難しい部分のため、親が「こんな風にも考えられるよ」「次はこうやってみたらどう?」など、話をしてあげましょう。
この方法を教える時に、合わせて「叱られることは、見捨てられることではない」「成長の機会になるなど、叱られることにもメリットがある」ということを、子どもに教えてあげてもいいでしょう。
この方法を教える時に、合わせて「叱られることは、見捨てられることではない」「成長の機会になるなど、叱られることにもメリットがある」ということを、子どもに教えてあげてもいいでしょう。
ハーディネス
ハーディネスとは、ストレスの原因になる出来事に対する「傷つきにくさ」を表す言葉です。「ストレスを受けたことによる落ち込みから回復する力」であるレジリエンスに対し、ハーディネスは「そもそもストレスを受けにくい、感じにくい力」といえます。
ハーディネスは「コミットメント」「コントロール」「チャレンジ」の3要素で構成されていると考えられています。
ハーディネスは「コミットメント」「コントロール」「チャレンジ」の3要素で構成されていると考えられています。
コミットメント
: 物事に対して責任をもって関わり、目的を達成するために努力する
コントロール
: 起きた問題に対し、諦めることなく自分ができる行動をとろうとする
チャレンジ
: 変化やハプニングを脅威ではなく、挑戦や成長の機会と捉える
ハーディネスは性格的な特性といわれ、先天的に高い人と低い人がいるという説もありますが、その力自体はトレーニングによって伸ばせるといわれています。
ハーディネスを高める方法
コミットメント
物事に対し責任をもって関わり、目的の達成に向けて努力する力を高めるには、家庭で子どもに役割を与えるとよいでしょう。例えば育てている植物の水やりやペットのしつけなどを任せる、スポーツや習い事、趣味など打ち込めるものを作るのも、コミットメント力を高める方法の1つです。
コントロール
自分が関わることが良い結果を及ぼすと思える力を高めるには、子どもに過去の成功体験を思い出させてあげてください。「前はあのやり方でうまくいったから、今回も同じようにやってみたら解決できるかも」と思えれば、能動的に取り組めるはずです。
チャレンジ
変化やハプニングを挑戦・成長の機会として捉えられる力を高めるには、日常で小さな変化を体験する機会を増やしてあげるとよいでしょう。例えば自宅から駅まで歩く時にいつもと違う道を通ってみる、これまでに作ったことのない料理を手伝ってもらう、親子で登山やアウトドアを楽しむなどがおすすめです。
4まとめ親のサポートで、子どもが自ら立ち直る力を育もう
ストレスによる傷つきから回復するレジリエンス、傷つきから身を守るハーディネスについて解説しました。レジリエンス、ハーディネスともに、子どもだけで身につけるのはなかなか難しいものです。それらの力を子どもが身につけられるよう、親がサポートしてあげてください。