column ココロの特集
子どもの燃え尽き症候群とは?
予防や回復方法、親の関わり方を解説
ある物事に没頭していた人が、心身の疲労により燃え尽きたように意欲を失ってしまう「燃え尽き症候群」。現代社会における大人のメンタルヘルス問題と考えられていましたが、近年は小学生や中学生にもみられる状態の1つになっています。
今回は子どもの燃え尽き症候群について、起こりやすいタイミング、予防や回復のための対策、親はどう対応すべきかについて考えます。
今回は子どもの燃え尽き症候群について、起こりやすいタイミング、予防や回復のための対策、親はどう対応すべきかについて考えます。
もくじ
1燃え尽き症候群とは
燃え尽き症候群とは努力に見合った成果を得られなかったり、逆に目標を達成したことで打ち込めるものがなくなったりして、意欲を失い虚脱したような状態になることを指します。
元々は心理学者のハーバート・フロイデンバーガーが1974年に初めて用いた造語「バーンアウトシンドローム」が始まりで、仕事に熱心に打ち込んでいた人が燃え尽きたように意欲を失い、社会生活に適応できなくなる状態を指していました。当初は医療や福祉、教育などの仕事に従事する人に多いといわれてきましたが、近年はさまざまな職種や業種に、さらに小・中・高・大学などの若い層にもみられるようになってきました。
またスポーツの分野においても、過度なトレーニングによる心身への負担やモチベーションの低下、チームでの人間関係によるストレスなどから、燃え尽き症候群になる人が増えているといわれています。
燃え尽き症候群という名称や現れる症状から病気と誤解されがちですが、WHOは2019年に燃え尽き症候群を疾病とは分類せず、「職業上の現象」とする方針を示しています。
元々は心理学者のハーバート・フロイデンバーガーが1974年に初めて用いた造語「バーンアウトシンドローム」が始まりで、仕事に熱心に打ち込んでいた人が燃え尽きたように意欲を失い、社会生活に適応できなくなる状態を指していました。当初は医療や福祉、教育などの仕事に従事する人に多いといわれてきましたが、近年はさまざまな職種や業種に、さらに小・中・高・大学などの若い層にもみられるようになってきました。
またスポーツの分野においても、過度なトレーニングによる心身への負担やモチベーションの低下、チームでの人間関係によるストレスなどから、燃え尽き症候群になる人が増えているといわれています。
燃え尽き症候群という名称や現れる症状から病気と誤解されがちですが、WHOは2019年に燃え尽き症候群を疾病とは分類せず、「職業上の現象」とする方針を示しています。
2燃え尽き症候群の特徴
燃え尽き症候群には、心身に現れる症状やなりやすいタイミングなど、いくつか特徴があります。
心身に現れる症状
精神に現れる大きな特徴の1つがモチベーションの低下です。子どもの場合、何のために勉強するのかわからなくなったり、勉強に集中できなくなったりして、成績が下がることがあります。
その他に、物事に対して皮肉っぽい態度や見方をしたり、「何をしてもどうせ意味がない」と虚無的になったりするケースもあります。
身体に現れる特徴としては、強い疲労感やだるさを訴える、夜になっても眠れない、朝になっても起きられないなどが挙げられます。また、うつ病と同様の症状が見られるため、うつ病と診断がつくケースもあります。
その他に、物事に対して皮肉っぽい態度や見方をしたり、「何をしてもどうせ意味がない」と虚無的になったりするケースもあります。
身体に現れる特徴としては、強い疲労感やだるさを訴える、夜になっても眠れない、朝になっても起きられないなどが挙げられます。また、うつ病と同様の症状が見られるため、うつ病と診断がつくケースもあります。
燃え尽き症候群になりやすいタイミング
燃え尽き症候群には、以下のようになりやすいタイミングがあります。
- 全力で努力してきたのに、目標を達成できなかった
- 例「受験に向けて何年間も必死に勉強してきたのに、第一志望校に合格できなかった」
- 目標を達成した時点でモチベーションや集中力が切れてしまい、それ以上頑張れない
- 例「クラブ活動で頑張ってレギュラーになったのに、以前のように前向きになれない」
- 目標は達成できたものの、期待した成果が得られなかった
- 例「志望校に合格できたけれど、授業についていけない」
また、目標の達成に向かって頑張る途中で燃え尽き症候群になってしまうケースもあります。例えば「勉強のスケジュールが過密で強いストレスを感じている」「頑張り過ぎて睡眠不足や心身の疲労などがあり、周囲のサポートが必要な状態なのに十分に得られていない」などの場合です。
3子どもの燃え尽き症候群、防ぐ方法は?
頑張っている子どもを燃え尽き症候群から守るには、どうしたらいいのでしょうか。ここでは中学受験を例に、子どもを燃え尽き症候群にさせないための方法について考えます。
目標の達成=ゴールではないことを共有しておく
例えば中学受験をする際、熱意が強く懸命になるほど「合格=ゴール」と考えてしまいがちです。しかし、当然ですが中学校に合格した後の人生の方が長いのです。志望校に合格することも重要なステップではありますが、あくまで人生における通過点の1つであることを親子で共有しておきましょう。
子どもに伝える時には「中学受験で人生が決まるわけじゃないから、その先のことも考えておくといいよ」のように、より広い視野で目標を捉えるよう説明するといいでしょう。
子どもに伝える時には「中学受験で人生が決まるわけじゃないから、その先のことも考えておくといいよ」のように、より広い視野で目標を捉えるよう説明するといいでしょう。
目標を達成した後のビジョンを描いてみる
例えば「志望校に合格した後、どんなことに打ち込みたいのか」「大学ではどんな勉強をして、将来はどんな仕事に就きたいのか」など、合格後のビジョンについて子どもに尋ねてみてください。
まだ小学生ですから、明確な将来像を描くことは難しいかもしれません。漠然とした内容でも否定したり細かく問い詰めたりせず、おしゃべりする感覚で楽しみながら話してみてください。大切なのはやってみたいことや興味があることを話す中で、将来が楽しみだなと子どもに思ってもらうことです。次の目標が見え、さらに楽しみに思えれば、燃え尽き症候群の予防に役立つはずです。
まだ小学生ですから、明確な将来像を描くことは難しいかもしれません。漠然とした内容でも否定したり細かく問い詰めたりせず、おしゃべりする感覚で楽しみながら話してみてください。大切なのはやってみたいことや興味があることを話す中で、将来が楽しみだなと子どもに思ってもらうことです。次の目標が見え、さらに楽しみに思えれば、燃え尽き症候群の予防に役立つはずです。
目標を達成できなかった時に備え、可能性を広げてみる
志望校に合格できなかったなど、目標を達成できなかった場合についても話しておくといいでしょう。まず将来やってみたいことや就きたい仕事があり、そのステップとして受験があるなら、もし不合格だったとしてもその夢を実現する道が閉ざされるわけではなく、さまざまな可能性があることを説明します。
4子どもが燃え尽き症候群になったら?
子どもが燃え尽き症候群になってしまった場合、親がやってあげたい対応について説明します。
子どもの心身を休める時間を作る
真っ先に、身体と心を充分に休める時間を作ってあげましょう。適度な休息を取ることも、目標の達成に必要なプロセスであると子どもに伝え、まず睡眠時間をしっかり確保してください。
また子どもに気晴らしや好きなことを楽しむ時間を作ってあげることも大切です。例えばゲームや動画視聴、友達と遊ぶ、体を動かすなど、子どもがやりたいことをさせてあげましょう。
また子どもに気晴らしや好きなことを楽しむ時間を作ってあげることも大切です。例えばゲームや動画視聴、友達と遊ぶ、体を動かすなど、子どもがやりたいことをさせてあげましょう。
新しい目標について、子どもと一緒に考える
燃え尽き症候群になった背景の1つに、目標を絞り込みすぎて、視野や可能性を狭めてしまった点が挙げられます。そこから脱するために、可能性を大きく広げることを意識しましょう。
中学受験の場合なら、将来のことや勉強に関すること以外に目を向け、趣味やスポーツなど本人が打ち込めるもの、目標となるものを探すなど、ざっくばらんに話し合ってみてください。
とはいえ、子どもも「じゃあ、これをやってみる」と急に切り替えることは難しいでしょうから、親は子どもの気持ちの変化を受け入れ、待ってあげる姿勢でいることも大切です。
また、予防策とも共通しますが、目の前の目標に捉われすぎず広い視野をもつことを意識し、長い目で将来を見つめ直すステップも、燃え尽き症候群から脱する際に役立ちます。
中学受験の場合なら、将来のことや勉強に関すること以外に目を向け、趣味やスポーツなど本人が打ち込めるもの、目標となるものを探すなど、ざっくばらんに話し合ってみてください。
とはいえ、子どもも「じゃあ、これをやってみる」と急に切り替えることは難しいでしょうから、親は子どもの気持ちの変化を受け入れ、待ってあげる姿勢でいることも大切です。
また、予防策とも共通しますが、目の前の目標に捉われすぎず広い視野をもつことを意識し、長い目で将来を見つめ直すステップも、燃え尽き症候群から脱する際に役立ちます。
学校やスクールカウンセラーに相談する
燃え尽き症候群の度合いが著しく家庭での対策が難しそうな場合は、学校やスクールカウンセラー、塾などに相談してみるのも1つの方法です。サポートを利用して悩みを聞いてもらったり、アドバイスを受けたりすることで、子どもの心身のリフレッシュにつながるかもしれません。
5親も燃え尽き症候群に注意!
子どもの教育に打ち込んできた親が、中学受験や習い事などに持てるエネルギーを注ぎ込んだ結果、燃え尽き症候群になるケースがあります。
特に中学受験は「親子の受験」とも呼ばれ、親は子どもの体調管理や塾の送迎、スケジュール管理まで関わります。それが2、3年に渡って続くのですから、親も心身ともに疲弊してもおかしくありません。
特に中学受験は「親子の受験」とも呼ばれ、親は子どもの体調管理や塾の送迎、スケジュール管理まで関わります。それが2、3年に渡って続くのですから、親も心身ともに疲弊してもおかしくありません。
まさに親子が一心同体となって同じ目標に向かって努力を続けるため、いつのまにか子どもの目標が親の目標となってしまう家庭も少なからずあるようです。そんな場合は、子どもの合格で親の方が安堵して虚脱状態になってしまったり、不合格で本人より親が激しく落ち込んでしまったりします。万一、親子が揃って燃え尽き症候群になってしまったら、回復がより難しくなる恐れもあります。
そんな状況を避けるために重要なのが「自分と子どもを切り離して考えること」です。あくまでも「子どもは子ども、自分は自分。子どもは自分とは別の存在」と考え、適切な距離を取って状況を俯瞰しましょう。
特に注意したいのは「子どもには、自分が通いたかった学校に入学してほしい」「自分が果たせなかった夢を子どもに託したい」という、親の思いが強すぎるケースです。子どもを親の自己実現の手段にせず、自分自身の楽しみや喜び、生きがいなどを見つけてみてください。
そんな状況を避けるために重要なのが「自分と子どもを切り離して考えること」です。あくまでも「子どもは子ども、自分は自分。子どもは自分とは別の存在」と考え、適切な距離を取って状況を俯瞰しましょう。
特に注意したいのは「子どもには、自分が通いたかった学校に入学してほしい」「自分が果たせなかった夢を子どもに託したい」という、親の思いが強すぎるケースです。子どもを親の自己実現の手段にせず、自分自身の楽しみや喜び、生きがいなどを見つけてみてください。
6親子で意見を共有し、燃え尽き症候群に立ち向かおう
今回は子どもの燃え尽き症候群を中心に、予防法や対処法、親の燃え尽き症候群などについて解説しました。親は子どもに対し、目標達成は通過点の1つであり全てではないと伝える、視野や可能性を広げ新しい目標を作るサポートをするなどの点を意識することが大切です。
また親の燃え尽き症候群を防ぐには、自分と子どもを一体化させて考えない、自分だけの楽しみを見つけるなどの対策が役立つことを紹介しました。
どの場合も必要なのは、親子がよく話をすることです。それも、改まって言い聞かせるというよりも、何気なく「将来は何になりたい?」「中学受験が人生の全てではないんだよ」などと話せれば理想的です。そのためには、普段から話しやすい環境を作っておくことが必要です。
親が子どもの視野を広げたり、目標達成が全てではなく通過点の1つと伝えたりすることは、子どもの燃え尽き症候群の予防や対処において大きな役割を果たすことを知っておきましょう。
また親の燃え尽き症候群を防ぐには、自分と子どもを一体化させて考えない、自分だけの楽しみを見つけるなどの対策が役立つことを紹介しました。
どの場合も必要なのは、親子がよく話をすることです。それも、改まって言い聞かせるというよりも、何気なく「将来は何になりたい?」「中学受験が人生の全てではないんだよ」などと話せれば理想的です。そのためには、普段から話しやすい環境を作っておくことが必要です。
親が子どもの視野を広げたり、目標達成が全てではなく通過点の1つと伝えたりすることは、子どもの燃え尽き症候群の予防や対処において大きな役割を果たすことを知っておきましょう。