column ココロの特集
子どもから意欲を奪う「学習性無力感」、どう対応する?
学習性無力感とは、努力や行動が期待した結果に結びつかない経験を繰り返すことによって、「自分は何をしてもダメなんだ」と思い込み、自発的な努力や行動をしなくなる状態を指します。
学習性無力感に陥ると成績が低下したり、何かに挑戦しようという行動が減ったり、抑うつや不安といったネガティブな感情が引き起こされたりするなど、子どもによくない影響を与えます。
今回は、子どもの学習性無力感の改善方法や、親ができるサポートなどについて解説します。
学習性無力感に陥ると成績が低下したり、何かに挑戦しようという行動が減ったり、抑うつや不安といったネガティブな感情が引き起こされたりするなど、子どもによくない影響を与えます。
今回は、子どもの学習性無力感の改善方法や、親ができるサポートなどについて解説します。
1学習性無力感とは?
学習性無力感とは、「勉強で努力してもよい点数が取れない」「スポーツに頑張って取り組んでも、思うような結果が得られない」などの体験を繰り返した結果、「どうせ、自分は何をやってもダメだ。努力しても無駄だ」と思い込むことで、この言葉はアメリカの心理学者マーティン・セリグマンによって提唱されました。
学習性無力感に陥る原因としては、例えばテストで繰り返し悪い点数をとる、親や教師からの過度な期待に応えられないことが続くなどが挙げられます。
学習性無力感とストレスによる無気力とは、似ているようで異なります。ストレスによって一時的に無気力なることは、誰にでもあり得ます。その場合は、ストレスが解消されたり、気分転換したりすることで回復に向かうケースがほとんどです。しかし学習性無力感に陥ると、原因を解決しようとしたり、気分転換しようとしたりする意欲や積極性そのものが減退してしまうため、無気力が長続きする恐れがあります。
学習性無力感に陥る原因としては、例えばテストで繰り返し悪い点数をとる、親や教師からの過度な期待に応えられないことが続くなどが挙げられます。
学習性無力感とストレスによる無気力とは、似ているようで異なります。ストレスによって一時的に無気力なることは、誰にでもあり得ます。その場合は、ストレスが解消されたり、気分転換したりすることで回復に向かうケースがほとんどです。しかし学習性無力感に陥ると、原因を解決しようとしたり、気分転換しようとしたりする意欲や積極性そのものが減退してしまうため、無気力が長続きする恐れがあります。
2学習性無力感が小学生に与える影響
小学生が学習性無力感に陥ると、どのような影響が出るのでしょうか。ここでは主な3つの影響について紹介します。
①意欲の低下
勉強やスポーツなどに対し、挑戦への意欲や成功への期待を抱きにくくなります。その結果、成績が下がったり、何かをさせようとすると嫌がったりするなどの態度を見せることがあります。
学習性無力感の場合、「勉強のやり方を工夫すれば、次はもっといい点がとれるかもしれない」ではなく、「これ以上勉強しても、どうせいい点はとれないから、勉強しても無駄」という思考になってしまうのです。
学習性無力感の場合、「勉強のやり方を工夫すれば、次はもっといい点がとれるかもしれない」ではなく、「これ以上勉強しても、どうせいい点はとれないから、勉強しても無駄」という思考になってしまうのです。
②自己効力感の低下
自己効力感とは、「自分には目標を達成する力がある」と信じる気持ちのことです。学習性無力感を覚えると、この自己効力感が低下することがあります。
自己効力感が低い子どもは自分の能力を実際より低く見積もりがちで、そのために難しい課題を避けようとしたり、失敗を恐れて挑戦をしなかったりします。
自己効力感が低い子どもは自分の能力を実際より低く見積もりがちで、そのために難しい課題を避けようとしたり、失敗を恐れて挑戦をしなかったりします。
③気持ちの落ち込みや不安の増加
学習性無力感を覚えた子どもは、①や②とともに不安や抑うつといったネガティブな感情を抱いてしまうことがあります。
3小学生の学習性無力感を改善するには
ここでは、子どもの学習性無力感を改善する方法について解説します。主な3つの方法を挙げていますが、取り組みやすいものから始めて問題ありません。
①小さな成功体験を積み重ねる
子どもが達成できそうな小さな目標・課題を設定し、「やってみたらできた」という成功体験を積み重ねて、達成感を味わわせます。その際、子どもの自尊心を傷つけない程度に取り組みやすく、達成しやすい目標を設定し、挑戦させていきましょう。子どもが比較的、得意にしている分野から取り組むのもおすすめです。例えば勉強が苦手ならスポーツなど、他の分野で「1つできた」「もう1つできた」という体験を繰り返します。
最初は短時間の取り組みから始めて徐々に時間を伸ばしたり、つらそうな様子が見えたらこまめに休憩を挟んだりするよう、意識してみてください。
あるいは、成果だけでなく成績や点数以外の指標を設け、達成したら褒める方法もよいでしょう。例えば「2時間、連続して勉強できたね」など、目標とするプロセスを達成できたら褒めるやり方です。
もし子どもが深い学習性無力感に捉われている場合、なかなか前向きになれないかもしれません。そんな時は無理強いせず、少し時間を置いて繰り返し、取り組みに誘ってみるとよいでしょう。
最初は短時間の取り組みから始めて徐々に時間を伸ばしたり、つらそうな様子が見えたらこまめに休憩を挟んだりするよう、意識してみてください。
あるいは、成果だけでなく成績や点数以外の指標を設け、達成したら褒める方法もよいでしょう。例えば「2時間、連続して勉強できたね」など、目標とするプロセスを達成できたら褒めるやり方です。
もし子どもが深い学習性無力感に捉われている場合、なかなか前向きになれないかもしれません。そんな時は無理強いせず、少し時間を置いて繰り返し、取り組みに誘ってみるとよいでしょう。
- 【声かけの例】
- 「前回はできなかったところが、できるようになるといいね」「次から、1日1時間は勉強してみよう」
②過去の失敗の原因を考えてみる
過去にうまくいかなかった経験を振り返り、その原因を考えることは、学習性無力感を改善するために有効な手段の1つです。そうすることで、今後、同じような状況に陥ることを避ける対策を立てられます。
ただし、振り返る際は子どもが自分を責めていないか、注意する必要があります。「あなたはどうして、こんなところで失敗してしまったの?」のような、子どもに自責感を抱かせかねない聞き方ではなく、「どんな状況で失敗したのか」「どうすれば失敗を防ぐことができるのか」のような、失敗が起こった原因にフォーカスする視点で見直しましょう。
ただし、振り返る際は子どもが自分を責めていないか、注意する必要があります。「あなたはどうして、こんなところで失敗してしまったの?」のような、子どもに自責感を抱かせかねない聞き方ではなく、「どんな状況で失敗したのか」「どうすれば失敗を防ぐことができるのか」のような、失敗が起こった原因にフォーカスする視点で見直しましょう。
- 【声かけの例】
- 「この部分が難しかったから間違えたんだね。つまずいた理由がわかったから、次はここを勉強して、もう一度挑戦してみよう」
③思い込みを修正する
子どもの学習性無力感を改善するには、「努力をしても無駄」「自分には能力がない」という、ネガティブな思い込みを修正することも有効です。
①でも紹介したように、小さな成功体験を重ねることも、思い込みを修正するために役立ちます。
もし、子どもが自分の能力に対して実際以上に悲観的な見方をしていたり、自分を否定するような表現を使っていたりしたら、「でも、頑張ってやり遂げた部分もちゃんとあるよ」「そもそも問題のレベルが高かったのかも?」など、改めて自分を客観的に見るきっかけを作ってあげるとよいでしょう。
①でも紹介したように、小さな成功体験を重ねることも、思い込みを修正するために役立ちます。
もし、子どもが自分の能力に対して実際以上に悲観的な見方をしていたり、自分を否定するような表現を使っていたりしたら、「でも、頑張ってやり遂げた部分もちゃんとあるよ」「そもそも問題のレベルが高かったのかも?」など、改めて自分を客観的に見るきっかけを作ってあげるとよいでしょう。
- 【声かけの例】
- 「前回のテストの点数が悪かったと落ち込んでいるけれど、クラス全体の平均点も低かったんだよね?ということは、ほとんどのクラスメートにとって難しかったんじゃないかな。あなただけが特別、できなかったわけじゃないと思うよ」
4小学生の学習性無力感を改善するために親ができること
子どもの学習性無力感を改善するために、親ができることはいろいろあります。
①学習性無力感に拍車をかけるような声かけを避ける
子どもが失敗しても責めたり、過剰な励ましをしたりせず、できている部分をほめてください。
例えば「どうして、こんなこともできないの?」と追い詰めたり、「あなたはもっとできるはず!次は絶対に成功させようね!」と過剰なプレッシャーをかけたりせず、「思い切って挑戦したから、ここまでできるようになったね。よく頑張ったね」など、子どもの努力を認める声かけをしてあげましょう。
例えば「どうして、こんなこともできないの?」と追い詰めたり、「あなたはもっとできるはず!次は絶対に成功させようね!」と過剰なプレッシャーをかけたりせず、「思い切って挑戦したから、ここまでできるようになったね。よく頑張ったね」など、子どもの努力を認める声かけをしてあげましょう。
②親は、「できないことがあってもいい」というスタンスでいる
親が完璧主義、または高い理想を持つ場合、子どももその考え方に影響され、自分を追い詰めるかもしれません。人間として向上心があるのはよいことですが、それを子どもに強制していないかどうか、見直してみることも大切です。
子どもが失敗した時は、「人間、得意と不得意があるのは当たり前だよ」「機械じゃないんだから、いつも完璧にやり遂げるなんて無理。調子が悪いこともあるよ」という対応をしてみると、子どもも失敗を恐れにくくなるでしょう。
子どもが失敗した時は、「人間、得意と不得意があるのは当たり前だよ」「機械じゃないんだから、いつも完璧にやり遂げるなんて無理。調子が悪いこともあるよ」という対応をしてみると、子どもも失敗を恐れにくくなるでしょう。
③子どもが「やってみよう」「やればできた」と思える環境を整える
例えば「ずっと頑張ってきたけど、どうしても成績が上がらない」という学習性無力感に悩む子どもの場合、学習レベルを見直す、塾を変えるなどの方法で、現在の能力に見合った学習環境を整えてあげましょう。そうすれば成功体験を積む機会が大きく増え、勉強に取り組む意欲が高まるはずです。
「塾やクラスのレベルを下げると、子どもが傷つくのでは?」と心配になるかもしれませんが、ずっと同じ環境で勉強をさせる方が、子どもの心についた傷が深まる恐れがあります。
環境を変えて目標を達成できた時は、結果だけではなく「良かったね!毎日努力して、頑張って挑戦を続けた成果だよ。これからも、無理のないように頑張っていこうね」のように、頑張った過程も褒めてください。そうすることで、子どもは結果ではなく努力に価値があるのだと理解し、前向きに物事に取り組めるようになります。
「塾やクラスのレベルを下げると、子どもが傷つくのでは?」と心配になるかもしれませんが、ずっと同じ環境で勉強をさせる方が、子どもの心についた傷が深まる恐れがあります。
環境を変えて目標を達成できた時は、結果だけではなく「良かったね!毎日努力して、頑張って挑戦を続けた成果だよ。これからも、無理のないように頑張っていこうね」のように、頑張った過程も褒めてください。そうすることで、子どもは結果ではなく努力に価値があるのだと理解し、前向きに物事に取り組めるようになります。
5小学生の学習性無力感は改善が可能
子どもの学習性無力感は、親の支えや意欲を引き出せる適切な環境などによって、改善する可能性があります。
まずは、お子さんの学習性無力感の背景にあるつらさや不安感に気づき、共感してあげてください。「勉強が思うように進まないのは、つらいよね」「テストの点数が気になってしまう気持ち、よくわかるよ」と受け止めましょう。
学習性無力感に陥っている子どもは、自分の能力を実際より低く見積もり、やる気を失っています。その状態から抜け出すには、小さな目標を達成し、成功体験を積み重ねることが重要です。
まずは、お子さんの学習性無力感の背景にあるつらさや不安感に気づき、共感してあげてください。「勉強が思うように進まないのは、つらいよね」「テストの点数が気になってしまう気持ち、よくわかるよ」と受け止めましょう。
学習性無力感に陥っている子どもは、自分の能力を実際より低く見積もり、やる気を失っています。その状態から抜け出すには、小さな目標を達成し、成功体験を積み重ねることが重要です。
例えば宿題を自分で解けた、漢字テストで前回よりよい点数だったなど、些細なことでも構いません。子どもの努力を認め、具体的に褒めてあげましょう。また、勉強以外に得意なことや好きなことに取り組む機会を増やすことも効果的です。成功体験を通して、自己効力感を高め、物事に取り組む意欲が湧いてくるはずです。
また、「失敗」と「成功」の価値基準そのものを見直したり、気づいていなかった評価ポイントがあるのではないかと意識したりすることも、学習性無力感の突破口になるかもしれません。
子どもをサポートする際に避けたいのは、焦って物事に取り組むことを強制したり、過度に期待をかけたりすることです。子どものペースに合わせ、無理強いせず、少しずつでいいので意欲が湧いてくるように支援しましょう。