column ココロの特集
フェイクニュースから子どもを守る!ウソとホントを見分ける力をつけるには
インターネットやSNSの普及によって、大人も子どもも、さまざまな情報に触れる機会が増えました。しかし、その中には真実とは異なる「フェイクニュース」も含まれています。フェイクニュースは、情報の正確性を判断する力が未熟な子どもたちに、悪影響を及ぼす恐れがあります。
本記事では、フェイクニュースが子どもに与える影響について解説し、ウソとホントを見分けるためのスキルを身につける方法や、家庭でできる具体的な対策を紹介します。
親は、子どもたちがメディアリテラシーを身につけ、正しい情報を見分けられるようにサポートしていきましょう。
本記事では、フェイクニュースが子どもに与える影響について解説し、ウソとホントを見分けるためのスキルを身につける方法や、家庭でできる具体的な対策を紹介します。
親は、子どもたちがメディアリテラシーを身につけ、正しい情報を見分けられるようにサポートしていきましょう。
もくじ
1子どもを守るために知っておきたいフェイクニュースの現状
インターネットやSNSの普及により、私たちは膨大な情報に瞬時にアクセスできるようになりました。これにより私たちの生活は非常に便利になりましたが、その一方で、誤った情報や意図的に作られた偽の情報、いわゆる「フェイクニュース」が急速に広まるという問題が明らかになっています。
過去、実際にあったフェイクニュースとしては、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国の工場が操業を停止したため、トイレットペーパーがなくなる」という例がありました。
フェイクニュースの定義は研究者によってさまざまです。例えば、2020年3月に発表されたみずほ情報総研株式会社の調査では、「何らかの利益を得ることや意図的に騙すことを目的とした、いわゆる『偽情報』や、単に誤った情報である『誤情報』や『デマ』などを広く指すもの」と定義しています。
フェイクニュースは社会に悪影響を及ぼす可能性があり、その拡散速度や範囲は深刻な問題となっています。例えば、マサチューセッツ工科大学のシナン・アラル教授らが行った研究(2018年)では、X(旧Twitter)では、フェイクニュースは真実の情報よりも6倍速く、より広範囲に拡散されるという結果が出ました。
フェイクニュースはインターネット上の情報の中に限りません。テレビ、新聞、ラジオ、雑誌といった四大メディアも、フェイクニュースの発信源になり得ます。
情報リテラシーが十分に発達していない子どもたちにとって、フェイクニュースに触れる機会が増えている現代社会は、危険に満ちています。
情報リテラシーが十分に発達していない子どもたちにとって、フェイクニュースに触れる機会が増えている現代社会は、危険に満ちています。
2フェイクニュースが子どもにもたらすリスク
子どもがフェイクニュースにさらされることには、さまざまなリスクがあります。
価値観の形成への影響
子どもは批判的思考力(クリティカルシンキング)や情報を評価する能力が十分に身についていないため、フェイクニュースを真実として受け入れやすい傾向が見られます。例えば、人種的な偏見を含むフェイクニュースを真に受けてしまうことで、差別意識や偏見が植え付けられる恐れがあります。
また、「地球温暖化は実在しない」のような科学的事実に反する情報を信じ込むことで、環境問題に対して誤った認識を持ちかねません。誤った情報や偏見が、子どもの価値観形成に影響を与えかねないのです。
また、「地球温暖化は実在しない」のような科学的事実に反する情報を信じ込むことで、環境問題に対して誤った認識を持ちかねません。誤った情報や偏見が、子どもの価値観形成に影響を与えかねないのです。
感情面・行動面への影響
フェイクニュースは、感情を刺激する表現や過激な主張などを含むことが多く、子どもの感情や行動に強い影響を与える懸念があります。例えば、自然災害に関するフェイクニュースで、画像生成AIを使い広範囲にわたって浸水しているように思わせる投稿が、SNSで拡散されました。そのようなニュースを見て、過度な不安や恐怖を感じるかもしれません。
次にあげた人やものから見たり聞いたりしたニュースは、信じられますか。
信じられる
これらのリスクを踏まえ、子どもたちがフェイクニュースに対処できるよう、メディアリテラシー教育や批判的思考力を養うことは極めて重要です。
3子どもをフェイクニュースから守るには
①子どもに「フェイクニュースを使って、嘘をついたり人をだまそうとしたりする人がいる」という事実を教える
子どもの年齢や理解力に合わせて、フェイクニュースとは何か、どんな目的で使われるのかを説明します。
小学校低学年には「フェイクニュース」という単語は難しいので使わず、「ウソのニュース」と説明し、「誰かが作ったウソのニュースが、インターネットの中で広がってしまうこと」という表現をするとわかりやすいです。
小学校高学年になると、自分で情報収集する機会も増えるので、フェイクニュースを見分ける力が必要になってきます。単にウソの情報と説明するだけでなく、「なぜ嘘の情報が作られるのか」「誰がどんな目的で広めているのか」を考えるきっかけを与えることが重要です。理由を説明する際は、「ウェブサイトのアクセス数を増やして広告収入を得るため」「特定の人や団体を悪く見せるため」「選挙で特定の候補者を有利(不利)にするため」などと伝えるとよいでしょう。
②信頼できない情報を流すサイトを、親がブロックする
親がフェイクニュースを流すサイトをチェックし、適切な制限と監視を行います。
インターネット上にある不適切な情報へのアクセスを制限するフィルタリングソフトの活用、閲覧履歴の確認、利用時間や利用場所のルール設定などが考えられます。
インターネット上にある不適切な情報へのアクセスを制限するフィルタリングソフトの活用、閲覧履歴の確認、利用時間や利用場所のルール設定などが考えられます。
ただし、過度な制限は、子どもたちの情報へのアクセスを阻害し、情報活用能力の獲得を妨げる恐れがあります。
子どもは実際に数々の情報に触れ、時には失敗しながら、少しずつその内容を理解し、騙されないように賢くなっていくものです。子どもたちが自身で情報を評価し、判断する能力を養うためには、ある程度の自由と失敗の機会が必要です。
例えば、子どもが興味をもったニュースサイトをすべてブロックするのではなく、親が一緒にそれを見ながら説明するのもよいでしょう。
③誰もが騙される危険性があることを理解させる
あるリサーチ会社が行った「フェイクニュースと情報に対する意識調査(2021年)」によると、40.5%が「信じていた情報やニュースが、あとでフェイクニュース/デマだとわかった」経験があると回答しています。
フェイクニュースやデマについての経験
信じていた情報やニュースが、あとでフェイクニュース/デマだとわかったことがある
あいまいな情報や、フェイクニュース/デマだと知らずに、他の人に伝えたことがある
多くの人が誤った情報を信じてしまうことがあるという事例を紹介し、「自分だけは大丈夫」という思い込みの危険性を認識させ、常に慎重に情報を確認する姿勢を持つように教えます。
④子どものメディアリテラシーを育む
インターネット時代に生きる子どもたちにとって、膨大な情報の中から「真実」を見抜く力は、将来を生き抜くための必須スキルといえるでしょう。フェイクニュースや偏った情報に惑わされることなく、主体的に判断する力を育むには、親の適切なサポートが欠かせません。
続いて、親の適切なサポートについて紹介します。
続いて、親の適切なサポートについて紹介します。
4「ウソ」と「ホント」を見分ける力を鍛えるには
批判的思考力を育てる
批判的思考力(クリティカルシンキング)は、情報を論理的に分析し、評価する能力です。この能力を育むには、子どもが情報を鵜呑みにせず、思考を深めるための手助けをすることが大切です。
子どもが何かを主張したときに、「どうしてそう思うの?」「他にどんな意見があると思うかな?」と問いかけ、思考を深めるように促しましょう。これにより、子どもは自分の考えの根拠を説明する練習ができ、同時に他の可能性についても考える習慣がつきます。
ニュースや広告を見た後で、「この情報は本当かな?」「この情報を流すことで、どんな人が得をすると思う?」といった疑問を投げかけ、情報の意図を考える習慣を身につけさせましょう。
多様な視点と情報源に触れ、情報の信頼性を判断する力を養う
特定の情報源だけを鵜呑みにせず、多角的な情報に触れることで、偏った情報に惑わされにくくなります。情報源が公式機関、専門家、信頼できるメディアであるかなど、確認する習慣を身につけさせます。
同じ出来事について、複数のニュースソースを比較してみましょう。同じ出来事でも、新聞社やテレビ局によって報道の仕方が異なることがあります。複数の情報源を比較すれば、情報の多面性を理解し、より客観的な判断ができるようになります。
家族や友達との会話の中で、異なる意見を尊重し、さまざまな立場から物事を考える大切さを教えることも大切です。
著者の専門性や情報源の信頼性、情報が最新のものであるかなどを確認するために、「これはどこの誰が書いていると思う?」「それはいつの情報だろう?」「そのサイトはほかにどんなことを発信しているの?」「そのニュースの文章は、綴りや文法に間違いがない?」などと確認することも、判断力の育成に効果があります。
親が情報の信憑性を判断する基準を具体的に示し、子ども自身が情報源を評価する練習をするのもおすすめです。
フェイクニュースの手口を知る
フェイクニュースの典型的な特徴や拡散方法を理解することで、真偽を見分けやすくなります。
実際のフェイクニュースを例に挙げ、センセーショナルな見出しや画像、感情的な言葉遣い、情報源の不明瞭さなどの特徴を、子どもと一緒にチェックしてみてください。
例えば、自然災害の直後はフェイクニュースが発信されやすいといわれています。実際の例としては、SNSに2016年の熊本地震の直後、「地震の影響で、動物園からライオンが逃げた」という投稿がありました。
親がそういうニュースを見たら、子どもに「これ、どう思う?」と意見を聞いたり、「こういう時は、投稿した人はどんな人なのか、他の投稿も見てみよう」「タイトルが大げさで、いかにも嘘っぽいよね」と話し合ったりしてみましょう。
例えば、自然災害の直後はフェイクニュースが発信されやすいといわれています。実際の例としては、SNSに2016年の熊本地震の直後、「地震の影響で、動物園からライオンが逃げた」という投稿がありました。
親がそういうニュースを見たら、子どもに「これ、どう思う?」と意見を聞いたり、「こういう時は、投稿した人はどんな人なのか、他の投稿も見てみよう」「タイトルが大げさで、いかにも嘘っぽいよね」と話し合ったりしてみましょう。
フェイクニュースが作られる目的(金銭目的、政治的な意図など)について話し合い、情報拡散の背後にあるメカニズムを理解させましょう。
デジタルリテラシーを向上させる
インターネットやソーシャルメディアの仕組みについて学び、情報がどのように拡散されるのかを理解します。例えば、デジタル技術の基本的な仕組みや、オンライン上での情報の流れを知ることで、より賢明な情報の取捨選択ができるようになります。
アルゴリズムによる情報操作や、エコーチェンバー効果(同じ意見を持つ人々の間でのみ情報が共有され、偏った見方が強化される現象)について説明し、子どもが接している情報は、必ずしも中立的ではない可能性があることを伝えましょう。
オンライン上での情報の流れ方を知ることで、より精度の高い情報の取捨選択が可能になります。
5フェイクニュース対策は継続的に行おう
子どもたちをフェイクニュースから守るには、情報の真偽を見分ける力の育成や、家庭内でのオープンな対話、親子でニュースを見て議論するなど、家族全員でメディアリテラシーを学ぶことが必要です。また、家族全体のメディアリテラシーを高めることも効果があります。
また、子どもたちだけでなく、大人も含めて誰もが「確証バイアス」(自分の既存の信念や価値観に合う情報を信じやすい、「見たいものしか見ようとしない」という人間の性質)の影響を受けやすいことを忘れないようにしたいものです。それには、自分の好みや信念に合致する情報であっても、その真偽を慎重に確認する習慣を身につけることが欠かせません。
子どもたちに対しては、情報を鵜呑みにせず、常に疑問を持つ姿勢を忘れないように教育することが大切です。同時に、健全な懐疑心と、全ての物事を色眼鏡で見ることを区別し、バランスの取れた判断力を養うことも必要です。
フェイクニュース対策は長期的な視点を持つ必要があります。なぜなら、情報技術の進化とともにフェイクニュースの手法も巧妙化しており、一朝一夕に解決することは不可能だからです。私たち一人ひとりが継続的に学び、対策を講じていくことが重要です。フェイクニュース対策は一度行えば終わりではなく、親子で継続的に取り組むべき課題です。