column ココロの特集

気づいてあげたい!ストレスからくる子どものSOSサイン

勉強・進学などへの不安や親・先生・友達との人間関係、さらに最近は新型コロナウイルスへの恐怖、環境や習慣の変化など、さまざまなストレスに直面していく子どもたち。

強いストレスにさらされると、気持ちが落ち込んだり体調を崩したりするなど、一見わかりづらい症状も出てきます。

そんな子どものSOSサインに親が気づき、気持ちを楽にしてあげるにはどうすればよいのでしょうか。
子どもの具体的なSOSのサインや、その対策について考えていきましょう。

監修:正木大貴[博士(医学)]
子どものSOSサインとは
子どもが悩みや不安などのストレスを感じると、SOSのサインとして身体や行動、感情面にさまざまな症状や変化が出ることがあります。

特に、悩みや不安について言葉でうまく伝えるのが難しい低学年~中学年に、その傾向が強くなります。

どんな症状が現れるのか、具体例を見てみましょう。
子どものSOSサイン
身体の不調
  • 見てわかるほど食欲が減った、または増えた
  • 頭やお腹の痛み、吐き気やめまいがある
  • なかなか起きられない、または寝られない
  • おねしょやおもらしをする
  • チック(不規則で突発的な体の動きや発声が、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまう症状)が見られる
行動の変化
  • いつもより甘えてくる
  • いつもよりおしゃべりになる
  • 態度が乱暴になる
  • 口数が少なくなる
  • 学校や友達の話をしたがらなくなる
  • 自分を否定するような発言をする
  • よく泣く
  • 爪を噛む
  • 落ち着きがなくなる
感情の変化
  • イライラしやすくなる
  • 怒りっぽくなる
  • 落ち込みやすくなる
  • 感情の起伏が激しくなる
不調や変化の程度やそれが続く期間には個人差がありますが、これらの症状が目立ってきたり、子どもの様子が「いつもと違う」と感じることが増えたりしたら、それは子どもからのSOSサインかもしれません。

子どもが具体的な言葉でSOSを発してくれれば親もわかりやすいのですが、高学年になると反抗期にさしかかり、子どもが親との触れ合いを避ける場合もあります。またお腹が痛いといっても、ストレスが原因なのか、身体の病気によるものなのかを判断するのは難しいものがあるでしょう。

しかし、子どものストレスやSOSはわかりづらいものと親が自覚し、少し注意するだけでも発見の度合いは違ってくるはずです。親としてはできる限り早めに、子どものSOSサインを見つけてあげられるよう、普段から子どもの様子にアンテナを張ってあげてください。

コロナ禍のストレスからくるSOS
子どもにストレスを与える要素には、勉強や家族・友人との人間関係、進学・進級や転校による環境の変化などがありますが、2020年に始まり感染拡大がまだ収まらない新型コロナウイルスも大きなストレスになっています。

国立成育医療センターの「コロナ×こども本部」グループが、2020年4月からコロナ禍での子どもたちの状況や感じていることについて調査を行っています。

6月15日~7月26日にかけてインターネットで行われた第2回アンケート調査(対象:0~17歳の子どもとその保護者6,772人)によると、子ども全体の72%がコロナによって何らかのストレスを感じていることがわかりました。
小学生では「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」が最も多い回答ですが、その他にも「イライラする」「集中できない」「なかなか寝付けない、夜中に目が覚める」などの回答も目立ちます。
子どもには、不安やいら立ち、怒りなどを感じることは当然であると伝え、リラックスする方法を一緒に探す、コロナによる他人への悪口や差別などに結びつけないよう注意するなどを心がけていきましょう。

またコロナに関する様々な情報が出回る現状では、正誤を見分けるのは難しい面もありますが、子どもの年齢や理解度に合わせて、できるだけ正しい情報を教えてあげることも大切です。

子どものSOSに気づいたら
親は、子どものSOSサインに気づいたらどうすればいいのでしょうか。対処法をいくつかご紹介します。
声をかける
子どもの様子が普段と違うと感じたら、まずは声をかけてみましょう。
  • 「元気がないけれど、何かイヤなことがあるの?」
  • 「夜はちゃんと寝られている?」
  • 「最近、ちょっとイライラしているみたいだけれど、どうかした?」
低学年の子どもは、自分の悩みやつらさをうまく言葉にできないことが多いかもしれません。そんな時は子どもの言動に基づいた声かけを意識してみてください。

例えば腹痛を訴える子どもなら、いつ、どんな時に腹痛が起こるのかを見ておき、「朝、起きる時にお腹が痛くなるみたいだけど、どうしたのかな?」と具体的に聞いてみるのがおすすめです。
話を聞く
「ダラダラしないで、もっとシャキッとしなさい」「なぜいつも、朝にちゃんと起きられないの?」と叱りつけるのではなく、まずは子どもに話を聞いてみましょう。
  • 子どもが話しやすい環境づくりを意識する
  • 親は聞き役に徹して、先回りや決めつけをしないよう心がける
話を聞く場合は、特別に話し合いの場を作るより、一緒にテレビを見たり、おやつを食べたりしている時に自然な流れで話してみましょう。

話の途中で口をはさみたくなるかもしれませんが、親の感情や意見はいったん脇に置いて、最後まで聞いてあげてください。

子どもの意見全てに同意する必要はありませんが、「そうなんだね」と受け止めたり、「よく 話してくれたね」といたわったり、「そんなに辛いのに、頑張っていたんだね」と認めてあ げたりしましょう。そうすれば子どもも親が聞いてくれることに安心し、話しやすくなるでしょう。

また子どもが経験した出来事と、そこで感じているであろう気持ちを親が言葉にしてあげるとさらによいです。言い換えれば、子どもの心の中で起こっているけれど、子ども自身で表現するのが難しい感情に、親がしっくりくる言葉を当ててあげるようなイメージです。

例えば「学校に行くことを考えると、何となくイヤな気持ちになるし、じっとできなくなる」 と子どもに言われたら、「きっと不安を感じているんだね。例えば、学校の何について考え た時にそうなるの?」、「こないだ○○ちゃんとケンカしてたけど、それが気になって不安になってるのかもね?」などと聞いてみては。

親が子どもの話に耳を傾け、真剣に向き合う姿勢は子どもにとって大きな支えになるはずです。「あなたのことを心配している」という気持ちを伝えた上で、子どもがSOSを発してストレスを解消しやすいように考えてあげてください。

子どものストレス解消法
子どもからのSOSサインをキャッチしたら、気分転換やストレス解消をさせることを意識しましょう。 そのためには子どもが夢中になれることや、そういう時間を作ることが大事です。 一例として、具体的な解消法をご紹介します。
体を動かす
子どもが好きなスポーツをすることがおすすめですが、外出が難しい場合は自宅でストレッチ、ゲーム機を使ったエクササイズなどを親も一緒に楽しんでみましょう。親子で散歩、ランニングをしてみるのもいいですね。
工作や手芸をする
手を動かしてモノづくりに熱中するのも、ストレス発散につながります。ダンボールや厚紙を使っての工作、ハンドメイドでのマスク作りなど、夢中になる時間は気分転換になるでしょう。
植物・生き物を育てる
庭やベランダで花を育てたり、室内で豆苗やミニトマトなどの野菜を育てるほか、生き物を可愛がって育てることも子どもにとってはやすらぎになります。
料理やお菓子作りにチャレンジ
自宅での時間を活用して、少し手間や時間がかかる料理やお菓子作りに挑戦するのもおすすめです。親が子どもをサポートしたり、簡単な工程なら競争したりしても盛り上がるのでは?切る、挟むなどでできる手軽なおかずをたくさん作って、それぞれで取り分けるのも1つの方法です。
行ってみたい場所について調べる
遠出が難しい状況ですが、インドアでもできる旅行をしてみるのはどうでしょう。例えば旅行会社による無料・有料のサービスを利用して、バーチャルツアーに参加してみては。参加前後に目的の国について調べたり、その国の料理を作ったりするとストレス発散だけでなく、地理の知識が広がり親子の会話も増えそうです。
新しい趣味を始めてみる
オンラインで楽器の練習を始める、絵を描いてみる、ダンスをやってみるなど、今までにやったことがない趣味は新鮮で、リフレッシュできるでしょう。例えば楽器ならピアノやギター、トランペットなどにチャレンジしてみては。もしかしたら一生の趣味が見つかるかもしれません。
また親にもコロナによるストレスが見られることがわかりました。同アンケートの回答では、今回のコロナ禍で「子どもに対して感情的にどなった」という親が小学校低学年で70%、高学年では59%という結果になっています。

コロナ禍という非常事態で子どもを思いやるには、受け止める親が気持ちに余裕を持つことが大切です。そのためには自身のつらさや不安にも目を向け、自分をケアしてあげてください。 いろいろなことを取り入れてリフレッシュしたり、「よく頑張っている」と自分をねぎらったりして、親もコロナ禍によるストレスとうまく付き合っていきましょう。
ストレスを感じたら試してみたい
~大人のセルフケア~
一人でゆっくり過ごす時間を作ったり、友人・知人とのつながりを大切にしたりして、ストレスを解消しましょう。
  • ヨガやストレッチ、筋トレなど自宅で体を動かす
  • 好きな本や映画、お笑い番組などを見てリラックスする
  • 音楽を聴く
  • アロマを楽しむ
  • 瞑想をする
  • 友人や知人とオンラインでおしゃべりする

無理に解決しようとしなくても大丈夫!
子どもが悩む姿を見ると、親としてはストレスの原因を突き止めて解決したくなります。 ストレスの原因を取り除けるなら問題ありませんが、それが難しい場合がほとんどでしょう。

しかし最も大切なのは、ストレスに悩む子どもの気持ちを明るくしてあげることではないでしょうか。

子どものストレスの原因を見つけなければいけない、解決しなければいけないと思い詰めず、好きなことに打ち込ませてあげたり、いろいろな体験をさせてあげたりして、子どもの気分が良くなることを最優先するのは、親だからできることです。

またストレスの原因を見つけられなくても、親がサポートしてあげることそのものが、子どもなりに自分で考えたり折り合いをつけたりして乗り越えていく力がつく後押しになるはずです。

親子で一緒に気分転換をしながら、ストレスを乗り切ることが大切です。まずは子どものSOSに気づいてあげることから心がけてください。
子どものSOSサイン、専門家に相談したくなったら?
お住いの地域にある保健センターや子ども家庭支援センター、精神保健窓口、クリニックや病院などに相談してみましょう。
子どものSOSサインに隠れているかもしれない心の病
●うつ病(気分障害)
強い悲しみや気分の落ち込みといった“抑うつ気分”や意欲や喜びの低下といった症状が特徴的な疾患で、子どもの場合は抑うつ気分の代わりにイライラを示すことがあります。また食欲や睡眠の異常のほか、頭痛や倦怠感といった身体症状も伴うこともあります。
●不安障害
パニック障害(理由もなく激しい不安に襲われ鼓動が激しくなる、めまいがする、呼吸が苦しくなるなど)や社交不安障害(人との触れ合いや人が多く集まる場に強い苦痛を感じる)、 強迫性障害(手洗いや火の元の確認など特定の行為を止められず、日常生活に支障をきたす)などがあります。
●摂食障害
食事をとらなくなる「拒食症」や、極端に大量に食べ過ぎてしまう「過食症」があります。拒食症から過食症になることもあります。
参 考
国立成育医療研究センター
・第2回調査報告書「コロナ×こどもアンケート」
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC2_finrepo_20200817_3MH.pdf
・新型コロナウィルスに負けないために 親子でできるストレスコーピング編
https://www.ncchd.go.jp/news/2020/d87c94efa75dede6e54ef2faf38c0b916a05a24d.pdf
・新型コロナウィルスに負けないために お子さんの成長に応じたケア編
https://www.ncchd.go.jp/news/2020/a3a812f385f7a4d77fa4f8c0bb30d77ec846d36f.pdf
参 考
厚生労働省