column ココロの特集
子どものコミュニケーション力を高めよう!
しかし少子化・核家族化などの社会背景もあり、子どもが家族や身近な友人・知人以外とコミュニケーションをする機会が、ますます失われつつあります。
そんな中、子どもはどうやってコミュニケーション力を身につけていけばよいのでしょうか。
今回は、将来にも関わる子どものコミュニケーション力を高めるために、親がやってあげたいことについて考えます。
例えば教育においては、大学入試の英語が従来の「読む・書く」に「聞く・話す」力を加えた4技能が評価の対象に。
知識だけでなく、英語を使って実践的なコミュニケーションを取れるかどうかが重視されるようになったといえるでしょう。
それに応じて教育の現場でも、小・中学校において「主体的・対話的で深い学び」、いわゆる「アクティブ・ラーニング」が推進されています。
また日本経済団体連合会(経団連)が行っている「新卒採用に関するアンケート調査」では、企業が新卒採用時の選考で重視するポイントとして、コミュニケーション力が16年連続第1位となっています。
勉強や習い事で忙しい、また現在はコロナ禍で友達と会う機会そのものが激減したなど、他者との関係を作りにくい状況に置かれている子どもたち。
さらに近所づきあいが減ったことで様々な世代と話す機会も減り、同世代とは違う考え方をする人とのやり取りに戸惑う子どもも増えています。
そのような状況の中、コミュニケーション力を重視する流れは今後さらに強まると思われます。
例えば“コミュニケーション力が高い子ども”と聞いて、どんな子どもが浮かびますか?
「知らない人とでもすぐ打ち解けられる子」「上手に話せる子」「皆と仲の良い、人気のある子」などを 思い浮かべる人が多いのでは?
どれも似ているようで、微妙に異なるイメージ像ではないでしょうか。
コミュニケーション力は様々な受け取り方ができる、意外とあいまいな言葉です。
ですから、まず「コミュニケーション力」とは何なのかをあらためて考えてみましょう。
ここでは、コミュニケーション力とは次の2つからなるものだと定義します。
②自分の言いたいことを相手に伝える
ですからこの2点が両立することが理想といえます。
コミュニケーションにおいて、子どもだけではなく大人も「いかに相手に自分の考えや思いをうまく伝えるか」に集中してしまいがちです。
もちろん相手への伝達も大切ですが、「相手が伝えてくる内容を正しく受け取る」ことへの配慮も欠かさないよう心がけましょう。
続いては、子どもが①②の力を育むために必要なスキルと、それを身につけるためのトレーニングについて見ていきます。
①相手の意図を理解するスキル
傾聴する
小学生には少し難しいかもしれませんので、「相手の話を聞く姿勢をもつこと」と考えてください。
子どもが学校や塾に行く前に「どんな授業(話)だったか、帰ってきたら教えてね」と伝えておき、帰宅したら「今日は先生(または友達)からどんな話を聞いたの?」と尋ねてみましょう。
子どもに「お母さん・お父さんに教えてあげなくちゃ」という意識が芽生えると、先生や友達の話を注意深く聞き、理解する習慣が身につくはずです。
自分が話すことに夢中になりがちなお子さんには、「今はあなたが話す番」「次はお母さん(お父さん)が話す番」と決めて話をすることが効果的でしょう。
「今はお母さん(お父さん)だけれど、学校でも友達が話している時はしっかり聞いてね」とアドバイスしてあげるのもいいですね。
相手の話に対してリアクションをする
コミュニケーションのベースになる重要な要素です。
親が家事や仕事で忙しかったり、スマートフォンやタブレットを見ていたりすると、子どもの話を聞く時もつい「ながら聞き」になってしまうのでは。
少しの時間でもいいので、体を子どもの方に向けしっかり目を見ながら頷いたり、「そうだね」「それは良かったね」と相づちを打ったりしてあげましょう。
質問する
そんな時は「わからないけれど、まあいいや」と流さず、「どうしてそうなったの?」「なぜそう思ったの?」など質問することが重要です。
相手の意図をより正確にくみ取ることに繫がるからです。
子どもから「なぜ?」という質問を引き出すのはなかなか難しいことですが、いろいろな場面で「なぜ〇〇する(した)と思う?」という問いを投げかけてみましょう。
そうすることで、なぜそうなったかを考えたり、想像したりするきっかけを作ってあげてください。
「どうしてこの人はこうしたのだろう?」「この人はどんな気持ちだったのだろう?」と、相手の考えや行動に対してさらに深く考える習慣づけにつながります。
例えば「どうして、自分より小さい子には優しくしてあげるのだと思う?」「食事中にゲームをすると叱られるのはなぜだと思う?」など、普段の生活の中でできるやり取りを考えてみては。
相手の立場に立ってみる
今は外出を控えめにしたい時期ですが、できる範囲で幅広い世代の人たちと接するチャンスを増やしてあげるとよいです。
そうすることで、自分とは異なる考え方や性質を持つ人たちの気持ちを推し量る、配慮するなどの力がつくはずです。
この能力が磨かれると相づちの質が「ふーん」から「うん、わかる」「そうなんだ!」とより相手への共感が伝わるものに変わっていくでしょう。
相手も「話してよかった」と、相互理解が深まっていき、コミュニケーションの好循環につながります。
確認する
「お母さん(お父さん)はこういうつもりで話したんだけど、わかってもらえた?」、あるいは「あなたの話をこう受け取ったのだけれど、間違ってない?」と子どもに聞き、普段から確認する習慣をつけてしまうのも1つの方法です。
子どもがこの習慣を習得しやすくするため、まず親が確認する習慣を身に付けるよう意識するのもよいでしょう。
②自分の言いたいことを伝えるスキル
そのためには自らに問いかけることが大切ですが、子どもが1人で行うには難しい場合があるので親が手伝ってあげるとよいでしょう。
自分の状態を表現する言葉をたくさん持つことで、子どもの心は成長したり、豊かになったりします。
例えば親が子どもの様子を見て、「今日はなんだか嬉しそうね」または「不機嫌そうな顔をしているけど、何かあったの?」など、子ども自身が感じている気持ちに気づき、それを表現できるきっかけになる問いかけをしましょう。
また子どもが経験した出来事に対して、「あなたがその時に感じた気持ち(または今感じている気持ち)を“うしろめたい気持ち”って言うのよ」と説明してあげてもよいです。
そのためには自分の思いや考えを言語化する力と、それらを効果的に伝える力を備えておきたいものです。
子どもが「はい」か「いいえ」で答えられるような短いやり取りで終わらせていては、自分の気持ちを言葉で表現する機会が少なくなってしまいます。
例えば「このアニメ、すごく人気らしいけどあなたはどう思う?」、「学校で何をしている時が一番面白い?」など、子どもの思いや意見を引き出せるような会話を意識してください。
親が普段から「今日こんなことがあって嬉しかった」とその日にあった出来事について子どもに話し、そこから「あなたは今日、どんなことがあったの?」と子どもの気づきや表現を促すような話しかけをするのも良い方法です。
子どもがそれらの力を磨くために、親が家庭でやってあげられる手助けはたくさんあります。
「口下手だから心配で……」
内気・口下手な子どもなら、子どもが興味をもっていることや好きなことから話す練習をしてみましょう。
また、何も大勢の人や知らない人を相手に上手くコミュニケーションできるようにならないといけないというわけではありません。少数の仲の良い友人と円滑にコミュニケーションをすることも、子どもにとって非常に貴重です。
また内気な子や口下手な子は聞き役として相手から信頼されることもあります。発信だけがコミュニケーションではないことを親子で知っておくことも大切です。
今回ご紹介した取り組みを見ていくと、子どものコミュニケーション力を伸ばすために普段の生活の中で親がやってあげられることが、本当にたくさんあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
ぜひ日常的に意識して取り組んでみてください。
小5・6年生がコミュニケーションについて考えていること
神奈川県立総合教育センターが平成26年に調査したアンケートから、小5・6年生がコミュニケーションについて悩んでいることや心がけていること、話しやすいと思っている相手などが見えてきます。
子どもとコミュニケーションを取る際に参考にしてみてください。
自分の思いや考えが相手にうまく伝わっていないと感じることはありますか。
「自分の思いや考えが相手にうまく伝わっていない」と感じたことがある児童・生徒は小5・6ともに半数を超えていますが、ここではご紹介していない中高生でも同様の結果となっており、ほとんどの年代でうまく話を伝えられないもどかしさを感じているようです。
あなたが自分の思いや考えを一番伝えやすい相手はだれですか。
「思いや考えを伝えやすい相手」は家族と同学年の友人が多く、日頃から身近で長時間一緒にいる相手を中心にコミュニケーションを取っていることがわかります。
なぜその人に自分の思いや考えを伝えやすいと感じるのですか。
小6は小5に比べ、「話を聞いてくれる」人よりも「自分を理解してくれる」人を重視する傾向があります。成長につれて自分に共感してくれる、興味を持ってくれる人をより求めているようです。
自分の思いや考えが相手にうまく伝わっていないと感じることはありますか。
伝えることや話し合いに関することの割合が高く、聞くことに関するものの割合は2割程度となっています。このことから、児童・生徒は受信より発信を重視する傾向があるといえます。
平成 26年12月 神奈川県立総合教育センター 平成26年度 コミュニケーションに関するアンケート