column ココロの特集
自分も他人も大切にできる子どもに育てるには?
家族やお友達とコミュニケーションを取る時に、自信が持てず自分の意見を引っ込めてしまう、あるいは自分の主張を相手に押し付けてわがままに振る舞う、そんなお子様に悩む保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの保護者の方々が、わが子には「相手の意見を尊重しつつ、自分の意見もしっかり主張できる」、優しくて強い子に育ってほしいと思われていることでしょう。
今回は、自分も他人も大切にしながら周囲と関わっていける子どもの育て方について考えていきます。
多くの保護者の方々が、わが子には「相手の意見を尊重しつつ、自分の意見もしっかり主張できる」、優しくて強い子に育ってほしいと思われていることでしょう。
今回は、自分も他人も大切にしながら周囲と関わっていける子どもの育て方について考えていきます。
自分を大切にするとは?
自分を大切にする、または尊重することとは、ありのままの自分を受け入れ大切にできることです。つまり「よいところも悪いところもひっくるめて自分らしさなのだ」と思える感情を持てることと言えます。「自尊感情(「セルフ・エスティーム」ともいい、自分自身をどのように評価するかということ)」や「自己肯定」などの意味とほぼ同じと考えてよいでしょう。ありのままの自分を大切にすることができれば、自信を失った時、あるいは周囲に一方的に否定された時など、「こんな自分はダメだ」と自分を否定せずに「失敗やうまくいかないこともある。次に頑張ろう」ととらえ、立ち直ることができます。
ありのままの自分を大切にするとは、「自分は完全な人間だ」と他人と比べて優越感をもったり、自己中心的にふるまったりすることではありません。むしろ自分の弱点や欠点は認めつつ、「だけどよいところもあるし、このままで大丈夫だよね」と、自分にOKを出せることです。
自分を大切にするとは自分は自分のままで存在してよいという、いわば「存在することへの自信」がベースにあります。
- 自分を大切にできる人
- 自分の欠点や未熟な点を理解・認識し受け入れた上で、よりよい自分になるために前向きに努力ができる
- 他人と自分を比較して卑屈になったり、優越感をもったりしない
- 自分を大切にできない人
- 周囲からの否定的な意見に対し、「次は気をつけよう」ととらえることができず「自分はダメだ」と思い込んでしまう
- 自分の足りない部分を受け入れられず、ちょっとした失敗でも激しく落ち込んでしまう
他人を大切にするとは?
では、他人を大切にするとはどういうことでしょうか。簡単に言えば、自分を大切にするのと同じように、他人の存在をありのままで認めることです。「あの人は自分と違う。おかしい」と相手を否定せず、意見や性別、国籍などの違いを受け入れながらその存在を尊重すると言い換えてもいいでしょう。
「相手の存在を尊重する」といっても、自分と相手の意見が異なった時に自分を抑え、相手の意見に合わせるということではありません。自分と相手の意見はあくまでも別のものとしてとらえた上で、相手の意見に賛成できなくても「この人にはこういう考えがあって、こんな風に言っているのだな」と考え、理解することです。
実は自分を大切にすることは、他人を大切にすることと深く繋がっています。なぜなら長所も短所も含めた“ありのままの自分”を大切にできる人は、他人に対しても同じ視点を持つことができるからです。つまり他人の悪い面を見ても、それはあくまでその人の一部としてとらえ、すぐにその人全体を否定的に判断しようとはしません。
また、自分を大切にできる人は「自分が周りの人に比べて劣っている」という考え方をすることはあまりありません。周りの人との違いを受け入れられる、あるいは素直に相手を称賛できるため、よりよい人間関係を築きやすいといえるでしょう。
自分と他人を大切にする子どもを育てるために親ができること
続いて、自分も他人も大切にできる子どもを育てるために、親は具体的にどうすればいいのかを考えます。
1.結果だけを評価しない
勉強や習い事など、子どもが取り組んだことは結果だけを重視するのではなく、その努力の過程を認めてあげてください。例えば子どもが読書感想文で高い点数をもらってきたら、「どこが面白かったか、わかりやすく書けているね」「一所懸命に読んでいたから、しっかり書けたんだね」などと声をかけるといいでしょう。
「先生にほめられて偉いね」「よい点数をもらえてすごいね」というような、結果だけを評価する言い方は避けましょう。子どもが自分自身を、「何ができるか、できないか」でいい子だ、またはダメな子だと判断してしまうかもしれないからです。
成績がよい、運動が得意、図工が上手などの才能を持った子どもは、その評価によって自信を持ちますが、「ありのままの自分を大切にする」という気持ちが育っていなければ、自分より得意な子どもが出てきた場合や、そういった得意分野を失った場合に自信を失ってしまう恐れもあります。
生まれ持った能力を認めほめるのは当然のことですが、「クラスで一番点数がよくてすごい」「友達の○○さんより賢いね」など、“誰かと比べてほめる”というやり方は子どもが自尊感情を育む妨げになりかねません。なぜなら「クラスで一番の自分しか愛されない」「他の友達より優れていなければいけない」など、何らかの条件がなければ愛してもらえない、認めてもらえないと、子どもが感じてしまう恐れがあるからです。
「頑張って勉強したから一番になれたんだね、よく頑張ったね」、「前回のテストより○点もアップしたね!努力できて偉いね」など、子ども自身がやり遂げたことに焦点を当ててほめてあげましょう。
2.子どもの強み・長所を見つけ、言葉で伝える
どの子どもにも長所や強みがあります。学校や習い事の場においては成績や成果を評価されがちですが、いつも子どもの側で見守っている保護者なら、わが子の性格・性質や勉強以外の特技など、その子ならではの優れた点をより多く見つけてあげられるのではないでしょうか。それをぜひ、言葉で子どもに伝えてあげてください。
例えば「お友達同士がケンカしそうな時にうまく取り持つのが得意だよね、それはあなたのすごくいいところだよ」、「○○ちゃんはいつも弟や妹を気遣って一緒に遊んでくれるから、お父さんもお母さんも助かっているの。ありがとう」など、小さなことでもいいのです。親から言われたそんな言葉こそ、子どもの自信や安定感に繋がります。
3.友達でも違っていいことを教える
どれだけ仲のよい友達であっても、物事に対する考え方や好き嫌いの全てが同じということはまずありません。しかし時に子どもは「友達と一緒でないと嫌われる」「仲間外れにされる」と思い込みがちです。意見を合わせることに大きな苦痛を感じない間はよいとしても、どうしても譲れない点についてまで、自分の主張を抑えて友達の意見を受け入れるのは健全とはいえません。
もし子どもが友達との間にそういった悩みを抱えているかも……と感じた時は、「あなたの考え方も、お友達の考え方も間違っていないよ。ただ同じではないというだけだから、どちらの意見も大切にしながら、『こうしていこう』と話し合ったらいいんじゃないかな?」などと話してあげるとよいでしょう。
自分の意見も友達の意見も尊重するためには、双方の意見に優劣をつけてどちらか選ぶことは避けたいものです。大好きな友達でも意見が違って当然なのだから、どちらかの主張に合わせる必要はないのです。互いの意見を尊重し、違っているからといって反発しない、それが自分も他人も大切にすることと言えるでしょう。
それでも子どもが「そんなことをしたら、もうお友達でいられなくなるかも」と不安を感じている場合は、例えば「私は○○ちゃんと考えていることが違うけれど、でも○○ちゃんのことは大好き。ケンカせずにこれからも友達でいたいから、したいことが違っても仲良しでいられるように、一緒に考えたいな」のような伝え方をアドバイスしてあげてはどうでしょうか。
日常生活で今後の当たり前を育もう
多様性が尊重される昨今ですが、今後は自分の気持ちを抑えて周囲に合わせたり、自分と異なるという理由で他者を排除したりするのではなく、自分を大切にして、相手も尊重できるよう、個別性を大切にしながら生きていくことがさらに当たり前になっていくでしょう。
そんな時代を生きる子どもたちのために、親がやってあげられることは日常生活の中で意外とあるはずです。また、自分も他人も大切にすることは子どもだけでなく大人にとっても必要です。親も子も一緒に取り組んでいきましょう。