好きなデバイスを持ち込んでOK!「BODY方式」授業の魅力とは?

BYOD方式でICT活用を進めている国学院大学久我山中学校・高等学校。BYODとは、「Bring your own device」の略で、個人が私物として所有するノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどを業務や学習に使用することをいいます。同校では、ICT教育を進める一環として2022年6月からBYODを導入。授業で実際にデバイスを使用するかどうかは各教員の方針に委ねられており、様子を見ながらゆっくりと進めているといいます。今回はBYODを取り入れた数学の授業の様子をレポートするとともに、導入の目的、魅力やメリット、生徒が伸ばせる能力などを先生に取材しました。

BYOD方式の授業例 男子部中学2年「数学」の場合

授業開始

小テスト(筆記)を実施。

先生が「Googleフォーム」で問題を送信し、生徒は各自のデバイス(大半がタブレット端末やノートパソコン。
スマートフォンは数名)で解答を送信する。

その間、先生は生徒たちが問題を解く様子を見まわる。

先生は「Googleフォーム」に送信された生徒一人ひとりの解答状況や結果をその場ですぐに確認。
間違いの多かった問題を中心に解説を行う。

先生がプリントを配布。生徒たちはそれをノートに貼り、重要な点やポイントを書き込む。

生徒が教科書(紙)の問題集を解き、各自で答え合わせを行う。
その間、先生は教室内を見まわって、生徒たちが問題を解く様子を確認。

疑問や質問のある生徒が個別に先生に質問する。
先生は間違いの多かった問題を中心に解説を行う。

授業終了(45分)

BYOD授業のポイント

  • 「先生が黒板を使って教科書の内容を説明する」のではなく、「生徒は各々が自分のデバイスで説明を読んで理解する」。

  • 問題を解く際は、デバイスと紙(問題集、プリント)の両方を活用。

  • 授業の大半の時間が、「生徒たちが問題を解いている」時間。
    先生は頻繁に見回り、生徒たちの様子を確認。

  • 先生はデバイスを通し、生徒の多くが間違えた問題をその場で把握する。
    それらの問題を重点的に解説。

BYOD方式の授業で、“高い読解力”と“学びに対する自主性”を培う

数学科教諭 飛田 裕一郎先生

飛田先生の授業では、どのような目的でBYODを取り入れていますか。

飛田先生「大学入学共通テスト」では長文問題が多く出題されます。そのため、生徒たちには読解力をつけてもらいたいと考えています。そこでBYODの導入に伴い、「生徒たちが各自のデバイスで説明や解説を読み、自分の頭で理解する」という授業スタイルに切り替えました。

BYOD方式の授業は、生徒にとってどんな魅力がありますか。

飛田先生生徒たちは自分が使いやすいデバイスを選んで持参しているので、見やすさや操作のしやすさという点に魅力があると思います。その結果、スピード感を持って授業に臨めていると思いますね。

また、自分から進んで学習に取り組む生徒が増えました。教員から教わるのではなく、「自ら説明や解説を読んで問題を解く」というスタイルのため、受け身ではなく主体的に取り組む姿勢が自然と身についたのでは、と思います。

あとはとても分厚い問題集があるのですが、それのデジタル化されたものをデバイスで見るため、生徒たちは重い問題集を持ち歩かなくていいという良さもありますね。

先生にとってはどのようなメリットがありますか。

飛田先生「グーグルフォーム」やデジタル教材プラットフォーム「Libry(リブリー)」などを活用することで、それぞれの生徒がつまずいた問題や間違えた理由、何点取れたのか、何分で解けたのかなどの情報を、その場ですぐに把握できることです。BYODを導入する前は、生徒たちが内容を理解しているかどうかはなんとなくの雰囲気で判断するしかありませんでしたが、今は確かなデータとして見ることができます。生徒一人ひとりの状況がわかるので、理解できていない様子の生徒には「大丈夫?」と声かけできますし、よりきめ細かいケアができるようになりました。

あとは「Google Classroom」を使ってファイルの共有を行ったり、課題や連絡事項を配信したりできるのは便利だと感じています。

生徒たちは、BYOD方式の授業をどう感じているのでしょう?

飛田先生最初はとまどいがあったようですね。でもデバイスに親しんでいる世代ですし、1ヵ月も経たないくらいで慣れていた印象です。学校が生徒に取ったアンケートでは、「授業中の学習効率が良くなった」が79%、「自宅学習の効率が上がった」が56%という結果が出ています。

授業ではデバイスだけでなく、紙の問題集やプリントも併用されていましたが、その理由は?

飛田先生デバイスと紙、それぞれの長所を取り入れることで、より効果的で深い学びとなるように心がけています。例えば、中1・2では「ノートづくり」や問題集に自分が出来たところや苦手なところを書き込んだ「自分だけの問題集づくり」に重点を置いているため、紙の問題集やノートは欠かせません。また問題は紙のテキストを見ながら解いて、答え合わせはデバイスで行うといった使い方をすることも。デバイスがあくまでも“どう使うか”が重要だと思います。

“生徒が私物のデバイスを持参する”という点で、学校側が特に気をつけていることはありますか。また、授業中にゲームやチャットアプリの通知が来て、生徒がつい操作してしまうという心配はありませんか。

飛田先生学校では、基本的に教員の指示がない場合は校内でのデバイス使用は原則禁止にしています。また生徒が持参するデバイスについては、「最新のブラウザを利用できる」「校内のWi-Fiに接続できる」「カメラを装備している」などといった最低限の条件をいくつか設けています。

当初から「勉強用デバイス」と「プライベート用デバイス」を分けるように勧めてきました。例えば、ノートパソコンやタブレット端末を「勉強用デバイス」にし、そちらには遊びで使うアプリは入れないようにして、スマートフォンを「プライベート用デバイス」にする、というように。成績が良い子ほど、そこをきちっと分けられている気がします。

授業中は、生徒がデバイスで遊ぶことのないように頻繁に見回っています。だからゲームをやっていたらすぐにわかりますよ(笑)。

BYODを取り入れた授業について、今後の展望について教えてください。

飛田先生まだBYODをスタートさせて一年なので、現在は課題や改善点を探っている状況です。生徒たちの読解力が上がっているか、自主性以外にはどんな能力が磨けるのかなどをじっくりと見守っていきたいと思います。生徒たちの要望にも耳を傾け、より良い授業を行えたらと考えています。