― 長年続けられている中学1年・2年生の「ハロウィーンパーティー」の趣旨から教えてください。
阪上先生 「ハロウィーンパーティー」がスタートしたのは、13年ほど前です。当時「ハロウィーン」というものになじみがない私たち教員に、生徒たちから「ハロウィーンパーティーをやりたい!」と声が上がったことが発端でした。中学生は中3でカナダへの海外語学研修に毎年行っていましたが、当初は今のようにインターネットが普及しておらず、現在のオンライン英会話もなく、異文化に触れる機会がなかなかありませんでした。教員からすると、単なる遊びのイベントのイメージしかなく行事として成立するかどうか不安でしたが、生徒たちから「ハロウィーンという海外の祭りに英語を通じて触れて、海外研修前に異文化を学ぶ素地を身につけるため、『English Day』のような一日英語を使う日にしたい」という強い申し出があり、それなら一度生徒たちだけでやらせてみようということになり、企画立案まで全て生徒が運営したイベントとしてスタートすることとなりました。現在もその趣旨を受け継ぎながら、日本に浸透してきたハロウィーンを異文化として正しく理解することを事前学習やゲームで意識させ、生徒たちのハロウィーンのイメージである仮装も取り入れながら実施しています。理想としては中2生が英語でMCを行い、中1生が日本語でMCを行う形ですが、時間的な制約などもあり今回は部分的に英語でのMCを取り入れました。
― 進行のMCをしていたのは「ハロウィーンパーティー」の実行委員ですか。
阪上先生 そうです。「ハロウィーンパーティー」をする上で、各クラスから2名ずつ実行委員を募り、12クラス24名の実行委員で企画から一緒にスタートしました。過去にも委員はいましたが、コロナの影響で中1・中2の合同開催は4年ぶりだったため、今回参加した全生徒が「合同のハロウィーンパーティー」は初めてだったのです。教員も過去の活動資料を見ながらの手探りな部分もあったため、実行委員の生徒たちに「こんなことをしたい」「あんなことをしたい」というアイデアを出してもらいながら、9月中旬から約1か月半をかけて一緒に考え実行に移していきました。今回は「借り物借り人競走」と「ハロウィーン〇×クイズ」になりましたが、それ以外にも仮装してドッジボールをしたい、宝探しをしたい、ハロウィーンの障害物競争といったアイデアがたくさん出て、その中で時間や場所の制限、全員で楽しめる競技を考えていきました。
― 昨年のハロウィーンパーティーはどのようなものだったのですか。
阪上先生 昨年は各教室で仮装コンテストとクイズ大会を行いました。各教室のスクリーンに司会の生徒を中継して、生徒たちは仮装しながらiPadでアプリのクイズをやるといったクラス単位で可能な形で実施しました。
― 今年は中1・中2の合同開催でしたが、昨年との違いを感じられましたか。
阪上先生 全員が仮装して集まるとパワーを感じましたね(笑)。思い思いに考えた仮装も、自分のクラスだけでなく他のクラスや他の学年まで見ることができ刺激を受けたと思います。生徒たちも昨年以上にハロウィーンの雰囲気を楽しんでいた印象を受けました。中2生の方が経験しているぶん衣装も凝っていて、中間テスト終了あたりから「どんなことをする?」と生徒間で話が出始め、グループで衣装を考え、どんどん盛り上がっていました。来年は今年の中1生が中心になって後輩たちを引っ張ってくれたらいいですね。
― 学年を超えた行事という意味では、普段のクラスでの様子と違いはありますか。
阪上先生 本校ではクラブ活動以外にも「プロジェクトワーク」という総合的な学習の時間に、中1生から高2生までを縦割りにして、60以上ある講座から一つを選択して受講します。その講座では各学年が縦横に混じって授業を行うので、意外と中1生と中2生が休み時間に廊下で話している姿を見かけることがあるんです。教員が知らないところでも繋がりができていますので、大きな緊張感なく行事そのものを楽しめているのではないかと思います。
― 英語科での事前学習とはどのようなものですか。
阪上先生 ALTの先生がいて、その先生と英語科教員とのチームティーチングの授業で、ALTの先生の国のハロウィーンの紹介やその国に触れるという授業を行っています。生徒のハロウィーンのイメージはアメリカのハロウィーンが近いのですが、例えばその先生はメキシコ出身でメキシコのハロウィーンを紹介してもらうとイメージとは違うところもあって、まさに異文化に触れることになります。生徒たちも楽しく学んでいます。 今日の「ハロウィーンパーティー」だけでは生徒が仮装をして、ただ楽しんでいるように見えるかもしれませんが、実は事前授業の中で祭りの意味や歴史、各国の形態を学習し、それがクイズの質問にも繋がっています。
― 進学校であり普段の勉強面のハードさも注目される大阪桐蔭ですが、一方で生徒たちが夢中になる学校行事がたくさんあります。阪上先生は生徒たちを見て、教示の成果や生徒の成長をどういったところで感じられますか。
阪上先生 生徒たちは普段、勉強をしっかり頑張っているので、行事を楽しみたい!というパワーが教員の想像する以上に強いんです。存分に楽しみながら積極的にどの行事にも参加しているというのが私の印象です。 英語科では「ハロウィーンパーティー」のほかに中1生、中2生の英語の暗誦大会や英語劇、中3生の英語でのプレゼンテーション大会があり、そういうイベントに日頃の授業がつながっています。11月にある文化祭も毎週受けている「プロジェクトワーク」で学んだ成果やクラブ活動での頑張りを発表する場です。つまり日常の活動が行事につながっていて、行事が日々の学習のモチベーションになるといった相乗効果があるのです。日々頑張っていたことはこれに繋がるのかと体感できるときがあって、それが次への意欲になります。発表の場でも自分たちが努力して準備してきたものにこのようなリアクションをしてくれるんだと体感できるイベントを多く設定しています。
― 英語の暗誦大会や英語劇にも長年取り組まれているものですが、そういう意味があるからこその行事なんですね。
阪上先生 昨年も年度末に英語の暗誦大会や英語劇を実施しました。暗誦大会は中1からも自ら手を挙げて10名の生徒が参加することになったものの、人前でしかも英語で発表するというのは大きなプレッシャーです。練習の時も初めは声が小さくて心配でしたが、10名で協力し合う中で最後まで頑張り続け、暗誦大会当日は堂々と舞台に立って発表してくれました。一つの大きなことを乗り越えたことが自信につながり、中2になってからの勉強に対するモチベーションも上がった姿を見て、行事の成果を感じました。 英語劇は各クラス10名弱のチームで1つの劇をします。これは英語が得意な生徒だけではなく、劇に興味があるいろいろな生徒が集まります。昨年はコロナ禍ということで、事前に作成した映像の上映会をやったところ、会場がこれまでになく大盛り上がりでした。英語劇のために努力することはもちろんですが、みんなで盛り上がる力のすごさを感じました。 今後も日々の学習に繋げながらも、その学年の生徒たちに合わせてちょっとずつ改善し、生徒が何かを得てくれる行事を実施していきたいと思います。