― 「サントリー生物有機科学研究所・研究者体験」の内容について教えてください。
車多先生 毎年、夏休みの期間を利用して5日間にわたりサントリーの研究所で研究に参加する実践教育プログラムです。研究テーマは①質量分析によるペプチドホルモンのアミノ酸配列の決定、②ペプチド遺伝子のPCRによる増幅と塩基配列による同定、③ホルモンが結合する受容体の決定と活性の強さの算出、の3つに分かれています。朝10時から夕方16時まで実験を行い、5日目には専門家の前で発表を行います。他の受け入れ機関と同様、定員は少人数ですが、その分、研究者との距離も近く内容の濃い体験となっています。
― 参加してみようと思ったきっかけや理由を教えてください。
鈴木さん 高2の夏休みを前にして、進路の方向性までは見えていたのですが、それを仕事にどう結びつけるのかというイメージがつかめていなくて、実際に体験したいと思いました。
岡田くん 高1の春休みに、サントリーの研究所の1日研究者体験に参加したのがきっかけです。その時は3つの研究テーマすべてを少しずつ体験するという感じだったので、もっと深く知りたいと思い、次の機会があったら絶対参加しようと決めていました。
後明くん 僕も高1の1日研究者体験がきっかけです。そこで研究が楽しいと思えたことが大きかったと思います。
山本さん 私は将来の夢が生薬研究者なので、長期間の研究を体験してみたかったんです。そして高校生のうちに研究者の方たちの生の声を聞きたいと思ったからです。
― リアルな研究テーマに取り組むので、高校生にとってはかなり難しいテーマかと思いますが、参加にあたりどのようなことに気をつけましたか。
岡田くん 自分がやる分野の勉強をした状態で行くのがマナーだと思うので、最低限のことは身につけていこうと思いました。
後明くん もちろん自分たちで勉強していったことだけでは太刀打ちできないハイレベルな現場ではありますが、マンツーマン状態で研究者の方が教えてくださるので、経験値が参加の必須条件ではないと思います。
車多先生 内容についてはもちろん難しいと思うのですが、高2で文理選択も済んでいる時期に、相応の意思を持って参加している生徒ばかりです。最初こそ緊張していますが、懸命に食らいついていると感じています。5日間の中でもメキメキと成長が見られました。
― 5日間の現場体験だからこそ、実感できたことは何ですか。
山本さん 研究者の皆さんが自分のやりたいことを仕事にされている姿がとても楽しそうだということです。自分もこんな風になりたい!だから頑張ろう!と思うようになりました。
岡田くん 研究者というと、静的なイメージが強かったのですが、僕が体験した時期にちょうど、新種発見の可能性があったんです。ワクワクしながら取り組める現場でしたし、夢がある職業だと思いました。
― あらかじめ用意されたプログラムではなく、研究の今を体験できるのは刺激的ですね。
車多先生 3つの研究テーマ自体はここ数年、変わってはいませんが、実際に研究所の方々が取り組まれている研究の進度に合わせて、体験内容が毎年ブラッシュアップできるのはありがたい環境です。
― 期間中、印象に残っているエピソードはありますか。
岡田くん 実験の際に機材の分析待ちの時間もあったので、研究の内容以外のこともお話させてもらいました。大学時代は何を専攻していたとか、今後のヒントをたくさん得られたと思います。
後明くん 僕は実験中にちょっとミスをしてしまったのですが、その結果どんな影響が出るかということがわかるので、全然気にしなくていいと言ってもらえて嬉しかったです。
山本さん 学校で習ったことが出てくることがあって、そういう習った知識を役立てる場面があったのも印象に残っています。
車多先生 学校で今やっている勉強の内容が社会の現場につながっているということが実感できると、普段の勉強にもやる気が出る生徒が多いです。具体的なスキルアップというより、卒業までのモチベーション維持の役割も大きいと思います。
― 5日目の発表について教えてください。
岡田くん 4日間でインプットしたことは、ほとんどが知らなかったことばかりで専門用語も多い。それを研究者の前でまとめて発表するので、とても緊張します。
後明くん しかも、ただレポートとして発表するだけでなくて、専門家に何を突っ込まれるかを想定して準備をしなければいけないんです。
車多先生 学内でも発表の機会はありますが、研究者を前にする真剣度は特別です。山本さんは、日本分子生物学会の高校生研究発表でも発表をしたよね。
山本さん はい。5日目の発表は同じ研究室の方からの質疑応答でしたが、学会では違う分野の先生からも質問が来るので、もう一度勉強し直して精度を上げて臨みました。
― 参加したことで自身が成長できたと感じていることはありますか。
後明くん 初日に研究のレジュメを渡された時は、何がわからないのかもわからない状態でした(笑)。もともとは質問するのが苦手な性格だったのですが、研究所の方たちからは、とにかくどんどん質問をしなさいと言われ、自分がわかるまで付き合っていただけました。わかる楽しさにも引っ張られたこともあってか、積極的になれたことが自分でも驚く大きな変化です。この研究体験が終わってから、物事の考え方や取り組み方もポジティブに変わったなと思います。
鈴木さん 私も後明くんと同じく、苦手なことにも挑戦しようと思えるようになったと思います。理科は好きだけれど、実は得意ではありませんでした。研究者の方たちの助けも借りながらこの5日間を乗り切れたというのが、その後の自分を支える自信に繋がっている気がします。
― 苦手なことを乗り越えて、さらに自信がついたのは良かったですね。
車多先生 個人的な特性もあるとは思いますが、失敗を恐れず自由になんでも挑戦できる環境が伝統の校風としてあるからでしょうか。
山本さん いつも言われている「やってみなはれ」の精神ですね。
岡田くん・後明くん・鈴木さん それだ!
― 最後に雲雀丘学園の体験学習の良いところを教えてください。
鈴木さん 学校の授業だけでなく、学校の外にもフィールドが広がっているところです。
岡田くん 研究系だけでなく英語体験などもあり、どれも将来を考える上で役立つものが多いと思います。
後明くん それから、もう1回行きたいなと思える体験が多いと思います。
山本さん 中学からいると当たり前だと思ってしまうのですが、改めて面白いことができる学校だと思いました。