中高大の女学院生が利用。将来を豊かにする本や情報に出会う場所。

中高生、大学生に加え卒業生も利用する図書館。蔵書数は約17万冊で、充実した参考図書や、「キリスト教」「英語」「女性」「人権」の4分野、絵本、文学作品、調査・研究資料など、多岐にわたる図書が館内に並びます。1965年の開館から50年。改築増床を繰り返し、今では2フロアの総面積1270m2。7人の司書がレファレンスに重点を置き、生徒たちに本とのより良い出会いの場を提供しています。中高生や大学生がお互いの学ぶ姿を見て刺激を受け合う場にもなっている同図書館を取材しました。

自分の世界を広げられ、自分を見直すことができる。それが読書の長所。

写真右より Kさん(高校2年・図書委員長)Oさん(高校2年・図書委員)Aさん(高校2年・図書委員)
各クラスで2名ずつ選出され、74名からなる大阪女学院中学校・高等学校の図書委員。主な仕事としては、「読書週間活動」「文化祭発表」「選書」などがあります。読書週間では、各図書委員が推薦図書の推薦文をPowerPointで制作したり(高校生)、学内用のポスターを制作して掲示します。今回は高校2年生の図書委員3名に、大阪女学院図書館の魅力や読書の面白さについて取材しました。

本に興味を持つきっかけがある図書館

図書委員から見た大阪女学院図書館の魅力はどこでしょうか。

【 Oさん 】
歴史書から漫画から英検の本、雑誌まで本の種類が豊富です。
【 Aさん 】
小学校よりかなり大きいし、本の種類が多いです。先輩の本や学校の歴史がわかる本も置かれていて充実しています。
【 Kさん 】
司書の方が多いことや、校舎の事務局の前にブックポストがあってそこに返却することもできて便利です。先日伝道週間があったのですが、そこで取り上げられた本やお話された先生の本が館内に展示されていたりして、シーズンに合わせたものが紹介されていることは本に興味を持つきっかけになっています。

館内でおすすめの場所やコーナーはありますか。

【 Aさん 】
入口に新着本のコーナーがあり、読みたい本や最新本はそこにあることが多いです。気になっている本はたいてい入っています。
【 Oさん 】
2階は懐かしいなと思う本…例えば絵本の「ミッケ!」や、雑誌やマンガといった楽しめる本がいっぱいあって気に入っています。
【 Kさん 】
私がよく行くのは、小説や文学作品のコーナーです。別に文庫本コーナーもあり、ドラマや映画に取り上げられた読みやすい本がたくさんそろっています。そのコーナーは端から1冊ずつ読みたいなと思っています。

中学、高校、大学が一緒の図書館は珍しいですが、大学と一緒だからこその良さや面白さはありますか。

【 Kさん 】
大学生は調べ物のために来られている方が多く、数人で研究の相談をされている姿を見ると「大学生ってこんな感じなのかな」と想像できます。普通の図書館なら小説がメインのような気もしますが、大学があるので研究や調査のための本も多く、そこは刺激的だと思います。

3人はよく読書をしていますか。

【 Kさん 】
母が本好きなので家にも本はたくさんあるのですが、新しい本や自分が読みたい本はまず図書館で探します。本はいつも電車の中と寝る前に読んでいます。今はAさんに「星の王子様」をすすめられ、読んでいるところです。私はだいたいタイトルで読む本を決めます。変わったタイトルに惹かれます。例えば「ぼくたちのアリウープ」というタイトルの本があったのですが、アリウープはバスケットボールの技の名前で、私はバスケットボール部なので興味が出て読んでみました。
【 Oさん 】
私は、本の世界にはまれば読めるのですが、すぐ飽きて違う本に目移りします。今は湊かなえさんの本を読んでいます。ドラマや映画になった作品はよく読みます。本当は先に本を読んでから映画を見たいのですが、映画から入ることが多く、見終わってからどんな話かなと気になって読んでしまいます。
【 Kさん 】
私たち高校生が一番多いのは、見た映画の原作本を読むことだと思います。でも、映画と原作は違うので、本の魅力は映画と全然違う面白さがあることだと思います。
【 Aさん 】
私も時間があれば映像化作品をよく読みます。映画だったらわからなかったところも本だったらわかるところがあります。今は友達にすすめられた湊かなえさんの「高校入試」という本を読み始めています。Kさんにおすすめした「星の王子さま」は、絵では知っているのですが内容がわからないなと思って読んでみたら、面白かったのですすめました。
生徒たちに人気の文庫本コーナーの前で
生徒たちに人気の文庫本コーナーの前で

イメージを膨らませ、たくさんの学びがある読書

活字離れが進んでいると言われますが、充実した図書館がある学校の図書委員として読書 の面白さは何だと思いますか。

【 Oさん 】
以前は映像を見ることが多くて、読書があまり好きではありませんでした。でも、読み始めると頭の中でストーリーを作ってイメージを膨らませて読むので、それがすごく大切かなと思います。
【 Aさん 】
いろいろな世界が本には描かれているので、「こういう考え方もあるんだ」と自分の世界が広がることが面白さだと思います。私も本が苦手だったのですが、姉が本好きで、姉のおすすめ本を読むようになってからいろいろな本を読むようになりました。やはりたくさん学べるものがあるなと思います。
【 Kさん 】
私も中学までは本が嫌いでした。でも、高校で大阪女学院に入学したら、隣の席の中学から女学院の子がずっと本を読んでいて、「すごく本を読んでいるね」と声をかけたら、「どうして本を読まないの? すごく損してる」と怒られたんです。その子のスケジュール張にはびっしりと本のタイトルが書いてあって、それはこの1週間に読んだ本だとも数えてくれました。それで私も本を読もうと思い、その子がすすめてくれた本を読んでみました。それで本は面白いなと思ったことが、読書にはまったきっかけです。それから何冊も読んでいくうちに、読書は自分の世界を広げられ、自分を見直すことができることに気づきました。それが読書の長所かなと思います。
豊富に揃う絵本からおすすめ絵本を選んでくれました
豊富に揃う絵本からおすすめ絵本を選んでくれました

では、それぞれのおすすめ本を教えてください。

【 Aさん 】
住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」です。 タイトルが衝撃的で「なんや、これ?」と思ったのですが、読み終わったらその意味がわかり、すごく考えられているなと思いました。年齢を問わず読める本だと思います。
【 Oさん 】
私は湊かなえさんの「Nのために」です。殺人事件が起きてその現場に男女4人がいて証言が違うのです。その人たちが誰のために嘘をつき、話をしているのかという内容ですが、世界に入り込んで読めたのでいいなと思いました。
【 Kさん 】
私はおすすめが4冊あります。1冊目はさっき話した「ぼくたちのアリウープ」。2つめは就職活動をしている5人の関係性がSNSを通して変わっていく話で、登場人物に自分を投影できるタイプがいて面白かった「何者」。3冊目は最近私が一番衝撃を受けた「シンドラーズ・リスト」です。第二次世界大戦でユダヤ人が迫害されたときにどんなことがあったのかがリアルに描かれていて、読んでいてしんどくはなるのですが、すごく印象深かった本です。4冊目は「あさきゆめみし」という有名な漫画です。指定図書にもなっていて、それを読んでから古典の授業を受けるとわかりやすく、「源氏物語」が違って見えるようになりました。

図書委員としては、そうしたお気に入りの本を紹介していきたいですか。

【 Kさん 】
今はあまりそういうことができていないので、もっと積極的に活動していけたらと思います。図書館を利用しているのは私たち生徒なので、もっと司書の方のお手伝いをしたり、迷惑でなければ図書館の中にどんどん入り込んでコミュニケーションを取りながら活動していきたいです。

大阪女学院中学校・高等学校 図書委員のおすすめ本

君の膵臓をたべたい
住野よる
双葉社
Nのために (双葉文庫)
湊かなえ
双葉文庫
ぼくたちのアリウープ (PHP文芸文庫)
五十嵐貴久
PHP文芸文庫
何者 (新潮文庫)
朝井リョウ
新潮文庫
シンドラーズ・リスト―1200人のユダヤ人を救ったドイツ人 (新潮文庫)
トマス・キニーリー
1200人のユダヤ人を救ったドイツ人
新潮文庫

図書館で調べることができるようになって将来にその力を活かしてもらいたい

高橋りささん[司書] 森上豊子さん[司書チームリーダー]
生徒たちが読書の素晴らしさに気づくきっかけの場であると共に、図書館を活用して現代社会にあふれる情報の中から正しいものを選び取る力をつけ将来に活かすことを目指しているという大阪女学院図書館。中学・高校・大学に対応する幅広さと深みを求められる図書館として、歴史を刻んでいます。司書チームリーダーの森上豊子さん、司書の高橋さんに同校図書館司書としての思いをうかがいました。

出会いの場として図書館を使ってもらいたい

館内には様々なコーナーがありますが、館内のレイアウトにはどのようなこだわりをお持ちですか。

【 森上さん 】
いろいろな本に出会えるように生徒たちの動線に沿った通り道に複数のテーマ展示をしています。何気なく出会った本から新たな興味が湧き、読書につながるのではないかと期待しています。この数年は参加型のテーマ展示が増えてきました。
【 高橋さん 】
4月のイースターの展示では、「Easter Egg Hunt」と題して館内のコーナーを新入生に覚えてもらうゲームにして、クリアしたらプレゼントがもらえるという形にしました。

図書館に来る生徒たちと交流していて、印象的なことはありますか。

【 森上さん 】
「面白い本はないですか」と聞かれて紹介した本を読み終わり、感想を言いに来てくれるということがよくあります。読書を通して知らない世界が広がったことを喜んでいる姿をみると私たちも嬉しくなります。
【 高橋さん 】
卒業後に大学の図書館情報メディア研究科に行き、インターンで本校の図書館へ実習に来てくれた卒業生がいました。その後、大学図書館に就職したのですが、しばらくして森上がある研修会に参加した時に偶然再会し、研修会スタッフの一員として活躍していたのだそうです。母校の図書館に実習に来てくれたことも嬉しかったですし、司書として立派に働いていることも嬉しかったです。
【 森上さん 】
「司書になりたいのでその方法を教えてください」と聞かれることもあります。また、他の大学に進学後に在籍している大学図書館を利用するのではなく女学院の図書館に来て課題のための資料を探す人がよくいます。理由を聞くと、「慣れていることと、程よい蔵書数なので選びやすい」と言ってくれます。
【 高橋さん 】
卒業生は生涯ずっと女学院図書館を利用できます。昨年度(2015年)は62人の利用登録がありました。
【 森上さん 】
本校の生徒たちは愛校心がとても強いと思います。

卒業しても利用したいと思える図書館はいいですね。そのように親しまれている図書館で 大切にされていることは何ですか。

【 森上さん 】
1人でも多くの人に図書館を出会いの場として利用してもらいたいと思っています。図書館は本好きな人が集まる場所というイメージがあるかもしれませんが、宿題のための調べ物をしたり、情報をまとめたりという勉強のためだけでなく、くつろぐという一つの居場所として利用する人も増えています。生徒たちがその時々の目的で図書館に行くことが生活の一部になったら嬉しいです。そして、一番心がけていることは、学生時代に図書館で必要な情報を収集するスキルを身に着けて将来に生かしてもらいたいということです。読書もしてほしいですが、図書館で情報を収集し、選ぶための便利なツールがることを知ってもらいたいので、レファレンスを大切な業務として力を入れています。
【 高橋さん 】
私は、来るたびにいつも何か新しい発見がある図書館でありたいと思っています。勉強や学校行事と同じように、大阪女学院での学院生活を豊かにするための本や情報に出会える場所でいたいと思います。
放課後になると生徒たちがいっせいに集まってくる
放課後になると生徒たちがいっせいに集まってくる
多くの蔵書から本を探す生徒
多くの蔵書から本を探す生徒

自分だけでは知り得ないことを本から学ぶ
未知なる世界が広がるということが大きい

中高生の読書というものに対しては、その大切さをどこに感じられますか。

【 森上さん 】
自分だけでは経験できない人生を本から知ることができるということでしょうか。新入生のオリエンテーションで話をするのですが、17万冊の本があるということで17万人の人生や知識を本から得ることができます。自分だけでは知り得ないことを本から知ることができる、未知なる世界が広がるということが一番大きいと思います。本との出会いで人生も違ってくるかなと思います。
【 高橋さん 】
校長が「女学院で新しいことにチャレンジする心を養ってほしいし、新しい価値観に出会ってほしい」と話しているのですが、それができるのが読書ではないかと思います。中学高校の時代に本を読むというのは、大阪女学院の教育にも通じると思います。

では、先生方のおすすめ本を紹介していただけますか。

【 森上さん 】
私は館内にも特設している卒業生である山下弘子さんの著書「雨上がりに咲く向日葵のように」です。前向きに19歳で余命宣告を受けた後も今自分ができることは何なのかを考えながら行動しようとする強さをひしひしと感じます。女学院で学んだ先輩の生き方をぜひ読んでほしいです。あと個人的な趣味ですがスポーツ小説が好きです。お勧めは高校生、大学生が主人公になっている「一瞬の風になれ」、「風が強く吹いている」、「夜のピクニック」などです。中高生は日常的に頭を使うことが多いと思いますが、夢をかなえるために無心に体を使うことで心も強く成長していくスポーツ関連の小説を読むとモチベーションアップにもつながるのではないかと思っています。
【 高橋さん 】
私は、レーナマリアさんの「それでも夢を持って―両腕なき愛のゴスペルシンガー」です。重度の障がいを持ちながらもゴスペルシンガーとして活き活きと活躍されている方です。この本は彼女が幸福になる秘訣や様々な活動するエネルギーの源、大切にしていることについて語っています。障がいが彼女の成長の妨げになっていないということ、神様への信頼が困難や挫折を乗り越える力になっていることがわかる1冊です。「人生は楽しむために与えられている」という言葉が印象に残りました。

ありがとうございます。お二人の気持ちが伝わる紹介本ですね。

【 高橋さん 】
大阪女学院は感動の多い学校です。「ほかの誰でもない私自身になる」ということを考えている学校だからこその感動かなと思います。
【 森上さん 】
17万冊の本が皆さんとの出会いを待っています。大阪女学院図書館でたくさんの発見をして、その感動を他の人にも伝えてもらいたいと思います。
高橋さん
高橋さん
森上さん
森上さん

大阪女学院中学校・高等学校 司書のおすすめ本

雨上がりに咲く向日葵のように ~「余命半年」宣告の先を生きるということ
山下弘子
「余命半年」宣告の先を生きるということ
宝島社
一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)
佐藤多佳子
講談社文庫
風が強く吹いている (新潮文庫)
三浦しをん
新潮文庫
夜のピクニック (新潮文庫)
恩田陸
新潮文庫
雨上がりに咲く向日葵のように ~「余命半年」宣告の先を生きるということ
山下弘子
「余命半年」宣告の先を生きるということ
宝島社
それでも夢をもって―両腕なき愛のゴスペルシンガー
レーナマリア
両腕なき愛のゴスペルシンガー
いのちのことば社