洛星中学校・高等学校 スポーツデータ解析研究会
創 設/2020年
人 数/13名(中3~高2生:サッカー部、バスケットボール部などと兼部)
活動日/部活が休みの日や長期休暇に自主活動
これまでの取り組み
― 「中高生・スポーツデータ解析コンペティション」(*1) 規定部門で発表したテーマより抜粋 ―
<2020年度>
- サッカーのシュートは本当にペナルティエリア外からでも積極的に打つべきなのか?
- オリックス・バファローズが低迷しているのは選手だけの責任なのか?
<2021年度>
- ボールは汗をかかない ~ポゼッションサッカーにおける「鍵」とは?~
- 監督、なぜヘディングをしないと怒るのですか?
- 打たんと、いてまうで!! ~プロ野球における、貧打チームへの救済策提示 ~
(*1)中高生・スポーツデータ解析コンペティション
日本統計学会統計教育分科会・同統計教育委員会、日本統計学会スポーツデータサイエンス分科会、情報・システム研究機構統計数理研究所が主催するデータサイエンスコンペティション。中高生のデータサイエンススキル向上、学校におけるデータサイエンス教育や探究学習などへの利活用が主な目的。コンペティションは既定部門と自由部門の2部門で開催され、新規性、理論性、妥当性、データ活用力、表現力(ポスター作成)が審査の基準になる。
<参考> https://estat.sci.kagoshima-u.ac.jp/SESJSS/student2021.html
興味をもったこと、
それが僕たちの分析テーマ!
Oくん(高3)スポーツデータ解析研究会の発起人 / Iくん(高2)/ Fくん(高2)
「みんな他の部活と兼部しています!」
スポーツデータ解析に興味をもったきっかけを教えてください。
▼ Oくん 中学時代はサッカー部に入っていましたが怪我をしてしまい、プレーをするよりみんなの試合を見る機会のほうが多くなりました。それでも公式戦に向けて他校を視察するのが楽しくて、各校のプレースタイルを分析することに面白さを感じ始めました。そうした中、後に顧問を務めてくださる児玉先生から「データを活用すれば、もっと色々わかるよ」と声を掛けてもらったことで本格的に取り組んでみようと思いました。
▼ Iくん 僕は、児玉先生が中3の学期末の授業でスポーツデータ解析研究会のことを紹介してくれたことが興味をもつきっかけになりました。Oさんの代の先輩たちがコンペティションで活躍されていたこともデータ分析をやってみようと思った後押しになりました。
▼ Fくん 僕も児玉先生の授業でこの研究会のことを知りました。すごく関心があったわけではなかったのですが、Iくんに「数学、好きやろ? 一緒にやろうよ!」と誘われて計算要員として入りました。
他の部活と兼部されていると聞きました。
▼ Oくん サッカー部は中3の夏で辞めましたが、高1からはクイズ同好会と兼部し、その他にも生徒会で文化祭の実行委員もやっていました。
▼ Iくん 僕は高2になった今もサッカー部の活動を続けていています。他には中1の時から鉄道研究会に入っています。
▼ Fくん 僕はサッカー部とスポーツデータ解析研究会の2つです。
研究会と部活、さらに勉強もあるので両立は大変ではないですか。
▼ Oくん 研究会が活動する曜日は特に決まっていないので、他の部活と兼部するのはそれほど大変ではありません。体育系の部活は忙しいので放課後はみんなそちらを優先しています。学校で研究会の活動をする時は、部活がない日に集まったり、昼休みを利用したり、帰宅後に取り組んだりして、結構マイペースな感じです。
▼ Iくん やはり帰宅後にPCに向き合うことが多いです。僕は時間を無駄にしないように夜10時になるとスマホのアプリが使えないように設定していますので、就寝までの時間を勉強とスポーツデータの分析に充てています。
▼ Fくん 家でLINEやZoomを使って研究会のやり取りを行うことが多いので、平日の放課後はサッカーを頑張っています。両立のために日頃から気をつけているのは、疲れている時は無理をしないですぐに寝るようにして翌日の学校に支障がないようにしています。
顧問の \児玉先生 談!/
“禍”転じて、良い方向でスタートできました!
スポーツデータ解析研究会が立ち上がった2020年はちょうどコロナ禍に入った年でした。緊急事態宣言が出て休校を余儀なくされましたが、今思えばその時期があったからこそZoomを有効に活用しながら結構自由に活動できたと思います。本校の卒業生でデータサイエンスに詳しい名古屋市立大学の奥田真也教授にもご協力いただき、勉強会などを通じて生徒たちは知識を蓄えることができました。それが今のスポーツデータ解析研究会の礎になっています!
「独自の解釈で結論に導けるのが魅力です!」
スポーツデータを分析する面白さについて教えてください。
▼ Oくん サッカー部時代の経験で言えば、試合中は自分の感覚を頼りにプレーしていました。ですから、試合後、「あの時、こう判断すればよかった」と省みることは少なからずあるので、それを一つひとつ集めて定量化し、分析していくと「実際とは違った試合結果になったかもしれない」という仮説を立てられます。そのように自分なりに解釈し、データを拠り所にして証明できるところが魅力です。
▼ Iくん 僕もそこが面白いと思います。データ分析は『Excel』や『R』といった統計分析ソフトを使いますが、そこに数値を入力して変換していく作業も好きですし、順調に分析が進めば「この数字が出たので、この事実を言える!」と言葉で表現して証明できるのが楽しいです。
▼ Fくん どのスポーツにも「みんなが正しい」と思っている定説はありますが、違った視点や角度でデータを分析していくと意外な結果に行き着くことがあります。僕はそこに魅力を感じます。「当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかった!」ということをデータが証明してくれるんです。
どのようにテーマを決め、どのような手順で分析を行うのですか?
▼ Oくん 純粋に自分が興味をもったことをテーマにします。2020年度の「中高生・スポーツデータ解析コンペティション」で最優秀賞をいただいた『サッカーのシュートは本当にペナルティエリア外からでも積極的に打つべきなのか?』というテーマは、僕が好きなJリーガーの遠藤保仁選手の本を読んで「遠くからシュートを打ってもあまり意味がない」と書かれていたので、「じゃあ、自分たちで調べてみよう!」と思い立ちました。
▼ Iくん 僕たち高2生が今取り組んでいるテーマは『カウンタータイプのサッカーのほうが勝てるのか?(仮)』というものです。2021年度のコンペティションで先輩たちが“ポゼッションサッカー”について分析されたので、それに対抗する形で“堅守速攻型サッカー”を調べようと思いました。
▼ Fくん 僕はサポート役なのでメインの分析はIくんに任せていますが、発表するポスターを仕上げていく過程で「こういう見せ方のほうが第三者にもわかりやすいのでは?」といった気づきがあればどんどん提案します。そうしてみんなと意見を交わしながら表現の完成度を高めていけるところが楽しいです。
顧問の \児玉先生 談!/
生徒たちが発表する場はたくさんあります!
先述の「中高生・スポーツデータ解析コンペティション」以外にも、神戸大学の数理・データサイエンスセンターが主催する「中学生・高校生データサイエンスコンテスト」(2021年度は優秀賞受賞)、総務省や県が主催するコンテスト、本校の文化祭など成果を発表する場はたくさんあります。賞を獲ることを最優先にせず、生徒たちはあくまで自分が「やりたい!」と思ったことを楽しみながら取り組んでいます!
「興味を抱けば、とことん突き詰めよう!」
顧問の先生や他の先生方はどのようにサポートしてくれますか。
▼ Oくん スポーツデータ解析研究会が立ち上がった年はコロナ禍の休校がありましたが、児玉先生は僕たちのために精力的に動いてくださり、Zoomでやり取りができる環境を整えてくれました。学校外では本校のOBの奥田真也先生(名古屋市立大学教授)にデータサイエンスに関する勉強会を開いていただき、夏休みは直接学校にも来てくださって指導してもらいました。自分の中で「ここまでしか証明できない」と思ったことも、「こうすればもっと明らかにできるよ」とさらに踏み込んで教えてくださるので非常に勉強になります。
▼ Iくん 使用する統計分析ソフトの『R』はレベルが高く、高校生の自分たちが扱うには多少難しいところもありますが、わからない時は気軽に先生方に聞けますし、先輩のOさんも親身になって教えてくれるのでとても助かっています。
今後、スポーツデータ解析研究会をどう進化させていきたいですか。
▼ Fくん やっぱり先輩たちが獲り続けている「中高生・スポーツデータ解析コンペティション」の最優秀賞は後輩たちにも受け継いでいってほしいです。
▼ Iくん その前に僕たち高2の代が獲らないと、後輩たちも受け継げない!
▼ Fくん そりゃそうだね(笑)
▼ Iくん 僕はOさんみたいに後輩たちに上手く教えられるように、自分のデータ分析のスキルをさらに成長させたいです。卒業後、大学生になって後輩たちに呼ばれたら、洛星もスポーツデータ解析研究会も大好きなので、何らかの形で関わって応援していきたいです。
▼ Oくん 2020年の立ち上げから児玉先生に尽力いただき、名古屋市大の奥田先生のサポートもあってスポーツデータ解析研究会は今年で3年目を迎えられました。その間、多くの先生方や一緒に研究会を立ち上げた先輩方、交流会を通した他校の方などと、たくさんの“つながり”を築くことができました。後輩たちにはそういう“つながり”を活かして研究を楽しんでほしいと思います。また、洛星は「やりたい!」と思ったことをとことん突き詰めていくことを応援してくれる環境があるので、みんなも色々なことにどんどんチャレンジしてほしいと思います。
顧問の \児玉先生 談!/
私は生徒たちに遊んでもらっています(笑)
スポーツデータ解析研究会のほか、ハンドボール部、鉄道研究会、レゴ同好会でも顧問を務めていますが、どの場でも私は「生徒に遊んでもらっている」という感覚でいます(笑)。今後、スポーツデータ解析研究会がさらに進化・発展するには、まず生徒自身がデータサイエンスに興味をもたないと何も始まりません。その面白さを追究できるのがこの研究会ですし、その魅力を伝えながら、今以上に生徒たちが楽しめる場所と環境を提供できるように努めていきます!